インフィニット・ストラトス ~その拳で護る者~    作:不知火 丙

7 / 15
第七話

― 一樹・S・バニングス ―

 

 さて、セシリアとの模擬戦を一週間後に控えているが俺のやる事は変わらない。

 昨日は予定通り、一夏と箒の部屋のドアを交換して、今日は朝からケーキの仕込みをして、それが終わったら校門の清掃、登校してくる生徒に挨拶をする。

 何時も通り、やることは変わらない。変わったとすれば作業着からIS学園の制服に変わったという事くらいだろうか。顔見知りの二、三年はまだいい。キョトンとするが普通に挨拶をしてくれる。

 しかし、一年はこっちを見てこそこそと話したりしてて挨拶が中々返ってこない。しかも視線が集中する。何も悪いことしとらんのに何か気まずいというか、悪いことでもしたような気になるから不思議なものだ。

 

「やっぱり見られてるっすね」

 

「まあ、物珍しさはダントツですからね~」

 

 隣にいるおっちゃんに言う。

 

「分かっちゃいたけどなんだかな~」

 

「人の噂も七十五日ですよ」

 

「……おっちゃんそれ長くね?」

 

 二ヶ月弱も噂になるのも勘弁してほしい。

 

「まあ実際はそんなに長くないですよ。織斑先生が赴任したときもそうでしたからね」

 

「ああ、なるほど。それが日常になっちまえば慣れもするか」

 

 実例を出されたらそりゃあ納得する。

 

「慣れるまで我慢してください。斎藤くん、そろそろ時間ですが大丈夫ですか?」

 

 そういわれて腕時計を見るとそろそろ教室に向かう時間になっていた。

 

「そうしますか。あ、おっちゃん一つ言っとく事があったんだ」

 

「何ですか?」

 

「山田先生使って情報収集しないで、直接聞いてくれればある程度答えるぞ?」

 

 俺はそこを離れる前におっちゃんに言う。

 

「気づいてましたか……」

 

「まあ、それなりに。耳は良いんですよ」

 

「そうですか……、覚えておきましょう」

 

「いやまあ、覚えなくても良いんだけどさ。おっちゃんの立場上俺の事を警戒しとかなきゃいけないのは分かるけど、なれない人間にさせることじゃねーぞ?」

 

 山田先生が俺の事を調べてるっぽかったから、何してるか調べたらあっさり分かった。

 まあ、そんな重要な情報じゃないからってのもあるんだろうけど。

 

「人手が足りないというのもあるんですがね」

 

「まあ、おっちゃんがこれで安心出来るかどうか分からねーけど、俺は恩を仇で返すようなことは絶対にしないよ。例外があるとすれば俺の知り合いや身内に手を出す奴らには容赦しねーけどな。それが誰であろうと……ね。少なくともIS学園にいる連中は恩人ばっかりだからな。精々恩を返せるようにするさ」

 

「そうですか……では、そういう事にしておきましょう」

 

「ああ、何か困ったことがあったら言ってくれ。できる限り協力はするから……ってそんな深刻な顔しないでくれよおっちゃん。今のは紛れも無い俺の本心だよ」

 

 そういいながらおっちゃんの背中をバンバンと叩く。

 

「ゴホッ……分かりました」

 

 ちょっと強かったのかおっちゃんが咳き込んでしまった。

 

「ん、じゃあ俺はもう行くので。流石に千冬さんの出席簿アタックは食らいたくないので」

 

 そう言って俺は教室に向かって歩き出す。

 

「はい、分かりました。じゃあ、頑張ってください」

 

 その言葉を背中に受けてひらひらと手を振った。

 

 一時間目が終わり、休み時間になったらいきなり一夏が近寄ってきた。

 

「一樹さん」

 

「ん? 何だ?」

 

 授業の準備をしながら返事をする。

 

「一緒にISの訓練しませんか?」

 

「すまんな、七時半から空手の稽古があるんだ。付き合えねーな」

 

 一夏の問いに即答する。

 

「はい?」

 

「うん、まあ通じないのは分かってたけどな。しかしあえて言おう! そこは「今日は休め」というべき」

 

「………………」

 

 一夏がフリーズする。何のことなのかさっぱり分からんようだ。

 

「ん、まあ訓練は無理なんだがな」

 

「な、何でですか!?」

 

 流石に即答で断られるとは思ってなかったのか慌てて聞き返してくる。

 

「仕方ねーべ。授業が終わったら用務員の仕事があるし。カフェの方だってやることがあるんだ。俺が訓練するのは寮生の消灯時間前後になるんだぞ? 用務員って暇そうに見えて意外に忙しいんだぞ?」

 

 実際にやってみたが意外にやることが多いのだ。まあ、極端に残業があるわけではないが。

 

「う……」

 

 どうやら一夏には暇人という風に写っていたようだ。

 まあ、あの時千冬さんがあんな事言ったから一緒にって考えに至ったんだと思うけど。

 

「まあ、そういう事なら、え~っと……お~いモッピ~」

 

 俺はそう言って箒を呼ぶ。何人かが「誰のこと?」という感じに首をかしげている。

 そんな中箒が机から立ち上がってズンズンと効果音付きでこっちに近づいてくる。

 

「モッピーはやめてくださいと言ったはずです!」

 

 バン! と机を叩き睨んでくる。

 

「まあまあ、そう怒るな。今回は良い話を持ってきたんだ」

 

 手でまあまあ、とジェスチャーしながら言う。

 

「……なんですか」

 

 じと~という感じでこっちを見てくる。

 

「ああ、実はだな。一夏がISの訓練をしたいと言っているんだ」

 

ピク。

 

「だが俺は忙しくて手伝えそうに無い」

 

ピクピク。

 

 面白いように反応する箒。

 

「だからその代わりをモッピーに一夏の訓練を頼みたいんだが? ああ、何も難しいことをしろってんじゃ無い。一夏のなまった剣の腕を磨き直せばいいだけだ」

 

 俺はどんな訓練をすればいいか説明する。

 

「か、一樹さん?! 何で剣の腕だけなんですか! もっとこう銃とか使ってみたいんですけど?」

 

 一夏がそんなことを言ってくる。原作ではそんな感じではなかった気がしたけど気のせいだったか?

 やっぱり使ってみたいってのはあったみたいだ。が、その意見は却下だ。

 

「はあ? お前、にわか仕込みの銃の腕で動く的に当てられると思ってんのか? それ以前に銃を扱うんだったら徹底した安全管理を身体にしみこませなきゃ使わせらんねーよ。銃の構造に整備方法、弾薬管理に銃を撃つ最の注意事項、さらには弾の弾道計算から使用できる状況の法律も覚えなきゃいけねーんだ。しかもそれに対して必要な資格試験もあるんだぞ? 一週間でできると思ってんのか?」

 

 俺はつらつらと銃の取り扱いに必要なことを言っていく。

 しかも覚えることは今言ったものだけでは無いのだ。とてもじゃないが素人が一週間で出来る様なものではない。

 

「……無理です」

 

「だろ? だから今のお前にできることは剣の腕をできるだけ上げることだ。そうすれば多少は勝機が見えてくるだろうよ。だからこそ練習相手に全国№1のモッピーに頼むんだ」

 

 そう言って俺は箒のほうを見る。一夏もつられてみる。

 

「そういう事だからモッピー、頼んだぞ」

 

「箒、悪いけど頼めるか?」

 

 一夏も観念したのか箒に頼む。

 

「そ、そういう事なら引き受けてやろう」

 

 それを聞いて俺は一夏から見えない位置で箒に向かってグッっとサムズアップする。

 すると箒は顔を赤くして俯いてしまった。

 

「大丈夫か箒? 俺も箒が教えてくれるなら嬉しいけど、迷惑じゃないか?」

 

 俯いた箒を心配したのか一夏が気を使う。いらん気遣いだが。

 

「だ、大丈夫だ! 私に任せておけ!……そうか、私が教えると嬉しいのか(ぶつぶつ)」

 

「え? 何だ? 最後の方よく聞こえなかったんだけど?」

 

「な、何でもない! よし、そうと決まったら今日の放課後から始めるぞ! いいな!」

 

「ああ、箒よろしく頼む!」

 

 二人が元気よく会話をしていると、

 

「話はまとまったか?」

 

 と、聞きなれた声が二人の背後から聞こえてきた。二人の背後なので俺からは丸見えなのだが。

 ギギギと音が聞こえそうな感じで二人が背後を見る。するとそこには出席簿を持った千冬さんが立っていた。

 

「とっくに開始のチャイムはなったぞ。馬鹿者共。さっさと席に着け」

 

 バンバンバンと、出席簿が人の頭に振り下ろされた。

 

「なして俺まで? 席についていたが?」

 

 頭をさすりながら千冬さんに聞く。

 

「私に気づいていながら二人を席に戻さなかった。連帯責任だ」

 

「ですよね」

 

 千冬さんが教壇に立ち授業が始まった。

 

― お昼休み ―

 

 俺は何時も通りにカフェで注文をさばいている。カフェとなってからは軽食も出すようになった。

 とは言ってもサンドイッチ等の簡単なものではあるが評判は上々である。

 

「あ、一樹さん。生徒さんが呼んでますよ」

 

 注文のあったサンドイッチを準備していると鈴木君が呼んできた。

 鈴木君はIS学園本来のパテシエだ。女尊男卑になってから働く女性に家を守る男性に完全移行したのかと思っていたが、料理人や職人と呼ばれる人達には相変らず男性が多い。このあたりは百年前と指して換わらない。

 

「はいよ~」

 

 そう言って俺が顔を出すと、そこにはマリアがいた。

 

「おう、マリアどうしたんだ?」

 

「はい、一樹大御爺様に相談したい事があって……」

 

「なんだ?」

 

 俺はショートケーキと紅茶を用意しながらマリアに聞き返す。

 

「はい、実はクラス代表に選ばれてしまって……」

 

「ん? マリアも俺と一緒に訓練したいって話か?」

 

 一夏と同じなのかなと思ったが、

 

「いえ、そうしていただけるならありがたいのですが、実は今テストしている武装を今月中に仕上げる予定なのですがクラス代表になってしまったので予定がずれてしまいそうなんです」

 

「ふ~ん」

 

 マリア言ってきたのは全く違うことだった。

 マリアはバニングスインダストリーズのテストパイロットをしているが、代表候補生ではない。弱い訳ではない。むしろ腕はそこらへんの代表候補よりダントツに強い。

 そのため、会社として必要な人材なのだ。バニングス社の製品は何処の会社よりも信頼性が高い。それはひとえにマリアが試作品をぶっ壊れるまで使い込み、正確なデータを取って、問題点を全てたたき出しているからに他ならない。

 そのためどの国からも贔屓にしてもらっている。が、売れているかというとそうでもない。

 何故か? どうにも特殊な武装だったりする為敬遠されがちになってしまうからだ。

 ロケットパンチとか、四十六センチ砲とか、超大型グレーネードランチャーとか、斬艦刀とか……。

 まあ、どの国でもそれぞれに共感してくれる人物はいるみたいだが、流石に買うとなると色々と難しいようだ。そのためお蔵入りになっている装備が結構あるみたいだ。

 そんな装備のテストを小さいころからしてるもんだから本人曰く、「忍さんとすずかさんの作った武装をテストするのが楽しくてしょうがない」とのことだった。だから本人も代表候補の話が来ても蹴っている。

 

「それでお願いなのですが、私の代わりにクラス代表戦が終わるまで耐久テストして貰えないでしょうか?」

 

 マリアがそう言ってきたので、

 

「ん~、マリアって二組だっけ?」

 

 マリアのクラスの確認をとる。確か二組だったはず。だったら…………。

 

「はい、そうですが」

 

「あ~、それなら大丈夫だ。近い内二組に転校生が来て、代表代われって言ってくるから」

 

 セカンド幼馴染こと凰鈴音(ファン リンイン)が転校してくるはずだし。

 

「……随分と具体的ですね?」

 

「そう囁くんだよ、俺の守護霊が」

 

「……見えるんですか?」

 

 ちょっと顔を青くしてマリアが聞いてくる。

 

「いやいや、見えないよ。マリアってそっち系の話苦手? まあ、そっち系の話でもないんだが」

 

 どっかの機動隊のネタなんだけどね。

 

「ええ、ちょっとそっち系の話は苦手です」

 

 上目遣いにこっちを見てくる。うむ! さすが俺とアリサの玄孫! 可愛いのう。

 こら鈴木君頬を染めんな。お前にはマリアをやらん!

 

「そういう事なら次からは気をつけよう」

 

「ありがとうございます」

 

「ところで今どんな武装のテストしてんだ?」

 

「はい、大型荷電粒子砲です」

 

 それはまた随分とロマン溢れる武装だな。

 

「ふ~ん、順調か?」

 

「順調と言いますか何と言いますか……」

 

 首を傾げて悩んでいる。

 

「どんな問題が?」

 

「え~っとですね、空中では発射不可で、チャージ時間が長くて、発射したときISのエネルギー全体の六割を持っていって、実質一回しか撃てないというところでしょうか?」

 

「……大問題じゃねーか。忍さんの作品?」

 

「いえ、すずかさんも関わっています」

 

「ふ~ん、……ちょっとデータ見せてもらってもいいか?」

 

「はい、どうぞ」

 

 そう言ってマリアは携帯端末を操作してデータを見せてくれた。

 そしてそこには俺のよく知っている武装に似ている荷電粒子砲が映っていた。

 

「マリア、これって……」

 

「はい、あっちの技術も使われているみたいです」

 

 どうやらミッドの技術も使われているようだ。だとしたら…………。ティン! とキタ!!!

 

「マリア、こいつのテスト俺がやっても問題ないんだよな?」

 

 やばい、笑顔が抑えきれない!

 

「え? たぶん大丈夫だと思いますが、流石に確認は取らないと」

 

 俺の笑顔を見て、ドン引きするマリア。

 

「ん、分かった。忍さんとすずかには俺から了解を取っておく。これは俺にやらせてくれ」

 

「あ、はい分かりました。それじゃあ、後で引継ぎをお願いします」

 

「ん、じゃあはいこれ。もう飯は食ったんだろ?」

 

 そう言って俺はショートケーキと紅茶をマリアの前に出す。

 

「え、良いんですか?」

 

「おう、問題ねーぞ」

 

 一人のときならいざ知らず、今は数に余裕はある。

 

「ではいただきます」

 

 そう言って嬉しそうに食べていくマリア。やっぱりこの顔を見れるのは良いもんだ。

 

「美味しいか?」

 

「はい! とっても!」

 

「よかった」

 

 何気ない会話が俺の疲れを一瞬にして癒してくれる。

 やっぱり良いもんだな。ほんわかしてマリアを見ていると、正面からセシリアが歩いてきたので声をかけてみる。

 

「おう、オルコット。どうした?」

 

「あら? 貴方のような礼儀知らずが何故ここに?」

 

ピク

 

 セシリアの言葉に反応するマリア。

 

「何故も何も、ここのマスターしてるって言ったじゃねーか」

 

「そうでしたの。美味しいケーキと紅茶が飲めると聞きましたのに期待はずれのようですわね」

 

ピク、ピク

 

 今度はマリアに加えて鈴木君まで反応する。

 まあ、自分の作ってるもんを馬鹿にされたらいい気はしないよな。

 

「ん、そうか? とりあえず食べてみるか?」

 

「いいえ、遠慮しておきますわ。どうせ大したことないようですから」

 

 そう言って帰ろうとするセシリアに「やれやれだぜ」と奇妙な冒険風に肩をすくめていると、

 

「待ちなさい」

 

 と、マリアがセシリアを呼び止める。

 

「何ですの?」

 

「一樹大御爺様は兎も角、ケーキを侮辱したのは許せません」

 

「え?! 怒るとこそこ!?」

 

 マリアの言葉にショックを受けつつ突っ込む。

 

「一樹大御爺様は普段からしっかりすればこのような事は起きないはずです。少しは反省してください」

 

「……はい」

 

 マリアにぴしゃりと言われぐうの音も出なかった。まあ、実際普段からはっちゃけているから仕方ないんだが。

 

「それで、どうしろというのですか?」

 

「今度一樹大御爺様と試合をするんですよね?」

 

「ええ、そうですわ」

 

「その試合に一樹大御爺様が勝ったらケーキに謝罪をしなさい」

 

 ケーキに?! 俺にじゃなくて!?

 

「というか、負けると分かっているんですから今謝罪しなさい」

 

「なっ! わたくしは負けませんわ!」

 

「いいえ、無理です。一樹大御爺様に勝てる人なんてこの世界にはいません!!」

 

 まあ、確かにこの世界にはいないわな。

 

「わたくしは負けませんわ!」

 

「じゃあ、機銃弾200発にチェーンガンをフルパック、至近距離から撃ち込んだにも関わらず全部回避する人にどうやって勝つんですか?!」

 

「……はい?」

 

 ヒートアップし始めたマリアが良い感じになり始めた。

 

「グレーネードを撃ちこめばキャッチして投げ返してくるし、斬艦刀は素手で折られるし、光学兵器に至ってはよく分からない方法で迎撃するし!! どうやって勝つんですか!! しかも生身だったんですよ!?」

 

ざわ……

 

 その一言に周りで聞いていたギャラリーがざわつく。

 まあ、そうだよね。嘘か本当かは兎も角、ISと生身で戦って生きてるんだから。

 

「あ~、マリア。その辺にしときなさい。それ以上はちょっと言いすぎだ」

 

 俺がちょっと語気を強くして言う。マリアもはっとしていつものマリアに戻った。

 

「……あ、すいません一樹大御爺様」

 

 マリアはしゅんとして俯いてしまう。自分の迂闊さに気が付いたようだった。

 知られても構わないが知らなくていい事でもある。

 

「あ~、まあ、あんときは俺も悪かったからな。ごめんな。マリアがそんなに気にしてるとは思わなかった」

 

 そう言ってマリアの頭をなでる。しかし、マリアは俯いたままだった。

 

「仕方がない、今日はマリアの好きなケーキを作ってやるか」

 

「本当ですか?!」

 

 そういった瞬間マリアが一瞬で笑顔になる。うむ、やはりマリアは笑顔が可愛いのう。

 

「おう、本当だ。じゃあ放課後にいつもんとこに来い。作っといてやるから」

 

「や、約束ですよ」

 

「大丈夫だって」

 

「分かりました! 楽しみに待ってます! じゃあ、一樹大御爺様私はこれで」

 

 そういうとマリアは手を振ってその場を離れていった。

 

「ん、じゃあ鈴木君後よろしく」

 

「え? あ、はい」

 

 あまりのことに呆然としている鈴木君を残して俺もその場を離れる。みんななんか聞きたそうだけどこの場は逃げるに限る。

 呼び止められることもなく離れることができた。そこにはセシリアがポツンと残っていた。

 

― 放課後 ―

 

「何でみんなそろってんだよ」

 

 そこにはどっから聞きつけたのかマリアの他に一夏に箒、千冬さんに山田先生、クラスメイトに扇子で顔を隠している常連客が雁首そろえて待機していた。って言うか何でこの場所知ってんだよ。俺の部屋だぞ一応。

 

「「「マリアちゃんを尾行してました」」」

 

 クラスメイトに常連客が言ってくる。

 

「声そろえて言うんじゃねーよ。褒められた行動じゃねーぞ」

 

 頭を抱えつつ言う。

 

「俺達はマリアに誘われて」

 

「そうだ」

 

 一夏に箒が答える。

 

「私は一夏から聞いた」

 

「私は織斑先生から」

 

 今度は千冬さんに山田先生だった。

 

「ったく、まあいいや。ちょうど新製品のテストをしたかったし。不味くても文句言うなよ?」

 

 仕方ないので全員分作ることになった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。