妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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お待たせしました。
雨の中試合したら風邪引きました……
ボーっとしながら書いたので、何か問題があるかも知れません……



妖魔と殺人事件 Ⅱ

妖魔によるものと思われる殺人事件が発生して一日

俺は他の兵士と共に詰所に戻り情報の整理を行っていた。

会議には事態を重く見た隊長によって町長を含む何人かの有力者が集まっていた。

俺はグリアさんに一番死体の事をよく把握できていた、との理由から有力者への説明役を任されていた。

一方、有力者達は信じられないといった風な顔で会議に参加していた。

かろうじて町長は積極的に議論に参加し意見を述べていた。

とは言えその意見の端々に妖魔であって欲しくないという意思が垣間見えていたが……

 

「……犯人は普通の人間には不可能な方法で被害者を殺害しています。」

「……待て、それは絶対に人間には不可能なのか?道具を使えばできるんじゃないか?」

 

町長が疑問を投げかける。

 

「確かに不可能ではありませんが、かなりの大きさになると推測され現段階で発見できていないためその可能性は低いと判断しております」

「また、人体の一部ー主に内臓ーが遺体には存在せず、我々は喰われたと判断しています」

「何らかの理由で持ち去った可能性は?」

 

再び町長が疑問を投げかける。

 

「……内臓はきれいに無くなっていました。そこまでして内臓を持ち去る理由があるでしょうか?もちろん私には想像もつかない理由から持ち去る可能性もあるため調査は続行しています」

 

俺がそう告げると有力者達は各々呻き声を上げたり、ヒソヒソと近くの人物と話し合うが。特に異議は出なかった。

 

「……それではこの事件の犯人は妖魔である可能性が高いと言う事でよろしいでしょうか?」

 

議長役を務めていたグリアさんがそう締めくくる。

 

「待った!我々はどうすればいいのだ!?それにいつその犯人は捕まるんだ!」

 

有力者の一人がそう叫ぶように言う。

そうだそうだと他の有力者達も頷いている。

どうやらようやく妖魔がこの街に居る事を認めたが、今度は自分の身の安全が気になり始めたらしい。

黙って議論を聞いていた隊長に視線を投げると、隊長が一つ頷き、立ちあがり言う。

 

「皆さん、落ち着いてください。犯人は我々が全力を上げて捕まえます。皆さんはいつも通りの生活を行ってください。大丈夫です。皆さんは我々が守ります」

 

隊長の自信有り気な言葉に有力者達はとりあえずの落ち着きを取り戻す。

とは言え皆不安そうな表情を隠そうともしない。

今回黙ったのもまだ妖魔と確定していない事と自分の身が危険であると言う実感がないからだろう。

事件が続けばすぐに暴走を始めてしまう事は目に見えていた。

とは言え隊長には一応の目処が立っているようだった。

宿屋の客がまず襲われた事から、妖魔は街の外からやってきた可能性が高く、宿屋の宿泊客や関係者に化けている可能性が高いと踏んでいたのだ。

 

 

 

それから数日後、事態は最悪の方向に進展を見せる。

新たな被害者が出たのだ。

被害者は路地裏に住んでいたと思われるホームレスの男だった。

俺達はその殺人が行われた事を全く察知する事ができなかった。

全力を上げて関係者を尾行していた事が裏目に出てしまったのだ。

この事件が発生した事で宿屋の関係者は全て白である事が確定したのだった。

同時にこの事は容疑者が全く分からなくなった事を意味していた。

 

俺はこの結果を当たらないで欲しいと願いながらもある程度予想してた。

取り調べの最中に関係者全てと会ったが誰からも妖魔であるという気配を感じる事ができなかったからだ。

俺はこの事が自分に妖魔を探知する能力が無い所為、または相手の妖魔が隠れるのがうまいためであると判断していたのだが、残念ながら外れてしまったようだ。

さらに2件目の事件が発生した時、俺は比較的側に居た筈なのに全く察知する事ができなかった。

これは俺の妖魔を察知する能力が低い事を意味しており、これからも何事もなく生き延びていく事が困難である事を示していた。

妖魔の気配が察知できないと言う事はクレイモアや覚醒者の気配を察知する事も困難である可能性が高いからだ。

発覚した事実に俺の気分は落ち込んでいたが、今は落ち込んでいる場合ではなく、どうにかする手段を考えなくてはいけなかった。

事件が再び起きてしまったからにはクレイモアを雇う可能性が高くなったと言う事だからだ。

 

 

さらに数日、捜査に進展はなく

確実に迫るタイムリミットと見つからない手掛かりに俺は苛立っていた。

そんな俺を気遣ってくれたのか、長期戦になりそうだから、と言う理由の下、家で休息を取っていた。

とは言え気持ちばかり焦ってしまい、ろくに休む事もできずにリビングで酒を飲んでいた。

 

「クソっ!」

 

思いっきり机を叩くが、手が痛くなるだけで何も起こる事はない。

……いや、どうやらアリスを心配させてしまったらしい。

アリスが静かに近寄って来て俺の隣りに腰を下ろす。

 

「レイお兄ちゃん……大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

 

俺はそう答えるがアリスは全く信じていないようだ。

実際、俺は追いつめられており、このままでは近いうちに崩壊する事が分かっているためとても大丈夫とは言えない状況なのだから、アリスには嘘が通じないらしい。

 

「……レイお兄ちゃん、どこか行っちゃうの?」

 

不安そうにアリスが囁く

俺は黙って安心させるようにアリスの頭を撫でながら言う。

 

「大丈夫だ。俺はどこにも行ったりしないから、必ず犯人は捕まえるから」

 

アリスの頭を撫でながら俺は改めて決意を固める。

この日常を失ってなるか、と

そんな俺の様子に少し安心したのかアリスは微笑んで、じゃれついてくる。

俺はしばらくそんなアリスとじゃれたり他愛のない事を話したりする。

 

不意にドアを叩く音がする。

誰だ?

この家に訪ねてくる人は少ない。

元から少なかった上に今では、人の口に戸は立てられず妖魔が出ると言う噂が広まっているためやってくる人など居ないと言っていい。

警戒しながら、玄関へと向かい、誰何する。

 

「……誰だ?」

「兵士のセネルです。町長達が呼んでいるので呼びに来ました」

 

声の主は同僚の兵士の物だった。

町長が呼んでいると言う事だったが、また何か説明して欲しい事でもあるのだろうか?

そんな事を思いながら、アリスに用事ができた事を告げ出かける。

確か町長達は今日も無駄な会議を行っていたはずだ。

そう思いセネルに確認してみると会議場に向かって欲しいと告げられる。

 

会議場に到着すると会議場にはおかしな雰囲気が漂っていた。

一見すれば静かなだけなのだが、何か狂気を感じるのだ。

何かイヤな感じを受けながらも入らない訳にもいかないので入室する。

入室した瞬間に部屋に居た全ての人間の視線がこちらを射抜く。

その事に動揺しながらも俺は

 

「……兵士レイ、やって参りました。御用との事ですが何かあったのでしょうか?」

 

そうやってきた事を告げる。

部屋の中にはギラギラとして僅かに狂気を感じさせる目をした有力者達と、悔しさからか俯いているグリアさんと隊長が居た。

 

「…………」

 

イヤな圧迫感のある沈黙が続く、少しでも物音をたてた瞬間全てが崩壊しそうな、そんな痛い沈黙

沈黙に耐えきれなかったのかグリアさんが苦悩に歪んだ顔で俺に対して告げる。

 

「……お前さんが妖魔であるという疑いが掛かっている」

「なっ!?」

 

グリアさんの言葉を契機に爆発したかのように他の人物も一気に声をあげ始める。

 

「お前が殺したんだろ!?」

「まさか、兵士の中に妖魔が居るなんて……」

「この人殺し!」

「知ってるぞ!お前が妖魔だって弾劾した相手を捕まえた事を!」

「権力を使ってもみ消していたのか……」

 

俺に対して罵声が浴びせられる。

だが、少しだけ状況が分かってきた。

要はこの人達は、俺が妖魔なのだと言う事にしては安心したいのだろう。

その標的として俺は選ばれてしまったのだろう。

最近この街に住み始めたよそ者で、ちょうど妖魔じゃないかと言う疑惑を掛けられた事のある俺がちょうど良かったのだろう。

そして、この流れをグリアさんや隊長は止めようとしたが力及ばずといった所だろう。

まさか、このタイミングとは思っていなかったが、街中の人から責めらる可能性は考えていたから、思いのほか冷静さを保ててはいる。

しかし、想像以上に心が痛い。

守ってきた人から拒否される、その事がこんなにも心にクル事だとは俺は思っていなかった。

幸いグリアさんを含めごく少数ではあるが、俺を気遣ってくれる人がいる事が救いだろうか……

 

俺に対する罵声はどんどんエスカレートしていく、今ではどうやって見せしめにするのかまで話が進んでいた。

このままでは俺は殺されてしまう。

グリアさんもそう思ったのか議論を止めようと動きだそうとしてくれていたが、俺が止めるように目配せをする。

 

ズダンッ!!

 

俺は目の前の机をブッ叩く

突然響いた音に今まで激しく罵っていた者達が驚き動きを止める。

その隙に俺は声を張り大声で宣言する。

 

「黙れ!!俺はお前達が安心するために無駄死にするつもりはない!!」

 

その剣幕に押されたのかほとんどの人間が黙る。

 

「では、どうするというのだ!」

 

町長が一瞬で動揺を抑え問いかける。

俺は一気に普通のトーンに声を戻し答える。

 

「要は安心できればいいのでしょう?」

 

そう言って見回すと、何人かが頷いている。

……正直な事だ。まぁ、下手に意地を張るよりよっぽどマシだが

 

「私は今から牢屋に入ります。そして、24時間監視することにすればどうでしょうか?」

 

俺はそう提案する。

動けなくなるのは痛いが、それ以上にここで暴発されても困るのだ。

もし、俺が殺されてしまえば、おそらく妖魔の姿に戻るだろう。

そうなれば、全く問題は解決していないにも関わらず安心してしまうだろう。

それはアリスやグリアさん、お世話になった皆を危険にさらす事だ。

そんな事は避けなくてはならない。

ならば、ここで俺が牢屋に入るという提案が一つの妥協点だと考えられる。

俺が捕まっている間に新たな殺人事件が起これば俺は無実と判断されるだろう。

クレイモアを呼ばれる可能性も高いが、そこは賭けるしかない……

そして、ざわざわと有力者達が話し合った結果、町長は

 

「この者を牢屋に連れていけ!」

 

そう兵士達命じるのだった。

そして、俺は自らの意思で牢屋に閉じ込められる事となったのだった。




牢屋に入るまでで終わってしまいました……
今回で終わるはずだったのに全く終わりませんでした。
おそらく次回でこの話が終わるはず、というか頑張って終わらせます。
そして、初めてのまともな戦闘シーンがあるはずです……きっと

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