妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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超展開です。
丁寧に全部書こうかな?とも思ったのですが、それよりもサクサク進行させる事にしました。もっと丁寧にやってくれという意見が多ければ考えますが、とりあえず最低限の描写で先にドンドン進んで行きたいと思っています。
そう言うのが嫌いな方は避けた方が無難だと思います。


妖魔と秘密と少女

「おい、皆聞け!こいつは妖魔だ!俺は見たんだ!昨日のよる妖魔となったコイツを!!」

「な、なに!?」

 

広場に今までの活気あるざわめきとは別種の不安や不信を含んだざわめきが広がっていく、

俺は今目の前の汚い身形で不潔そうな中年男に弾劾されていた。

突然の事だった。

いつも通り街の巡回をしている最中の事だった。

広場に入り、何も異常がない事を確認していたら突然男が大声を上げたんだ。

俺が妖魔だ、と

俺が驚いて固まっている間、男は俺を弾劾し続けた。

修道院に入っていく妖魔を見たとか、こいつの部屋から妖魔が現れたとか好き放題言っていた。

問題はその全てが真実である事だろうか?

十分に気を付けていたはずなのにいつの間にか慣れて気が抜けていたのだろうか、俺はコイツの存在に全く気付いていなかった。

とは言え、今更何を言っても遅いだろう。

 

「それで、俺が妖魔だって言う証拠はあるのか!?」

「な、証拠だぁ?俺が見たって言ってるだろうが!」

「……それは証拠とは言わんぞ、第一俺が妖魔だとして「おっ!認めんのか!?」……仮定の話だ。続けるぞ妖魔によるものと思われる死者何か出てないぞ?」

 

俺が言えるのはこれしかないだろう。

妖魔に襲われた人が居ない、すなわちこの街に妖魔は居ないという結論に持って行くしかないだろう。

実際にコイツは見たんだろうし、その点で張り合ってもどうしようもないだろう。

それにどうやら聴衆は俺の味方らしい、俺の意見に同調してくれる人が結構いる。

 

「それにだ。修道院に入って行ったとか言ってたが、何しに行ったって言うんだ?……まさか、神様に祈りにでも行ったって言うのか?」

「そ、それは、知らねぇよ、妖魔が何してるのか何か俺が知る訳ないだろ!?」

「ほう、修道院から何も訴えは出てないし、被害も出てない。きっと何かを見間違えたんじゃないか?第一どうしてお前はそんな所に居たんだ?」

「……そ、それは……」

「おい!!この騒ぎは一体何だ!」

 

思いのほか簡単に言いくるめられそうなので俺は内心安堵しながらさらに追撃を掛けようとしていたら、

集まっていた聴衆を掻き分けグリアさんが現れる。

突然この男が俺が妖魔だと言いだしたから被害も出てないし見間違いだろうと反論していた所だと正直に告げる。

正直ここでのグリアさん登場はあまり嬉しくないのだが嘘をついて後でバレたらさらにマズイ事になるだろう。

 

「レイ、こいつの事知ってるか?」

「いえ、記憶にありません。おそらくどこかで捕まえた犯罪者ではないかと」

 

そんな話をしていると聴衆の中の一人が大声で言う

 

「そいつ知ってるぞ!詐欺師のベンだ!確か先週捕まったとか聞いたぞ!」

「……そう言えば、先週そんな奴を捕まえたな……と言う事はこれは逆恨みって事か?」

「……クッ、そ、それでも俺は見たんだ!コイツの部屋から妖魔が出てくるのを!!」

 

分が悪くなった男が喚くがグリアさんに一睨みされて黙る。

こう言う威圧感ではグリアさんには絶対勝てないと思う。

それにしても先週捕まえたのは身形の良い、清潔感溢れる紳士だったような気がするのだが、一週間でここまで落ちぶれたのだろうか?

グリアさんが俺の方に向き直り静かに尋ねる。

 

「……で、レイ、お前は妖魔なのか?」

「いいえ、違います」

 

嘘をつく事に罪悪感を感じるが、ここで正直に言う事はできない。

じっと、俺を見つめてくるグリアさんに俺は視線を逸らさず見つめ返す。

罪悪感から視線を逸らしてしまいそうになるが、そこは根性で我慢する。

……もし俺が妖魔だとバレたら、俺はどうなっても仕方ないと諦めもつくが、下手したらグリアさんやアリスちゃんにも迷惑を掛ける事になってしまうかも知れないのだ。

 

「……そうか、おい詳しい話は詰所で聞かせて貰おうか?」

「な、つ、捕まえるべきは俺じゃねぇ、この化け物だよ!?」

「そこら辺も含めて詰所で聞いてやるから大人しくしろ!」

 

そう言いながら男を連れていくグリアさん

 

「レイ!お前は巡回に戻りな!」

 

最後にそれだけ言い残しグリアさんは去っていった。

残された俺に街の人達は災難だったな、とか俺は信じていたぞ、とか声を掛けてくれる。

それにそれぞれお礼を言った後、俺は巡回の仕事に戻るのだった。

しかし、心の中は先程の事が重く圧し掛かってくる。

 

「……俺はここには居られないのかな……」

 

そう小さく呟く

頭に浮かぶのはこの街に来てから出会った人達の事だ。

グリアさん、アリスちゃん、このまま俺がここに居たら迷惑掛けるかも知れない、

でも、それでも俺はここに居たいんだ。

ここに居たいそれがワガママなのだろうか?

ワガママなのだろうな……

それにさっきの男だ。

もし俺が居なければあんな事はしなかっただろうし、もしかしたら捕まる事すらなかったかもしれない。

そういう意味では良くも悪くも彼の人生に、人の人生に関わってしまっているのだ。

 

「……考えても仕方ない、か」

 

その日はそんな感じで仕事にならず、日課の訓練もそんな状態でやっても身に成らないと言われて休みになり夜になった。

さすがにあんな事があったからあまり外に出るべきではないと理性では分かっているのだが、無性に全力で身体を動かしたかった。

木刀を持って、街の外の森へと向かう。

いつもと違い人間の姿でゆっくりと歩いて行く、見つかったらどうしようと思いながらも歩みは止まらない。

結局誰にも呼び止められる事もなくいつも訓練をしている場所へと辿り着く。

無心で木刀を振り続ける。

 

ザワザワ

 

風が木々を不気味に揺らす。

そんな中俺はひたすら木刀を振っていた。

足りない

そんな事を思いながら妖魔の姿へと変化し今までと同じように、いや先程までよりも速く、重く、鋭く木刀を振る。

 

ヒュンッ、ヒュンッ

 

夜の森の中、俺が木刀を振る音だけが静かに響いていた。

 

バキッ!

 

不意に何かを踏み割ったような音が響く、誰かいる!

俺は自分の油断を後悔しながら声を上げる

 

「誰だ!?居るのは分かっている!出てこい!!」

 

周り全てを警戒する。

音がした方向だけに人がいるとは限らないからだ。

そして、同時にどう対処するかを必死で考える。

見られただろうか、いや見られたと思うべきだ。

人の姿に戻るべきか?やめておいた方がいいだろう、今ならまた野良の妖魔だと思わせられるかもしれない。

いっその事……ダメだ、それは最終手段だ。

 

ガサガサ

 

人影が近くの茂みの中から現れる。

現れた人影は小さい少女の物だった。

 

「!?なっ、アリスちゃん!?」

「……やっぱりレイさん何ですね?」

 

疑問の形ではあったがアリスちゃんは確信を持ってそう言う。

どうやら、想像を超えた事態が起こっているらしい。

 

「……俺はレイなんかじゃない、って言っても信じてくれそうにないね……」

「はい、レイさんは……妖魔だったんですか?」

「……」

「……」

 

沈黙が痛い

……否定は無駄か、どうやらここが潮時らしい

誤魔化す事もできそうにないし、アリスちゃんをどうにかする何て考えたくもない。

本能が襲えと言ってきていたとしても、俺は絶対にアリスちゃんを襲う事はしない、したくない。

なら、解決策は一つだろう、俺がこの街を去れば良いのだ。

グリアさんやアリスちゃん、街の人達と過ごした充実した時間が思い出される。

涙が溢れそうになるが必死で我慢してアリスちゃんに別れを告げる。

 

「驚いたかい、俺が妖魔で、怖ろしいだろ?大丈夫だ、すぐに居なくなるから、いまさらだけど今までありがとう、楽しかったよ」

 

それだけ言い残し俺はアリスちゃんに背を向け立ち去ろうとする。

 

トットットッ、ガシッ

 

不意に後ろから抱き締められる。

アリスちゃんが俺を抱き締めてくれているらしい。

 

「……馬鹿な事、言わないで下さい、これでさよならなんてイヤです!」

「……でも!」

「でもも何もありません、レイさんは妖魔でした。でも妖魔でもレイさんのままでした!ひたすら愚直に剣を振る真面目で傷つきやすい、そんな人のままでした!」

「……アリスちゃん……ありがとう」

「レイさん、せっかく知り合えたのにこんな所でさよならはイヤです!」

「……俺はここに居ていいのかな?」

「居て下さい、レイさんの居場所はここです、他の場所何かに行かないで下さい!」

 

俺はホロホロと静かに涙を流しながら、アリスちゃんを抱き締める。

アリスちゃんが俺を先程よりも強く抱き締めてくれる。

妖魔として目覚めて二カ月弱、俺はどうやらここで生きていて良いらしい。

 


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