妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

6 / 39
さすがに超展開すぎたように思えたので、閑話を入れてみました。
なお、参考までに、妖魔~の時は基本的に主人公レイ視点で、
それ以外の時は前半部分が誰の視点であるかを示すようにサブタイトルを付けたいと思っています。

そして、まさか五千人以上の人に読んで貰えるとは思っていませんでした。
ありがとうございます。
これからも完結目指して頑張って行きますので、これからもよろしくお願いします。


少女の出会い

いつも通りの日常、

ようやくそう言える程度にはおじいちゃんとの二人暮らしに慣れてきた。そんな時の事だった。

おじいちゃんがあの人を、レイさん連れてきたのは

私の生活はここ数年で大きく変わっていた。

 

始まりはお父さんの死だったわ。

妖魔に喰われたわけでも殺された訳でもなくあっさりと事故で死んでしまったらしいの。

お母さんが死んでしまう少し前にそう教えてくれたわ。

きっと、お母さんは自分が私を残して逝ってしまうことを理解していたのだと思うの。

自分が知っていることを時間の限り教えてくれたわ。

 

次の変化はお父さんが死んで、お母さんと悲嘆にくれていた時に、おじいちゃんが帰ってきてくれた事。

おじいちゃんは聖都ラボナで兵士を勤めていたのよ。

聖都を守るなんてスゴい仕事だよね

でも、怪我してしまって兵士として勤められなくなってしまったの。

それで、兵士を鍛える教官みたいな事をしていたらしいのだけど、お父さんの死を契機に戻ってきてくれたの。

こっちの方が街を守る役に立つ事ができるって教官みたいな事をこっちでもやるんだって言ってたわ

……おじいちゃんはラボナでは限界を感じたからだって言ってるけど、きっと私達の為、なんだろうな……

まぁ、おじいちゃんが戻ってきてくれたお陰で暗く沈んでいた家の中が少し明るくなったわ。

 

その次に大きな変化が起こったのは、おじいちゃんが居る生活に慣れてきて、ようやくお父さんの事を胸に納めておく事ができるようになった頃だったわ。

カタントの街で流行り病が猛威を奮ったの。

街の三分の一の人が倒れ、その内の半分の人と二度と会うことができなくなった。

街から人通りがなくなり街は死んでしまったかのように静まりかえったわ。

そして、お母さんはその六分の一に入ってしまった。

お母さんは私にいろいろと言い残し、泣きながらごめんね、と掠れた声で言ったわ。

そんなお母さんを抱き締める事も私には許されず、死に行くお母さんを見守る事しかできなかった。

お母さんが死んで泣きじゃくる私をおじいちゃんは優しく抱き締め、頭を撫でてくれたわ。

 

おじいちゃんとの二人っきりの生活、

でも、私はお母さんが死んだ悲しみに浸る事すらできなかったのよ。

おじいちゃんが家事を全くできない事が分かったからね。

おじいちゃんの料理はかろうじて食べられるものの、下拵えも何も考えずに適当にぶつ切りにして全てを鍋に突っ込んで煮込むだけで、甘い物と苦いものが微妙に混ざりあい、煮すぎて崩れた物と後から入れたためにまだ生の物があるという有り様だったわ。料理だけじゃないのよ?掃除をすればする前より散らかり、洗濯すれば服が破けるなどとても見ていられなかったわ。

それで、すぐに私が家事は全部やるようになったわ。

でも、それが良かったのだと思うの

ウジウジと悩む暇もなく忙しく家事をしている内に自然にお母さんの死を乗り越えられたのですから。

もちろん、今でもお母さんの死は悲しいわ、でもね、私は決して世界で一番不幸なんかじゃないの

だって、私はまだ生きてるんですから、流行り病では若い人も多く亡くなったわ、いえ、体力が無い分死んだ人は多かったと思う。

たくさんの人が死にたくないのに死んでいった、私と同じぐらいの年の子も居た。家族が全員死んだ子も、自分が死んでいく子も。

その中で私は死ななかったし、おじいちゃんも居たのだから……

 

いろいろ問題も起こったけどおじいちゃんとの二人っきりの生活も軌道に乗ってきた頃、近くに妖魔が出たって話が出たのはそんな日の事だったわ

おじいちゃんは大丈夫だって言ってたけど、一人で出歩くなとか誰か訪ねてきてもしばらく出なくて良いとか警戒していたわ

いつもはどことなく寂しそうでつまらなそうなおじいちゃんがその時生き生きしていたように見えたのが印象的だったわ

やっぱり、おじいちゃんは戦う人なのだな、と思ったの

それで、それから数日街を封鎖していたのだけど、どうやら大丈夫そうだっていう事で門を開放したのよ

封鎖中は大変だったわ、食料品は売り切れだわ、街の人は殺気立ってるわで、すぐに封鎖が解除されて良かったと思うわ

街の人は妖魔はどこかに行ったのだろうと、もう安心していたけど、おじいちゃんだけは違ったわ

見た事も鋭い眼光で街の見廻りをして、門で入ってくる人のチェックも綿密に行っていたわ

警戒しすぎだって言われてたみたいだけどそれでもおじいちゃんは止めなかったわ

 

それからすぐの事だったわ

おじいちゃんが突然男の人を連れて帰ってきたのは

私はとても驚いたわ

だって、今までおじいちゃんが誰かを家に連れてきた事なんかないのだから

話を聞いてみるとおじいちゃんに弟子入りしたって言うじゃない!

これも驚いたわね、おじいちゃん弟子を取る気は無いって何人か追い返してたんだもの

その上、住む場所が無いから家に住むって言うじゃない、そう言う事はもっと早く伝えて欲しいわね、こっちだっていろいろ準備する事があるんだから!

でも、レイさんが良い人だったから助かったの、部屋の掃除とか自分で全部ささっとやってくれたから私がやった事はそんなに多くなかったの

レイさんが良い人だって言う事はすぐに分かったのだけど私はレイさんが何故か怖かったの

ふふっ、笑ってくれても良いわよ?

今思えばそんな事ないって分かるのだけど、当時の私はレイさんが怖かったの

まるで、私と同じ人間じゃないみたいな気がしてたの

きっと、ここら辺では見ない黒髪黒眼に彫りの薄い顔をしていたからだと思うわ

レイさんとの共同生活が始まったのだけどレイさんは凄かったわね

家事全般をほぼ完璧にこなすし、私が知らない事をいっぱい知ってたわ

見た事もないけどとても美味しい料理を食べさせてくれたりもしたわね

そうやって少しずつ仲良くなっていったのだけどそれでも私はレイさんの事が苦手だったわ

不思議だけどレイさんが近くに居ると何か不安な気分になったのよね

今思うと……いえ、何でもないわ

とにかく共同生活は順調だったの

 

朝、おじいちゃんとレイさんが起きだして朝練を始めて、私が朝ご飯を作る。

私は、素振りをするレイさんが好きだったわ、目の前を見ているようで何か遠くを目指してひたすら愚直に木刀を振り続けるレイさんが、でもこれは別に恋愛感情ではない、と思う。

何か困難な目標に向かって届かないと分かっているのに進み続けてる、そんな気がするの

朝ご飯を作っている最中についじっと見てしまって、何度かお料理をダメにしかけた事もあったりしたわね

模擬戦でボロボロになりながら立ちあがるレイさんの姿を見て、急いで朝ご飯を完成させるの

だって、朝ご飯ができないと二人ともずっと訓練しているのよ?信じられる?

朝ご飯ができたら、タオルを二人分用意して呼びに行くの

それで、軽く汗や汚れを拭ったら一緒に朝ご飯を食べるの

皆で"いただきます"って言うの

これはレイさんの故郷の風習らしいわね、何でも食べる物に感謝するのだとか……

おじいちゃんがその精神を気に入ったらしく、食事の前の新しい習慣になったの

朝ご飯の間は静かなのよ

最初にレイさんが今日も美味しいねって言った後、黙っちゃうのよね

レイさんもおじいちゃんもあまりしゃべらない人だから、話すのは私だけって事もあるわ

まぁ、そうか、とかそれでとか一言だけだったりするのだけど……

 

食べ終わったらレイさんが食器を片づけてくれるわ

来た最初の日からごく自然に片づけ始めてたわね、手際も良いしレイさんって一体どんな生活してたのかしら?

私はその間におじいちゃんとレイさんのお弁当を作るの

それで、おじいちゃんとレイさんが家を出る時に渡すのよ

おじいちゃんは無言で頷くだけだけど、レイさんは笑顔でありがとうって毎朝言ってくれるのよ

 

おじいちゃん達が行った後は家事の時間よ

洗濯して、お掃除したら、あっという間にお昼よ

お弁当と一緒に作った私の分を食べたらお隣のサリーおばさんの家に行くの

サリーおばさんは機織りの達人で、私も教えて貰っているの

しばらく機織りをしながら他の生徒さんやサリーおばさんとおしゃべりをしてると

いつの間にか夕方になってるのよね

時間って短いわよね?

夕方になったら解散でそこからそのままお買い物に行ったのよ

その日は良いお魚が安く売っていたからそれをメインにキノコとか野菜とか選んでいたの

そしたら何やら外が騒がしいのよね

気になったから様子を見に外にでたのよ

 

そしたら、急に引っ張られて気付いたらナイフを突き付けられてたのよね

驚きすぎちゃって私完全に固まっていたわ

そしたら兵士が何人か走ってきたのよ

その中にレイさんも居たわ

 

「なっ、アリスちゃん!?っく、貴様ぁ、その子を放せ!!」

「それ以上近づくな!こいつがどうなってもいいのか!?」

 

そう言って犯人はナイフを私の首に近付けたのよ

ようやく驚きが抜けてきて、そしたら恐怖が込み上げてきちゃって私絶叫しちゃったわ

 

「きゃぁぁあああああああああああああ!!!!」

 

でも、それが良かったみたいで、犯人の気が私に逸れた一瞬の隙を衝いて、レイさんがナイフを弾き飛ばしてくれたの

それで、そのまま私を犯人から取り返してくれたのよ

 

「怖かったね?でも、もう大丈夫だから」

 

そう言ってレイさんは私の頭を優しく撫でてくれたわ

その視線はとても優しくて慈愛に満ちていたわ

でも、ちょっと待っていてね、そう言って犯人に向き直った時にはその面影も無かったわ

鋭く怒りを秘めながら冷静な目で犯人を見ていたわ

逃げる事を諦めたのか怯えた様子で身形の良い紳士風の犯人は手当たり次第そこら辺にある物を投げてきたの

でも、レイさんはそれを避ける事もせずに近づいて、一撃で伸してしまったわ

 

「さて、アリスちゃん、大丈夫かい?」

 

そう問われたので頷きを返すと

一緒に詰所に行く?と尋ねられたので大丈夫と返す。

 

「そっか、じゃあ一緒に帰ろうか?」

 

そう言って、犯人を他の兵士に任せると私を送ってくると告げて戻ってくる。

どうやら、一緒に帰ってくれるらしい

 

「私なら大丈夫なのに……」

「一応さ」

「そっか、じゃお願いしてもいいかしら?」

「謹んでお受けします、お嬢様」

 

そんな事をレイさんが言う物だから私は笑ってしまったわ

釣られるようにレイさんも笑っていたわ

それから家に帰って、おじいちゃんに怒られて、心配されたわ

ふふっ、それで、レイさんが守ってくれるわって言ったらおじいちゃんったら不機嫌そうな顔で黙るのよね

それで、ならいいって言って去ろうとするから、おじいちゃんも守ってくれるでしょ?って聞いたら、当然だって少し赤い顔で言ってくれたの

 

この日から私はレイさんを本当の意味で家族だと思えるようになったのよね

それまではお客さんだったのが、居るのが当然の家族になったの

……あんな秘密を隠してるとは思ってもみなかったけどね?

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。