妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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スマホから予約投稿したら、ミスっていましたorz

ルーキー日間20位
( ゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシ
 
(;゚д゚) ・・・
信じられませんでした。ランクインするにしてももっとずっと後だと思ってました。これも皆さまが読んで下さった御蔭です。
ありがとうございました。


妖魔の日常

ハァッ!

 

清浄な朝の空気を気合いと共に踏み込み木刀を降り下ろす。毎朝の習慣となった朝練だ。

グリアさんに弟子入りしてから既に一月の時が経った。

その間に俺はグリアさんに朝と夕方に指導してもらいながら昼はグリアさんの手伝いとして巡回や門番など治安維持活動をしていた。

そして、今日も朝も早くから朝練をしているという訳だ。

 

ッカン

 

そんな軽い音を響かせ俺の降り下ろしはあっさりと捌かれる。

そして、返す刀で体勢を崩した俺にグリアさんの木刀が迫る。

踏み込んだ足で無理矢理制動を掛けながら、体を捻る。

 

ヒュルン!

 

眼前を木刀が通りすぎて行く

避けられるとは思っていなかったのか、わずかには驚きを瞳映すグリアさん

 

チャンスだ!

 

そう感じた俺は崩れた体勢からさらに無理に腕だけで木刀を振る。

当然威力なんてないようなモノだが、それでも当てたい。

……何せ未だにかすらせたことすらないのだ

 

ブンッ!

 

胴狙いで木刀を振る。

しかし、グリアさんは全く慌てることもなくスッと後ろに下がり危なげもなく木刀を避けてしまう。

そのまま、体勢を完全に崩した俺に対して木刀を容赦なく、しかし怪我しない程度に手加減して打ち込んでくる。

 

「ッツ、参りました……」

「うむ、初めに比べればなかなか動きが良くなったな」

「はいっ!」

「・・・とは言え無理な動きが多すぎる、動くときは常に先を意識して繊細に動くんだ。いいか無闇に大きく踏み込むな隙ができる。踏み込むなら避けられたら自分に負けぐらいに考えておけ、いいな?後、最後のはイカン、あそこからはどうやっても先に繋がらん、足掻くにしても次に繋がる様にしろ……とは言え諦めるよりはよほど良いがな?」

「はい・・・」

 

少し褒められたと思ったらその数倍説教されてしまった……

とは言え一月前に比べれば大分指摘される回数は減った気がする。

最初は木刀の持ち方から、走り方、歩き方、ありとあらゆる事を矯正されたもんだ。

少しはマシになってるらしいけど、絶えず指摘されているから実感ないな……

 

「さて、もう一本行くぞ?」

 

どうやら休憩は終わりらしい。

グリアさんとの朝練はランニングから始まり、素振りを行い、そして先程のような模擬戦を朝食の時間まで続ける事になる。

今日も既に何度打ち据えられているが、さらに一本増えるらしい。

……いや、今度こそグリアさんから一本取ってやる!

そう覚悟を決め、木刀を構える。

 

「はいはい、おじいちゃんもレイさんもそこまで!御飯の時間ですよ?」

 

いざ勝負!と気合を入れた所でかわいらしい女の子の声が朝練の終了を告げる。

グリアさんの孫のアリスちゃんが来たらしい。

アリスちゃんはこの街でも特においしそ……可愛い女の子で皆のアイドルみたいな存在だったりする。

彼女はグリアさんの家の家事全般を司っていて、グリアさんも彼女を溺愛している。

ちなみに今俺はグリアさんの家でお世話になっているのだが、アリスちゃんに手を出したら殺す、と真顔で殺気付きで言われた。

正直、最初に出会って問い詰められて剣突き付けられた時よりもよっぽど殺されるかと思ったよ……

まぁ、アリスちゃんが呼びに来たら朝練は終了と決まっている。と言うか呼ばれないとグリアさんが延々続ける事になるのだが……

それで、最初の日にあまりに朝練が延び過ぎてアリスちゃんに怒られたのは良い思い出だ……グリアさんのションボリした姿も見れたし

 

アリスちゃんの手作り朝食を食べ終え、仕事場へ向かう事にする。

 

「それじゃ、アリスちゃん行ってくるね」

「行ってらっしゃい、レイさん……あっそうだ、お弁当作ったんです。お昼に食べて下さい」

 

そう言ってアリスちゃんはお弁当箱を渡してくれる。

 

「ありがとうアリスちゃん」

「いえいえ、レイさんが来てくれてからおじいちゃんも生き生きしているのでこちらこそありがとうです」

 

ニコッと可愛く笑いながらそう言うアリスちゃん

 

「レイ!何してんだ!さっさと行くぞ!」

「っと、そろそろ行かなくちゃね、それじゃあお留守番はよろしくね」

 

そう言いながらアリスちゃんの頭を撫でる。

 

「もー、子供扱いしないでください!……お仕事頑張ってくださいね」

 

子供扱いされてむくれているアリスちゃんに見送られて俺は仕事場に向かうのだった。

詰所に到着し当直の兵士に挨拶した後、更衣室で鎖帷子を着込み制服を着用しレザーアーマーを身に付け装備を整える。

ごく普通に怨恨から兵士が襲われたりするから準備を怠る訳にはいかないのだ。

……この街は比較的治安が良い部類らしいのだが、それでもこの程度らしい

 

装備を整えて詰所の方に戻ると今日は街の巡回をしてくれとの事だったので、さっそく街の巡回へと向かう。

巡回とは言っても実質単に歩いているだけだ。

たまに怪しそうな人物を見つけたら話を聞く程度で、それ以外は悪ガキどものケンカやら悪戯を止める程度だ。

先輩曰く、巡回ってのは巡回してる兵士が居るかもしれないって思わせ、犯罪を自重させるるために行うらしく、別に特別な事をする必要はないらしい。

そんな事を考えながら商店街を歩いていると、

 

「あっ!レイ君、良い所に来たね!ちょっと手伝ってくれないかい?」

「いいですよ、それで何をすれば良いんですか、雑貨屋さんのオネエさん」

 

雑貨屋を営んでいる中年の女性に呼び止められる。

ちなみにオネエさんと呼ばないと不機嫌になって買物がし辛くなったりする。

詳しくオネエさんに話を聞くと、旦那さんがぎっくり腰で動けないから、代わりに重い荷物を運んでくれないか?との事だった。

街の巡回の仕事の大半はこう言った住民の雑用を手伝う事だったりする。

こうやって住民と仲良くなる事が捜査の秘訣だと別の先輩が言ってたので俺もできる限り手伝うようにしている。

サクッと雑貨屋さんの手伝いを終わらせたがそれからが忙しかった。

犬が居なくなったのを探したりとか荷物を道路にぶちまけたの拾ったり、商人に道案内したり、いろいろ起こったのだ。

まぁ、その度にお礼言われてお礼の品だと言っていろいろ貰ってしまったりするから、気持よく仕事できるのだと思う。

こう言った助け合いの精神があるこの街に最初に来る事ができて良かったとつくづく実感する。

この街に来る事ができたからこそ妖魔ではなく人間らしく生きる事ができているのだと思う。

 

そうこうしている内に夕刻を告げる鐘が鳴る。

今日の仕事はこれで終わりだ。

詰所に戻り、今日起こった事を軽く報告する。

報告とは言ってもラインさんが奥さんと喧嘩してたから後で酒場で荒れるかもとかそんな話程度だ。

そんな感じで報告し、グリアさんは既に帰ったらしいので更衣室で着替えてグリアさんの家に向かう。

 

アリスちゃんに戻った事を告げた後、グリアさんに声を掛け木刀を持って裏庭に向かう。

夕方の訓練だ。

とは言え内容は朝連とさして変わらない。

精々朝練では体をほぐす程度しか行わない柔軟をじっくり行う事と、素振りに型稽古みたいなのが混じったり、模擬戦の時に如何すれば良かったのか問われたりする程度だ。

まぁ、全体的に量が増えると思っとけば間違いない。

 

夕方の訓練を終え、夜

既に日は落ち闇の帳が街を覆っている。

一部の兵士などを除き住民の大半は深い眠りの中に居る。

いわゆる草木も眠る丑三つ時、そっと家から抜け出し、妖魔の姿で一件の建物を目指す。

修道院だ。

妖魔の優れた五感を活用し気付かれないようにカギの壊れた二階の窓を通り修道院に忍び込む。

そして、とある部屋の前で近くに人が居ない事を確認してそっと入る。

俺はその部屋の中にあった一本のビンを手に取る。

 

「……これだ」

 

俺は忍び込んだ時と同じように気付かれないように注意しながら修道院を抜け出す。

そしてそのまま街の外へと向かう。

 

街の外、少し離れた森の中で俺は盗んできたビンを開ける。

漂ってくる濃厚で芳醇な血の匂いに俺は我慢できずに一気に中身をあおる。

この街で暮らし始めて一週間も経っていない頃だっただろうか、俺は強烈な飢餓感に悩んでいた。

たまに街を歩いていていると人がおいしそうな御馳走が歩いているようにしか見えなくなってしまう時があるのだ。

このままでは不味い、人を襲ってしまいかねないと思った俺は人間の物であれば何でもいいのではないか?

と考え、もしかしたら病院ならば何かあるのではないかと考えたんだ。

そして、調べてみた結果この街には病院などないし、この時代には輸血用の血など置いていないという事が分かった。

しかし、修道院で簡単な治療ならしてくれるという話を聞いた俺は一応行ってみる事にしたんだ。

このくらいの大きさの街だと修道院は様々な要素を併せ持っているらしく、医者としての役割もその一つらしい。

そこで、俺は強烈に飢えを刺激される風景に出合った。

瀉血だ。

瀉血とは血を抜く事で病状を回復させる治療法の事で、昔はありとあらゆる病気に対して行われていた治療方法だ。

アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの本当の死因がこれではないか?と言われてたりする。

その瀉血を修道士が行っていたのだ。

俺は血の匂いでつい襲いかかりそうになる身体を抑えながら尋ねたんだ。

取った血はどうするんですか?とね、そしたらいっぱいになったら適当に捨ててると言われてね、これは貰うしかないと思ったんだ。

その時はどうにか我慢して夜にその修道院に忍び込んだんだ。

あの時は我慢できなくてその場で開けて飲んだんだが、酒で泥酔したみたいに気分が昂って少し暴れちまったんだ。

危なく見つかる所だった。

それ以降はこうして森の中でひっそり飲んでるって訳だ。

……それに血に酔ってる状態だと酷く乱暴な気分になってしまうから近くに人が居たら襲っちまいそうで怖いんだよ。

 

まぁ、どうやら今の所は血を飲んでおけば最低限飢餓感は抑えられるから、定期的に修道院に血を貰いに言ってるって訳だ。

正規ルートで貰えれば良いんだが、こういう街でそんな事をしてるなんて、噂が立ったら何されるか分かったモンじゃないからな……

 

その後俺は妖魔の姿のまま、今日の訓練の復習を行う。

もし、戦いになって追いつめられれば妖魔として戦う事になるからだ。

妖魔の状態でも十分に動けなくてはグリアさんに訓練して貰っている意味がない。

そう考え実は毎日夜中に抜け出して訓練してたりする。

妖魔になった最大の恩恵はこの無尽蔵に近い体力だと思う。

人間としては比較的ハードな日常を送った後、こうやって訓練して睡眠時間がホンの2時間程度でも全く翌日に疲労が残らないのだから。

そんな事を思いながらも俺は訓練を続けるのだった。

 


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