妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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次話投稿
前回ちょっと展開が急すぎたかも?
いずれ全体的に手直しすると思います。
より良い作品にするため批判募集しています。
2012/10/21 少し改稿、矛盾点の解消とグリアに関する説明を追加


妖魔と試練

はぁ、はぁ、はぁ

俺は森の中を人間の姿で走っていた。

別に何かに追われている訳ではない。

自分の意思で走っていた。

しかし、しかしだ、どうも人間の姿になると身体能力が一般人並になるらしく、

その状態で走る事は非常に辛い、しかし休む訳にはいかない。

ここまでくればそれは意地でしかないが俺は走るのをやめる気はない。

最後までやり遂げるそれが課せられた課題なのだから

 

そもそもこんな状況になったのはグリアさんが最初の課題だ、とか言って、課題をクリアしないと教えてやらねぇ、とか言いだしたからだ。

課題の内容は非常に単純だった。

 

"隣りの村まで行って手紙を渡して返事を受け取り帰ってくる事"

 

これだけだ。

しかし、これには条件が二つ付いていた。

一つ目は走っていく事

二つ目は明日の昼までに戻ってくる事

この二つだ。隣町までは歩いたら往復1日半、返事を待つ時間などを考えると、半分の時間で運べという事だ。

妖魔の身体能力を使えばこの課題は簡単に達成できただろう。

しかし、グリアさんに言われたのだ。

 

「良いか?これはお前の忍耐力を見るために行う。休んだり歩いたりしてもいいが、時間には間に合わせてみろ、お前の根性をオレに見せてみろ」

 

こんな事を言われたら頑張るしかないだろう?

マラソンにバイク使うみたいで、妖魔の力を使うのはズルとしか思えないし、この人間の状態でグリアさんに認めてもらいたいのだ。

 

そんな訳で俺はひたすら森の中、走り辛い小道を走り続ける。

 

ゼェ、ヒュッ、ッゼッ、ヒュー

 

息も絶え絶えに成りながら俺は未だに走っていた。

既に日が沈み始め闇が視界を制限する。

あれから何時間ぐらい走ったのかなど既に分からない。

何故走るのかすら分からなくなっていたが、ただ、ただ走り続けていた。

その速さは既に歩いた方が速いのではないかと思うほど遅くなっていたが、それでも俺は走り続けていた。

 

「…あ、れは?」

 

向こう側に微かに灯りらしきものが見える。

遠いのか近いのかすら分からないが、ようやく見えてきたゴールに俺は尽き掛けていた体力を振り絞り走る。

どうやら、思いの外近かったらしい。

灯りがドンドン近づいてくる。

そして、ついに俺は村へとたどり着いた。

村人だろうか?

近くにいた男が一人俺に駆け寄ってくる。

 

「おい!大丈夫か?」

 

どうやら俺の事を心配してくれているらしい。

仕事も終わってそろそろ寝るかって時間に顔真っ青で死にかけてるように見える男がほぼ歩くような速度とは言え走ってきたのだ。そりゃあ、驚くだろう。

 

「あっ、ああ、大丈夫、はぁはぁ、これ、手紙、ぜぇ、村長に…」

「手紙を村長に渡せば良いんだな!?よく届けてくれた。これは確実に村長に渡してやる!」

 

何か、勘違いしてる気がするけど、もうダメ…

そして、俺の意識は闇の中に飲まれていった。

 

目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。

俺は元の姿でベッドに寝ていた。

 

「…ここは?ああっ、隣の村か…」

 

知らない天井だ、とかやってみたかったが、思い付いたときには既に遅かった。まぁ、またの機会にしよう・・・あるのかは知らないが。

 

コンコン

 

そんな益体のないことを考えているとノックされる。

ここの人かな?

そんな事を思いながら返事をする。

 

「はい、どうぞ」

「あら、お目覚めになっていたんですね、では失礼し「やっぱりダメ!ちょっとだけ待ってください!」……?分かりましたわ」

 

何も考えずに返事をしてしまったが、よく考えなくても今の俺は妖魔だ。こんな姿を見せたらどんな騒動になるか分かったもんじゃない。

俺は急いで人間の姿になる。

 

ズルゥ!パキィ!メメタァ!

 

ふうっ、どうも人間の姿になる瞬間は気分が良くない。

もう少しマシにならないものか……

さて、人間の姿になったし、あまり待たせ過ぎるのもマズイだろう。

 

「すみません、お待たせしました」

 

そう言いながらドアを開ける。

 

「あら、今度はいいのかしら?」

 

そう冗談ぽく言いながら入って来たのは、身形こそごく普通の村人といった感じだが、立ち振舞いの端々に気品が感じられる老いてなお美しく、しなやかな強さを感じさせる中年の女性だった。

 

「え、ええ、お待たせしてすみませんでした。えーと、あなたは?おっとすみません。私はレイという者でカタントの街で兵士をされてるグリアさんの弟子(予定)です」

「あら、これはご丁寧にどうも、私はこのエルゾ村の村長の嫁のシレイラですわ」

 

シレイラさんはそう自己紹介すると見とれてしまうような優雅で美しい礼をする。

どう見てもこんな村に居るような人間には見えない。

見とれていた俺にシレイラさんが

 

「さて、手紙の配達ご苦労様です」

「いえ、訓練の一環でしたから何の問題もありません」

「ふふふ、あなたが死にそうになりながら手紙を届けて下さるものだから昨夜は大騒ぎでしたのよ」

「あっ、それは……すみませんでした」

 

どうやら、俺は緊急事態をカタントの街から伝えにきた伝令で、着いた瞬間倒れるほど急いで伝えなくてはいけない緊急かつ重要な手紙を持ってきたと思われていたらしい。

実際には単に妖魔どっか行ったみたいだから交易再開します、という重要ではあるがさして緊急でもない手紙だったらしいのだが……

手紙の中には俺がグリアさんに弟子入りした事と、この手紙を届ける事が課題である事、届けた時の様子を知らせて欲しいなどと言った事も書かれていたらしく、混乱はすぐに納まったらしい。

どうやら俺のせいでお騒がせしてしまったようだ。

 

「それにしてもグリアさんが弟子を取るなんて思いませんでしたわ」

「……?そうなのですか?優秀そうな方なので弟子入りしたい人は多いと思うのですが?」

「ふふっ、そうですね、弟子入り希望の方はたまに居られますね、何せあの聖都ラボナで兵士長をされていたような人ですからね」

「えっ!ラボナの兵士だったんですか!?グリアさんは」

「あら?お知りでなかったんですの?その筋ではなかなか有名だったとか……」

 

まさかグリアさんがラボナの兵士をやっていた事があるとは思わなかった。

確かに凄い腕をしているな、とは思っていたが……

それにしてもそんな人が何故この街に戻って来たのだろうか?

……歳だろうか?

 

「でも、それだったら、弟子入りしたい人も多いと思うんですけど?」

「あの人が取らなかったんですわ、根性が足りないとか言って、ふふっ、あなたは認められたようですけどね」

「あっ!そうだ、時間が!?」

 

そこから先の話は早かった。

既に村長が手紙の返事を書いてくれていたので、それを受け取り、朝食を御馳走になり、すぐにエルゾの村を出立した。

帰り道は順調に進んでいった。

……ただ一つの問題を除いて

さて、課題は"隣りの村まで行って手紙を渡して返事を受け取り帰ってくる事"

これは問題ない、しっかりと達成した。

そして、この課題には二つ条件が付いていたのだ。

一つ目は走っていく事、これも問題ない。

二つ目は明日の昼までに戻ってくる事、これだ問題なのは

昨日はだいたい2時ぐらいにカタントの街を出発して7時ぐらいに到着したらしい。

所要時間は5時間といった所だ。

で、エルゾ村を出立したのは9時、行きと同じぐらい掛かるとすると到着は2時ぐらいになってしまう。

このままでは時間に間に合わないのだ。

 

シレイラさんにこの事実を聞かされた時はどうしようと思ったが、

シレイラさんがえらく楽しそうに

 

「大丈夫ですわ」

 

なんて言って、

 

「是非、朝食も食べていってくださいませ」

 

とか誘ってくるものだからつい朝食までしっかり食べてしまった。

ああ、絶対間に合わないと頭を抱えているとシレイラさんが楽しそうな笑顔で、

 

「この道をまっすぐ行けばきっと間に合いますわ」

 

とか言うので間に合わないかも知れないと思いながらもシレイラさんが教えてくれた道を走っているのだ。

……結論から言おう、俺は余裕で間に合った。

到着したのは11時半ぐらいだった。

グリアさんに聞いてみると、

 

「そりゃ、遠回りな道を教えたからな」

 

としれっと言われてしまったた。ちょっとイラッと来てつい襲ってしまいそうになったが、どうにか我慢した。

まぁ、とりあえずグリアさんの課題もクリアし、俺はグリアさんの正式な弟子となったのだった。




レイがやたらと疲労しているのは人間の擬態する方法が無理矢理だからです。
普通の妖魔が人間の皮を被ってるのだとしたら、レイの方法は全身の組織を作り変えているので、非常に効率が悪い上に能力もほぼ人間そのものになるという役に立たない代物です。

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