妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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意外と評価が高くて小躍りしてるFlagileです。
感想も貰ってしまい感謝感激です。



妖魔と老戦士

人間の姿になる特訓を始めた俺だったが、特訓は困難を極めた。

だって、変身なんてよく分かんないんだもん。

多分爪を伸ばすとかの延長線上の技術何だとは思うのだが…

 

結局できるようになるまでに5日も掛かってしまった。

とは言え実り多き5日間だったと思う。

まず、何をしたらいいか分からなかったから変化させられる爪から始めたんだ。

具体的に言えば、鋭く尖った硬い爪を丸く軟らかく変化させてみたんだ。

これも難しかったが2時間ぐらいでできるようになったな

で、そこから初めてまず手を人間っぽくできるように頑張ってみたり、牙を歯に変えてみたり、髪の毛を生やしてみたり色々試したんだよ。

そうやってどうにかこうにかパッと見は人間ぽくなったんだけど、どうにも違和感があって細部まで弄ってたら時間が過ぎてたんだよな

それに長い時間人間の姿でいる事もできなかったからそこら辺も改善の必要があったんだよね

まぁ、疲れたら逆に硬化させてみたり、蹄作ってみたり色々遊んでた所為もあるが…

 

そんな事はともかく俺はやり遂げたんだよ!

どこからどう見てもごく普通の男の姿になる事ができたんだ!

…数時間毎に変身を解いて休憩する必要があるけどね

で、早速街に向かったんだ。

どこにあるのか正確な位置が分からなかったから適当に歩いていたら到着したのが真夜中だったんだ。

当然のごとく門も閉まってたから仕方なく持ってきてあげた荷物を門の横に置いといて、また明日出直すことにしたんだ。

別に適当に塀を乗り越える事もできるんだが、そこまでする必要はないだろう。

…もし、見つかったら面倒だし

それにしても、荷物があの商人達の手に戻ると良いんだけどね

直接渡せば確実なんだろうけど、ここで目立ちたくはないからなー

まぁ、運が良ければ届くでしょ、

…所詮自己満足だしこれぐらいで満足しとくべきだろ。

 

で、夜も明けて翌日、寝坊してしまったため既に日も高くなっていたが、俺は意気揚々と街に向かったんだ。

一人門番こそ立っていたけど、どうやら自由に入っていいらしい。

門を通る人達は軽く挨拶してあっさりと門を通過しているからだ。

それに門番はあまりやる気がないらしく、通行人の女性と何か話していて、

その片手間で通り過ぎた人を一目だけ確認する程度しか行っていないのだ。

…それでいいのか?門番…

 

「お疲れ様です」

 

門番に会釈しながら挨拶しそのまま自然に門を通過する。

先程までと同じように門番はこちらに軽く会釈を返して、そのまま女性とのお喋りに戻ってしまう。

…本当に何事もなく通れちまった、いいのか?これで…

自分で言うのも何だが結構怪しい人物だと思うんだが?

 

まぁ、入れたんだし俺が気にするような事ではないのだろう。

それよりも、初めての街である。

前世?とは比べ物にならないが、それでもたくさんの人が行き交っている。

何かの食べ物の屋台らしき物や、荷車に荷物を満載した商人、買い物している女性、様々な人がいる。

街独特の匂いがする。いい匂いとは言えない、華やかな匂いでもない、むしろ糞便の匂いも混ざり合っているため臭いとすら言えるのかもしれない。しかし、人が生きているという活気に満ちた匂いだった。

そんな匂いを俺は胸一杯に吸い込む。

ああ、何て美味しそうな人間の匂いなんだろうか?

老いも若いも男も女もまた違いがあるらしく少しづつ違うが、いずれも食欲を誘ういい匂いをしている。

折角だし一人ぐらい食べてみても…はっ!?違う違う!!そうじゃないだろ?

余りにも食欲をそそる良い匂いだったので一瞬我を失ってしまっていた。

気をつけなくては、あっ、あの子とても美味しそうだな~じゃなくて!

ふう、どうやらしっかり意識を保っておかないといけないらしい。

…こんなんで大丈夫なんだろうか?不安になってきた…

 

「そこのお前ちょっと待て」

 

いつの間にか近づかれていたらしく、後ろから声を掛けられる。

振り向くとそこには鎖帷子に部分的なプロテクターを取り付けた眼光の鋭い老いた戦士がいた。

門番や警備兵とは装備が違うが、同じエンブレムを付けていることから街の兵士であると思われた。

さて、この老戦士は一体自分に何の用なのだろうか?

面倒な事にならなければいいのだが…

 

「ワシはここの兵士達の顧問みたいな事をやっとるグリアという。お主は旅人のようだがお前はどこから来たのだ?」

「えーと私ですか?…はい、私はその、ここから遥か東の地よりやって参りました」

「ほう、東の地から?黒髪と黒眼、黄色の肌をしておるがそのためか?」

「え、ええ、その通りです。私の故郷では皆このような髪と肌をしておりました」

 

し、しまった…何も考えずに日本人風にしてしまった…そりゃ中世ヨーロッパ風の世界だったら目立つわな…

それにしてもこのグリアとかいう老戦士、とんでもない使い手何じゃないか?

目の前に見えているのにいつの間にか距離を詰められてるんだが…

 

「ふむ、それで何故旅をしておるのだ?」

「は、はい、それは」

「…それは?」

 

ヤバい、考えてなかった…急いで考えるんだ。ここはクレイモアの世界でその世界でもおかしくない旅の理由、何か、何か無いか?

 

「…それは、人を探しているのです」

 

ラキと同じ理由にしよう!

 

「ほう、人を探しているのか」

「ええ、その通りです」

「どのような人物なのだ?お前が探している相手は」

「女性です。銀髪の」

「何!?銀髪の女だと?まさか銀眼の斬殺者か!?」

 

おおっと、想像以上に大きな反応だな、あまり考えずにクレアを探している事にしたんだが…そしてクレイモアの世界とほぼ確定、はぁ

さて、ここからどう話を繋げていくか…

 

「いえ、クレイモアではございません」

「…まぁ、そうだろうな、あんな魔女を探す理由などあるまい。ふむ、所でそこの門にとある商人の荷物が置いてあったのだが何か知らぬか?」

 

言葉に力が籠った?ここからが本題って事か?

そして、その荷物ってどう考えても俺が今朝置いた奴だよな…ほっときゃよかったか?

 

「…荷物ですか?いえ、知りませんね」

「…そうか、所でお主は今この街に着いたのか?」

「ええ、その通りです。今朝はまだ森の中でしたね」

 

ん?今一瞬目が?

 

「実はお主そっくりの者が荷物を置いていったという人物が居るんじゃが、それに嘘はイカンの、それも直ぐにバレる嘘は」

「!?きっとその人の見間違いに決まってますよ。それに私は嘘なんか付いていませんが?」

「ほぅ」

 

ヒュンッ!!

 

グリアが動いたかと思うと首筋に剣が突き付けられていた。

妖魔となり強化された俺の視力を持ってすらほとんど見えなかった。

そして、見えているのに反応できなかった。

 

「なっ、何をするんですか!?は、早く剣を退けて下さい!」

「いいか?正直に答えろ、あの荷物を置いたのはお前で間違いないな?」

 

断定、グリアには俺が荷物を置いたという確信があるようだ。

おそらく本当に目撃者が居たのだろう、全く気配を感じなかったからハッタリだと思ったんだが違うらしい。

…仕方ないか

 

「…あの荷物は俺が置いた。…これでいいか?」

「ふん、やっぱりか、最初からそう言えばいいのに下手な嘘付きやがって」

 

そう言いながらグリアは剣を首筋から退けるが、鞘には納めない。

俺は首筋から剣が離れた事で安堵しへたり込んでしまう。

 

「あーあ、見られてないと思ったのにな」

「ん?…ああ目撃者の事か、そんなモン居ないぜ?」

 

えっ?このジイさん今何て言った?

目撃者何か居ない?

て事は今までの全部ハッタリ?

マジかよ…

 

「…ハッタリかよ、ていうか証拠も無いのにこんな事したのかよ?」

「あぁん?証拠?んなモンより俺の勘がお前だっていってるんだからいいんだよ、それよりお前何か隠してるだろ?」

「!?…それも勘かよ」

「そうだ」

「…ああ、あるよ、隠し事ぐらい、あんたにだってあるだろ?隠し事の一つや二つ」

「まぁ、お前が何を隠しているのか知らないがお前じゃなさそうだな」

「…何がだよ?」

「お前は知らないかもしれないが、先日森で妖魔が発見された。そしてお前が妖魔じゃないかと少し思ってたんだがな」

 

そう言いながらグリアは空いてる方の手でボリボリと頭を掻く

…当たってるし、このジイさん鋭すぎだろ…

 

「…そう言うって事は今は違うと思ってるんだな。どうしてそう思ったんだよ?」

「あの荷物さ、ここら辺は交易路から外れているから人の往来が少なくてな、この街に来るには近くの村の連中か商人程度なんだよ

で、村か商人の連中なら自分の物にするか、拾ったって届け出るだろ?この段階で善人なのに何かやましい事がある奴だって分かるんだよ、

話してみたらその通りのヤツで、こんなのが妖魔な訳ないだろ?」

「…はっ、言うね、ジイさん」

「さっきも名乗ったがグリアだ。お前は?」

「グリアさんね。俺は…」

 

そう言えば俺の名前って何だ?

まぁ、前世の名前でいいか…女みたいって言われたからあんまり好きじゃないんだが仕方ない

 

「俺は零って言うんだ」

「レイか、良い名前だ。じゃあな、元気でやれよ」

「…捕まえないのか?」

「ふん、お前何か悪い事したのかよ?…事件が起こした訳でも無いのに捕まえるかよ」

 

それだけ言うと剣を鞘に納めグリアは去ってゆくその姿に俺は

 

「…なぁ、グリアさん、俺を鍛えてくれないか?」

 

気付けばそう声を掛けていた。

 

「鍛えてくれ、だと?」

「そうだ、俺を鍛えてくれないか?」

 

去っていくグリアさんに俺は自分を鍛えてくれるように頼んでいた。

技術が素晴らしいというだけの話ではない。

何と言ったら言いのだろうか、要は俺はグリアさんの事を気に入ってしまったのだ。

この人に教えて貰いたいそう思ったのだ。

 

「何で力を欲する?」

 

なぜ力が必要なのか、か

そりゃあ、生きていきたいのにそれが難しいからだろう。

俺の目標である穏やかで平和な生活を崩されないためには力が要る。

それだけだ。

原作介入なんかしたくもない、あんな化け物だらけの中に飛び込める訳がない。

 

「俺の目標のために必要だからだ」

 

グリアさんは俺の目をじっと見ている。

俺も視線を外さずじっと見つめ返す。

どれほど時間が経っただろうか?

 

「…いいだろう、だが一つ約束しろ、力に溺れるな」

「はい!!」

 

そして俺はグリアさんの弟子になった。


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