妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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またまた短いですが更新です。
しばらくは短いのを頻繁に更新していくつもりです。


奇縁

聖なる都ラボナ

ラボナはこの大陸の中心にあり宗教や文化の面においても重要な役割を果たしている。

そのため治安が悪く危険の多い旅路であるにも関わらず多数の巡礼者がこの街を訪れている。

また、巡礼者の消費を見込んだ商人が多く集まり大陸中の物が流通している。

そんな大陸でも有数の豊かさを誇る街である。

しかし、その街の豊かさと宗教的な救いを求めて貧しい人間もまた大量に流入しており街の一部はスラム化しているのであった。

だがそれでも街の治安は非常に良い。

理由は大きく二つあるだろう。

 

その一つは神官達が定期的かつ積極的にそう言った貧困層を救おうと活動しているからである。

そしてもう一つ、街の治安を守っている存在がある。

聖域守護兵団である。

全ての兵士が勤勉な信者の志願によって成り立っているこの兵団はその練度と規律から名前を馳せている。

資金的にも潤沢であり聖なる剣と槍それに全身鎧が全員に支給されるという。

特に大量の金属を使用し様々な技術が必要とされる全身鎧はこの街以外ではなかなか見ることのできない一品である。

ちょうど今俺が苦労しているのもその存在――聖域守護兵団――の所為である。

 

話は数時間前に戻る。

俺と子供達がラボナに入ろうとした時の事である。

商人や巡礼者に混じってラボナに入りたい人々の列に並んでいたのだ。

そして、ようやく自分達の番が来たのだがこれが露骨に怪しまれた。

俺達の検査を担当した兵士にそれはもう怪しまれた。

まぁ、考えてみれば当然だろう。

行方不明になっていた子供を連れた怪しい男なのだ。

 

この段階でもう怪しいのだがさらに俺の持ち物から盗難品が出てきたのだ。

もちろん俺が直接盗んだ訳じゃない。

倒した盗賊から回収した物だ(盗賊を倒せばその所持品を自分の物にしても良い事になっているのだ)。

だから盗難品があると告げられた段階で返す、と言ってしまった。

どうもこれが不味かったらしい。

俺からすれば何時でも調達できるし、さして使い道のない物だ。

だから、持ち主が居ればいくらでも返してしまっても全く問題ない。

だが兵士からすればかなりの高額な金品をあっさりと手放すのには何か訳があるのではないか、という事らしい。

ちょうど妖魔による騒ぎが起きていた事もあり兵士達は神経質になっているようだった。

 

そんなこんなで俺は門の脇にある詰所で数時間取り調べを受けているという訳だ。

ちなみに子供達は両親がすぐに迎えに来たため既に居ない。

その時に兄妹の両親には何度もお礼を言われてお礼がしたいから後で家まで来てくれと言われた。

まさかこんなに時間が掛るとは思ってなかったが……

 

「いつまで掛ることやら……」

 

聞こえないように小さく呟く。

既に答えられることは全て答えた。

尋問役の兵士も聞くことがなくなり同じ質問を繰り返すばかりになっている。

得る物が何もない無駄な時間がただジリジリと過ぎていた。

 

高かった日が沈み始めた頃、ようやく事態が動きを見せる。

何やら誰かがやって来るらしい。

誰が来るのか知らないがこの状況を変えてくれるなら大歓迎だ。

壮年に入りかけた逞しい男が入ってくる。

部屋に居た兵士達が畏まっている。

どうやら上司のようだ。

一般の兵士と違い比較的軽装な部分鎧に短めな剣は帯びている。

 

「?」

 

この男、何処かで見たことが……?

俺が知っている人物なんて限られている筈なのだが。

壮年の男が俺を驚いたようにジッと見ている。

やはり何処かで会ったことが?

 

「……レイ、本当にレイなのか?」

 

その時になってようやく俺は彼が誰なのか理解った。

それはあまりにも遠く、あまりにも予想外の再会だった。

 

「セネル……?」

 

茫然と呟く。

それはカタントの街で共に兵士をやっていた同僚の成長した姿だった。

過ぎ去った年月が彼の顔に大きな変化を齎していた。

よほど苦労したのだろうか歳よりもずっと老けて見える。

 

彼がセネルだと理解した時、複雑な想いが胸を過る。

不安、喜び、罪悪感、懐かしさ、恐怖

何と言ったら良いのか分からない想いが溢れてくる。

それはセネルも同じなのだろうか?

セネルもまた何も言わずただ無言の時間が過ぎる。

 

「久しぶり、だな」

「ああ、本当に久しぶりだ」

 

沈黙を破ったのはセネルだった。

その目には責任感が見える。

セネルは兵士を続け、今はこの街を守っているのだろう。

何故このラボナに居るのかは分からない。

だが、この街を守ろうという意志は感じられる。

 

「……何しに、この街に来たんだ……?」

「そっちのヤツには何度も言ったが子供達を連れて来ただけだ……剣が欲しいとは思っていたからちょうど良くてな」

「そうか……信じるぞ(・・・・)

 

そう言った時のセネルの表情は忘れることができない物だった。

その反応から俺は確信する。

やはりセネルも俺が妖魔である事を知っているのだ、と

その上で俺を信じてくれたのだ。

 

「……故郷(カタント)に誓おう」

 

その信頼に答えるべく俺はこの世界での心の故郷に誓う。

 

「後で会おう」

 

それだけ告げセネルは去る。

セネルが言ってくれたのだろう。

それからすぐに俺は街に入る事を許されたのだった。

 


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