妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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かなり短いですが更新です!
日刊ランキング3位に浮かれての投稿です。


漂着

太陽が空の高い所で燦々と輝く。

日に照らされた大地は陽射しに負けない程青々と成長した草木に覆われていた。

気温は高いが湿度は低い、そんな過ごしやすい天気であった。

心地良い風が吹き、ザワザワと草木がざわめく。

何と良い日だろうか。

こんな日は草原に寝っ転がって昼寝でもしたい所だ。

そんな穏やかな空に子供特有の甲高い声が響き渡る。

 

「ねえねえ、正義の味方の兄ちゃん、どこ向かってんの?」

「何で正義の味方やってんの?」

「テッド兄……正義の味方さんにだってプライバシーがあるなのですよ。そんなに色々聞くもんじゃありません」

 

妹のリズの方が兄のテッドを窘めるような発現をしているが、その表情には私も聞きたいです!!と大きく書いてあった。

何やら子供二人になつかれてしまった。

これ以上関わるべきではないと思い去ろうとしたのだが、着いてくる。

振り切っても良いのだが、こうもなつかれてしまうとやり辛い。

だから向こうから離れるように無視していたのだが一向に効果がない。

唯でさえ子供を無視することに罪悪感を感じているのに効果もないではどうしようもない。

仕方ないので話を聞いてやることにする。

 

「はぁ、俺に着いてきても良いことないぞ」

「「いいぜ(なのです)!!」」

 

満面の笑みで断言される。

ピッタリハモらせて来る当たりは性格が全く違っても兄妹なのだなと感じさせる。

 

「そうか……お前らどこの出身だ?」

 

そう聞くと兄妹は一度顔を見合わせ、リズが誇らしげな表情で言う。

 

「ラボナなの!偉い神官さんとか学者さんがいっぱいなの!」

「街並みだってスゲェんだぜ!大聖堂とか時計台もあるんだぜ!」

「へぇ、ラボナの出身なのか」

 

これはちょうど良いと言うべきなのだろうか?

当面の目的地はラボナだ。

そして、子供達に俺から離れる意志はないようだ。

ならば、次善の策は子供達をラボナまで送って行くことだろう。

どうせ急いでないし、気を付けていればむしろ安全な筈だ。

何せ俺にとって危険だと言えるのはこの大陸に僅か47人のクレイモアとまず襲ってこない覚醒者程度なのだ。

そう言ったモノに遭遇するよりも未だに一向に減らない盗賊に遭遇する方がよほど可能性が高い。

第一俺は大まかではあるが妖気を探知する事ができるのだ。

そうそう近づけさせる事はない。

そう判断し兄妹に告げる。

 

「ちょうど今向かってるのがラボナなんだ。ラボナまで一緒に行くか?」

「「うん!!」」

 

こうして俺達の旅が始まったのだった。

旅は順調過ぎる程順調に進んだ。

天候に恵まれ、クレイモアにも遭遇せず、病気や怪我もなかった。

そのためほとんど何の困難もなくラボナへと到着する。

せいぜい途中で小規模な盗賊に襲撃された程度だ。

当然あっさりと返り討ちにしてやった。

盗賊の襲撃よりも撃退したことでさらに高まった子供達の尊敬の眼差しの方がよほど対処に困ったのだが……

 

唯一懸念があるとすればそれはむしろ目的地であるラボナだった。

始めはラボナに大分近づいたとある村で聞いた噂だった。

曰く、聖なる都に妖魔が出た、と

そしてその噂はラボナに近づくに連れ信ぴょう性を増していくのだった。

 

僅かな不安を抱えながらもついにラボナへと到着する。

丘の上からラボナが一望できる。

初めて見たラボナに圧倒される。

今までこの大陸を彷徨って様々な街を見てきたが規模が違う。

今まで見た最大の街の倍以上大きい。

そしてその巨大な街を囲む重厚でありながら優美さを感じさせる流麗な外壁、街の中心にそびえ立つ大聖堂。

さらに歴史と市民の生活を感じさせる街並み、その全てが調和し奥深い美しさを感じさせる。

ただ大きいだけの街や完全に計算され尽くした計画都市からでは感じられない威厳のような何かを感じさせる街だった。

 

「へへっ、兄ちゃんどうだ!?スゲェだろ俺の街!」

「別にテッド兄だけの街じゃないのですよ……私達の街にようこそなのです」

「ああ、よろしくな」

 

ラボナへと入るために門へと向かう。

門は大勢の人で賑わっていた。

そこら辺で露天を開いている商人や何やら交渉している姿が見受けられる。

どうも街へ入るために検査があるようだが、時間が掛かっているようだ。

それを待ちきれずにここで商売を始めてしまった者がいるらしい。

門の外とは思えないほど賑わっている。

騒ぎを聞きつけた街の住人も参加しているらしく本格的に青空市と言った感じになっていた。

 

騒がしく賑やかな雰囲気、しかしどことなく不安そうな気配が感じられる。

不安を忘れるために敢えて明るくしているようなそんな気配がするのだ。

 

「妖魔が、居るな」

 

小さく呟く。

商人達の早く商品を売ってここから立ち去りたいと言う気持ちや街の住人の不安感、街への出入りに関する厳重な検査

その全てがこの街に妖魔が居ることを示していた。

そして何よりこの距離まで近づけば分かる。

クレイモアのモノとは違う荒く凶暴で洗練されていない野性的な妖気が街の中から感じられる。

正確な位置までは分からないが確実に居る(・・)

その存在は俺に波乱を予期させるのであった。

 




アンケートの結果について
私はアンケートと投票は別の物だと思っていました。
その点で誤解させてしまい申し訳ありませんでした。

今回のアンケートはあくまで皆様の意見が聞きたかったため行なって物です。
結果によっては展開を変える事も考えていましたが、変える程ではなかったというのが私の判断です。
これは私の独断と偏見による決定です。そうじゃないだろと思う方も居られると思いますが、広い心で受け入れて頂けると幸いです。
また、既に消しましたがネタバレをしてしまった事をお詫び致します。

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