妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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アンケートに答えて頂いてありがとうございました。
こんなにたくさんの人に答えて貰い嬉しかったです。
アンケートの結果、と言うか今後の方針などは後書きで書きたいと思います。


離合

生温い潮風が頬を撫ぜる夜。

何に使われていたのかも定かではない不気味な廃墟へと近づいていく。

廃墟の中にはかなりの数の人が居るようだ。

間違いはないだろう。

今、あの廃墟の中にいる人間全てがターゲットだ。

いつも通り関わりがあると思われる人間は皆殺しにする。

夜闇に紛れ妖魔の身体能力に任せて見張りを屠る。

そのまま他の見張りも片付けていく

他愛もない。

中で動きがある。

気付いたようだ。

武装した兵隊がワラワラと出てくる。

が、妖魔の姿を見て当惑する。

その隙に正面から突っ込み手当たり次第に倒していく。

時に剣で時に爪で時に噛み付く

さして時間も掛けずに兵隊共を殲滅した。

廃墟の中へと入る。

中にはいかにも成金と言った男たちが何か喚いていた。

残り少ない兵隊共が命令に従い襲い掛かってきた。

一蹴し、皆殺しにした。

 

今回のターゲットは盗賊ではない。

盗賊達と取引――と言うより支援だろうか――していた黒幕とでも言うべき組織のアジトだった。

主な構成員は人身売買を行なっている商人や盗賊ギルドなど裏社会の人間だった。

裏社会の人間の内成功していた者達がさらなる成功を求めて作り上げた組織だった。

盗賊が攫ってきた人間を買い取って北の鉱山や東の組織に売り渡していた。

それだけなら人道に反する組織だとは思うが積極的に介入しようなどと思わなかっただろう。

 

しかし、わざわざ犯罪者予備軍とでも言うべきスラムの住人を集めて武器を渡して盗賊団に仕立て上げる事で組織の規模を拡大させていたのだ。

当然、その過程で本来は襲われることのなかった町や村が襲撃される事になる。

結果さらにスラムの住人が増え、この組織が拡大するという流れが出来上がっていた。

 

その流れを断ち切りたかった。

この数年で幾つもの盗賊団を潰し、悪徳商人を殺してきた。

人身売買を行なっていた商人や組織を潰したこともある。

だが――いや、やはりと言うべきか――世界は変わらなかった。

 

妖魔が人を食い、盗賊は街を襲う。

不正が横行し、疑心暗鬼が街を覆う。

無理にクレイモアを依頼し、丸ごと盗賊に成り下がった村もあった。

邪魔な孤児はいつの間にか連れ去られ売り飛ばされていた。

 

今回のような盗賊を積極的に生み出している組織を潰したこともある。

それでも変わらなかった。

いくら叩いても湧いてくる悪党共、救えない命

俺は精神的に疲弊していた。

それでも続けていたのはただの惰性だった。

……既に止め時を失った。

 

そんな生活の中で見え隠れする黒幕のさらに後ろにいる本当の黒幕の影

証拠はない。

しかし、俺には確信があった。

敢えて治安を悪化させる事で人身売買をやりやすくし孤児を生産している影の統治者がいる、と

そしてそんな事ができる組織など俺には一つしか思いつかなかった。

この大陸を変えたければ根本から変えなくてはどうしようもないのだと思う。

だがそんな事をする気力など既になかった。

 

手慣れた動作で誰も動くモノの居なくなった建物に火を放つ。

大陸の南端、海に面した断崖絶壁の上に建てられた研究所らしき建物の廃墟、それがアジトだった。

何に使われていたのかは知らないが人目を気にする輩にとって最高に近い立地だった。

 

疲れきった足取りで燃え始めた廃墟を後にする。

火が強くなってきたからだろうか?

生温い風が纏わり付くように吹いていた。

 

肉体的にはさして疲労していない。

いつからだろうか、武装した人間程度は問題ではなくなっていた。

妖力を開放し妖魔の姿で戦ったのだって数を相手にするのが面倒だったからだ。

妖魔化した方が間違いなく戦いやすかった。

妖魔化した理由などその程度の事だった。

問題は腹が減ることだが、この数年本当に最低限の食事しかして来なかったせいだろうか

空腹を我慢することなど苦でもない。

 

だから、ここまで気付かなかったのは精神的な疲労と油断だったのだろう。

クレイモアが急速に近づいている事にようやく気付く。

既に逃げ切れない程近距離まで近づかれていた。

――油断した!!

弛緩していた精神を引き締める。

現状で逃げ切れないならば戦うしかない。

幸いと言って良いのか、未だに妖魔の状態だった。

初めてのクレイモア戦だ。

一瞬の油断もできない。

 

軽やかな着地音でクレイモアが降り立つ。

若いクレイモアだった。

むしろ幼いと言った方が正しい年齢のように思われる。

しかし、纏う雰囲気からは幼いとは感じさせないモノがあった。

憂いを帯びた表情でありながら断固たる意志を感じさせる目をしているからだろうか?

あるいは女の子と女性の中間に漂うアンバランスさだろうか?

可愛いではなく美しいと言わせる何かを持っていた。

 

「クレイモア――組織の戦士、か……」

 

何も答えてくれない。

話をする気はないらしい。

幼き戦士は無言で大剣を構える。

それでも気にせずに語りかける。

 

「……何で俺を狙う?」

 

答えないかもとは思ったが答えてくれるらしい。

 

「……おかしな事を聞く、我々(組織の戦士)お前ら(妖魔)に出会ってなぜ、と問うか?」

「俺を斬っても何の金にもならん筈なのだがな、目障りだとでも思われたか?組織にとって治安が悪い方が良いと言うことか……」

「……何を言っている?お前はいったい何を知っている!?」

 

ふむ、どうやらこの幼いクレイモアは何も教えられていないらしい。

何か思いついたのかクレイモアに緊張が奔る。

 

「まさか、覚醒者なのか!?」

 

どうやら可愛い勘違いをしているらしい。

確かに覚醒者であれば組織のあれこれを知っていてもおかしくはないだろう。

で、妖魔っぽく化けてる覚醒者じゃないかと疑っている訳だ。

 

「単なる妖魔さ、ちょっとばかし知りすぎている、な……話が過ぎた、な!!」

「ま、待て!?逃がすと思ったか!」

 

話ながらジリジリと距離を離していたが、十分と判断し崖へと全力で走り出す。

あのクレイモアも俺が距離を取っている事に気付いていたようだ。

しかし、何もする様子がないので逃げ切るのに十分だと思える距離まで離れる事ができた。

後ろが海で崖になっており逃げる場所などないから放置しているのだと俺は判断していた。

だが、違ったらしい。

これは判断ミスだ。

あのクレイモア、想定以上に疾い!!

 

崖にたどり着く直前で追い付かれる。

そのまま大剣が降り下ろされる。

狙いは

……どうやら殺す気はないようだ。

先程の話の続きでも聞きたいのか、あるいは生け捕りするように命令されたのか

まぁ、どちらでも構わない。

殺す気がない事が分かれば十分だ。

その場に踏みとどまり、大剣に軌道に剣を差し込み、受け流す用意をする。

保険として斬られるであろう部分を硬化させておく。

同時にクレイモアには見えない角度から爪を伸ばす。

 

大剣が迫る。

金属の奏でる透明で高い音が響く。

俺の剣は大剣に一瞬抗っただけであっさりと砕かれていた。

 

(北の名工の作だぞ!?)

 

予想していなかった訳ではない。しかし一瞬しか耐えられないとも思っていなかった。

北の名工の作とは言え所詮量産品、この程度と言えばこの程度なのかも知れない。

結構高かったのに……

 

ほとんど勢いが衰えていない大剣が左足に迫る。

鈍い激突音

思わぬ固い手応え

クレイモアの気配が一瞬乱れるのが分かる。

しかし、ほとんど動じることなくさらに力を加えてくる。

無理矢理力で大剣を振り切る。

左足が途中から断ち切られバランスと崩す。

血が互いの顔に飛び散る。

苦痛で顔をしかめる。

だが、想定内だ。

最悪に近い想定とは言えこの事態は予想していた。

ならばこの瞬間、勝利は俺の物だった。

クレイモアが驚愕したような表情で自らの身体を見下ろす。

腕が断ち斬られるのとほぼ同時にクレイモアの死角から伸ばした爪で貫いたのだ。

致命傷ではない。

しかし、一瞬で回復するような傷でもない。

俺は残った右足で思いっきり後方へと飛ぶ。

その直前に太腿の切断面から触手状に一部分だけ伸ばし切り落とされた左足突き刺し回収する。

ようやく驚愕で固まっていたクレイモアが動き始める。

だが、あまりにも遅い。

俺は既に崖に身を投げ終わっていた。

 

「お別れだ」

「クッ、待て!!」

 

そのまま重力に引かれて落下していく。

クレイモアが届かないと分かっていながらも手を伸ばしているのが見える。

ここで大剣を投げられると割とマズかったのだが、どうやら賭けに勝ったらしい。

 

落下しながら妖気を操作し身体を作り変える。

肩口からジワリと羽が生えてくる。

そのまま羽は大きくなり1m程の大きさになった段階で成長を止める。

生やした羽で風に乗り滑空する。

 

適性の問題なのか羽を生やすことはできるのだが飛び立つ事ができないのだ。

考えてみて欲しい。

もし新しくもう2本手が生えてきたとして上手く扱う事ができるだろうか?

その結論がこれだ。

どうも上手く動かすことができないのだ。

集中して動かそうとすれば何とか動く。

しかし、それは空に飛び立つのが不可能なぐらいゆっくりとなのだ。

だからこの羽の用途は今の所簡単な滑空専用だ。

とは言え滑空している最中にだって少しでも気を抜いたら墜落してしまう程度には難しい。

練習を重ねることで少しずつ上手くなっている気がするからいつかは飛べると思うのだが……

いつになる事やら……

 

そんな事を考えながらも順調に滑空を続けクレイモアから距離を取っていく。

さすがにあの怪我では断崖絶壁を降りて飛んでる俺を追いかけては来ないらしい。

滑空速度は下手に走るよりも速いからそう簡単には追いつけやしない、ましてや相手は飛べないから泳ぐしかないのだ。

俺は悠々とクレイモアの視界から飛び去るのだった。

 




アンケートの結果と今後の方針です。
色々参考になるご意見ありがとうございました。
個別にも書いていきますが、取り敢えず全体としての方針を書いておきます。

1.これはすみません。私の書き方が悪かったです。組織に関わっていく事は既に決めていました。その上で物語の歴史を変えてしまった方が良いか?ほとんど変わらず物語に繋がる方が良いか?という事を聞きたかったのです。
全体としては介入しなくても良いという意見が多かったので歴史は変えない方向でいきたいと思います。要はクレイモアで描かれていない部分を描いていこうと思います。

2.ネタバレに繋がるのでここでは書きません。興味がある方でいろいろと私が批判されていますが、私の未熟のためです。それでもよろしければ感想へどうぞ

3.知らない人が多い&反応が悪いのでなしで行きます。似たような技は覚えるかもしれません。

4.独白や感情描写などは自分でも重いと思っていましたので軽くしていこうかなと思います。と言うかこれは構成のミスなんです。都合上レイが話す相手が居ないんです(泣)

これからしばらく更新速度を上げたいと思っています。(と言うか今までが遅すぎなんですが……)

おまけ 正宗七機巧
飛蛾鉄炮・弧炎錫 ひがてつほう・こえんしゃく
「てつはう」という武器。簡単に言うならば爆弾のようなもの。
但し、原料として正宗の甲鉄のみならず仕手の肉体をも消費する。
正宗さんの時代にはまともな銃火器が無かったため、このような装備になったとか。
また、近距離で使用した場合確実に自身にもダメージが及ぶ諸刃の剣。

隠剣・六本骨爪 おんけん・ろっぽんこっそう
肋骨ソード。甲鉄化された肋骨を伸ばし、相手を拘束する。
どう考えてもヒロインが使う技ではない。

朧・焦屍剣 おぼろ・しょうしけん
所謂ヒートブレードである。炎の剣という主人公らしい技。
……だが、熱過ぎて使用者の手まで溶ける。尚、植物相手の相性は滅法良いとか。

無弦・十征矢 むげん・じゅうせいし
指鉄砲。指を射出して攻撃する。一本ずつ別の敵を狙うこともできる模様。

割腹・投擲腸管 かっぷく・とうてきちょうかん
文字通り、腹を割り、甲鉄によってコーティングされた腸を投擲する。スローイングオーガンとも。
どう考えてもヒロインが使う技ではない。
余談だが、本作の外伝や某デモベでも腸が武器になったりする辺りが、ニトロプラスの恐ろしいところである。

???
名称不明。通称肘バルカン。最後の最後でムービー中に出てくる技。

神形正宗・最終正義顕現
詳細不明。ネタバレになるので邪神とだけ。

以上ニコニコ大百科から引用(一部改変)でした。

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