妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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何か微妙……
でも、先に進みたいので投稿します。
ここから鬱展開です。
嫌いな方は注意して下さい。


妖魔と盗賊

この街に留まることになってから早、二月

あの妖魔によって引き起こされたあれこれも治まり街は日常を取り戻していた。

そんな中俺もいつも通りグリアさんと日課の朝練を行っていた。

朝練の締めに行う模擬戦

グリアさんと俺は時に激しく、時に静かに木刀を交えていた。

ここ最近、訓練の成果が出てきたのか以前よりも大分打ち合える時間が長くなった。

それでも俺はまだ一度もグリアさんから一本取った事がなかった。

妖魔の力を利用した力攻めも練りに練った奇策も、もちろん正攻法も全てを軽くいなされてしまうのだ。

今日こそはとは思うものの同時に今日もダメかも知れないという弱気が顔を覗かせる。

そして、今日もいつも通りに弾かれた木刀が空を舞う。

一見いつも通りの景色に思える。

だが、違う。

いつもであれば俺の手の中には何もない。

しかし俺は未だに木刀を握っていた。

 

「ムッ……」

「……えっ?」

 

あまりにも予想外の出来事に思考がうまく働いてくれない。

 

「……勝った?」

 

呆然と呟く

不意に視界が回り背中に衝撃を感じる。

何が起こったのか分からない。

いつの間に奪われたのか木刀をグリアさんに突き付けられていた。

 

「・・・・・・油断をするな、バカモノ」

「・・・・・・はい、ありがとうございました・・・・・・」

 

分かってしまえば簡単な事だ。

これはあくまで模擬戦だ。

剣道の試合ではない。

だから剣を失おうと当然試合は続行する。

当然だろう。

これは実戦に準じた訓練なのだから

そして一本取って呆然ととしている間に投げられた、と

これはいつもやっていることなのに油断した俺が悪い。

 

だが、それでもだ。

俺ついにグリアさんから一本取ったのだ。

締まらない結果だとは言えその事実に代わりはない。

だからこそ油断した自分が恨めしい。

そんな事を思いながら立ち上がる。

そこには既にグリアさんの姿はなかった。

いつも通りのさっさと家に戻ってしまったのだろう。

 

「・・・今日ぐらい待っててくれてもいいのに」

 

ついそんな愚痴が零れる。

気持ちを切り替え俺も家へと向かい歩き始めるのだった。

 

 

 

家に戻ると既に朝食の準備は終わっていた。

思った以上にボーっとしていた時間が長かったのだろう。

アリスに手伝えなかったことを一言詫びる。

すると、想像していなかった返答が返ってくる。

 

「ねぇ、今日何か良い事あったの?」

 

アリスは満面の笑みでそう俺に尋ねたのだ。

 

「えっ?何でそう思うの?」

 

アリスが言ってるのは朝練でグリアさんから一本取ったことだろうか?

だが、今の俺を見てそれを察する事は難しいと思う。

何せ、油断から結局負けてしまった事で沈んだ気分だったからだ。

自分の態度から良い事があったと判断する事は困難だと思う。

 

「んー、おじいちゃんがとっても上機嫌だった物、あっ、もしかしてついに勝ったの?……いや、違うわね。それだったらレイお兄ちゃんも喜んでるわ。と言うことは一本取ったのに油断して負けたのね」

 

アリスがどうだと言わんばかりにまっ平らな胸を張りながら名推理を披露する。

恐ろしいことにほぼ完璧に合っていた。

……これが女の勘というモノだろうか、本当に恐ろしい。

 

「……ハハハ」

 

適当に苦笑いで誤魔化す。

……誤魔化せてないが

アリスは分かっているといった風な優しい顔で頷き

 

「今晩はごちそうだね♪」

 

そう言うのだった。

 

 

 

 

太陽も傾き始めそろそろ日も暮れ始めようとしている頃

邪魔な樹の枝を払い、集ってくる虫を払いながら同僚のセネルと森を歩いていた。

話は今日の午前中に戻る。

朝食を食べ終わりいつも通りに俺は詰所へ向かったのだ。

始めは良かった。

今日は詰所で待機しておく日だったから事件もなく暇を持て余していたんだ。

 

そんな俺の元に不穏な話が舞い込んできた。

街に行商にやってきた商人が

 

「盗賊を街道で見た」

 

と飛び込んできたのだ。

もし、この話が本当ならば早急に対処しないとマズイ

何せただでさえこの街はついこの間まで妖魔騒ぎがあったことで人が寄り付かないのだ。

その上盗賊まで出るとなれば完全に人が来なくなる。

そうなると街の備蓄がさすがに厳しいことになる。

それ以前にこの街が襲われてしまえばどんな被害が出るか分からないのだ。

まぁ、この街を攻めてくる事は考えづらい。

この街は近辺では最大規模の街でしっかりとした城壁を備え兵士も十分数居るのだ。

盗賊にとってはこんな街にわざわざ攻め込む程旨味はないだろう。

そう判断した隊長はとりあえず俺とセネルを偵察に行かせることを決めたのだ。

 

「で、俺はこうして道なき道を行くことになった、と」

 

どうした?と振り返ったセネルに何でもないと返し再び黙々と歩く

セネルは猟師の息子でこうした偵察もお手のものらしい。

そんなセネルが誰かが通った痕跡があると街道から外れて森の中へ向かっているのだきっと何かあるのだろう。

……正直、俺の目には一体何がどう違うのか全く分からないが

 

そうこうしながら道なき道を数十分程歩いただろうか?

セネルが唐突に止まった。

 

「ん?どうした?」

 

俺がそう声を掛けると

 

「シッ!、静かに誰か居る」

 

そう静かにだが鋭い声で注意される。

やはり俺には分からないがセネルに従い黙って周囲を探る。

セネルが音を立てないようにと注意した後に静かに移動を始める。

俺もセネルを見習いできるだけ音を出さないように試みる。

が、どうしても所々で枝を折ってしまったり葉が擦れる音を立ててしまう。

その度にセネルが緊張するが、どうにか気付かれることなく移動できたらしい。

セネルが見ろと言わんばかりに指差す。

そこは森が若干開けており、木が生えていない空間が広がっていた。

その空間にはテントが立ち並んでいた。

そして道が接続している場所にはガラの悪い、どこからどう見ても盗賊と行った風な貧相な男が一人立っていた。

 

盗賊だ

 

そう思う。

どうやら行商人の言う通り盗賊がやってきていたらしい。

それもテントの数から想像するに想像以上の数の盗賊が居るらしい。

他にはどこから攫ってきたのか数人の子供が檻の中に囚われているのが見える。

檻の側には盗賊らしき人物が二人で何かゲームらしき事をやっていた。

助けなくてはそう思う。

しかし同時にこれは自分たちだけではどうしようもない、そう思いセネルに声を掛ける。

 

「……引くぞ、これは俺達にはどうしようもない」

「いや、待て。人の気配を感じない。チャンスだ」

 

そう言われるとテントの数は多いが人の気配は感じない。

おそらく周辺の村でも襲っているのだろう……最悪の気分だ。

それは置いておくとして、今俺達には二つの選択肢がある。

一つはこのまま撤退し確実に情報を持ち帰る事、安全だし確実だ。

もう一つはここにいる盗賊を片付け子供達を救出する事だ、危険だが盗賊の人数を減らせるし何か情報が手に入るかもしれない。

それに何より子供達を救うことができる。

任務から考えればこのまま撤退するべきだろう。

だが、ここで放っておけば子供達に何が起こるか分からない。

 

そして俺達は子供達を救出する事を選択したのだった。

 

とは言えただ突っ込むのも無謀だろう。

確認できている範囲でも一人とは言え相手の方が人数が多いのだ。

まぁ、鍛え方が違うから3人のみなら問題はないような気がしないでもないが……

とりあえずちゃんと人数が確認できていない現状では何も考えずに突っ込むという選択肢はない。

ならば分断して叩くべきだろうが、あまり時間を掛けることもできない。

いつ盗賊達が戻ってくるのか分からないからだ。

となるとシンプルに行くしか無いだろう。

現状の位置関係は時計で考えると六時方向に門番一人、中心に檻と見張りが二人、そして俺達は三時方向だ。

分断するのなら中心にいる二人を一二時方向に誘導すればいいだろう。

誘導方法は単純だ。

単に石を投げ音を立てただけだ。

それでも不審な物音を聞いた見張りの二人は確認のために警戒しながらゆっくりと移動することになった。

その隙に背後からセネルが門番を弓で射る。

同時に俺は門番に向かって走り、門番に止めを刺す。

幸いな事に門番は最初の矢を受けた段階で事切れていたらしく呻き声一つ上げさせる事なく倒すことに成功する。

その確認もそこそこに俺達は見張りの二人の方へと静かに走る。

 

「なっ!?」

 

さすがにある程度近づいた段階で気付かれてしまったがそのまま剣で斬る。

予想外の出来事に見張りの二人は何もできないまま斬られる。

 

「ぎゃあああああああ!!!!!!」

 

絶叫が森に響き渡る。

俺達は周囲を警戒しながら持ってきていたロープで盗賊を縛り上げる。

どうやらこの場にはこれ以上の盗賊はいないらしく、誰もテントからは出てくることはなかった。

周囲のテントを軽く検め、隠れている奴がいないか確認しながら役に立ちそうな情報を探す。

一通り確認し終わった後、近くのテントで見つけた鍵で檻から子供達を開放する。

 

「大丈夫か?」

 

そう尋ねると、この状況の中で怯えるだけだった子供達はビクビクと怯える。

重ねて大丈夫だよ、と言いながら優しく抱きしめ頭を撫でてやる。

ようやく緊張の糸が解けたのか子供達は大声で泣き始めるのだった。

しばらく泣いている子供達をあやしていると生きていた盗賊を尋問していたセネルが慌てた様子でやってくる。

 

「マズイ事が分かったぞ、どうやらここの奴らカタントの街を襲ってやがる!!」

「何だって!?」

 

事態は更に混迷を深めていくのだった。

 

 

 

 


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