妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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|壁|д・) <・・・
バレナイヨウニ (/ ・o・)/⌒ポイ



審判者の興味 Ⅱ

元仲間の粛清という後味の悪い任務をこなした後、私はカタントの街に向かっていた。

と、言うのも任務の後に黒服と会ったのだが

 

「今、お前に任せるような任務はない。この地方の妖魔どもの調査でもしておけ」

 

とか言われてしまったのだ。

そして

 

「次の連絡は1週間後だ」

 

と伝え、さっさとどこかに行ってしまったのだ。

しかし1週間も時間を与えられたが、この地方の調査なんて2,3日もあれば完了してしまう。

要は時間を持て余しているのだ。

ナンバーが上がるに連れてこう言った中途半端に持て余す時間が増えてしまう。

ナンバー相応の敵まで移動している事と負傷したり死んでしまった時のためにスケジュールに余裕を持たせているからだろう。

私は後方から支援に徹する事が多いため負傷する事は少ない、だからこうして時間を持て余してしまう事が多くなってしまう。

 

「趣味も持たない、つまらない存在よね……」

 

そう呟き、では余った時間をどうするかと考える。

思いついたのは以前から気になっていたカタントの街の妖魔を一目見に行くことだった。

あの妖魔の事を考えると後味の悪い任務のせいで沈んでいた気分も良くなる気がする。

きっとあの妖魔の妖気から感じられる人間らしい生活が人間だった頃を思い起こさせ、遠からず死ぬ運命を忘れさせてくれるからだろう。

 

「それにしても別の妖魔か……」

 

カタントの街に向かうと決めた時から街の方向を探査しているのだが、あの妖魔とは別の妖気を街に感じるのだ。

そして新たにやってきたらしい妖魔は人を襲う普通の妖魔らしいのだ……まぁ、あんな変な妖魔が何匹も居る訳がないのだが

それにしても変な妖魔は普通の妖魔に対して怒っているらしい。

……変な妖魔とか普通の妖魔とか分かりづらいな、人を襲わないおかしな妖魔をあの妖魔、普通の妖魔は雑魚でいいだろう。

さて、あの妖魔は雑魚に対して怒っている。

何故か?

ここからでは分かる事は少ないが、雑魚が人を襲っているからだろう。

今の所、あの妖魔と雑魚が接触した気配はないからだ。

直接会った事が無いのに怒りを覚えると言う事は雑魚の行動が原因だと考えられる……昔からの知り合いとかだったら別だがな

そしてどうもあの妖魔は妖気を探るのが苦手らしい。

怒って探しているにも関わらず未だに発見できていないのだ。

それも結構近くに雑魚がいる場合でもその存在に気付く事ができていないように感じられるのだ。

……まぁ、これは仕方ないと言えるだろう。何せ妖気を探るにはそれなりに経験を重ね、コツを知らなくては困難だ。

実際、訓練の過程でこれができないヤツは結構いる。そう言うヤツでも妖気を探る訓練や自分達の妖気を操る訓練をしていく内に段々と上手くなるもんだ。

だから、面識はなく妖魔の行為に対して怒っていると考えるのが妥当だろう。

 

……さて、雑魚の行為に対して怒っていると考えた時可能性は二つある。

一つ、狩り場を荒らされた怒り、即ち自分が折角静かに忍び込んでこれからゆっくりとばれないように襲うつもりだったのにそれを御破算にされた事に対する怒りだ。

この場合は残念ながら二体の妖魔は私が狩る事になるだろう。私はあの妖魔が単なる狡猾なだけの妖魔であって欲しくないと思っているが、それが外れだったのなら容赦するつもりなどさらさらない。私の八つ当たりでしかないが狩らせて貰おう。

組織の方針からすると報酬もなしに勝手に妖魔を狩るのは推奨されていないが別に禁止もされていない。

実際、多少遠回りになろうが妖魔を見つけ次第全て狩り尽くす戦士もいる。

……そう言った戦士は何故か早死にする事が多いのだが

まぁ、私が狩ってしまっても問題はないだろう。

組織に黙っておけば良いだけの話なのだ。

と言うか私達に報酬なしで妖魔を狩らせないために出来る限り遭遇しないようにわざわざルートを設定している組織の方針何ぞに従う気はない。

……とは言え積極的に逆らう気もまた無いが

そしてもう一つは本当にこの街の住人として仲間が殺されたと考えている場合だ。

ありえない、そう思うと同時に私はこの可能性を信じたいとも思っていた。

 

そして、ようやく街が見えてくる。

事前に確認した地図によればあの妖魔が居る街の名をカタントと言うらしい。

街に到着したのはまだ日も高いそんな時間だった。

いつもの移動速度であれば到着はもっと遅くなる筈だったのだがどうやら張り切り過ぎたらしい。

折角早く到着したのだ。

そう思い私は早速あの妖魔を見に行く事にする。

銀眼の魔女がやって来ただの騒ぎにはしたくないので、ローブを深く被り外からは容姿が判別できないようにする。

特に今この街では妖魔が暴れているのだ。

戦士がやって来た等知れたら助けてくれだの、面倒な事になるのが目に見えている。

門では厳重な検問が行われていたので、適当に人の気配がない所から壁を飛び越えて街に侵入する。

妖魔の所為か街に人通りが少ないのであっさりと誰にも見つかる事無く目的地に到着する事ができた。

そこで、私はまた驚く事になる。

あの妖魔が居た場所は牢屋の中、つまり捕まっていたのだ。

この展開は想像していなかった。

大きな感情の揺らぎがあった後に一か所から動かなくなった事は分かっていたがまさか捕まっていたとは

おそらく妖魔だとは断定できないが妖魔の可能性があるとかそう言う話になったのだろう。

妖魔だと分かっていればさっさと殺してしまうだろう。

この中途半端な対応と碌に監視もせずにトランプに興じている看守の弛みっぷりからは少し怪しいからとりあえず牢屋に入れておくか、程度の意志しか感じられない。

どうやらアイツはなかなか信用されているらしい。

それにしても牢屋の出窓からヤツを見ているのだが何か考え込んでいるのか全く気付く気配がない。

さて、これからどうするか……

とりあえず街まで来てしまったが、これからどうするかは完全に何も考えていない。

コイツの普段の生活も見てみたかったのだが……

ふむ、そのために雑魚を私が倒すのもありか、妖魔が別に出てくればコイツも解放されるだろうし、あるいは……

 

「ん?」

 

誰かがここに近づいているらしい。

軽い足音がここに向かって近づいている。

子供だろうか?そう思いながら屋根に飛び乗り、姿が見えないように隠れる。

やってきたのは聡明そうな女の子だった。

どうやらあの妖魔の知り合いで密かに会いに来たらしい。

私はこれから行われるであろう会話を盗み聞くために妖力を操作して耳を強化する。

妖力操作を極めると気配をほぼ消したままこんな細かい使い方もできるようになるのだ。

……悪趣味な使い方だとは思うが

しばらくあの妖魔と女の子の会話に耳を澄ます。

ふむ、名前はレイと言うのか

いや、それよりも驚くべきはあの女の子ーアリスとか言ったか?ーがレイが妖魔であることを知っているらしい事だ。

その様子からは騙されたりはしていないように感じる。

 

「……信じられないわね、人と妖魔が平和的に共存しているなんて」

 

変わった妖魔が人間に成り済ましてし秘かに暮らしているだけだと思っていたのだが、まさか人間の側も妖魔である事を知った上で共に生活していたとは思ってもみなかった。

もちろん、街の人間全員が知っているとは思わない、と言うかあの子一人だけの可能性の方が高いだろう。

だが、一人だけとは言え妖魔である事をしりながら人と共存していた事は驚嘆に値するだろう。

 

「ん?あの子は帰ったのね」

 

そんな事を考えていると伝言を託されたアリスは一度帰る事にしたらしい。

 

さて、面白くなってきたが、これからどうなる?

そんな事を思いながら私はクレイモアを牢屋の屋根に突き刺し休息に入る。

あの胸糞悪い任務の前から休息を一切取っていなかった事を思い出したのだ。

どうやらそこらの街娘の如く気になるアイツに会えると気分が高揚していた事を自覚する。

まぁ、恋と言うよりは遠足前の眠れない子供と言うべきだが

そんな自分に驚きつつ、そう悪くないそう思いながら私の意識は速やかに黒に染まって行くのだった。

 

 

 

 




遅くなりましたが再開します。
長くなってしまったので分割しました。
ですので続きはすぐに揚げます。

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