妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

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グリア視点です。
何か書いてたらグリア視点のができてしまいました……


老戦士と妖魔

sideグリア

その日の夜事態は一気に進展する。

町長を見張っていた兵士の一人から連絡が入ったのだ。

町長が密かに屋敷から抜け出した、と

俺はその報告を聞くとすぐに隊長に報告の伝令を出し、同時に集められるだけの部下を集め急行する。

町長が妖魔である可能性が非常に高いと判断したからだ。

それにしても、まさか本当に町長が動くとは……

レイが嘘をついてたらすぐに分かるから、嘘をついていないのは分かっていたが、それとその情報が正しいかは別問題だと思っていたのだがな

それにしてもレイか、何か隠してるから俺が監視してやろうと思ってたんだがな、今はもう家族の一員だ

まぁ、アリスに手を出したらタダじゃおかねぇがな

 

だいたいの方向に向かっていると白い狼煙が断続的に上がる。

あれは、監視させていた兵士からの連絡だ。

……ただし緊急の、だ

何かあったに違いない、それも緊急の知らせを出さなくてはいけないような事態が……

あの方向は修道院か……

俺は万が一に備えてさらに戦力を整える事を決断する。

部下の一人を呼び責任は俺が取るからと指示を与え行かせる。

 

修道院に到着した時には既に戦闘は終わっていた。

最悪な事に町長を監視させていた兵士はやられてしまったらしく、倒れて苦痛に呻いている。

とりあえず生きている事が救いか……

そんな事を思いながら部下に警戒させる。

この惨状を作り出した元凶が近くに居るはずだからだ。

警戒しながら比較的傷が浅そうな負傷者に近づく

 

「おい、大丈夫か!誰にやられた?」

「……うう、町長は、妖魔、でした……すいません、不意を衝かれてしまいまし、た」

「そうか、分かった。良くやってくれた!」

 

クソっ、俺がちゃんと町長が妖魔である可能性を伝えとけば……イヤ、あの段階ではこうするしか……

 

ぎゃぁぁぁあああああああ!!

 

俺が少しの間考え込んでいると後方から悲鳴が木霊する。

いつの間にか後ろを取られてしまったらしい。

振り向きながら剣を抜くとそこには連れて来た部下の一人が腹を押さえ蹲っていた。

どうやら背中から刺されて腹まで貫通しているらしく、背中ではゆっくりと赤い染みが広がっていた。

すぐ側にはその傷を負わせたであろう下手人がニヤニヤとイヤな笑いを顔に張り付け立っていた。

右手が異常な程に肥大化し、爪が長く鋭く伸びていた。

その先からはポタポタと液体が滴っている。

……あの鋭利な爪で一突きにしたのだろう。

町長の顔をしているが、纏う雰囲気が明らかに違う。

これが妖魔、か……

長い事兵士をやっているが妖魔を見たのは初めてだ。

俺ですらその強者の雰囲気に呑まれかけている。

部下達に至っては完全に呑まれてしまっているらしい、固まって動いていない。

 

「……お前ら!気合入れろ!俺達は兵士だ!!俺達の手で守るぞ!」

 

俺の声に反応して僅かに精神状態が好転したらしい。

とは言え未だに動きは硬く、この状態で戦わせるのは自殺行為だろう。

 

「……俺がやるしかないってか?」

 

小さく呟く

老い先短いこの身、命何ぞ惜しくもねぇが

果たして俺にコイツが倒せるのか?

 

「ギギギ、俺とヤろうってのか?愚かな、人類の捕食者たる妖魔に人の身で挑もうなんてな!」

 

ミシミシと音を立て、町長だった身体が膨張していく、

それに伴ってただでさえ強かった威圧感がさらに威圧感が増してゆく

変化が終わったそこには体長2m近くある巨大な化け物が立っていた。

口は大きく裂けており、歯が鋭く尖り、瞳は金色に光り、瞳孔が獣のように縦に割れていた。

 

ギシャアアアアアア!!!

 

妖魔が咆哮を上げてこちらに急接近してくる。

速い!そう思いながらもどうにか対応して剣を構える。

初撃は妖魔、振り上げた爪を叩きつけるように俺に対して振り下ろしてくる。

半歩下がりながら爪の軌道に剣を合わせる。

爪と剣が擦れ合い金属音を立てながら爪が剣を滑って行く。

重い!

爪の攻撃を逸らしてそのまま反撃するつもりだったが想像以上に攻撃が重い、一撃受けただけで腕が痺れてしまった。

これではいつまでも受ける事などできない。

 

「ハッ!受けれねぇってか!?なら避けるまでだ!」

 

先程と同じように爪を振り降ろしてくる妖魔に対し今度は回避を選択する。

紙一重で妖魔の攻撃を見切り、そのまま妖魔の腕を斬りつける。

まるで木でも切っているかのような硬い感触で僅かに傷つけた程度で断ち切る事には失敗する。

 

グォオオオオオ!!!

 

痛みに咆哮を上げ、妖魔は一度俺から距離を取る。

その瞳には先程まで感じられた油断の色が抜けていた。

 

「ちっ、こっからが本番ってか?来いよ化け物!」

 

そう言うと同時にこちらから斬りかかる。

右、左、上、下、流れるような動作で連撃を繰り出す。

妖魔も守ってはいるものの対応しきれていないらしく全身に傷が蓄積していく。

苛立ったのか妖魔は強引に連撃に割り込み爪を振り上げる。

そんな強引な手が通用する訳もなくあっさり避ける事ができる。

さて、このまま伸びきった腕を切り落としてやろうと思った瞬間

爪が伸びる。

全力で身を捩り避けようとするが、後遺症の残る足が言う事を聞いてくれない。

トスッ、そんな軽い音がした。

視線を下に降ろすと妖魔の爪が俺の腹に突き刺さっていた。

 

「ハッ、伸びるなんてありかよ……」

 

それでもどうにか剣を振ろうとするが、妖魔に蹴り飛ばされてしまう。

ゴロゴロと転がり、木に全身を打ちつけようやく止まる。

……クソ、ここまでなのかよ

意識がチカチカと明滅する。

そんな朧な意識の中、今まで半ば固まっていた部下達が俺を庇うように立ちはだかるのが見える。

 

「……逃げろ」

 

そう言ったつもりだが、声になったかどうかすら怪しい

部下の一人が決死の覚悟で斬りかかるが、あっさりとかわされそのまま裏拳で吹っ飛ばされる。

バカヤロー、一人でいくな、全員で一気にいけ、そう思うものの身体が思うように動かない。

また、一人妖魔に斬られた。

……クソが

 

「グリアさん!!!」

 

最後の一瞬にアイツの声が聞こえた気がする。

そこで俺の意識は限界を迎え真っ黒に染まり途切れてしまったのだった。

 




ヒャアー、終わらないぜ
関係ないですが終わらないと言えばアカギですが、
ワシズ編がようやく終わりそうですね
……まだまだ引き延ばしそうな気もしますが

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