妖魔?……もしかしてクレイモア!?   作:Flagile

10 / 39
遅くなりました。
バイトガー
レポートガー
ブンカサイガー
そんなの理由になりませんが、遅れてしまいました。
……書く時間があったのにサボった私がいけないのです。
そして、いくら書いても終わらないこの話がいけないのです。


妖魔と殺人事件 Ⅲ

賑やかだった街を恐怖のどん底に叩きこんだ連続殺人事件、それは妖魔による犯行としか考えられないものだった。

被害者が宿屋の客だった事から犯人は当初旅人の可能性が高いと考えられていたが、全員の潔白が証明されてしまう。

信用を失う兵士達、そして暴走し始める有力者達、そんな彼らに妖魔の嫌疑を掛けれらた俺は身の安全を確保するために牢屋に入る事を自ら提案したのだった。

 

こうして牢屋に入る事になったが、正直やる事があまりない。

せいぜい今までの事や事件について振り返るぐらいしかやる事がない。

こうして久方ぶりに落ち着いた時間を持てたのはいつ振りだろうか?

この街に来てはや1年と少し、思い返してみると常に全力疾走していた気がする。

初めの頃は、殺される恐怖や迫害される恐怖から逃れるために我武者羅に強くなろうと訓練ばかりだった。

その成果も出始めた頃妖魔である事がバレかけて、アリスとの距離が近づいた。

それからだろう俺がこの街を真剣に守りたいと思うようになったのは

それまで兵士をやるのはグリアさんの勧めと実戦経験を少しでも積みたいと思ったからだったが、あの事件からはこの街が俺の第二の故郷だと思えるようになったんだ。

そんな大切な街が今危機に瀕している。

どうにかして事件を解決しなくてはならない、俺には事件を解決し得る力があるのだから……

 

事件について思索を続けて1日程

じっくりと時間を掛けて事件を思い出していく、

ほんの些細な事でも追及していく……牢屋の中だから大した事はできないのだが、御蔭で事件の輪郭と本質がはっきりしてくる。

その中で気づいた事がある。

俺が牢屋に入る事になった会議だ。

会議場に入る時、俺はイヤな感覚を感じた。

当時、俺はそれを妖魔だと疑っている事による会議場の中に居た人達のプレッシャーだと思っていたのだが、

よく思い出してみると俺は他に良く似た感覚を知っている。

つい最近感じた物だが、あまり頼りにならない上に滅多に感じない感覚、そんな物がこの場で感じられる訳が無いという先入観

そうした物が合わさって気付かなかったのだろう。

……あの感覚は妖魔による物だろう。

ならば結論は単純だ。あの会議場には妖魔が居た。

あの会議場にいたのは町長、隊長、グリアさん、街の有力者達、全部で15人ほど、この中に妖魔がいる。

あの時は入ってすぐに入口の側で糾弾されたから近づかなかったが、もう少し近づけば分かるはずだ。

……問題はせっかく犯人が絞り込めたのに動けない事だろう。

残念ながら隊長やグリアさんも容疑者に入っている事から安易に協力を要請する事も憚られる。

最低でも伝言では無く直接会って確認した上で協力を要請しなくてはいけないだろう。

と言う事は話を信じてくれそうなグリアさんにここに来て貰わなくてはならない。

グリアさんならいずれ来てくれるだろうが、できるだけ早く伝えるべきなのだが……

どうやって来て貰うか?

単純に監視している兵士に呼んでいたと伝言して貰うか?

……それで大丈夫だろう、妖魔は成り済ましているだけで単独のはずだ。

 

そんな事を考えているとどこからか小さく壁を叩く音がする。

 

「……誰だ?」

 

監視に気付かれないように静かに問いかける。

 

「私よ、アリス」

「アリス?どうしてこんな所に……」

 

どうやらやって来たのはアリスだったらしい。

声が聞こえたのはこの牢屋唯一の光源である出窓の方向だった。

アリスは出窓の外から声を掛けているらしい。

ちらりと自分を監視している兵士の方を見てみるが、二人でトランプをしていて全く気付いていないらしい。

……同僚としてその態度はどうかと思うのだが、今回は助かった。

ゆっくりと監視に気付かれないように出窓の方向に移動する。

とは言え逃げ出そうと思っていると勘違いされても困るので、怪しくない程度に外をちらりと覗く。

外には修道院とその墓地、そしてアリスの姿が見える。

手を軽く振り、いつまでも外を見てたら怪しいので声が聞こえやすい位置に移動し、床に座り込む。

 

「どうしてって、レイお兄ちゃんが心配だったからに決まっているでしょ」

「……そうか、ありがとうアリス、でも心配はいらないよ、すぐに出る事ができるから」

 

そう俺が言うとアリスはそう、とだけ小さく答えて何か逡巡しているような雰囲気で黙ってしまう。

そんなアリスに声を掛けようと口を開きかけた時、アリスが言う。

 

「……ねぇ、レイお兄ちゃん、本当にレイお兄ちゃんじゃないんだよね?」

 

僅かに泣きそうな声で絞り出すようにそうアリスは言う。

……そうか、アリスは俺が妖魔だって事を知っている。

もしかしたら俺が……何て事をずっと不安に思っていたのだろう。

それなのに家ではそんな不安を感じさせる事もなく俺の事を気遣ってくれていた。

俺はできるだけ優しい声でアリスに言う

 

「大丈夫、俺じゃない。犯人は別に居る。……それに食べちゃいたいぐらいかわいいアリスが無事なんだから、俺じゃないよ」

 

最後は冗談めかして言ったが自分の本心だ。

まだ、人間の側に立っているが、もし妖魔となってしまったらきっと一番にアリスを襲ってしまうだろう。

……冗談めかしたとは言え俺の本心だ。これでアリスが俺を嫌ってしまっても仕方ないだろう。

自分でもいつアリスを襲ってしまうのか分からないのだから、悲しいがアリスの安全を考えれば嫌ってくれた方が良いとさえ言える。

 

「ふふふっ、もうレイお兄ちゃんったら、かわいいなんて、恥ずかしいじゃない」

 

アリスはそんな事気にもしていないようだった。

その様子に俺は心の底から安堵する。

アリスにとって良くはないと理解はしているが、俺にとってアリスは既に居なくてはならない人物なのだ。

 

「……本心なんだけどな」

「えっ?何か言った?」

 

ぽつりと呟くがどうやら聞こえなかったらしい。

 

「いいや、何でもない……それより一つ頼まれてくれないか?」

「私に頼み事なんて珍しいわね?それで何すれば良いのかしら?」

 

俺はグリアさんをできるだけ早く、しかし不自然にならないように呼んで欲しいという事を伝える。

アリスは俺の頼みを何も聞かずに受け入れてくれた。

そして、しばらくの間どうって事のない雑談をし、アリスは帰っていったのだった。

 

「……ありがとうアリス」

 

俺は一人誰も聞いていない牢屋の中で万感の想いを込めてそう呟く

音は余韻も残さず冷たい壁の中に吸い込まれたのだった。

 

 

夕刻、たまに来る見張りの兵士以外誰も来ない牢屋の中、

俺は再び思索に耽っていた。

とは言えその内容は事件の事からアリスとの思い出に変わっていたが……

そんな時、二つの足音がこちらに近づいてくるのが聞こえた。

一人は監視の兵士の物だが、もう一人、この僅かに片足を引き摺るような特徴的な足音は……

 

「よう、レイ元気にしてるか?」

「グリアさん!来てくれたんですね」

 

グリアさんだった。

グリアさんは以前任務中に足に大怪我を負ってしまい、その後遺症から現役を引退したのだ。

それにしてもこんなに早くに来てくれるとは思っていなかった。

……それにグリアさんは妖魔ではない

これだけ近づいても何も感じられないのだ。

違う可能性の方が高いとは思っていたがやはり確認が取れると安心できる。

……さて、これで問題はどうやって会議場に居た人達が怪しいと伝えるか、だ

グリアさんに下手な嘘は通じない。

ならば、正面から突破するしかないだろう。

 

「……アリスがお前が呼んでるって来たんだがホントか?」

 

見張りの兵士に一人で大丈夫だ、と向こうに行かせた後、声を潜めて俺にそう尋ねてくる。

 

「ええ、伝えたい事があります」

 

俺は正直に自分には妖魔を感じる力がある事、そして、会議場におそらく妖魔が居たという事を伝える。

言えない事が多くて嫌になるが、今回の件に関係がある事だけを伝える。

 

「妖魔を感じる力、か……銀眼の魔女みたいなもんか?」

「いえ、それよりも遥かに弱い物みたいですね、手が触れられるぐらい近くまで近づかないと分からないですから」

 

クレイモアの特徴を思い出しながらそう答える。

グリアさんはそうか、とだけ答えると黙って考え込む

俺が言った事を信用するかどうか考えているのだろう。

 

「それで、お前はどうすればいいと思う?」

 

しばらく考えた後に俺にそう尋ねる。

 

「……護衛、という形で監視を提案してはどうでしょうか?」

「なるほど、もし反対する奴がいたら怪しい、という訳か……やってみて損はないか、どうせ見廻り以外何もできていないんだからな」

 

そうニヤリと笑いながらグリアさんが言う。

グリアさんは任せとけとだけ言って何も聞かずに帰ってしまう。

きっとすぐに実行に移してくれるのだろう。

 

 

 

 

 

翌日、グリアさんが結果を伝えに来てくれた。

グリアさんが護衛の話を提案した所反対したのは町長と隊長、他の人物は諸手をあげて賛成したらしい。

隊長はただでさえ足りない兵士を護衛の形で割いたら余計に捜査が遅くなると主張し、

町長は自分を守るよりも街の住民を守るべきで護衛を付けるのなら見廻りを増やすべきだと主張していた。

両方ともがいかにもそれらしい理由だった。

護衛の話はグリアさん自身も実施はきついと考えていたため、あっさりと町長と隊長の意見を受け入れ引き下がったらしい。

その時、有力者達が護衛を付けるべきと食い下がったらしいが、町長に諭されてどうにか引いたらしい。

そして、グリアさんは密かに信用できる部下を集め、隊長と町長を気付かれないように護衛という名目で監視するように命令したらしい。

もし、妖魔ではなかったにしても保身よりも街の事を考えていた人物と言う事なのだから守る価値は十分にあるとの事だ。

そして、夜事態は急展開を見せるのだった。

 

 

 




終わってませんw
そして、この後もう一話投稿しますが、
それでも終わりませんでした。
当初、2話で納めるつもりだったのですが……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。