Jumper -IN CHRONO TRIGGER-   作:明石明

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どうもこんにちわ、最近GATEの視聴に合わせて原作を読みだしたら執筆が完全に止まってしまっていた作者です。

さて、久しぶりにJumper -IN CHRONO TRIGGER-の更新となりました。
今回は尊たちがゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えりの世界へ向かったら? という思いつきが発生したので執筆してみました。
時系列としては黒の夢攻略前で、以前投稿した「もしも尊たちがDOG DAYSの世界に迷い込んだら(仮)」の冒頭を流用しています。
相変わらずの文章力ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。

それでは、どうぞ。


その3「もしも尊たちがゲートの世界に訪れたら(仮)」

「――そういえばさ、この光の柱って何処に通じてるんだ?」

 

 

 時の最果てで一息入れている中、俺は誰に聞くでもなく尋ねる。

 初めてここに来たときからあるこの光の柱は俺の記憶にないもので、それが広場の一角に存在していることに今さならながら気になってきたのだ。

 

 

「そういえば……何処に繋がってるんだろ」

 

「確認したことはないのか?」

 

「ありまセンネ。ハッシュさん、何がご存知デスカ?」

 

 

 ロボが中央にいる老人に尋ねるが、彼も首を振るだけで何も答えない。というか長い時間をここで過ごしているはずなのに、これがどういうものかわからないってどういう代物なんだ。

 

 

「俺の記憶にもこんなものはなかったはずだからなぁ……一度、調べてみるのもアリか。他に誰かついてくるか?」

 

 

 候補者を募ったところサラと魔王、クロノとマールとルッカが名乗りをあげる。移動についてはいつも通り俺を媒介にする組とゲートホルダーを使用する組に別れ、まず俺とサラと魔王がゲートに入り、続いてクロノたちが入ることに。

 さらに不測の事態に備えて装備を確認し、サテライトエッジのチャージが溜まっているのも確認する。これで最悪、ヤバイ敵の正面に出たとしても脱出できる。

 

 

「それじゃ、行くぞ」

 

 

 光の柱へ足を踏み入れると、いつもの浮遊感に包まれる。さあ、何処に繋がっているのやら。

 期待に胸を膨らませ、俺たちは導かれるままゲートを抜けた。

 

 

 

 

 

 

 尊たちがゲートを抜けると、辿り着いたのは緑溢れる森の中だった。

 地面に降り立つなりまず周りの安全確認を行い、特に危険がないことを十分に確認する。

 

 

「大丈夫そうだな。けど、ここはどこだ?」

 

「ガルディアの森ではなさそうですね。かといって、フィオナの森とも違うようですし」

 

「……竜の里の森とも違うようだな。というより、辺りに漂う魔力の質が我々が知るものと全く違う」

 

 

 魔王の言葉にサラが確かにと同意する。魔力の質というものについては尊も漠然としたものしか感じ取れないが、どことなく魔力の密度が濃い気がした。

 そんなことを考察をしていると同じくゲートをくぐってきたクロノたちが追いつき、同じようにあたりを見回す。

 

 

「ここ、どこなんですか?」

 

「今私たちもそれについて話し合っていたのですが、よくわかっていないんです」

 

「まったく未開の世界、ということですか?」

 

「……その可能性はあるのか、ミコト?」

 

 

 魔王に話を振られ、尊は腕を組んでしばし考える。

 

 

「竜の里という前例がある以上、可能性は十分にあるな。それこそ、全く違う異世界というのもな」

 

 

 尊からすれば今の自分こそ異世界を渡っているという事実があるのでそこまで興奮しないが、それ以外のメンバー――具体的にはクロノ、マール、ルッカ――はその言葉に心を躍らせた。

 

 

「とりあえず、ゆっくり進んでみましょうか。目印をつけてゲートを見失わないようにして」

 

「だな。隊列は俺とクロノを先頭にして、真ん中にサラとマール、後ろに魔王とルッカだ」

 

 

 尊の指示に誰も反論せず、一行は太陽の位置を頼りに一先ず南へ下ることにした。

 しかし進めど進めど森を抜けるどころか道がありそうな気配もなく、真っ直ぐ進んでいるはずなのに道に迷ったのではないかとすら錯覚しそうになる。

 

 

「このままじゃ埒が明かないな……どうします?」

 

「そうだな……」

 

 

 一時間ほど歩き続けながらもあまり変わらない景色に耐えきれなかったのか、クロノが尊に問いかける。

 尊も足を止めて一度空を仰ぎ、もしかしたらこの方角に進むことすら間違っている可能性を考慮しだす。

 

――せめて周りの情報が分かれば何とか……あっ。

 

 

「魔王、空を飛んで周辺に何があるか見てくれないか?」

 

「……そういうことか、いいだろう」

 

 

 尊の言わんとすることを理解し、魔王はそのまま体を浮かせて周りの木より高い位置へとその身を上昇させる。

 森を上に抜けた魔王はあたりを見回すと、進行方向の先に開けた場所があるのを発見する。また、家屋らしきものが見えることから、それが村であると言う可能性が大きくなった。

 

 

「ジャキ、何か見える?」

 

「この先に村らしきものがある。距離は……2kmほどといったところか」

 

「なんだ、割りとすぐ近くだな」

 

 

 ようやくこのなにもない状況から進展できるとわかり、クロノやマールたちから安堵の声が上がった。

 尊としても村でトラブルがなければこの世界の情報を聞けるだろうと少し安心した。

 

 

 ――そう、この瞬間までは。

 

 

 

 

 

 

 俺たちは三十分ほどかけて魔王が言っていた村に到着した。

 家の作りから文明レベルはクロノ世界で言う中世ほどだろうと推察でき、俺たちが接してきたものからそこまで突出した異文化というものでもなかった。

 ただ、問題点と気になる点がないわけでもない――

 

 

「まさか、本物のエルフに会うとはな……」

 

 

 目の前にいる村の代表者らしき男性の耳を見て思わずつぶやく。

 魔王とはまた違った笹状の長い耳はそれだけで普通の人間ではないと言うことを雄弁に語っており、こんな耳を持つのは俺の知識の中ではエルフ以外に考えられなかった。

 そして困ったことがもう一つ――

 

 

「言葉が通じないのは、流石に問題ですね」

 

 

 ルッカの言葉にクロノたちがうんうんと頷く。

 そうだ。困ったことに彼らが口にする言葉が、俺たちには全くといっていいほど理解できないのだ。

 なまじクロノ世界で日本語が通じていただけに、この手の問題を考慮できなかったのは凡ミスともとれるだろう。

 

 

『改めて訊くが、君たちはどこから来たのかな?』

 

 

 またも投げかけられる異国――この場合は異界か?――に俺たちは言葉の通じない外国人に遭遇したようにしどろもどろとなる。

 答えられず無言になることは仕方ないが、ずっと無言でいることはかなり失礼だ。何かしらのアクションを起こさなければ。

 

 

「えーっと……Where is this(ここはどこですか)?」

 

 

 我ながら何故英語が出たかはわからないが、首を傾げている辺り相手もこちらが何を言っているかわからないようだ。(俺の世界で)万国共通語とも言える英語が通じないとなると、日本語も通じなさそうだな。

 昔ボディランゲージがあればだいたい何とかなると言っていた奴がいたが、別の世界から来ましたと言うことをどう表現すればいいのだろうか。確実性の高い手段がロボに言語パターンの解析をしてもらうことだが、ここにいない相手を頼っても仕方ない。となると他に残された手段はやはり……。

 

 

「……とりあえず、敵意がないことを全身を使って示そう。対立だけは何としても避けないといけない」

 

 

 たどり着いた手段はやはりボディランゲージだった。これに全員が同意して、手にした武器などを一か所に固めて友好的になろうとアピールする。

 一瞬武器を取り出したことで警戒されたが、うまい具合に行動の意味が伝わったらしく相手から警戒心が薄れたのがわかる。

 さて、問題はここからだ。敵ではないということが伝われば、今度は言語の壁を突破することに着手しないといけない。

 手始めに挨拶から何とかしたいところだが、こっちの言葉がどうとらえられるか全く分からない以上慎重に内容を選ぶ必要が――――。

 

 

――グルオオオオオオォォォォォォォォ!!

 

 

 突如、腹の底に響くような咆哮が辺りに轟く。

 あまりの大きさに何人か耳をふさいでしゃがみこみ、また何人かは不愉快そうに頭を抱える。

 

 

「な、なんだ今の!?」

 

「! 見て、あそこ!」

 

 

 ルッカが指さす方に目を向けると、その先から力強く翼をはばたかせる巨大な赤いドラゴンが迫ってきていた。

 

 

『ま、まさか……炎龍!?』

 

 

 誰かの一言で周りにいたエルフたちも悲鳴と共に弾けるように動きだし、あるものは何か呪文のようなものを唱え、あるものは家から弓を持ち出して矢を番えた。

 その動きからあのドラゴンは倒すべき対象であると判断し、俺もクロノたちに指示を出す。

 

 

「全員! エルフを支援するぞ! あれはどう考えてもヤバイ!」

 

 

 サテライトエッジを回収してブラスターモードに切り替えながら『熱血』を付与し、その巨体に照準を合わせ――って、なんだこいつ!? 思ったよりずっとでかいぞ!? サイズで例えるなら老山龍(ラオシャンロン)とタメを張れるんじゃないか!? しかもこの巨体でリオレウスみたいに空を自由に飛ぶとか反則臭ぇ!

 驚きながらもどうにか照準を合わせ――図体がでかいから狙い放題ではあるが――エネルギーを解放。

 翼の付け根に直撃することでドラゴンはその巨体を森に落とすこととなり、大きな地響きと共に咆哮が上がった。ビリビリと震える空気が奴にまだまだ余裕があることを知らせ、その勢いから額がぶわっと汗が噴き出す。

 

 

「み、ミコトさん……。あれ、怒ってませんか?」

 

「……やっぱりそう思うか?」

 

 

 思わずサラに確認した瞬間、ドラゴンが落ちた場所から大きな火柱が天に向かってのびた。体に違わず立派な火炎放射(ブレス)をお持ちのようで……。

 

 

「これは……村を捨てる覚悟がいるね」

 

「違うな。最悪、村人が死ぬことも覚悟する必要がある」

 

 

 マールの言葉を否定するように魔王が言うと、誰かがゴクリと喉を鳴らす。

 誰かが死ぬ。そうなってもおかしくないほど、これから相手にするのはヤバいと言えるからだ。

 

 

「初めてくる世界の初戦にしてはちとハードルが高すぎる気もするが……やるしかないな。 マジックバリアやプロテクトを纏っても当たらないつもりで動こう。最悪、ゲートのところまで後退して逃げる必要もある」

 

「ここの人たちを残してですか!?」

 

「……いえ、妥当な判断ね。そうしなければ私たちが奴の餌になるわ、クロノ」

 

「で、でも、倒しちゃえば大丈夫なんでしょ!?」

 

「ああ、倒してしまえば問題はない。問題は……」

 

 

 置き上がったドラゴンが大きく翼を広げ、ひと際強く吼える。再び天に向かって放たれた火柱は、まるで火山そのものが怒り狂っているかのようだ。

 

 

「……あれを相手にして本当に無事な終わり方をするかどうかだ」

 

 

 この戦いで間違いなく村はブレスの炎でダメになるだろう。ならばせめて、エルフたちだけでも殺させないようにしなければ。

 サテライトエッジをボウモードに切り替えたのを合図にしたかのように、俺たちとドラゴンの間で戦いが始まった。

 

 




番外編第3作目、いかがでしたでしょうか?

アニメで炎龍のサイズを見たときに作者の脳裏によぎったのがラオサイズのレウスでした。
Jumper -IN DOG DAYS-が完結したら続き的なものを書いてみようかと思いますが、その時はどうぞよろしくお願いします。
また、リアルの方が多忙となっているためMuv-luv Over WorldならびにJumper -IN DOG DAYS-の更新が遅れ気味となります。ご容赦ください。

それでは、今回はこの辺りで。
またどこかの投稿でお会いしましょう。


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