Jumper -IN CHRONO TRIGGER-   作:明石明

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どうもこんばんわ、スパロボ天獄篇を快くお迎えするために時獄篇の周回プレイを終わらせようとしている作者です。

さて、外伝として続いた三人集の話もこれで終わりです。
例によって強引に推し進めた感じが強いですが、楽しんでいただけたら幸いです。

それではデナドロ伝説最終章、どうぞご覧ください。


「三人集が三柱神になるまで 後編」

「――なんと、反共存派を煽ってこの城を狙う輩がおるというのか」

 

 

 ガイナーの言葉にガルディア21世は苦い表情で杖を握りしめる。

 ガルディア城に到着したガイナーはちょうど城を出ようとしていたカエルに出会い、魔物がこの国の乗っ取りを計画しているとの情報を伝えそのまま謁見の間に通してもらい、国王夫妻に騎士団長、そして大臣に同様の内容を伝えることに成功した。

 カエルがガイナーからもたらされた情報をまとめ、最も可能性の高い黒幕の正体を口にする。

 

 

「名前の響きとこの国を狙う理由から考えて、敵の親玉はおそらく以前倒したヤクラの一族に当たる者でしょう」

 

「またヤクラですか……ということは」

 

 

 リーネ王妃の言葉に――ガイナーを除いた――意味深な視線がある一点に集中される。

 

 

「……ひょっ!? わ、ワシは本物ですぞ! 信用できんというなら体の隅々まで調べてもらって構いませんぞ!?」

 

 

 視線を向けられたのはかつてヤクラに姿を騙られていた大臣だ。

 また化けられているかとの疑惑が込められた視線に慌て、身の潔白を全身を使って訴える姿がよほど必死に見えたのか、国王夫妻は微笑ましそうに笑みを浮かべる。

 

 

「わかっていますよ。今のあなたがが偽物だなんて、誰も思ってはいませんから」

 

「その通り。お主の働きぶりは誰もが認めておるからな

 

「あ、ありがとうございます! この大臣、今後も誠心誠意お仕えさせていただきますぞ!」

 

 

 最敬礼で改めて国王夫妻に忠誠を誓う大臣から目を離し、ガイナーは再びガルディア21世に視線を合わせ話を続ける。

 

 

「陛下、先ほど申し上げましたようにこの国が狙われている以上、そのヤクラとやらは遠くないうちに再び反共存派の魔族たちを煽って攻めてくるでしょう」

 

「だろうな。 グレン、騎士団長と協力し、いつでも兵を動かせるようにしてもらえるか?」

 

「ハッ、お任せ下さい」

 

 

 カエルの返答にガルディア21世は頷き、ガイナーへと向き直る。

 

 

「ガイナー殿、といったな。お主はどうするつもりだ?」

 

「私は一度仲間と合流し、緑化現場にてロボ殿と協議する予定です。臨機応変にことを進めるためにも、話をまとめる必要がありますので」

 

「そうか。ならばさっそく――――」

 

「も、申し上げます!!」

 

 

 行くといいと続けようとするが、ガルディア21世の言葉は慌てて入ってきた兵の声に遮られた。

 

 

「馬鹿者! 謁見中に大きな声を上げるな!」

 

「は、ハッ! ですが、火急の報告がございまして……!」

 

「火急の? なんだそれは?」

 

 

 兵士は大きく息を切らしながらも質問に答えるべく、膝をついて報告する。

 

 

「魔岩窟、並びにトルース村の裏山より魔物の侵攻あり! 総数、およそ二千!」

 

 

 ざわり、と謁見の間に動揺と緊張が走る。

 今までその数を相手にしたことがないわけではない。むしろ魔王が健在だった頃、一つの戦況で二千はむしろ少ないほうであった。

 しかし魔王決戦後、魔物の被害が報告に上がった時の数は多くても50前後だった現状からすれば、この数は異常といっていいレベルだった。

 

 

「して、その内訳は?」

 

「ハッ! トルース方面で500、魔岩窟方面より1500とのこと! 魔岩窟方面については現在ロボ殿、マヨネー殿、マシュー殿が防衛線を構築し迎撃に当たっているとのことです!」

 

 

 その情報にガイナーとカエルはどういう配置で守りにつけばいいのかを導き、ガルディア21世に進言する。

 

 

「陛下、私と騎士団長がトルース方面の敵を食い止めます。その間にガイナーには魔岩窟方面の敵を迎撃してもらうのが、現状で一番被害を抑えられる配置かと思われます」

 

「うむ……。ガイナー殿、頼めるか?」

 

「お任せ下され。カエル殿にはトルース方面が片付き次第、こちらの援護に回っていただければよろしいかと」

 

「しかし、魔岩窟方面は1500だぞ。貴殿一人が向かっただけで大丈夫なのか?」

 

「心配ご無用、伊達に死線は潜り抜けておりませぬ。それにこちらが異常を察知しているならば、ビネガー殿も状況を把握している頃です。報告に行ったオルティーはもちろん、間違いなくソイソー殿も戦列に参加するでしょう。何よりロボ殿やマヨネー殿が簡単にやられるなど、私にはまったく想像できませぬ」

 

 

 騎士団長の問いに自信満々に答えるガイナーを見て、ガルディア21世は「確かに」と頷いて決断する。

 

 

「話は決まった! 騎士団長よ、グレンと共にトルース方面の魔物を鎮圧せよ! ガイナー殿、魔岩窟方面を頼む!」

 

「「「御意!」」」

 

 

 名を挙げられた三人はビシッと敬礼し、すぐさま行動に移るのだった。

 

 

 

 

 

 

「グヘヘヘ……。よもや俺様がこんな森を通ってガルディア城に向かってるとは誰も思うまい」

 

 

 お化けカエルの森を進みながら、ヤクラ2世は自分の立てた作戦に酔いしれていた。

 人の目は魔物の侵攻が開始された魔岩窟やトルース村の裏山に集中しており、自分の力ならゼナンの橋を使わずともどうにか大陸を渡るくらいはできると自負しているため、人目につかないルートを利用して密かに城に潜入したあとは大臣を宝箱に押し込んで入れ替わろうと計画していた。

 ちなみに信頼できる仲間というのは完全なブラフで、実質行動するのはヤクラ一人だけだった。

 

 

「グヘヘ、ギェヘヘヘヘヘ! 待っていろガルディア21世! すぐに国を乗っ取って、人間を奴隷にしたヤクラ王国を建国してやるからな!」

 

「――ほう。その話、もう少し詳しく聞かせてもらおうか」

 

「グケ?」

 

 

ドォォォォォォン!!

 

 

 突如、お化けカエルの森で轟音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 ガイナーが城を発って半刻。魔岩窟周辺では既に戦端が開かれていた。

 圧倒的な戦力差を持つ魔物の勢力は最初こそ道中の緑化現場やサンドリノの村を容易に滅ぼせると踏んでいたが、その目論見は全く見当違いの方向へ進んでいた。

 なぜならばその侵攻を遮る勢力が、あまりにも強かったせいだ。

 

 

「避けちゃダメなのヨネ~! 『ファイガ』!」

 

「遅い! 止まって見えるぞ!」

 

「回転レーザー、発射しマス!」

 

 

 作業現場の護衛に来ていた三魔騎士の一人である空魔士マヨネーを筆頭にした親人類派の魔物たちにデナドロ三人集の一人マシュー、そして未来の技術の結晶であるロボが持ち得る力をフル活用して迫る魔物たちを撃破、あるいは戦闘不能へと陥れる。作業員などの非戦闘員はサンドリノの村に避難しているため戦力はたったのこれだけだが、その戦闘力は圧巻の一言だ。

 横に広がって突破を試みようとする魔物もいるが、マヨネーの強力な魔法やロボの広範囲レーザーに阻まれて先に進めず、中央は縦横無尽に駆け巡るマシューの刃が射程圏内に入った瞬間に飛んでくるので軽い気持ちでこの作戦に参加した魔物たちはその勢いに尻込みしていた。

 こんな状態で侵攻が成立するはずもなく、魔物の中には割に合わないと判断して撤退を始めるものまで出始める始末。

 

 

「チィ! なんでこうなっちまってるんだよ! 数じゃこっちが勝ってんだぞ!?」

 

「確かに数は圧倒的だが、所詮は烏合の衆! 結束なき軍隊に勝機など皆無!」

 

「然り! そして強固な結束を持つ精鋭であれば少数だろうと万の敵を崩せる!」

 

 

 新しい声が二つ上がったかと思うと、一瞬にしてわるまじろとバンプットの群れが蹴散らされる。

 

 

「ガイナーさん! オルティーさん!」

 

 

 ロボの声に参戦したガイナーとオルティーはサムズアップで答え、再び終結したデナドロ三人集は並び立つ。

 

 

「我ら三人で敵を蹴散らします! 間もなくソイソー殿も加勢に参られるので、お二人は撃ち漏らした敵をお願いいたします!」

 

「ワカリマシタ!」

 

「おまかせヨネ~」

 

 

 そこからはまさに鎧袖一触。

 ガイナーたちが接敵した瞬間には魔物たちが木の葉のように弾き飛ばされ、フリーランサーと舐めてかかった魔物はことごとくその考えを覆された。

 しかし舐めてかかるのも無理はないだろう。いくら地獄のような戦いを潜り抜けて力をつけ、並のことでは見るどころは知ることすらないであろう名刀を携え、果てには星の命運を救ったメンバーの一員とはいえ、見た目は本当にただのフリーランサーなのだ。

 そんな異常個体といっても差し支えない三人は固まって行動せず、三つに分かれて敵陣を縦横無尽に駆け巡り魔物の勢力を内側からズタズタにしていく。

 ロボたちに撃ち漏らしの対処を依頼してはいるが、ほとんどの魔物がこの三人の動きにやられて行動不能、さらには投降する者や逃亡する者まで出始める始末に。

 この光景を彼らの主である青年が見れば「これじゃリアル無双シリーズじゃねーか!」と叫んでいただろう。

 そんな戦場からところかわって上空では。

 

 

「……デナドロ三柱神って、こうやって爆誕したんだろうな」

 

「この時代ではカエルと魔王に次いで強いとは思ってたけど、これは予想以上だわ……」

 

「あ、見て。ロボとマヨネーがいる」

 

 

 現代からシルバードに乗って母親と飼い猫を探しに出たクロノたちが偶然見つけた光景にそうつぶやき、一先ず次の時代へ移動するのだった。

 さて、そんなガイナーたちの無双の甲斐あってか魔物たちのほとんどは完全に戦意を喪失し、マヨネーが率いるオウガンたちに囲まれておとなしくしていた。

 囲まれた魔物たちのほとんどが生きる糧さえ保障されれば人間に協力するという共存に前向きな一段で、逆に逃亡したほとんどが反共存派の魔物たちだった。

 マヨネーが反共存派がまた勢力を集めて襲ってくる可能性を考慮し追撃を仕掛けるべきではと提案したが、ロボとガイナーたちは今回の件はヤクラ2世が嗾けたことで起こった戦闘なので、心変りがあるかもしれないから出来ればもう少し様子を見たいということで話が落ち着いた。

 

 

「――ではお主たちに尋ねるが、ヤクラ2世が今どこにいるか知らないか?」

 

「いや、悪いが俺たちも知らねえ」

 

 

 今回の件の首謀者、ヤクラ2世の居場所を探そうとするが、決起会に参加した魔物から得られた情報はヤクラ2世は独自の戦力を引き連れており、ガルディア城の攻撃を目論んでいるということだけだった。

 

 

「本命の狙いがわかっただけでもヨシじゃないの。とりあえずガルディア城に守りを固めるよう伝えるべきじゃないカシラ?」

 

「そうデスネ。デスがヤクラが攻める前に間に合うでショウカ……」

 

「――ヤクラというのは、こいつのことか?」

 

 

 ロボの言葉に続いて唐突に上がる声に視線が集中し、マヨネーが驚愕する。

 

 

「ま、魔王サマ!?」

 

「その名で呼ぶな。今の俺は研究者のアルフだ」

 

 

 マヨネーの発言に魔物たちがざわりと騒ぎ出す。確かに今の魔王はかつての服装がどこか暗い印象だったのに対し、髪を三つ編みにし白を基調としたさわやかな印象を受けさせる服を纏っていた。これは魔王時代の名残を可能な限りなくすために試行錯誤を繰り返した結果のものだが、もしこの姿に仮面があればまったく別の世界の人間になっていただろう。

 そして魔王と呼ばれた際にここに作業員などがいればかなり面倒なことになっていただろうとロボは胸中で安堵したが、一つだけ気になったことがあった。

 

 

「アルフ? 本名を名乗らないのデスか?」

 

「あの名を呼んでいいのは今のところ姉上と義兄上(あにうえ)だけだ。だがそれ以外だとこの時代で名乗れる名がなくなるから適当につけた」

 

 

――適当と言ったが、本当はアルファドからとったのだがな。

 

 かつて自分の相棒だった猫を思い出しながら、「それよりも」と魔王は引きずってきたそれを皆の前に放り出す。

 

 

「グヘッ! も、もっと丁重に扱ってくれ!」

 

「おお! こいつだ! こいつがヤクラだ!」

 

 

 図体に似合わず小さな角と目、大きな口のヤクラ2世がボロ雑巾のようなありさまで縛られていた。

 

 

「アルフ殿。どこでこいつを?」

 

「研究が一段落ついたんでカエルのところへ向かおうとしたら、ガルディア王国を乗っ取るだの叫んでいるのを見かけてな。俺が出来る限り穏便に話を聞いた」

 

「ウソつけ! あれのどこが穏便だ! いきなり魔法をぶっ放して脅したくせに!」

 

「あれは威嚇だ」

 

「いやいやいや! 直撃(モロ)だったぞ!? だから俺様こんなにボロボロなんだぞ!?」

 

「黙れ。運が悪かったと思いあきらめろ。それとももう一発欲しいか?」

 

 

 右手に電撃を溜めて問うとヤクラはビクゥ!と体を震わし、ダラダラと汗を流して黙る。そしてマヨネーは魔王の電撃を物欲しそうに熱視線を送るが、どこにも放たれることなく霧散したのを見てあからさまに肩を落とした。

 

 

「なんだ、急いで来たらもう終わってる上に珍しい顔がいるな」

 

 

 今度はカエルが騎士団長と騎士数名を伴って現れ、図らずもこの時代でラヴォス討伐に参加したメンバーが全員集合する形となった。

 とりあえずガイナーはヤクラを引きずり、そのまま騎士団長に引き渡す。

 

 

「騎士団長殿、こやつがヤクラです」

 

「うむ。こいつの扱いは王国裁判にて決定されるが、おそらく裁判制度を施行して初の死刑判決が下されるだろう。 ――さあ、行くぞ!」

 

 

 騎士団長の命令に騎士たちが動き出し、ヤクラを囲んで移送を始める。

 

 

「お、俺様がやられてもいずれ第2第3のヤクラが――あ、俺が第2のヤクラか。とにかく必ず俺様の遺志を継いでくれる! 何百年かかろうと、俺様の一族が必ずこの国を乗っ取ってやるからなぁー!」

 

 

 最後に捨て台詞を残したヤクラがさっさと連れていかれると、急に場が静かになる。

 そんな中で魔王はカエルに歩み寄り、懐から小瓶を取り出した。

 

 

「カエル、これが例の研究の末にできた魔法薬だ。受け取れ」

 

 

 例の薬と効いてこの中で魔王の次に魔法に精通しているマヨネーが興味深そうにのぞき込み、何の薬なのか知っているカエルは受け取りながら訪ねる。

 

 

「効果は大丈夫なんだろうな?」

 

「お化けガエルの森で上々の結果が出ている。成功率は8割強で失敗したとしても数分だけ戻れるか、まったく効果がないかだ」

 

「……それはつまり、人間になった食用ガエルがいたということか?」

 

「安心しろ、データ取りが終わった後人間になった個体はお前にかけた呪いと同じものでカエルに戻した」

 

 

 それは安心していいのだろうかと、この場で聞いていた誰もが思わずにはいられなかった。

 受け取った瓶を見つめていたカエルはやがて決心したのか、封を切ると一気にその中身を飲み乾す。

 

 

「――っ!? ぐほっ!? に、苦いのに酸っぱい!?」

 

「味だけはどうしても改善できなかった。だが良薬は何とやらだ、問題なかろう。あと効力が出るまで数分かかるから、それまでカエルの姿に別れを告げておけ」

 

「い、いろいろ説明不足デシタが本当にダイジョウブなのですか?」

 

「まあ、信じるしかないわヨネー」

 

 

 あくまで他人事のようにマヨネーが流した瞬間、

 

 

ボォン!!

 

 

 カエルの体が爆発し、辺りに白い煙が充満した。

 

 

「か、カエル殿ぉぉぉぉぉぉ!?」

 

「ああ、忘れていた。効果が発動すると体の内側から魔力が爆発とともに煙となって排出される。しかし早いな……元が人間だったからか?」

 

「も、もっと早く言ってくだされ」

 

「しかし、そうなるとカエル殿は……」

 

 

 誰もが固唾を飲んで見守る中、一陣の風が煙を掻っ攫う。晴れたその先には――――

 

 

「……変化なし、だったな」

 

 

 変わらずカエルの姿をした男が非常に不機嫌な表情で魔王を睨んでいた。

 

 

「ふむ、呪いにかかっている年月が長いせいか効力が薄いのかもしれないな……改良の余地ありだ」

 

 

 何事もなかったかのように結果と原因、対策をメモに取る魔王にカエルの中で何かが切れた。

 

 

「やはりお前とは一度じっくり剣を交えて話し合わなければならんようだな!」

 

「後にしろ。俺は忙しい」

 

「か、カエル殿! 落ち着いて下され!」

 

「まお――アルフ! アナタも謝罪を――イナイ!?」

 

 

 殺気立つカエルを三人集が必死になって諌めようとしている中、ロボが振り返った先に魔王は既に遠くに移動していた。

 今から追っても無駄だと察したロボもガイナーたちと一緒になってカエルを諌め、マヨネーは事件が解決したからと言って部下と下った魔物たちを引き連れてビネガーの館へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

「これで一件落着、といったところか」

 

 

 日が暮れてどうにか落ち着いたカエルを見送り、フィオナや作業員に今回の魔物の騒動が煽られたものであることを伝え終えたガイナーたちはデナドロ山の山中に構えた小屋で一連の流れを振り返りそう結論付ける。

 幸いにして作業員たちも今回の騒動で魔物たちの事情を以前より理解するようになり、一部の者はより積極的に交流を図るようにもなった。

 

 

「しかし、未だに反共存派の魔物は多い。説得や警備の強化は必須となるだろう」

 

「そうだな。 ――二人とも、ことが終わってから考えていたことがあるのだが、聞いてくれ」

 

 

 その切り出しに二人が耳を傾けたのを確認し、ガイナーは口を開く。

 

 

「作業現場をロボ殿に頼み、我らは反共存派の動向を探り、機会があれば説得という手段をとってはどうか?」

 

「どういうことだ?」

 

「今回の件で、我々が独自に行動して反共存派の内部情報を得られれば、今回のようなことは起きなかったと思うのだ」

 

 

 確かに勢力は強かったが、内情を見ればほとんどがヤクラに煽られて行動を起こした者たちで、しかも勢力の半分近くは食糧が得られればそれでよしというものたちだ。

 もし今回のような勢力が結成されるようなことがあれば事前に情報を集めて内部から戦力を分断、可能であれば反共存派も説得してさらに切り崩すという手も可能となる。

 定期的にロボやフィオナたちに報告すれば作業現場も安心して作業に取り掛かることも可能となり、作業も捗ることだろうと言うのがガイナーの考えたこれからの行動だった。

 

 

「――なるほど。確かにそれは有用となるな」

 

「御館様より賜った最後の任である人魔共存と砂漠の緑化を進めるためにも、それは必要だな」

 

「ではフィオナ殿とロボ殿の承認を得次第行動で構わぬな?」

 

 

 その問いに異を唱える者はおらず、夜が明けていつものようにフィオナたちの元に向かった三人は昨晩のうちにまとめた計画を打ち明けた。

 作業から離れると聞いた最初こそ気軽に頼める人がいなくなるのはと勘ぐったフィオナだが、昨日のことを考慮してそれならばと了承をした。今までガイナーたちが担当していた魔物たちへの指示を今回からロボが引き継ぐようになり、ゆくゆくは他の魔物たちが依頼を聞きに来れるようになればということで話がまとまった。

 

 

「――重ねて申し訳ございませぬ、フィオナ殿」

 

「大丈夫ですよ。それより、そちらも気を付けてくださいね」

 

「魔物たちへの指示は任せてクダサイ。次に会う時までに新しい適任者を見つけて見せマス」

 

「感謝します。では」

 

 

 フィオナたちに頭を下げた三人は小屋から離れると、これからの行動の最終確認を始める。

 

 

「では手筈通りマシューはパレポリ方面を、オルティーはチョラス方面を頼む」

 

「うむ、ガイナーはトルース方面だな」

 

「そして週に一度それぞれが得た情報をフィオナ殿とガルディア国王に報告し、ローテーションで調査先を入れ替える。間違いないな?」

 

 

 その確認に三人は頷きあい、そしてニッと笑う。

 

 

「「「行こう、400年後に訪れる理想の未来を創るため」」」

 

 

 合言葉のように同じ言葉を口にすると、三人は同時にその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 A.D1000年のフィオナ神殿には砂漠に緑を取り戻したフィオナ伝説の他に、もう一つの伝説があった。

 フィオナが緑化に取り組んで間もないころ、魔物を扇動して国を乗っ取ろうとしたものがいた。

 魔王との戦争以来となる軍勢が無防備に等しい作業現場に迫るが、たった三人でそのほとんどを蹴散らした人魔共存派のフリーランサーたちがいた。

 フリーランサーたちは自らをデナドロ三人集と名乗り、この魔物の侵攻以来世界各地を回って反共存派を抑え込み人魔共存に尽力したという。

 当時の人々は眉唾と一蹴していたが、A.D765年。フィオナの子孫フィーナがロボの補完していたデナドロ三人集の報告書を発見したことでその存在を知ることとなる。

 同時期にガルディア国王であるガルディア25世も同様の報告書を所持していたことからこの三人は実在したものであることが明確となり、フィオナ神殿では森の礎を守り抜き現在の自分たちの世界を作ったかけがえのない存在として奉るようになった。

 この伝説を彼らの名乗りにあやかり、デナドロ三柱神伝説として後世に伝えられることとなったという。




外伝最終話、いかがでしたでしょうか?

三人がヤクラをボコボコにすると思った方、すいません。通りすがりの魔王様がボコボコにしちゃいました。
魔王の名前と服装はクロノクロスの仮面なしアルフを参考にしてください。

一応これで終わりとなったわけですが、次回の投稿が未だ未定となっています。
本作の続編も序盤までできているのですが、まったく新しい新作がプロットもろくにできてないくせにプロローグが書きあがってしまっていまして……。
とりあえず本作の続編を投稿していく形で内容を詰めていきますが、息抜きにもう一つのほうを進めるかもしれないため投稿に時間がかかるかと思いますが、もうしばらくお時間を。

それでは、今回はこのあたりで失礼します。
またどこかの投稿でお会いしましょう。

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