Jumper -IN CHRONO TRIGGER-   作:明石明

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これからまたゆっくりと続きを書いて行く予定です。
ところでゲームだとボッシュはどうやってトルースに渡ったんでしょうね……。


第2話「ヘケランは大切な情報源です」

 どうにか無事に目的地のメディーナ村に到着できた俺は家主の魔物からこの村についての注意事項を受け、厄介ごとに巻き込まれないようそそくさと村を抜けてボッシュの小屋へと向かっていた。

 直接ヘケランの洞窟へ向かっても良いが、洞窟を抜ける以外にトルース町へいける手段がないかを確認するためだ。ゲームの最初にリーネ広場で武器を売ってたから船かなんかでやってきたと思うんだが、あちらでは港がトルース町かパレポリ町の二つにしかなかった。

 本当に洞窟を抜けてきたという線も捨てられないが、俺は船でやってきたと言う説を信じたい。

 さて、そんなことを考察しているうちにボッシュの小屋と思われる家に到着した。

 

 

「ごめんくださーい」

 

 

 扉につけられたカウベルを鳴らしながら足を踏み入れると、耳のような帽子をかぶり丸いサングラスをかけた老人が一人剣を磨いていた。

 かつてPS版のエンディングムービーで見たあのボッシュそのものだった。

 

 

「おや、人が来るとは珍しい。ようこそ、ワシの工房へ」

 

「あなたがボッシュさんですか?」

 

「いかにも」

 

 

 どうやら俺の知っているボッシュと同一人物で間違いないようだ。

 そのことに少し安堵し、本題を切り出す。

 

 

「少し訪ねたいのですが、ここからトルース町へ行くにはどうしたらいいのでしょうか?」

 

「千年祭へいくのかね?」

 

「まあ、そんなところです」

 

「ふむ。普通ならば西にある港で船を使ってトルースへ向かうのじゃが、残念ながら次の定期船は明日じゃ」

 

「あ、明日!?」

 

 

 おいおい、まだ時間的には午前中だぞ。いくらなんでも少なすぎるじゃないか? ……いや、そもそもこの大陸にはボッシュを除けばあとは魔族の村しかない。そう考えれば人間を運ぶ定期船がこの大陸に訪れるのは奇跡に近いのでは?

 

 

「あとは少し危険だが、北の洞窟からトルースへ抜ける方法がある。ま、ワシは明日まで待ったほうが安全だと思うがね」

 

 

 これは原作と同じ流れだ。となると、修行を兼ねて洞窟を抜けたほうがまだ早いか。

 話を聞いた情報料代わりにチタンベストとミドルポーションを5個購入し、俺はヘケランの洞窟へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「魔族の敵に死を!」

 

「人間は一人残らず滅ぼせ!」

 

「お前らそれしか言わないのか!? 死ねだの滅べだのうるせえ!」

 

 

 洞窟に突入してもうかなり経っただろうか、行く先々で現れる魔王のしもべたちが俺を見つけるなりやれ殺せだのやれ人間死すべしなど物騒なことをのたまっている。

 それでも現れる数が常に2体以下なのは不幸中の幸いだろうか、どうにかMPを温存してサテライトエッジで対処できている。というかスペッキオの修行で受けた魔法の弾幕に比べたら圧倒的に楽だわ……あれ、何だろう。悲しくないのに目から汁が垂れてきた。

 さて、今襲ってきた敵をどうにか蹴散らして3本目のミドルポーションを嚥下する(なお、味は昔コンビニで売っていたポーションに近いとだけ言っておこう)。

 一応UG細胞改の自然治癒力強化である程度時間が経てば傷は完全に塞がるのだが、心理的にそれを待つ余裕がない。

 しかし可能な限り見つからないようなんとかやり過ごしたりしてきたとはいえ、流石にこれ以上の消費はまずい。だが記憶にあるマップと同じ構造なら現在地からして出口はもう目と鼻の先だ。問題は門番をしているであろうヘケランをどうやってやり過ごすかだが、レベルアップで新たに得た力を使えば突破できないわけでもない。

 ただ失敗すれば元の世界に戻る前にこの世とお別れをしなければならないだろうし、何よりクロノたちがこのヘケランから魔王とラヴォスについての情報を得るのだから倒してしまっては情報が伝わらない。

 それに引き返すにしてもゲームと違って倒した魔物とは別の魔物がうろついている可能性もある。相当奥に入ってきた今、戻るのも厳しいだろう。

 進めば博打。引けば博打。しかし同じ博打でも前者のほうがまだ勝算は高い。

 

 

「……ここまで来たんだ。腹をくくって行くか」

 

 

 某蛇のように物音を立てぬよう道の先を覗くと、今までの魔物とは明らかに違う青い巨体のヤツがいた。しかも幸いなことに、俺に背中を向けている。

 チャンスは今しかないと判断するとサテライトエッジを召喚せず一気に駆け出し、走りながら第一の策を実行する。

 

――ブーストアップ、始動!

 

 UG細胞改で得た身体能力を上昇させるブーストアップ。これによりいつもの倍近い速さで洞窟内を駆け抜ける。

 

 

「んあ?」

 

 

 物音に気付き振り向こうとしたヘケランを見てさらに幸いとばかりにヤツの真後ろを駆け抜け、レベルアップによって得られた第二の策を実行する。

 

 

――『加速』!

 

 スパロボの精神コマンドである加速を使い、ブーストアップで倍近い速さとなっていた体がさらに速くなる!

 

 

「へ? ――あっ、人間!?」

 

「遅い!」

 

 

 気付かれはしたがこの身は既に安全圏へ入った。そのまま勢いを殺すことなく目的の水場へと飛び込むと体が何かに吸い寄せられるように進み、洗濯機に放り込まれたかのように視界がぐるぐる回転する。ヤベ、気持ち悪過ぎて吐きそう……。

 少しの間そんな状況と戦っていると、不意に体がどこかへ飛びだし地面へと叩きつけられる。

 しかしブーストアップの副作用と最後のスクリューが効きすぎて俺の意識はそのまま闇の底へと沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 意識を取り戻した俺は見知らぬ部屋のソファーで横になっていた。

 すぐそばで怪しげな機械をいじくっているガタイの良いおっさんがいたので話を聞くと、おっさんはタバンと名乗りここはトルース町の南にある自宅だと説明してくれた。

 名前を聞いて思わず驚きそうになったが、どうやら俺は意識を失った後ルッカの家に運ばれたようだ。タバン曰く、発見したときは打ち上げられた魚みたいな状態だったそうだ。

 ともあれ助けてもらったのでお礼の言葉を述べて早々に立ち去ろうとしたのだが、娘のために試作の防具を作ったのだが性能を試してもらいたいとの依頼をされた。

 だがやり方を聞いて思わずツッコミを入れた俺は間違ってはいないだろう。

 

 

「この耐火繊維の生地を体に巻いて火炎放射に当たってみてくれ。どれくらい熱さを軽減できたかの感想が欲しい」

 

「ふざけてんのかおっさん」

 

 

 結局助けられた手前断わりきることもできず、その生地を体に巻いて火炎放射の前に逝った。スペッキオのファイアを直に喰らったときに比べればダメージは低かったが、しばらく火はトラウマになりそうだ。

 これで娘に胸を張って防具を渡せると言われ、俺は疲れた笑みのまま初めて訪れた原作キャラの家を後にし、しばらく歩いてようやくトルース町へとたどり着いた。

 ヘケランの洞窟で魔物とやり合ったおかげで資金に余裕があったので一先ずグッズマーケットでポーションと万能薬、シェルターを5個ずつ購入。ミドルポーションでないのはこの際我慢しよう。

 必要品を買い込んで次に向かったのはリーネ広場のゲートの元だ。本当は少し祭りを楽しんでいきたいところだが、資金は大切にしなければな。中世に移動したら魔物を狩りまくって金と経験値を貯めるか。

 しかし今まで特に気にしなかったがこのゲート、なんで途中から時の最果てを経由するようになったんだろうな。

 それはさておき。時の最果てからこの時代に来るとき俺はゲートホルダーを使うことなく移動できたわけだが、その原因がまだ解明されていない。ステータスやアイテムを確認してもゲートが絡むようなものは見当たらない。

 一応仮説が三つほど浮かんだが、正直どれもあり得ると言いきれない。

 まず浮かんだのが『ゲートホルダーなんていらなかった説』――物語の破綻につながるのでなし。

 次は『本当はゲートホルダーがいるけど偶然目的地にたどり着けた説』――あり得るかもしれないがゲートホルダーの存在意義に発展しそうなのでなし。

 最後は『俺が異世界からの流れ者だから説』――都合がよすぎる。

 しばらく考えてはみたものの、最終的に『わからないものはわからないが、使ってて問題がなければそれでいいか』という結論に至った(思考放棄ともいう)。

 方針が決まったところで早速ゲートをくぐると問題なく時の最果てにたどり着き、とりあえずHPとMPを回復させるべく広場の方へと移動する。

 

 

「あれ? あなた、誰?」

 

 

 広場に出たところでポニーテイルの少女に声をかけられ、思わず絶句する。

 

――どうしてマールがここにいる。

 

 いや、理由は分かっている。おそらくクロノたちが未来からここにたどり着き、ゲートを安定した状態で運用すべく3人パーティーを組んで移動するためここに残ったのだろう。

 

 

「相手に尋ねる前に、まず自分から名乗るべきじゃないかな? お嬢ちゃん」

 

 

 動揺を押し殺してそう返すが、思わず普段使わない言葉まで出てきたあたりまだ動揺しているみたいだ。

 

 

「わたしはマール。王国歴1000年からクロノたちと一緒に来たの。あ、クロノって言うのはここにはいないわたしの友達なんだけど――」

 

 

 クロノとの出会いからここまでの経緯を聞いてみる――向こうが勝手にしゃべっているだけだが――と予想通り、俺がここを発ってから少ししてやってきたらしい。

 現在クロノたちは光の柱を通じて現代に戻っているとのことだが、おそらくまだヘケランの洞窟あたりだろうと予測してみる。

 

 

「――それで、あなたの名前は?」

 

 

 ひとしきり喋り終わったマールが首を傾げて尋ねてくる。

 ここで答えなければあと後面倒になりそうなので、この世界で通用しやすそうな答え方をすることにした。

 

 

「俺はミコト。ただの迷子だ」

 

「迷子? どこの時代からきたの?」

 

 

 迷子と言う言葉に反応して矢継ぎ早に質問を繰り出してくるマールだが、俺はそれを適当にあしらいつつ体力を回復させて再び柱の間へ移動し中世のトルースの裏山に通じるゲートを選択する。

 直前までマールが何か言っていたようだが、あまり相手にしていると面倒なのでそそくさと移動することにした。

 

 

 

 

 

 

「……えっ」

 

 

 マールは言葉を失った。

 新たにこの時の最果てに現れた黒髪の男――ミコトから話を聞こうとしたのだがまともに取り合ってくれないまま、また別の世界へと移動してしまった。

 移動するだけなら自分たちもやっているので特に驚かないが、彼はゲートホルダーなどを使うことなくそのまま移動していった。

 自分たちはいつもゲートホルダーでゲートが安定しているのを確認してから移動するのだが、彼はそのそぶりもなく流れるように移動したのだ。

 しばし呆然としていると別の柱からクロノたちが現れ、マールは駆け寄るなり今目の前で起こった出来事を説明した。

 

 

「黒髪の男……マール。もしかしてその人チタンベストを装備してなかった?」

 

「えっと、装備してたと思うけど……どうしたの、ルッカ?」

 

「実はヘケランと言う魔物が黒髪の人間には出しぬかれたが今度は油断せんぞと言ってマシテ」

 

「あとルッカの親父さんが黒髪のあんちゃんに感謝しないとなって言っててさ」

 

「なるほど……。ねえ、広場のお爺さんに聞いてみない? もしかしたら何かわかるかも」

 

「そういえば、少し前にお客さんが旅立ったと言ってマシタネ」

 

「スペッキオも珍しい兄ちゃんがいたって言ってたわね」

 

「こうしてみると、関連性があるのは間違いなさそうだな。よし、話を聞いてみよう」

 

 

 クロノたちが魔王とラヴォスの情報に加え尊の情報も集めることを決定したその頃、肝心の尊はと言うと――――――

 

 

 

「あ゛ー、気持ち悪ぃ……」

 

 

 トルース村の酒場で行われていた飲み比べ大会(賞金5000G)に参加して優勝したものの飲み過ぎが祟って宿屋のトイレとお友達になっていた。




共通ステータス
名前:月崎 尊(24)
属性:天・水

魔法・精神コマンド
努力     MP2
サンダー ★ MP2
アイス  ★ MP2
集中     MP4
加速     MP4
???
???
???
???
???
???
???
???
???

特殊スキル
UG細胞改
亜空間倉庫
ブーストアップ
???
???
???
???

尊が認知できていない特殊スキル
次元跳躍
 └神の気まぐれによって付与された特典能力の一つ。
  特定条件を満たすか自分のすぐ近くで転移が起こるとそれに誘発されて別の世界へ飛ばされてしまう。また、クロノ世界ではゲートをくぐる際にゲートホルダーを必要としない。
  本来なら大量の魔力を消費するだけで転移の際に行きたい世界へ移動できるはずだったが、最初の転移で起こったエネルギーの暴走と謎の力の干渉で狙った世界へとうまく移動できなくなってしまった。
底力
 └体力が一定数以下になると攻撃力と防御力が上昇する。スパロボのアレである。

クロノ世界でのステータス
Lv   :18
HP   :180
MP   :32

力   :38
命中  :10
すばやさ:9
魔力  :14
回避  :11
体力  :40
魔法防御:23

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