試合当日、織斑一夏の第一試合の相手はツインだった。
本人こそ相手の名前を見て驚いていた。
(『運命を安売りするなんて、神様は暇なのかしら』)
(『は、ははは。それは否定できませんね』)
(『それよりも織斑一夏。貴方は大丈夫なんでしょうね?変に緊張したりとか、幼馴染だから少し気が引けるとか思っていたりとか』)
(『緊張は兎も角、最後のはないですよ。例え幼馴染だろうとクラスメイトだろうと、全力を出すまでですから』)
(『そう。ならいいのだけれど。くれぐれも、私の訓練が無駄じゃなかった事を祈りたいものだわ』)
(『無駄にはさせませんよ。白鳥さんが俺の為に時間をかけて考えてくれたメニューですから。白鳥さんの為にも、負けるつもりはありませんっ!』)
(『………………なんでそんなセリフを易々と言えるのかしらね』)
しかも、私が『気持ち悪い』、『勘違いもほどほどにしなさいよ』とか言われるかもしれないのに臆面の無くあんな言葉を言えるなんて、さすが無自覚なだけはあるわね。
(『あの、白鳥さん』)
(『なにかしらゴミ屑?』)
(『いえ、そのゴミ屑とか織斑一夏ですよ。俺と白鳥さんって、もう知らない仲なんだし……………………』)
(『だからなに?呼び方を格上げしろと言いたいわけ?』)
(『そ、そうですね。出来れば…………俺のことは名前で』)
(『なら屑でいいわね。これでいいでしょ屑?』)
(『ゴミを取っただけじゃないですか!名前で呼んでくださいよ!』)
(『嫌よ。誰が好き好んで好きでもない男の名前を呼ばないといけないわけ?』)
(『うっ………………』)
そんな子犬みたいな目で見ても変わらないわよ。
因みに犬は嫌いじゃないけど、私が飼ってたのは猫だったから。
(『……………じゃあ、今日の対抗戦で優勝したら呼んでください』)
(『………………思ったのだけれど、なんでそんなに呼んでほしいわけ?今までそんな要求をしてこなかったのに。』)
(『そ、それはその……………………』)
(『まぁ、言えないのなら別にいいわ。理由を聞いても呼ぶつもりはないし。もちろん、優勝しても呼ぶつもりなんてないわ』)
(『そんなっ………!?』)
織斑一夏は大げさに落ち込む。大げさに落ち込んでも呼ぶつもりはないわよ。
全く、何を考えているのかしらこの男は?もしかしてだけど……………いえ、有り得ないわね。この男は無自覚で女を落とす様な男なのだから他意はないのでしょう。
ふんっ、そうはいかないわよ。私はそこらの女とは違って無自覚イケメンだろうが残念イケメンだろうが靡く尻軽じゃないわ。
((でもまぁ、私のちょっとした我儘に付き合わせているんだしね)『まぁ、貴方が私の心を動かすほどの戦いを見せたら考えてもいいわよ』)
(『ほ、本当ですか!?』)
(『えぇ。私は嘘を言わないわ。でも、私の心を動かすほどの戦いを見せたらだけどね』)
この男の実力は1年でトップクラスとも言えるだろう。
優勝なんて多少専用機を持つクラスには手古摺るだろうが出来る。
だからそう簡単に私の意見を覆す理由にはならない。私が名前で呼ぶのは、余程のことか認めた人物だけしか呼ばない。
(『よしっ、頑張るぞ!!』)
(『その勢いが空回りしないのを祈っているわ』)
さて、どんな戦いを見せてくれるのかしらね。
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白鳥さんと約束を交わし、俺は鈴の機体を見つめる。
セシリアのブルー・ティアーズと同じで、非固定浮遊部位が特徴的な機体だ。
今回の戦いで白鳥さんの手は一切借りないで優勝つもりだし、約束がある。
だから機体の考察や武器の情報入手は自分の力でやらなければならない。
(鈴の『甲龍(こうりゅう)』の武装は連結ブレードとかしか載ってないな。だけど、あの二つの浮遊部位はブルー・ティアーズと同様で射出系装備かもしれない。隠し装備となれば、詳細に載せないのが頷ける)
『それでは両者、規定の位置まで移動してください』
アナウンスに促されて、俺と鈴は空中で向かい合う。
その距離は僅か五メートル。浮遊部位による攻撃が射出系だった場合、直撃を受けるかもしれない距離である。だが、それはあくまで『かもしれない』のだ。
射出系だったとしても、俺はレーザーという質量のある光の集合体を回避できる様になったのだ。ミサイルだろうが弾丸だろうが空気砲だろうがレーザーに比べれば避ける事なんて容易いはずだろう。
「一夏、幼馴染の好で少しは手加減してもいいわよ?」
「いらねぇよ。全力で来な」
じゃないと白鳥さんの心に残る、動かす程の試合にもならないだろう。
だから、手を抜くのも抜かれるのも冗談ではない。
「一応言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドエネルギーを突破する攻撃力がれば、本体のダメージを貫通させられる」
知ってる。白鳥さんから覚えるまで復唱させられたよ。
噂、というより軍事ではIS操縦者に直接ダメージを与えるためだけの装備も存在するらしいからな。
まぁ、軍事だから競技として出さないだろうし、出しても競技規定違反だけどな。
やっべ、少し緊張してきた。
別に鈴の話でビビったわけでもないんだが、変に考えさせられたせいで少し緊張してきた。周りにだって生徒はいるし、それもあるのだろうけど。
(『なに緊張しているのよ。言ったじゃない、頑張るって。そんなんじゃいつまでも成長はしないわよ』)
「あっ…………………ははっ。ありがとうございます」
「?? どうしたのよ一夏。急に笑い出して」
「いや、なに。ほんと、感謝しきれないなって思って」
「は?」
『それでは両者、試合を開始してください』
ホント、白鳥さんには感謝しきれない程の恩を貰ったよ。
だからこそ――――――――――――――
ガキンィィンッ!!
(負けるわけにはいかねぇ!)
鈴が動き出した瞬間、展開した白雫と鈴の武器が弾かれる。
反動はこちらが少なかったので、特に無駄な動作をする必要性がなかったので難なく態勢を立て直し、俺は白雫を握りしめ鈴を見つめる。
「ふうん。初撃を防ぐなんてやるじゃない。けど――――――」
鈴が手にした異形の青竜刀………と呼ぶにはあまりにもかけ離れた形状の武器をバトンでも扱うように振り回す。
両端の刃のついた、というより刃に持ち手がついているそれは、縦横斜めと鈴の手によって自在に角度を変えて切り込んでくる。
「ほらほらほらっ!」
「っ…………!」
驚異的な攻撃速度だが、見切れない訳がない。
2対1の訓練の時の休む暇のない攻撃を回避し捌き続けたのだ。
白鳥さんとの訓練は、全て無駄じゃない!
「はぁああ!」
「うそっ!?」
鈴の攻撃を受け止めたと同時に、俺は白雫で勢いよく弾いた。
弾いた瞬間、鈴に大きな隙が生まれ、俺はその隙を逃す事は無かった。
「はぁああ!!」
「くっ!」
隙を生まれ、俺の攻撃を受けた鈴は危険だと判断したのか距離を取った。
俺は追い打ちをかけることなくその場で行動を観察し、白雫を握る。
少し前の訓練で、白鳥さんに構えない方が相手にどんな攻撃を仕掛けてくるか悟られないと教わったことがあったので、現在それを実行している。
(さっきも思ったけど、なんで構えないの?私を舐めてるわけ…………ないか。まさか、一夏の機体に何か別の装備が詰まれているとか?データじゃ刀一本だけしか書かれてなかったのに?…………だとすれば、ハッタリなの?さっきだって普通に斬りかかってきたし、やっぱりハッタリ?あぁもう!訳が分からないわ!)
(鈴はどうくる?鈴自身もこのままじゃジリ貧だと薄々感じているはず。いったん別の装備に切り替えるか、あるいは何か策を用いてくるに違いない)
「なら、やる事は一つよ!」
「っ!」
来たか!
ばかっと鈴の肩のアーマーがスライドして開く。
中心の球体が光った瞬間、俺はそれと同時に動いた。
ズドンッと俺の後方に何かが当たった様な音がしたので振り向くとアリーナの壁が少し凹み、地面に穴が出来ている。いったいどうすればああなるのか分からなかった。
「まだよ!」
「くっ!」
しかし、考えている暇なんてない。
鈴は考えさせる余裕も与えることなく俺に向けて何かを放つ。
しかし、俺は一撃も貰う事無く全て回避しながら考察する。
チラリと見たが、鈴の肩のアーマーから放つ攻撃は見えなかった。
白式を頼りにデータを照合してもらい、その武器が何なのか理解する。
(なるほど。これがそうなのか!)
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「なんだ、あれは……………?」
ピットからリアルモニターを見ていた箒がつぶやく。
それに答えたのは、同じモニターを見ていたセシリアだった。
「衝撃砲ですわ。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ちだす―――――――」
ブルー・ティアーズと同じ第三世代型兵器ですわと続いた言葉を、しかしもう箒は聞いていなかった。モニターには、苦戦している様に見える一夏が映し出されている。
一夏がギリギリで避けるたびに箒の胸はずきりと痛んだ。
(一夏…………)
セシリアの時よりも激しい戦闘を目の当たりにして、箒は勝利よりもただただ無事を願っていた。
しかし、余談だが箒の目には一夏が苦戦している様に見えているようだが、一夏は別段苦戦を強いられる状況に陥っているわけではない。
相手の攻撃や癖を観察するために回避に徹しているだけなのである。
つまり、箒はただただ無駄に勘違いをしているだけなのである。
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「さっき回避ばっかりじゃない。それとも|衝撃砲≪龍咆≫の見えない攻撃の前では回避しか出来ない訳って事かしら?」
なわけないだろ。
俺が回避に徹していたのは全て考察の為である。
鈴は勘違いしているようだが、それはそれで儲けものだ。
いまの所で分かった事は、鈴の衝撃砲は見えない事と連射性があり、相手に照準を悟られない利点があること。
そして連射する際には威力が落ちていくというデメリットが存在するのが分かった。
(後は俺がタイミングよく鈴に接近して、零落白夜を展開した白雫で切るだけだ!)
零落白夜、それはセシリアの試合の時に発動した能力。
なぜあの時、一撃でセシリアのエネルギーを根こそぎ奪ったのか悩んでいたら白鳥さんが説明してくれた。
零落白夜は自分のISのシールドエネルギーを代償にバリアー無効化攻撃が可能となる諸刃の剣なのだ。しかし、バリアー無効化攻撃というだけあって攻撃力は世界のトップクラスとも言えるだろう。
(さぁ撃って来い、鈴。お前の衝撃砲が対策出来るのは、もう分かってる!)
「もらったわ!!」
「(今だっ!) うぉおおおおおおおおおおおおお!!」
「なっ!?見えない砲撃を斬ったですって!?」
零落白夜、展開!
これで俺の勝ち―――――――――
ズドオオオオオオオオオオオオンッ!!
「!?」
鈴に刃を向けた時、突然衝撃がアリーナ全体に走った。
これは、鈴の衝撃砲によるものではない。
範囲や威力が桁違いだ。
(『どうやら無粋な乱入者のお出ましの様ね』)
(『乱入者?』)
白鳥さんの言葉に、俺はもくもくと上がる煙を見つめる。
何やら煙の中から光が見えた気がした。
そしてハイパーセンサーが詳細に表示し、姿を現す。
『一夏、試合は中止よ!すぐにピットに戻って!』
(『避けなさい、織斑一夏!』)
(『っ!?』)
鈴の言葉を聞くことなく、俺は白鳥さんの言葉に反応した。
白鳥さんの警告の後からハイパーセンサーが危険を察知し、警告通知する。
所属不明のISからロックされている、と。
「くっ!」
熱源反応がしたため、俺は上空に飛んで回避する。
熱源は俺の横を通り過ぎていき、消えていった。
(『ビーム兵器かよ。しかもセシリアのISよりも出力が上………』)
(『気を引き締めなさい、織斑一夏。まだロックは貴方に向けられたままよ』)
(『分かってます』)
「一夏!アンタ、まさか戦うつもりなの!?ここはあたしが時間を稼ぐから、逃げなさいよ!」
「女の子を置いて自分だけ逃げるなんざ出来るわけねぇだろ」
「カッコつける暇じゃないよ、馬鹿!」
「っ、鈴!」
鈴が俺に会話している間に、隙が出来ていた鈴に所属不明のISはロックし、攻撃をしかけてきた。俺は攻撃する前に気づいたので、鈴の身体を抱きかかえてさらう。
危なかった。緊急事態なんだから、喋るよりも目の前の相手に集中しろよ鈴。
「ちょ、ちょっと馬鹿!離しなさいよ!」
「お、おい、暴れるなって。大人しくしてろ」
「う、うるさいうるさいっ!」
(『貴方達、この時くらい緊張感を持たないのかしら?』)
(『そう言われても、鈴が暴れるせいで』)
(『とりあえず降ろしてあげなさい』)
白鳥さんの指示で俺は鈴を下ろす。
何故か鈴は赤面したままだったのが気がかりだが、今はそれどころではない。
いまは襲撃者、異形の形をした灰色のISを対処するのが先決だ。
襲撃者は全身鎧で包まれている様に全身が金属、つまり全身装甲。
本来なら、ISは部分的の装甲だけで十分なはずだ。
その理由は、防御はシールドエネルギーと絶対防御により行われるので不要だからだ。防御重視のISもあるだろうが、肌を露出しないISは聞いたことが無い。
(『どう思います?』)
(『貴方の意見を聞いてから答えるわ』)
(『正直、腕を合わせて普通の人の身の丈以上ありますし、肌を露出しないISなんて聞いたことないですし、体中にスラスター口があるなんておかしいです』)
(『なるほど、良い着眼点ね。私もほぼ貴方と同じ考えよ』)
お、という事は褒められるパターンなのかな?
(『だけど90点って所ね。まだまだよ』)
(『ですよねー…………………』)
(『後付け加えるなら『あのISには人が乗っておらず、誰かが遠隔操作している』。という事で初めて満点になるの。惜しかったわね、織斑一夏』)
(『ホントですよ。って、うん?人が乗っていないって言いませんでした?』)
(『えぇ、乗っていないわ。貴方、言ったでしょ?全身にスラスター口が付いているって。普通全身に付けて、噴射すると人間がどうなるか知ってるかしら?』)
全身にスラスター口があって、噴射すると人間がどうなるのか。
ただでさえ普通のスラスターでGが強いのに、体中に何個も付けて噴射すると……………普通に人間の骨がバラバラになる。
(『気づいたかしら?』)
(『はい。じゃあ、白鳥さんの言うようにあのISに人が乗ってないって事は……』)
考えられる答えは一つだけだ。
俺の白式はバリアー無効化攻撃というある意味では危険な能力が備わっている。
そして襲撃者、所属不明のISには人が乗っていないと言う事は―――――
((『『存分に切り刻める!!!』』))
「一夏っ!先生たちが応援に向かうそうよ!それまでに足止めをする―――」
「いくぜ、白式!」
「ちょっ、人の話を聞きなさい!」
敵ISは俺が突撃してきたことに反応し、腕をこちらに向け攻撃してくる。
腕から放たれるビーム兵器は、セシリアの兵器以上の威力を誇る。
しかし、それがどうしたと言うだけの話である。
セシリアと箒の2対1の訓練で見慣れたし、おかげさまで白式の警告音無しでもレーザーが回避できるようになった。
「はぁあああああ!!」
白雫を敵ISの腕に向けて振りかざすとガキィィインッと、固い金属がぶつかり合った音が響いた。固い。どうやら通常状態は白雫では切れないらしい。
ならばシールドエネルギーを大幅に減らして斬るしかないだろう。
「ちょっと一夏!アンタまさか乗っている奴ごと斬る気じゃないでしょうね!?」
「鈴。勘違いしてるようだけど、あのISに人は乗ってないぞ?」
「はぁ?そんな訳ないでしょが!ISは人が乗ってこそ動くものなのよ!常識でしょうが!」
ははは。やっぱり信じてもらえないか。
それにしても、敵ISは俺と鈴がこうやって会話しているのに一旦距離から攻撃してこない。やっぱりまるで観察する様に窺っている。
(『相手、観察しているのかしら?それとも遠隔操作している奴は舐めているのかしら?』)
(『前半は兎も角、後半それはないんじゃないですか?2対1の状況なのに、考えない方がおかしいですって』)
(『貴方、やっぱりバカね。脳細胞が死滅しているんじゃないかしら?』)
(『えぇ!?なんでですか!?俺、間違ったこと言いましたか!?』)
(『考えてみなさい。普通この状況で態々こちらを観察するかしら?こちらは教師や上級生を含めれば数十人。あっち一人。それを知ってて乗り込んできたのならそれ相応の実力と能力があるって事じゃないの?』)
(『た、確かに…………ということは、あれを遠くで操っている人はそれを見越して攻め込んできた。あのISには、まだ秘策があるという事ですか?』)
(『まぁ、今のところはそういう事になるわね。来るわよ』)
(『はい!』)
敵ISがこちらへ向かってきた時、俺は動き出す。
このISを動かしているのは一体誰なのか知らないが、早急に終わらせる!
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全く以て相手が何を考えているのか分からないわ。
アリーナを乗っ取って、何を考えているのかしらね。
一応、変に緊張させない様に織斑一夏にはアリーナを乗っ取られていることは伏せているけど、大丈夫そうね。
「鈴、援護射撃を頼む!接近戦は俺に任せろ!」
「め、命令されなくても分かってるわよ!」
「頼りにしてるぜ」
「っ~~~~~!」
ホント、緊張感が無いわよね。
無自覚ってホント、ここまで行く神の領域と言いたいわ。
いつか織斑一夏は女を落とし過ぎて後ろからブスリと行くんじゃないかしら?
などと考えていると、連携を組んだ織斑一夏とツインは敵ISを追い込んでいる。
接近戦で敵ISにビーム兵器を撃たせない様に攻撃し、敵ISが接近戦へと変更し始めると織斑一夏が後方へ周り、ツインによる衝撃砲が放たれ攻撃できなくなり、隙が出来ると再び織斑一夏に攻撃される。
これじゃあまるでリンチね。
でも―――――――――――――
(『何かおかしいわね』)
(『白鳥さんもそう思います?』)
(『あまりにも簡単にやられてるからね。それとも、操っている誰かの技量が二人の連携よりも低かっただけか』)
(『どちらにしても、油断はできませんね。出来るだけ白鳥さんの手を借りずにやっていきます』)
(『あら、つまり私は要らないと言いたいわけね?私がいなくとも、これから自分でやっていける。そう言いたいわけ?』)
(『そ、そこまで言ってないです!白鳥さんは、これからずっと俺にとって掛け替えのない人なんですから必要じゃないわけありません!』)
(『残念だけど私は貴方のものじゃないのを忘れないでほしいわね。少なくとも貴方が満足するくらいに成長したら後は、私は貴方から離れるつもりよ』)
(『ウゾダドンドコドーン!!』)
すると織斑一夏の動きが急に安定しなくなり、急降下した。バイタルも何故か安定していないし、織斑一夏の表情だって凄く泣きそうな顔になっている。
「ちょ、一夏、急にどうしたのよ!?」
ツインが心配そうに声を掛けるが、敵ISによって阻まれ向かう事が出来ない。
はぁ、なんでそんな顔をしてんのよ。
(『あと噛み過ぎよ。そこまで動揺する事なの?』)
(『ど、動揺しますよ!なんでなんですか!?なんで離れないといけないんですか!?』)
(『毎度貴方と付きっ切りは疲れるのよ。私の身にもなってみなさいよ。朝から夜中まで貴方と付きっ切りで、外に出て散歩も出来ないままよ?貴方が私が必要じゃないくらいに成長した日にはって……………なんでそんな安心した顔をしてんのよ』)
(『いえ、ただ安心したなぁって思っただけです。(よかった………離れるって、一旦距離を置くって意味なのか………)』
安心?どういう意味で安心なのか知らないけど、まぁいいわ。
しかし、やたらと相手が弱い。
腕をブンブン振り回すし、コマの様に回りだすし、おちょくってんのも良い所ね。
コマの様に回っている間ビーム兵器で攻撃するけど、全て避けられるし止まったら止まったで二人の連携でリンチが続く。操作している奴は素人?
(『なんか回るのが少し厄介ですね。どうします?』)
(『じゃあ零落白夜を使って頭を飛ばしなさい』)
(『え?腕ではなく、頭ですか?』)
(『そ。その方が、相手は何が起こっているのか理解できなくなるだろうし、無差別攻撃に徹してエネルギーを減らすかもしれないからね』)
(『なるほど。じゃあ、そうしますっ!!』)
「はぁあああああああああ!!」
零落白夜を展開し、織斑一夏は敵ISの首を一刀両断した。
首を両断され、頭が転がると同時に敵ISは未だ動く。
だが、右往左往と何かを探すかのように体を動かし始めた。
(『白鳥さんの言う通りですね』)
(『さて、後は勝手にエネルギーを減らしてくれるのを待つわよ』)
(『はいっ』)
常々思うけど、貴方最近私に従順じゃないかしら?
まるで主人に懐く犬にしか見えないわよ?
「一夏の言う通りだった……………もしかして最初から知ってたの?」
「え!?あ、いや、その……………あくまで予想だったんだけど、白式が探知して確信を得たんだよ。そう、白式のお蔭だ」
「ふ~~んっ………でも、予想でもやるじゃないの。見直したわ、一夏!」
(『まぁ、事実私のお蔭なんだけどね』)
(『ホント感謝してますよ、白鳥さん―――――――――』)
ガションッ!!
((『うん?』))
何やら敵ISのいる方向から気になる音がした。
視線を向けると、敵ISは地面に手を突き、姿勢を低くしたのだ。
するとまるで蜘蛛の様に這い蹲り、こちらを見ると同時に動き出したのである。