鈍感な彼と自意識過剰な彼女の学園物語   作:沙希

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 勝利をおさめた後、私は織斑一夏と一緒にアリーナから少し離れた人気のない場所にいる。セシリア・オルコットとの戦いを終えてから彼の幼馴染らしき人物や姉から遠まわしの称賛されていたのが記憶に新しい。

 

(『とりあえず、おめでとうと言えばいいのかしら』)

 

「ありがとう。でも、試合の殆どが白鳥さんのお蔭で勝てたんだけどね。…………………本当にありがとう、白鳥さん」

 

(『貴方が不甲斐なくて、私は負けるのは嫌だから手伝ってあげたまでよ。そこは勘違いしないでもらいたいわ』)

 

「はいはい」

 

 なんかムカつくわねその顔は。

 とりあえず人気の少ないベンチに織斑一夏は腰を掛け、私は特に立っても座っても疲れを感じないので浮いていることにした。

 

「それで聞きたい事なんだけど、いいですか?」

 

(『えぇ、構わないわよ。まぁ、大方貴方は何ですか?白式のなんですか?とかでしょ?』)

 

「はははは。すでに御見通しってわけですね」

 

(『まぁ、端的に言えば私は白式に憑依した元人間なんだけどね』)

 

「え?元人間って、死んだんですか!?」

 

(『そうなるわね。輪廻転生。この言葉の意味が分かるかしら?』)

 

「え、えっと確か…………死んだら、生まれ変わるってやつですよね?」

 

(『そ。私は一度、この世界じゃない世界で死んで、この世界に転生し、白式に生まれ変わったかもしくは憑依したの。荒唐無稽な話でしょ?』)

 

「そ、そんな事は………あれ?この世界じゃない世界で死んだってどういう事ですか?」

 

(『はぁ。そこから説明しないといけないなんて…………貴方、察しが悪いとか言われたりしない?主に女性や友人から』)

 

「……………………よくあります」

 

 でしょうね。明らかにそんな雰囲気しているもの。

 とりあえず、織斑一夏には私なりに分かり易く私の事情を説明した。

 所々に疑問符を浮かべるせいで少しイラッとしたけど。

 

 

 しかし、本当にこれからどうするべきだろうか私は。

 一応、彼の専用機という事になっているんだし、一生彼と共に過ごさないといけなくなる。つまりは死ぬまで運命共同体という嫌な構図が出来上がるわけなのだが。

 

(せめてやり直すなら、赤ん坊からやり直したいわよ……………)

 

 もし神様というふざけた存在がいるのだとすれば殴り飛ばしてやりたい。

 こんな不幸な私に追い打ちをかける神様だ。きっといけ好かないジジィに違いない。

 母親の子宮からやり直せるなら、どれだけマシな事か。前の世界での教訓を活かして、夫もとい糞野郎みたいな男なんかと結婚しない未来を過ごせただろうに。

 

「そ、その、一ついいですか?」

 

(『何よ。いま物凄く機嫌が悪いから死んでもらえないかしら?』)

 

「そこは話しかけないでってのが普通ですよね!?」

 

(『まぁいいわ。で?何か分からない事でもあったのかしら物分かりが悪い織斑一夏君?』)

 

「物分かりが悪いって………えっとですね、白鳥さんって何歳―――――――」

 

(『次にISを展開する時は覚悟しておきなさい。生徒の前でコマネチを30分間披露させてやるんだから』)

 

「やめてください(精神的に)死んでしまいます!」

 

(『女性に年齢を聞くものじゃなわよ。貴方、デリカシーというものが欠けている………………あ、ごめんなさい。元々無かったわね。失言だったわ。今のは忘れて』)

 

「おもくっそデリカシー欠けてるって言ったのに忘れる方がおかしいよね!?」

 

 いい加減、私の言葉にツッコミを入れて疲れないかしらこの子は?

 まぁ、弄りがいがあるし良い反応を返してくれるから止められないのよね。

 ある意味、この子気に入ったわ。

 

「あ、あの、白鳥さん?なんかデジャヴを感じる笑みを浮かべているんですが、なんでなんでしょうか?」

 

(『フフフ、それはね。私があなたを気に入っただけどよ』)

 

「え?」ドキッ

 

(『――――貴方みたいな弄りがいのある子をみると楽しくてイジメたくなるわ』)

 

「だと思ってましたよチクショー!!」

 

 少なくとも、これから退屈はしないでしょうね。

 まさか搭乗者が此処まで面白い子だとは思ってもみなかった。

 そこらの男なんかよりマシだけど、この子はイジメると栄えるタイプね。

 

(『フフフ、これからの生活が楽しみだわ』)

 

「こわっ!?なんか怖いよ白鳥さん!?」

 

 何を言っているのよ織斑一夏。

 美少女であるこの私が怖い顔をするわけないじゃない。失礼ね。

 

 

 

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 後日、SHRで俺がクラス代表になることが決定した。

 クラスメイトのみんなも賛成してくれたし、何より反対だったセシリアも喜んで賛成してくれた。

 なんで勝っちゃったんだろうって後悔もあったが、勝ったからには俺がクラス代表になる事を決意したのは言うまでもない。

 

(『その事だけど、クラス代表を賭けて戦ったのでしょ?別に勝ったらクラス代表になるわけじゃないんだし、譲ればよかったと思うわよ』)

 

(『その手があったけど時すでに遅いぃいいいいいい!!』)

 

 現在ISの実習訓練でグランドに集まってISの基本的な動作を行う事になり、俺とセシリアで空を飛んでいる中で俺は白鳥さんの言葉に叫び声を上げた(プライベートチャンネル内で)。

 

(『それにしても、彼女、セシリア・オルコットの豹変には驚いたものね。まさかと思ってたけど、あんなに変わるとは思ってもみなかったわ』)

 

(『あぁ、そういえばそうですねぇ。前と比べて物腰が柔らかかったし、それに謝罪までしてきたんだからな』)

 

(『そして貴方のことを『一夏さん』って名前で呼んでたし………あの子、絶対に貴方のことゾッコンLoveの筈よ』)

 

(『はっはっはっは。それは無いですって白鳥さん。昨日今日で惚れるって、漫画じゃあるまいし。それに、俺なんかじゃ有り得ないですって。むしろ仮にゾッコンLoveだったとしても、裏がありそうですよ』)

 

(『今すぐにでも貴方の股にぶら下がっている汚らわしい棒を毟り取りたいわ』)

 

(『やめて!そんな事をしたら俺の男としての尊厳を失っちゃう!』)

 

 てか、なんで怒ってるんですか白鳥さん!?

 俺なんか拙い事でも言いました!?

 

(『あなたに尊厳なんて大層なものが存在するの!?』)

 

(『なにその驚き方!?俺にだって尊厳はありますけど!?』)

 

(『それはまぁ、どうでもいいとして』)

 

 いや、良くないんですけど。

 いまISを展開しているというときに俺の尊厳を毟り取られるかもしれないのに、どうでもよくないんですけど!?

 

(『貴方、少しくらい自分に自信を持った方が良いわよ』)

 

(『自信を、持つですか?』)

 

(『俺なんかとか、俺みたいな奴とか自分を卑下しているけど、この私が見る限り貴方は魅力的だし、顔立ちだってキリッとしてて凛々しい所だってあるわ。身体は痩せてもなく太ってない引き締まった身体だし、普通にそこらのメスをホイホイ出来るわよ』)

 

 そんなGホイホイみたいに言われても………………。

 それにしても、白鳥さんって俺のことをそんな風に見てくれてたのか。

 なんだかとっても照れくさいな。

 

「一夏さん、初心者なのに上手く飛べているようですね」

 

「え?あ、あぁ、そうだな。イメージを固めて飛べばいいって言われて、なんとか飛んでるけど、やっぱり難しいな」

 

(『お蔭で夜中まで私が懇切丁寧に教える羽目になったわ』)

 

 ホント感謝しきれないです白鳥さん。

 別世界の人なのに、俺なんかよりもISに詳しくて勉強に付き合わせてしまって。

 今度何か奢ってやらないと。って、白鳥さんは幽霊、もとい白式だから食べ物とか衣服なんか着れないか。

 

「あら、わたくしとの決闘の時は絶妙なバランスで飛行し、回避していたようですけど?」

 

「あ、あれはその………そう!火事場の馬鹿力ってやつなんだよ!あと、白式の性能のお蔭なんだ!」

 

「はぁ。しかし、白式の性能でも、さすがに初期設定でわたくしの攻撃を全て回避できる要因になりませんが………………」

 

 ギクッ。セ、セシリア……かなり鋭い。

 実は白鳥さんの操作のお蔭だなんて、信じないだろうしそれに白鳥さん自身は自分の事を周りに広めないでほしいって言われてるからな。

 まぁ、俺自身も言いたくないんだよねこの事。だって俺以外誰も見えてないし、もし口外したら俺が精神異常者、サイコパス患者みたいに思われるだろうからな。

 

(『それよりも、何だか彼女を見てるとコロネが食べたくなるわね。あのドリル』)

 

(『あ、俺もちゃっかり初対面の時も思いました。なんか思い出すと俺もチョココロネが食べたくなってきましたよ』)

 

(『じゃあ今度彼女のISにメッセージを送るわね。『織斑一夏は貴方を食べたいそうよ』って』)

 

(『いや、セシリアじゃないですよ!?というかそんな事出来るんですか!?』)

 

(『出来るんじゃないかしら。今度試してみましょうか?もちろん、私が言った言葉を送るつもりだけど』)

 

(『送るならもっとまともなメッセージにしてください!』)

 

 もし白鳥さんのセリフをセシリアのISに送られた日には下種を見る様な目で見られるかもしれない。

 い、いや、セシリアに事情を説明すればきっと分かってもらえるだろう。

 うん、大丈夫。万が一送られても大丈夫なような言い訳を用意すれば。

 

「あ、あの一夏さん!その、よろしければ放課後に指導してさしあげますわ。そのときは、ふたりきりで―――――」

 

「え?なに、セシリア―――――」

 

「一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りてこい!」

 

「ふぉおおおおおおおおおおお!?」

 

 いきなり通信回線から怒鳴り声が耳に響き、俺は耳元を押さえる。

 音量は操縦者の思考に合わせて変わるのだが、耳を押さえる程の怒声が俺の鼓膜を打ち抜く。どんだけデカい声を出すんだよと見ると、遠くの地上で山田先生のインカムを箒に奪われておたおたしていた。

 あ、千冬姉に叩かれた。

 

(『嫉妬ね。きっと他の女と貴方が一緒にいるのが気に食わないんでしょう』)

 

(『はい?なんでですか?』)

 

(『……………いまから此処から地面に向けて弾道ミサイル並の速度で落ちて埋もれるか、大気圏から学園に向けて隕石の速度で落とされたいのとどちらがいい?』)

 

(『ふぉぉお“い!?またですか!?また俺、拙い事を言いました!?』

 

 セシリアの時といい箒の時といい、何か俺って間違ったことを言ったのか!?

 さっき白鳥さんに、自分に自信を持てって言われたのと関係があるのか?

 う~~~んっ、分からん。教えてもらわないと、分からないんだが……………。

 

『織斑、オルコット。急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10センチだ』

 

「了解です。では、一夏さん。お先に失礼しますわ」

 

 そしてすぐさまセシリアに向かった。

 ぐんぐん小さくなっていく姿を俺はちょっと感心しながら眺めた。

 そして完全停止を難なくクリアしたようである。

 

(『分かっているわね?徐々にスピードを落としていくのよ?』)

 

(『分かってますって。白鳥さんに何度も教わりましたから、イメージは固めてます』)

 

(『もし失敗したらあらゆるネットワークを使って貴方の間抜けな姿を公にさらしてやるわ』)

 

(『最先端技術の無駄遣いも良い所ですよ白鳥さん!?』)

 

 と、とりあえず何としてでも成功させなければ、もし失敗してその失敗した所を世間にさらされてしまったら俺は顔を上げて外を歩けなくなってしまう。

 

(……………………よしっ!)

 

 意識を集中し、背中の翼状の突起からロケットファイアーが噴出しているイメージを思い描く。

 それを傾け、一気に地上へ!

 

(『ちょ、バカ!スピード出過ぎよ!』)

 

(『え?』)

 

   ギュンッ――――――――――――――――ズゥゥゥウウウンッ!!

 

『きゃっ!?』

 

 地上に着くと、急に白式は態勢を変えて、翼状から出る噴射を利用して着地する。

 お蔭で、地面が噴射によって凹み強い爆風が吹き荒れて生徒達の悲鳴が上がった。

 

(『バカ!貴方、地面とキスするつもりだったわけ!?』)

 

(『す、すいません…………その、ありがとうございます』)

 

(『まったく…………………もういいわ』)

 

 白鳥さんは飽きれたようにそっぽを向いてしまった。

 ………………はぁ。白鳥さんの機嫌を損ねてしまった。

 理論上だけど、分かり易く教えてくれたのに俺ってやつは…………。

 

「馬鹿者。お前は地面に激突するつもりか?幸いお前の機転が利いたからいいものを」

 

「…………すいません」

 

「全く情けないぞ一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

 いえ、そんな自信満々に腕組をして言われても。

 箒のあの擬音だけの説明でどうやって理解すればいいのか俺の感性はそこまで発達していないんだよ。

 出来ればその感性の発達を俺にも分けてほしいです。

 

「何か失礼な事を考えなかったか?」

 

「い、いや、そんな事はない!」

 

「大体だな、一夏。お前という奴は昔から―――――」

 

「一夏さん!大丈夫ですか?」

 

「え?あ、ああ、大丈夫。特に、どこも怪我していないし」

 

「そう。それは何よりですわ」

 

 そう言って楽しそうに微笑むセシリア。

 ISには絶対防御やシールドがあっても、怪我をする可能性だってあると思うし白鳥さんのお蔭で怪我をしなくて良かった。

 ほんと、白鳥さん様様だよ。

 

 

 とりあえず何故かいつの間にかいがみ合っていたセシリアと箒を、千冬姉が出席薄で叩いて止めて、武装の展開を行うのであった。

 

 

 

 

 

 そして授業が終わり、放課後となる。俺は白鳥さんと共に更衣室へ来ていた。

 勿論、これからセシリアと箒と一緒に訓練を行うからである。

 しかし、いま俺は訓練よりも白鳥さんのことが気になって仕方が無かった。

 何故なら、授業の時に機嫌を損ねさせてからずっと会話していない。

 ずっと声を掛けていたのだが、中々返事を返してくれないし、見向きをしてくれなかった。

 

「なぁ、白鳥さん。その、今日の授業の時は―――――」

 

(『もういいわよ、そのことは。私も少し、考慮するべきだったわね』)

 

「え?」

 

(『初心者なのに、理論だけ押し付けられても出来ない人間は存在するわ。いくら完璧な私でも、説明だけ聞いても完璧な形で成功する訳でも無いし。私ったら、子供みたいになって勝手に拗ねて。ごめんね』)

 

 白鳥さんはそう言って謝った。

 本当なら、世話になっている俺が謝るつもりだったのに。

 

「い、いいですよ謝らなくて!白鳥さんには勉強やISのことで世話になってるんですし、出来なかった俺が謝る方ですよ!」

 

(『そう。なら、お相子って事でいいかしら?』)

 

「っ…………そ、そうですね!」

 

 いま、滅茶苦茶ドキッとした。

 普段から高飛車で、自信満々な彼女だけど、あんなふうに笑うのは予想外だった。

 あれ?なんだろう、この感じ。

 白鳥さんを見ると、なんかスゲェドキドキが止まらない。

 顔を見るだけ顔が熱く感じる………………。

 

(『それよりも、早く着替えなさい。アリーナで二人が待っているわよ。あんまり遅いと、二人の機嫌を損ねることになるわ』)

 

「あ、そ、そうですね!急いで着替えましょう!」

 

(『私は先に行ってるわね』)

 

 そう言って壁をすり抜けていく白鳥さん。

 白鳥さんがいなくなったのを確認すると、俺はロッカーを背もたれにする。

 

(…………………未だドキドキが止まらない。なんだろう、この感じ)

 

 分からない。今まで感じたことのない感覚。

 俺はこの感情が何の意味を指すのか、その意味を知るのは少し先になる。

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

「というわけでっ!織斑君、クラス代表決定おめでとう!」

 

『おめでとう!』

 

 ぱん、ぱんぱーん、とクラッカーが乱射され、織斑一夏の頭に紙テープや紙ふぶきが降り積もる。

 周りが女だらけのせいか、少し居心地が悪そうな顔をしていた。

 

(『スッゲェ―気まずい!』)

 

(『でしょうね。私が貴方の立場で、周りが男共だったら酸欠して悶え死ぬわ』)

 

(『さすがにそこまでじゃないですよ!?』)

 

(『まぁ、それは良いとして楽しみなさいよ。せっかくここまで華やかに祝ってくれているんだから』)

 

(『そう言われましても…………男一人だけ騒ぐのは、なんか気まずいし、それに楽しむって言ったって』)

 

 そう言って手に持っているジュースを飲み、落ち着かせている。

 難儀よね、本当に。まぁ、気を使いたい気持ちは理解できなくもないけど。

 何をしたらいいか、周りをどう楽しませればいいか。

 彼がホスト崩れだったら少しは楽しませるでしょうけど、彼は普通の男で学生。

 無理な話ね。

 

(『白鳥さん白鳥さん』)

 

(『何よ。まさか周りが女だらけだから欲情したので性処理を手伝えなんて言わないでしょうね?』)

 

(『そんなこと言ったら絶対に俺、白鳥さんに嫌われるじゃないですかやだー!そ、そうじゃなくて。なんか箒、ていうか、幼馴染の機嫌が凄く悪いような感じなんですけど………………どうしたらいいでしょうか?』)

 

(『とりあえず死になさい。世の女の為にもそれが一番よ』)

 

(『理由が全く分からないのに理不尽すぎる!?』)

 

 どうせその掃除道具と同じ名前の子も、貴方に好意を抱いているのでしょうね。

 それに気づかないなんて、どれだけ鈍感なのよこの男は。

 少しは自意識過剰になってもいいんじゃないかしら?

 それに私が口出しするのはお門違いだし、こういうのは自分で気づいてこそだ。

 まぁ、精々頑張りなさいよ、男も女も。

 

(それにしても、なんだか私までお腹が減ってきたわね。今までそんな事なかったのに、なんでかしら。まぁ、どうせすぐに収まるでしょうけども)

 

 幽霊なのになぜ空腹を感じるのか考えたが、そんな有り得ない現象を考えるなど時間の無駄だと思い私は考えるの止めて、織斑一夏がここに居る殆どの生徒と写真を撮っているのを見つめるのであった。

 

(……………………懐かしいわね、学園生活なんて)

 

 

 

 

 

 パーティーが終えて私たちは部屋に戻る。

 幼馴染がベッドに入って、寝息を立てているとき織斑一夏がタイミングよく私に話しかけてくる時間だった。

 これが恒例となっている。

 

(『白鳥さんは、高校生活とかどんなふうに過ごしていたんですか?』)

 

(『また唐突ね。まぁ、普通じゃないかしら。1年で生徒会長になって、生徒の中心になって、学年とわず全国模試では常に1位をキープしていたし、品行方正は正しくして、風紀だって守っていたわ』)

 

(『1年で生徒会長って、それだけ白鳥さんって人気があったんだな』)

 

(『当り前じゃない。何せ80%の生徒が私を生徒会に支持したのよ?容姿端麗で文武両道の完璧な私だからこそ成せることよ』)

 

 まぁ、おかげで私を嫉む女子や男子も少なくはなかったけどね。

 お蔭で処理するのが面倒だったし、恨みをよく買ったものだわ。

 手段を問わず、色々と嫌がらせをするのものだから完膚なきまで相手を破滅に追い込んだものだけど。

 

(『はははは、確かに。白鳥さんって、高飛車だけどなんだかんで優しいし、相手の考えをちゃんと尊重してそうですよね』)

 

(『………………そんな綺麗なものじゃないのだけれどね』)

 

(『??……………白鳥さん?』)

 

(『何でもないわ。それよりも早く寝なさい。今日は疲れてるでしょ』)

 

(『えぇ、もうですか?もっと何か話しましょうよ』)

 

(『貴方は絵本を読んでほしいとせがむ子供なの?とりあえず寝なさい。人間、知らないうちに疲労している所があるのよ。貴方の場合は手遅れな部分があるけれど』)

 

(『俺の頭を見て言わないで貰えません!?手遅れじゃないですから、俺の脳みそ!』)

 

(『とりあえず、寝ろ』)

 

(『……………はい』)

 

 そう言って目を瞑り眠る織斑一夏。

 眠った事を確認した私は、ベランダに出て空を眺める。

 周りの街灯の成果、少々星が見えにくい空だった。

 

(優しくて相手の考えを尊重している、か。バカ言わないでほしいわね。私は今も昔も、自分の意見を通してきた女よ。優しいもクソも、あるわけないじゃない)

 

 

 


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