鈍感な彼と自意識過剰な彼女の学園物語   作:沙希

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 シロナとの戦いから数日が経つ。戦いの後に、直ぐに保健室に運ばれた俺たち。

 保健室の先生がボロボロになっている俺とシロナを怒鳴り散らしているさながら苦笑いしていたのは言うまでもない。

 見舞いに来た生徒達から『目にも止まらぬ速さだった』、『引き分けだったけど凄かった』などと言って小並感溢れる感想の嵐だった。

 

 

 しかし流石に納得がいかない部分もある。最後の一騎打ちの時に放った技はシロナの技により粗方弾かれてしまい幾つか攻撃を受けており、シロナに攻撃が通らなかった。

 シロナが倒れたのは体全体の疲労によるものであるのに対し、俺は疲労+攻撃によるダメージで倒れたのだ。

 なので結果的にシロナの勝ちである。

 負けるつもりは無かったのだが、勝敗を分けるのに身長の高低差が含まれているとは思ってもみなかった。

 

「(幽霊の時より身長が伸びてるけど、俺より低い事には変わりないし)にしても痛いな、おい」

 

 シロナの最後の攻撃で腕に受けたアザが痛い。

 腕の他に胴や肩にも受けたのだが、痣になるような状態には無かった。

 しかし、刃が潰されていなかったら間違いなく死んでいる。

 

「にしても、どうするかなこれから……………」

 

 あの戦い以来、箒達がハードな特訓をし始める様になって、何か手伝う事はないか?と聞いたけど『必要ない』って言われたしなぁ。

 シロナと約束事を取りたいけど、職員室は人気のある場所でそういうのをやると変な噂が立ってしまうからなぁ………はぁ。膝枕の時みたいな展開が起こらないだろうか?

 

「よしっ。散歩でもするかな」

 

 特訓は午前中で済ませたし、午後は散歩で時間を潰そう。

 出来れば金を掛けたくないが、まぁ歩いて行ける距離まで散歩すればいいだろ。

 俺は私服に着替え、財布をポケットにしまい、机に置いていた待機状態の白鵠を指にはめて、外出許可を得てからIS学園の外に出るのであった。

 

 

 

 

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 職員室にて。

 目の前の惨状に少し私や職員達が唖然とする。

 

「「「………………………」」」

 

 目の前、私の机の上には大量に手紙やら贈り物の入った段ボールが置いてある。

 しかも一つではない。3つ4つ重ねてある。

 最初みたときは書類なのかと腕を鳴らしたのだが、見当違いだった。

 

「これは、なんでしょうか織斑先生?」

 

「生徒達からのファンレターや贈り物だそうだ。先日の織斑との一見が、歯車となったらしいからな………………」

 

「生徒達が一斉に職員室に来た時は驚きでしたよ、本当に」

 

 私が少し場所を外して休んでいる間、そんなことが起こっていたとは………。

 目の前の段ボールを見て少し頭痛がする。

 

 

 私自身、ファンになってほしくて先生やってる訳でも無いのだけれど。

 しかし、流石にこのまま焼却炉に全部焼き払うというのは生徒がかわいそうなので取り敢えず私は手紙を手に取り、中身を見る。

 

『白鳥先生。私と一緒に放課後の個人レッスンを施してくれないでしょうか。キャッ♪』

 

『白鳥先生。もしよければ私を妹にしていただけないでしょうか?』

 

『お姉さまと呼ばせてください!』

 

『その……出来れば、私と恋仲に、いえ………まずは主従関係からお願いします!』

 

 思わず頭痛を通り越して、呆れる事しかなかった。

 なんだこの有難迷惑なファンレターは。

 特に2番目と最後には裏がありすぎて、逆に恐ろしく感じる。

 

「織斑先生。私はこれほどまでに立場を変わってほしいと思ったことはありません。もしよければですが―――――――――」

 

「結構です。ただでさえ自分のクラスで頭痛がするのに、これ以上は無理です」

 

「で、でも良かったじゃないですか白鳥先生!生徒からこんなにも親しまれていますし、正直私は羨ましいです」

 

「では山田先生が私の代わりになってくれますか?」

 

「あ、それは結構です」

 

 笑顔で即答された。可愛い顔をして何気に酷いですね山田先生。

 羨ましいのなら変わっても問題ないでしょうが…………。

 しかし、手紙は兎も角お菓子などがあるから大変である。

 

 

 幸い手紙の方が多いので安心するが、お菓子が手作りばかりであるため賞味期限は今日と明日くらいだろう。先生方にお裾分けして減らすとしましょうか。

 

「あら、メール」

 

 すると携帯端末にメールが届いた。

 フォルダを開き、送り主の名前を見て私は少し驚く。

 慌ててメールの内容を凝視し、端末を閉じて溜息を吐く。

 

「はぁ…………」

 

「何かあったんですか?もしや、政府からとか?」

 

「いえ、それならまだ楽だわ。相手は私の肉親、父からのメールよ」

 

「はぁ、白鳥さんの御父さんですか。確か、ドイツの?」

 

「えぇ、そう。本当なら今頃ドイツにいるはずなのに、急に呼び出すんだから。」

 

「いったいどんな内容だったんですか?」

 

 

 

 

 

「お見合いよ」

 

 

 

 

 

「へ?」

「ほぉ」

 

 とりあえず、面倒くさい事になったわ。

 これなら、政府からの苦情がまだマシだわ。

 

 

 

 

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 散歩を始めて2,3時間が経つ。

 電車に乗らず、隣町を往復したのだが特にやる事はなかった。

 顔見知りの人や友人と出会ったりもしたが、それ以外特にない。

 何もやる事がないまま終わってしまったので、俺はIS学園へ戻ろうと思った。

 

「はぁ……………暇だな。これなら学園でシロナを探せばよかったか」

 

 多少噂されても、気にしなければいいだけだしな。

 はぁ、ちょっと後悔したかも。でも、まだ昼前だし十分に時間があるからな。

 学園についたら、シロナを探しに行こうかな。

 

「って、あれは……………シロナか?」

 

 ショッピングモールへ入ると、シロナの後ろ姿が目に入った。

 シロナもショッピングモールに?

 じゃあ声を掛けてさり気なくデートに誘うかな。

 そう思った時だった―――――――

 

『おぉ、シロナ!元気だったか!』

 

『ちょ、公衆の面前でいきなり抱き付かないでよ!』

 

『はっはっは、照屋さんめ。やはりシロナは最高に可愛いなぁ』

 

『だ、だから離してっ!』

 

 …………………あ゛んっ?

 誰だ、あの野郎は?見た限り、シロナの知り合いみたいだが誰だ?

 つうか、誰の女に手を出してんだあの****野郎は?

 よしっ、いいだろう。ならば戦争だ!!

 

「テメェ、なにさらしとんじゃ糞野郎が!!!」

 

「ごっ!?」

 

「ちょっ、織斑君!?」

 

 勢いを付けて、男目掛けて蹴りを放った。

 男はそのまま吹き飛んでいき、俺は男よりもまずシロナの安否を確かめる。

 

 

 見た感じ抱きしめられたこと以外に何もされていないようだが心配だ。

 嫌がっているシロナを抱きしめやがって。

 くっそ羨ましいもとい、破廉恥な奴め!

 

「大丈夫ですか白鳥先生?怪我とかはないですか?」

 

「は?いや、怪我はないけど、それよりも早くあの人を」

 

「問題ないです。あの***で*****の*******野郎は直ぐに豚箱にぶち込んでやりますから。白鳥先生は安心してください」

 

「ほぉ、***で****の*******野郎とは私の事を言っているのか小僧?」

 

「っ、まだ生きてやがったか痴漢!公衆の面前で堂々と痴漢まがいな事、恥を知れ!」

 

 隠していた木刀を抜き、シロナを庇おう様に構える。

 俺の蹴りで気絶や痙攣しないほど頑丈なようだが次は容赦無用だ。

 技で意識を一瞬で刈り取る!

 

「ちょっ!?織斑君!?」

 

「ふん、威勢がいいのは結構だ小僧。しかし……貴様は何様のつもりでシロナに触っていやがるゴミ屑。このまま地獄に叩き込んで―――――――――」

 

「もういい加減にしなさい!!」

 

「ごっ!?」

「がっ!?」

 

 男が言い終える瞬間にシロナの正拳突きが俺達の水月に直撃。

 思わず息が止まりそうになるくらい強烈な一撃だった。

 

「もう、お父さんも織斑君もなにやってるのよ!公衆の面前で喧嘩なんかするんじゃないの!お客に迷惑が掛かるでしょうが!お父さんは大人なんだから、それくらい分かりなさい!あと、織斑君は木刀を人に向けないの!IS学園の生徒なら、場所を弁えなさい!!」

 

「す、すまんシロナ…………」

 

「す、すいません、白鳥先生……………」

 

「「うん?お父さん/生徒だと?」」

 

 俺と男は互いに見つめ合う

 え? お父さんって、この男の事だよね? え?つまりえっと、何か?

 目の前にいる、蹴りをかました相手が―――――――――

 

「白鳥先生のお父さん!?」

 

 俺は思わず、驚愕して大声で叫んだ。

 だって………………全然似てないんだもん。

 明らかに外国人だし、顔がゴツイし、似ている所なんて見当たらない。

 逆立ちしても、その現実が変わらないくらい。

 だからこそ、俺は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな***で****の*******野郎なんかが白鳥先生のお父さんな訳がない」

 

「おい、口に気を付けろよ小僧。早死にしたいのか?」

 

「喧嘩腰になるんじゃないわよ、バカ」

 

「「あたっ!?」」

 

 

 

 

 


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