境界の彼方~G-ゴジラ-を継ぐ者~   作:フォレス・ノースウッド

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※この話は、ほんとにこの子が原作主人公?ってなくらい秋人君が暴走気味な回です(変態系主人公は挙げれば結構出てくるけど)
ほとんど原作でもこの場面はそんな感じです。
秋人君の度を越したメガネを見る覚悟のできてる方はどうぞ。


EPⅤ – ストーキングボーイズ

 名瀬の屋敷を出た僕と博臣は、園芸の草花に水やりする澤海――ゴジラと言う考えてみると偉く珍妙な光景(それを言ったら彼が〝日常〟を送っていること自体が珍妙な話だけど)を目にしつつ、最寄駅から、大都市に繋がるのにやけに単線、つまり上下とも一つの線路を共用している区画が多い不可思議な点のある路線の電車に乗って、都市部へと向かっていた。

 目的地の最寄り駅まで約30分、それまでは車内に揺らされる格好だ。

 

「そろそろ不機嫌顔を直してくれないかアッキー? 手続きには二人分の署名が必要なんだから仕方ないだろ、俺だって美月の看病したい気持ちを抑えているんだからな、滅多に風邪引かないから、未だに冷却シートを貼り替えさせてくれないと言うのに……」

 

 博臣のぼやきに釣られて僕も溜め息吐いた。

 

「一体博臣はどこに向かおうとしてんだか分からないよ」

 

 段々都市部へ向かうにつれ、車内の人口密度が高くなって騒がしくなってきた。

 特に女子たちの全然ひそひそになってないひそひそ話が目立つ、意識せずとも耳が会話を捉えてしまう始末。

 会話の数はたくさんあれど、その内容(なかみ)は大体一緒――「あのマフラーの人、目茶苦茶カッコいい!」なんてものだった。

 目的地の最寄駅に着き、電車を降り、改札を抜けてからも擦れ違う同年代の女子たちがこちらに目を向けてひそひそしている。具体的会話は聞きとれずとも、さっきの電車に同情していた女子陣と大差ないのは容易に想像できた。

 僕は話題に上がっている張本人――博臣を一瞥する。異能の代償で年中冷え性に悩まされている彼は、年中マフラーを首から手放せない。なので、今日もファッション誌に載ってそうな春服の組み合わせの上に襟巻きの季節感がごちゃまぜな風体だ。

 しかし平安貴族の衣装……どころか光源氏を演じられてしまう類まれな美貌(ルックス)は、そんな季節がちぐはぐな服装もプラスに転じ、女子を虜にさせてしまう。

 これが僕だったら「5月にマフラーとしか超ウケるんですけどwww」と笑い者と晒されよう。そこそこ顔立ちは悪くない自負はあるだけに、余計悔しい。

 やっぱり代理役は澤海に頼んだ方がよかったかなと思ったが、少し考えてみたらあんまり変わらないことに気づいた。

 ゴジラの姿からして、歴代屈指のイケメンフェイスな彼は、人間の姿でもシャープで近寄り難さはあるけど、博臣とは違ったベクトルで端正な容貌をしていたからだ。

 髪型も、染めてないのを除けばケータイで変身し、名の読みが一緒であだ名も同じ〝たっくん〟なライダーがしてそうなもの、そんだけ髪が長いとそこらの男では痛々しさしかないが、澤海はちゃっかり強みにしてしまっている。

 だから彼と出歩いていても、結局は周囲の視線を釘付けにする友人にちょっとした世の不条理を感じさせる展開は避けられなかっただろう………なんてちょっとした不条理なシチュエーション考え付いてしまうのを禁じ得ない。

 

「美月の依頼書は忘れてないよな?」

「ちゃんと持ってますよ~」

 

 僕は身に付けたワンショルダーから封筒を取り出し、見せた。

 この中には美月が予め作成してくれた依頼書が入っており、僕が長ったらしい説明するまでもなく印刷所の業者にこれを見せるだけで〝芝姫記念号〟の製本依頼を達成できると言っても良い。

 

「なら良かった、これで部長の美月代理としての責務は果たせる」

「どんだけ妹絶対主義なんだよ博臣は……」

「メガネっ子絶対主義者のアッキーにだけは言われたくない」

 

 辟易とした顔になって呆れる僕に対し、おどけた調子で肩をすくめた博臣は直後、視線を送ってくる女子たちに対し、空港で待っていたファンの黄色い声援に応える来日したてのハリウッド俳優ばりに笑顔を振りまき、ウインクまで披露した。

 博臣の艶やかな目を前に、受けた女子の胸は撃ち抜かれたのは言うまでもない。

 

「そんな顔するなアッキー、兄として妹から誰に紹介されても恥ずかしくないよう日頃から好感度を大切にするのは当然の務めだ」

 

 

 顎が地面にゴテン!とぶつかりそうなくらい絶句してあんぐりとした僕に対し、こう釈明する。

 つまりは、一応彼なりに尊敬される〝兄〟を目指してのことだった。

 

「ふ~~ん」

「ちょっとは感動してくれないか? 兄としては立派な志だろう」

「いくら立派でも動機が不純塗れなんだよ」

「妹に尊敬されたい願望のどこが不純なんだ?」

「気づけてない時点で終わってる」

 

 とまあ、こんなくだらない会話を交わしながら目的地に向かう僕たち。

 たとえ博臣と二人きりの状態でも、退屈な沈黙よりバカ話に興じる方が良かったのだ。

 

 

 

 

 これと言ったトラブルに遭うこともなく、印刷所での芝姫製本の手続きをスムーズに終えた僕らは、早いとこ帰路に着くべく駅に向かっていた。

 道中、博臣はこんな話題をいきなり振ってきた。

 

「見ろアッキ―、前方に眼鏡の似合う美少女が」

「博臣さんよ……気安く〝メガネが似合う〟とか言うな、栗山さんみたいな逸材はそうホイホイ世の中にいるものじゃないんだぞ」

 

 メガネストとして、厳正な姿勢で博臣の戯言を一蹴する。

 フーテンの寅さんみたく諸国を放浪してきたことで、本当にメガネの似合う美女と美少女を見抜ける審美眼は鍛えられている自負心があるからだ。

 

「文句を言う前に確認をとったらどうだ?」

「だからメガネさえ掛けていれば僕が興味抱くなどと思うな、そもそも僕がいくら熱弁したところでメガネの魅力と有力性と有用性を理解してくれる人間なんて極一部しかいない」

「ここで見ておかないと絶対後悔するぞ」

「だったら見てやるさ、僕の琴線に触れなかったら時は覚悟しておけよ」

 

 

 大口叩いて博臣の指定した方向に目を向けると………本当にメガネがぴたっと神々しくも顔に納まった小柄の美少女がそこにいた。

 僕の厳しい〝おメガネ〟にも叶う、百万人に一人いるかどうかも分からないくらい希少かつ完璧なメガネっ子。

 それも当然で……その少女は栗山さんその人だった。さすがにこうも短期間の間にメガネ美少女と邂逅する奇跡はそう訪れるものじゃなかった。

 

「ほら、本当だったろ?」

 

 博臣は皮肉めいた台詞を口にしていたが、僕はそれに応じていられる心境じゃなかった。

 なぜなら……栗山さんと横並びに歩きながら談笑する……見慣れぬ男が、そこにいたからだった。

 

 

 

 

 

 

 さて、ここからは悪いが、黒宮澤海――ゴジラが状況を読みあげようと思う。

 ぶっちゃけここから暫くの秋人はメガネ愛の強さの余り、ドン引き必須な問題発言をかましまくるからだ。

 その上〝地の文〟ってやつにまで担われちゃ、相当な苦痛を諸君一同与えかねないので、それを少しでも緩和させる措置であると理解してほしい。

 

 

 

 

 呆然と突っ立っている秋人の目は、当人にとっては残酷にも仲良く見知らぬ青年と語り合っている未来の姿を映し出していた。

 正確には、未来が饒舌に力説し、それを青年が応じている恰好なのだが、そいつが相槌打ちながら彼女の笑顔を向ける様が、秋人の精神を機龍のスパイラルクロウばりにガリガリと削って行く。

 

「博臣……あの人って異界士か何かか?」

「いや、彼は一般人だ」

 

 もしや異界士関係の知り合いと言う願いも、無残に砕かれる。

 

「僕と話してる時より、楽しそうなんですけど……」

 

 めまいに苛まれた様子で、秋人はその場に尻餅付いてへたり込んでしまい、情けなさに満ちた声でそう呟いた。

 

「確かに傍目からは楽しそうだな」

「一体誰なんだよ……あいつ」

「本人直接聞けばいいだろ?」

「そんなことできるか! もし満面の笑みで栗山さんから『彼氏です❤』だなんて紹介されたら失禁してしまうからな! この世の終焉を突きつけられた僕の絶望に染まった顔を博臣は見たいのか!?」

 

 一転して力強く立ち上がり、ある意味で力強くも博臣に詰め寄るメガネスト野郎。

〝俗に言う〟までもなく、こいつは〝逆ギレ〟である。

 

「悪かったからまず落ち着いてくれないかな? 周りの通行人がこっちをじろじろ見ているぞ」

 

 さしもの博臣も、秋人の理不尽な剣幕を前に冷や汗を一筋流してて狼狽していた。

 

「それに俺としては彼氏とは思えない、未来ちゃん一途そうだし、彼氏なら夜遅くまで部活をやってないだろ?」

 

 が、直ぐ様冷静に博臣は〝彼氏説〟に否定の意見を唱えた。

 もしここに自分もいたらやつに同意を示しつつしつつ、『お前はあの子の何を見てたんだ?』と痛烈に突っ込んでいたことだろう。

 境遇を踏まえつつちょっと思考を働かせば、あの少女が易々と軽く〝彼氏〟など作るわけがないってのに、幼なじみだが単なる幼なじみ以上の関係であったのは確かな真城優斗との別離から、まだ一カ月も経ってないんだぞ。

 

「これは真相を確かめるしかない」

 

 秋人は真剣かつ気を引き締めている筈なのに、傍目からは間抜けにも見えてしまう面で宣言した。

 

「本人に確認する勇気が出てきたか?」

「それはない、ないので尾行する」

 

 二枚目っぽく言ったつもりだろうが、情けないにも程がある宣言だった。

 何しろ『私はこれからスト―キングします』と高らかに言ったのだ……そこには情けなさとカッコ悪さしかない。

 

「はぁあ?」

 

 素っ頓狂な反応をした博臣の腕を強引に引っ張り、秋人は近くに立っていた電柱の陰に隠れる。

 グレーの柱は人の姿を隠すだけの太さはないので、全然隠れきれてないけど。

 

「栗山さんのことだから『グミチョコあげるよ』なんて甘い誘惑に乗せられたのかもしれない………僕(メガネスト)にはメガネ女子を危険から守る義務がある」

「アッキーは一体何を言っているんだ?」

 

 発言が意味不明な上に、完全にストーカーな危なすぎる発想を前に、博臣も引いていた。

 美月のはジョークだったが、秋人のはマジで言ってやがる。

 確かに日常では天然入っている子だけど、少なくともそんな最近の小学生からも失笑される単純な罠に嵌るわけないだろ………ドアホ。

 

「そもそも未来ちゃんを何だと思ってる? そんな古典的罠に引っ掛かる奴なんて、今どき小学生でもいないぞ」

 

 博臣もその点を突いてはみたが、それでも秋人は自らが勝手に浮かんだ懸念を投げ捨てようとしない。

 

「今でも古典的常套句に騙される奴もいるさ、もし誰もいない怪しい場所に連れていかれて………嫌がって抵抗する栗山さんのメガネを無理やり………ああ考えただけで体が」

 

 絶対見たくもない想像を膨らませながら、震える体を抑える変態眼鏡愛好家(メガネスト)一人、もとい眼鏡愛好怪獣―――メガネスキドン。

 

「わざわざ人気のない場所に連れ込んで眼鏡をどうこうしようとする奴はアッキー以外にいないから安心してくれ」

「本当に信じて大丈夫だよな? ぺろぺろされたりしないよな!?」

「歪みなく……気持ち悪いぞ」

 

 やはり兄妹だけあって、美月がするのと瓜二つな〝ヘドロの海に浮かぶヘドラを見下ろす〟目で秋人に蔑みの槍(しせん)を突き刺していた。

 博臣……お前のその反応は全く以て正しい。シスコンの博臣でさえこれなのだ………俺だったら完全〝虫けら未満〟の絶対零度な目つきで睨み倒していたことだろう。

 仮にも〝栗山未来〟って少女を救う役を担ったお前が、一番彼女に近づいてはならない危険な人間と成り果ててどうする?

 

「無難な表現にしたくてもそこまで頭が回らないんだよ!」

「とにかく………アッキーが酷く混乱していることは分かった」

「よし―――じゃあ早速後をつけよう」

「はぁ………感心しないな……」

 

 ノリノリにストーカーやる気満々な秋人……もといヘタレチキンに対し、博臣は溜め息吐いて気乗りしない様子だ。

 似た者同士が同じ空間にて一緒にいた場合、どうなるか?

 それには3つのパターンがある。

 一つ目は同族嫌悪による反発(けんか)。

 二つ目は互いの利害が一致したことによる同調。

 三つ目は、一方が熱くなり、その姿にもう片方の頭が冷やされて思考が冷静になる。

 今の状況はその三つ目に相当しており、博臣は引いた視線で〝同族(へんたい)〟の奇行を捉えていた。

 それに博臣は、度々重過ぎて不快な妹愛を表明し、時に美月に内緒でアイドルのオーディションに応募したり、俺と美月のデートの様子をこっそり見に来ていたりもする一方で、異界士絡みの件を除けば意外にも美月(いもうと)のことは尊重し、過度な束縛をしないよう努めている。

 それこそあいつが誰かと真剣にお付き合いすることになっても、受け入れて潔く引き下がるだけの器は持っている〝大人〟だ。

 

「こそこそと嗅ぎまわったところで、知りたくもない事実に突きあたるだけだぞ」

 

 そんな大人なシスコンからしたら、秋人の尾行(こうい)は大人げない嫉妬から生まれた〝悪行〟でしかなかった。

 

「そうかもしれないけど………どうせ僕は正攻法で確かめられない小心者(ヘタレ)ですよ」

 

 秋人も秋人で、なまじ自らの情けなさに自覚あるのが性質悪い。

 結局こいつらは、こいつらからは正体不明な青年と談笑しながら街中を渡り歩く未来の後を、見つかって修羅場にならぬよう細心の注意を払って追っていった。さすがに〝異能〟は使ってはいない。

 未来たちはインテリアに凝ってそうな喫茶店に入っていく、続いて入店しようとした秋人を、博臣は引きとめた。

 

「見慣れた顔が二人もいたら気づかれるぞ、外から確認した方がいい」

「ぐぅ………分かったよ」

 

 渋々秋人は、博臣の提案を聞き入れ、窓際の席で合い席の格好となった未来と青年の様子を外から観察する。

 

「未来ちゃんがああも饒舌に語るなんて珍しいな」

 

 声は当然聞こえるわけないが、聞こえずとも、未来はうきうきと積極的に青年と会話している模様がはっきり見て取れた。

 

「ああもう!今すぐ栗山さんのメガネを奪い取ってやりたい! メガネを掛けた栗山さんが知らない奴と仲良く会話しているとこなんて見たくない!」

 

 そして嫉妬のあまり、完全意味不明なキレ方をしている変態が一名。

 度を越さなければ女性の焼きもちは可愛げがある一方、男のはひたすら〝情けなさ〟が付き纏う。

 

「眼鏡を掛けてなかったら誰でも構わないのか?」

「ダメに決まっているだろ! 一体何を考えてる!?」

「そっくりそのままアッキーにお返しするよ……少しは頭を冷やせ」

「全く……栗山さんも栗山さんだ、あんなメガネの〝め〟の字も知らなさそうな奴に微笑んだりしてさ……僕なんて毎日〝不愉快です〟と言われてるのに………」

「アッキーが不愉快を催す発言をするからだろ?」

 

 博臣も人のこと言えない立場なんだけど、この際は置いておこう。

 

「失敬な! いつもメガネが似合うと褒めてるだけじゃないか!」

「それが原因だと思うのだが……」

 

 だがご尤もな一言を吐いて呆れる博臣の肩を、やれやれといった様子で叩いた秋人は笑いこけた。

 

「そんなわけないだろ? メガネを褒められて嫌がる女子なんてこの世にはいないさ、あっはははは」

 

 どうしてそこまで自信を以て発言できるのやら………しかもこんな時の秋人の顔は目茶苦茶ムカッと来るんだよな………これは本当に未来のコンタクトへの鞍替えを提案した方がいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 そして、日常を破壊するアクシデントは、その直後に起きた。

 二人の近くにそびえ立っていた建築物の三階から、爆音を乗せて爆発が巻き起こった。

 炎と衝撃波で砕け散った窓ガラスは、アスファルトへ散り散りの落ちて行き、衝突音は奇天烈な音楽を鳴らす。

 無論、周辺にいた通行人たちは騒然となり、テロ染みた事態にパニックとなっていた。

 秋人も博臣も、何事かと今は黒煙を上げ、内部からは今でも火の手が上がる建物の三階を見上げる。

 直後、群れる煙の中を駆け抜けて、建物から跳び出した人影が一つ。

 

 その正体は、ダイヤモンドダストの如き白銀の色合いに染まった髪色な………少女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スト―キング中だった秋人たちが巻きこまれていたその頃―――風邪を引いている美月の自室では。

 

「澤海、おでこのコレ貼り替えてくれるかしら」

「自分でやれるだけの元気はあるだろ?」

「だって今あんたの作ったミルク粥で手が離せないのよ」

「普通に手離せるだろ……」

「熱いうちに食べておきたいの、ほら!さっさとやる」

「分かりましたよ」

 

 美月の精を出すべく今日はミルク粥を作った澤海が、ちゃっかり冷却シートを貼り替えていた。

 しかも―――

 

「た~く~み♪ わたしも」

「ったく甘えん坊さんだな、ほらよ」

 

 

 マナの分の粥をスプーンで掬い、それを人間形態な彼女の小さな口に運ばせる。

 

「ふふ~ん♪」

 

 ひょこっと、思わず狐耳が髪の隙間から生え出てきてしまうくらい、粥の美味を堪能していた彼女の顔はとろけていた。まるで親鳥の餌に喜んで喰いついているひな鳥みたいな顔だった。

 

「ちょっと! 澤海だけそんな良い想いするなんてずるいわ、私にもやらせてよね」

 

 美月もただ見ているだけでは飽き足らなかったようで、自分もマナにいわゆる〝あ~ん〟をしていた。

 その最中の美月が、弛みに弛んで癒されていたのは明言するまでもない。

 

 そして澤海の置かれた環境を一言で表すなら―――〝両手に花〟。

 

〝無欲の勝利〟とは、ある意味こんな状況を指すのかもしれない。

 

 

つづく。

 


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