代わりに没ルート編を出します。
if短編恋姫で何故最期は自爆なのかは松永久秀を真似たからです。
時は慶応四年一月三日、日本史上の大規模な内乱である戊辰戦争が京の鳥羽伏見で勃発した。
これが後の戊辰戦争の緒戦である「鳥羽伏見の戦い」である。
経過を説明すると、三日の夕方には下鳥羽や小枝橋付近で街道を封鎖する薩摩藩兵と大目付の滝川具挙の問答から軍事的衝突が起こり、鳥羽方面での銃声が聞こえると伏見(御香宮)でも衝突、戦端が開かれた。
このときの京都周辺の兵力は新政府軍の約五千名(主力は薩摩藩兵)に対して旧幕府軍は約一万五千名を擁していた。
鳥羽では総指揮官の竹中重固の不在や滝川具挙の逃亡などで混乱してしまい、旧幕府軍は狭い街道での縦隊突破を図るのみで、優勢な兵力を生かしきれず、新政府軍の弾幕射撃によって前進を阻まれ、伏見では奉行所付近で幕府歩兵隊、会津藩兵、土方歳三率いる新選組の兵が新政府軍(薩摩小銃隊 )の大隊規模(約八百名)に敗れ、奉行所は炎上した……筈であった。
「申し上げます!! 伏見奉行所未だ燃えず!!」
「ぐぅ……何故だ!! 何故奉行所が落ちんのだ!!」
物見からの報告に新政府軍の指揮官がそう叫ぶ。伏見奉行所では新撰組、幕府歩兵隊、会津藩兵が激しく抵抗していたのだ。
「そ、それが幕府軍は我等と同じスナイドル銃やエンフィールド銃を多数装備しているようです!!」
「な、何ぃ?」
兵士の言葉に指揮官が驚いた。
~~伏見奉行所~~
「ハッハッハ、薩摩の奴等は中々攻められないようだな」
「源さん、笑う暇があるなら撃って下さいよ」
急造陣地の中で着込襦袢、襠高袴、紺の脚絆、後鉢巻、白の襷を着て高らかに笑う新撰組六番隊組長井上源三郎に一人の青年の隊士はそう言った。
「ハッハッハ、生駒(いこま)には叶わぬな。それじゃぁ儂も撃つとするか!!」
井上は生駒と呼ばれる隊士にそう言ってエンフィールド銃を構えて引き金を引いた。弾丸は見事に敵薩摩兵の頭を撃ち抜いて薩摩兵が地面に倒れる。
「薩摩の奴等が大砲を持ってきたぞ!?」
他の隊士の叫びに生駒と呼ばれた隊士はゆっくりと急造で構築した陣地から覗くと、新政府軍側は四斤山砲を五門を持ってきているのが見えた。
「砲手を狙え!! 奴等に撃たせるんじゃないぞ!!」
井上組長の叫びに生駒や他の隊士もエンフィールド銃を構えて新政府軍側に弾丸を放つが、新政府軍側も負けずに撃ち返してくる。そして四斤山砲が砲撃を始めて折角作った急造陣地を破壊した。着弾付近にいた兵が爆風で吹き飛ばされている。
「も、最早持ちそうにありません!!」
「……生駒、やむを得んが後退するぞ。薩摩の奴等め、鳥羽側から援軍を持ってきたようだ」
「……そのようですね。全員第二陣地まで後退するぞ!! ほら、しっかりしろ!!」
生駒は近くに倒れていた負傷隊士の襟を左手で持ち、右手で負傷隊士のエンフィールド銃とエンフィールド銃の弾丸が入った弾箱を持って引き摺るように後退する。
「砲弾が来るぞォ!! 伏せろォ!!」
その時、新政府軍側が砲撃を始めた。生駒も伏せようとした瞬間、何と砲弾は生駒の足下に着弾して爆発したのである。
「しま――」
「い、生駒ァッ!!」
生駒は爆風で吹き飛ばされていた。ジェットコースターみたいな浮遊感があると思ったら地面に叩きつけられた。
「が……(せ、背中が……それに前も……)」
生駒は叩きつけられて背中を強打し前は砲弾の破片が腹や脚を傷つけたり食い込んだりしていた。特に右腕は破片が当たって肉がもがれ、骨まで見えていた。
「(う、動けない……)」
生駒は身体を動かそうとするが痛くて動けないし血がドクドクと出て辺りを血の池にしている。
生駒自身も死が近づいているのが分かる。瞼が重くなっていくのが実感している。
「生駒、しっかり――」
近づいてきた井上組長の声が段々と聞こえなくなってきたのを生駒は感じた。
(……また死んだなぁ……二回目の死亡か。ついてないよなぁ……)
「……虚しいものだな。栄華を誇った足利家今では地に落ちておる」
京の二条御所。その場所で一人の女性がそう呟いた。女性は複数の刀を帯刀している。
「大丈夫です。義輝様ならやれます」
女性の傍らに控えていた花の刺繍をし、濃い紫の着物を着た女性が帯刀している女性に言う。女性はそれを聞いて微笑む。
「ありがとう幽斎」
女性は礼を言うと視線を庭に向ける。そして瞬きをした瞬間、庭に武装した男が倒れていた。
「な―――」
女性は思わず息を飲み、隣にいる着物の女性に視線を向ける。着物の女性も唖然としているのは一目瞭然だった。
「……乱破……か?」
「乱破にしては服装が派手過ぎませんか義輝様?」
「確かにのぅ……。よし、幽斎。こいつを布団に寝かしてやるのじゃ」
「宜しいのですか?」
「構わぬ。乱破なら首をはねればよい」
そして二人は男を寝床に寝かせるのであった。
「……しかしこの鉄砲は何じゃ? わらわはこのような鉄砲は見たことが無いのぅ」
「私もです義輝様」
二人は鉄砲を見るのであった。
「……ぅ、此処は……知らない……天井だな」
(電波受信したんだ、仕方ないだろ。それより此処は何処だ?)
そう独白将和だが襖が開いて二人の女性が現れた。
「目が覚めたようじゃな」
将和は女性の顔よりまず胸に視線が行ってしまう。それほど大きかったのだ。
「ふ、二つの巨大な桃がある!?」
「桃……!? き、貴様!!」
将和の言葉に気付いた女性が咄嗟に胸を隠す。
(てか今気付いたがかなりエロい服装だなおい)
「貴方は誰ですか? 乱破ですか?」
「乱破じゃない。俺は京都守護職、会津藩預かり新撰組六番隊隊士生駒将和だ」
「京都守護職?」
「会津藩預かり?」
『新撰組?』
「へ?(新撰組を知らんだと?)此処は……京だよな?」
「そうじゃ。此処は二条御所じゃ」
「二条御所……じゃあ戦は!?」
「戦? 何の戦じゃ?」
(何の戦ってお前……冗談はやめてくれよ)
「薩長軍と幕府軍の戦に決まっているだろ。薩摩と長州が同盟を結んで徳川幕府を潰そうとしているだろ?」
「徳川幕府……だと?」
「………」
(ん? 今変な事でも言ったか俺?)
「……貴様、わらわの前でふざけているのか?」
「ふざけてないぞ。さっきまで鳥羽伏見で戦闘していたんだぞ」
「……義輝様、どうやら私達と彼との間で何らかの誤解が生じているようです」
そこへ濃い紫の着物を着た女性がそう言って将和に視線を向けた。
「まず自己紹介からしましょう。私は細川幽斎です」
「はぁ、細川幽斎……ん?」
「わらわは足利義輝じゃ。足利幕府の第十三代将軍じゃ」
「……ファ!?」
(……何て言ったこいつら? 確か細川幽斎と足利義輝?)
「……足利義輝って暗殺されたよな?」
「暗殺? どういう事じゃ!?」
「ちょ、ま……」
(襟を掴むな。掴んだらあんたの胸が当たる……)
抱き寄せられた将和だが心の中ではそう思っていた。
「義輝様落ち着いて下さい。とりあえずこの生駒から事情を聞く必要があります」
「……それもそうじゃな」
「それは此方もだがな」
(一体何がどうなっているんだ……)
将和はそう思ったが混乱するばかりであった。
「……つまりじゃ、お主は三百年後の日ノ本から来たというわけじゃな?」
「あぁ、俺もにわかに信じがたいがな」
将和はの目の前にいる女性――足利義輝にそう説明した。
(しかも聞けば大名達も半分以上は女武将らしいしな。俺が歩んだ歴史と全く違うんだが……いや幕末にいたあの時点で歴史は変わっているな)
将和は元々平成の日本人だ、幕末の日本人じゃない。将和は平成の日本で交通事故に巻き込まれて気付けば幕末の新撰組の屯所にいた。その時に沖田組長に危うく斬られかけたのは些細な事だ。そして新撰組に、幕府に協力する事にした。
元々歴史好きだった将和は史実より新撰組の強化をしたりしてエンフィールド銃やスナイドル銃を購入して戦力の強化を行っていた。それでも隊内から銃配備は不満の声が噴出していた。(土方さんや永倉さん等。というよりほぼ全員)それで最初に将和を保護してくれて何かと御世話になっていた源さんこと井上源三郎のところで実験的に配備する事になった。
そして鳥羽伏見で六番隊が奮戦していた……というわけである。
「……未来の日ノ本がそのような状況になっているとはのぅ」
「……にわかに信じられません」
「俺もあんたらが足利義輝と細川幽斎とは信じられんよ」
(何処のエロゲーだよ……)
そう思う将和だった。
「それで生駒、お主はこれからどうする気だ?」
「……正直分からん。未来に帰れたらいいが、下手をすればずっとこの戦国時代にいることになるからな」
「……そこで貴方に提案です」
「何だ細川?(何か嫌な予感が……)」
将和はある程度の予想をしながら細川に聞いた。
「帰る手段が見つかるまで義輝様にお仕えしませんか? 勿論俸禄も出します」
「幽斎?」
「義輝様、私はこの人の事は信用していません。ですが、この鉄砲や服装から見て時代が違うのは判ります。幕府を建て直すには一人でも味方は必要です」
「……鉄砲の事は判るが……のぅ」
そう言って義輝が将和に視線を向けてジロジロと見る。
「……判った。お主さえよければわらわの家臣になっても良い」
(……少しムカつく言い方だが……仕方ないかもしれんな。それに……いや今言うのはやめておくか)
「判りました。足利義輝様の家臣になりましょう」
将和は義輝に対して頭を下げた。こうして将和は足利義輝の家臣となった。
「もう夜か。今日は飲むとするかの」
「二日酔いはやめて下さい義輝様」
「……義輝は飲んべえかよ……」
その日の宴会はどんちゃん騒ぎになったのは言うまでもない。後に細川から幽斎と呼び捨てで構わないと言われた。久しぶりに笑う義輝様を見て嬉しかったみたいだ。
「頭いてぇ……」
「……うぅ、飲み過ぎじゃのぅ……」
「だから私は言っていたはずです。飲み過ぎないようにと」
将和が水を飲んでいると幽斎が溜め息を吐きながらそう言ってきた。
(まぁ幽斎の言葉には一理あるしな)
「それはさておきじゃ……これからわらわ達はどうすればよいのじゃ?」
水を飲んでいる義輝が将和に視線を向けて言う。
「ぶっちゃけると義輝様の暗殺まで普通に過ごせば良いと思います」
「……それはわらわに死ねと言うのか生駒!!」
「落ち着いて下さい義輝様。死ぬのは偽装です」
「偽装だと?」
「はい。それまでは戦力を整えるのが先決でしょう」
「……戦力とな?」
「まぁ……全部ぶちまけると……室町幕府は一旦滅んで新しい幕府を作り上げるのが妥当なんです」
「新しい幕府じゃと?」
「今の室町幕府を建て直しても滅亡を先伸ばしするだけです。それならいっそ滅ぼして天下統一をしてから新たに幕府を作るのが……」
「……それしか無い……のじゃな」
義輝が無念そうな表情で呟いた。今の状況だとそうするほかないからだ。
応仁の乱以降、幕府の権威は落ちており溜まりに溜まった垢がいっぱいな状況だ。
「……仕方ない。納得せざるえまいのじゃな」
「……済みません」
「構わん。それよりわらわは誰に殺されるのじゃ?」
「確か松永久秀の息子の松永久通、三好義継、三好三人衆が決行したはずです」
「松永久秀の息子久通? 松永に息子なんぞいたか幽斎?」
「聞いた事ありません義輝様。松永が密かに婿を
とっていたなら別ですが……」
(ん? 松永が婿をって……おいおい)
「まさか松永って……」
「女性です」
「(;゚Д゚)」
流石の将和も唖然とするしかなかった。
「すみませんが、全国の大名達の性別を教えてくれませんかね?」
将和はそう聞くしかなかった。二人は少々首を傾げつつ将和に教えた。
「……松永久秀は女か。それに三好長慶や三人衆もか……(……なんつう世界だ)」
将和はそう思た。二人によれば他に確認しただけでも尾張の織田信長、越後の長尾景虎や甲斐の武田晴信なども女性との事だ。
「生駒の世界の武将は男なのですか?」
「女武将もいる事はいたが、極まれに近いな」
(……武将全員を女性に仮定しておくか)
「話はずれたから戻すが……暗殺されるまで戦力は整える。後鉄砲の購入及び職人を引き抜いて自主生産するだな」
「鉄砲の生産か……」
「堺から鉄砲の職人を引き抜ければいいが、最初は購入するのが得策だと思う」
「どちらにせよ銭は必要じゃな。だが肝心の銭は少ない」
「……当分は少数購入だな」
(将軍家の名声は地に落ちてるな……。銭の収入もあまり当てに出来ないかもしれんな)
「屋敷もいざというときに備えて隠し通路を作っておいて脱出しやすいようしとくべきだな」
「うむ、松永の動向も気になるものじゃな」
三人はそのように計画していくのであった。
――後書き――
没ルートの足利ルートでした。
主人公が椿の代わりになると思うので原作みたいに北からではありません。史実の義昭の経路のようになりつつ信長より前に美濃を攻略して半兵衛を調略しようとしたら藤吉郎に調略され安藤守就が怒って半兵衛を勘当して西美濃三人衆が義輝に味方して信長とぶつかるというところまで思案しましたが信長ルートにして残念ながら没になりました。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m