『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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何とか終戦記念日に間に合いました


短編

 

 

 季節は夏、信広は居城である岐阜城にて政務をしていた。

 

「……暑いな……」

 

 信広は団扇を扇ぎながらそう呟いた。気温は何度か分からないがそれでも暑いものは暑いのだ。

 

(平成だと真夏日はヤバすぎるからなぁ)

 

 信広はそんな事を思いながらパタパタと団扇を扇ぐ。

 

「……そうだ、泳ぐか」

 

 信広はそう呟くといそいそと自分の政務を終わらせると城下の長良川へと赴いたのであった。

 

「信広、行きまーす!!」

 

 信広は釣り道具を川原に置くと褌一丁で長良川に飛び込む。なお、ちゃんと体操はした模様。

 

「あ~気持ち良い~」

 

 信広は平泳ぎ等で約一時間ほど堪能する。そこへ声がかかる。

 

「信広様ー!!」

「ん? 秀吉か」

「狡いですよ信広様。一人だけ涼を求めるなんて!!」

「狡いのかよ……ならお前も泳げば?」

「……その手があったか!?」

 

(……大丈夫だろうか……)

 

 そう思う信広を他所に秀吉はそそくさと足軽の鎧を脱いで黒の褌と同じく黒のサラシを胸に巻いて川に飛び込む。

 

「ぶはぁ!! 水が気持ち良いですね!!」

「深いところもあるから気を付けろよ」

 

 水に沈んでから顔を出す秀吉。信広は深いところに行かないよう秀吉に釘を刺す。

 

「やだなぁ信広様。溺れないですよ」

「織田家の武将が川遊びで溺れ死ぬのは沽券に関わるぞ」

「まぁ……そうですね」

 

 信広に指摘された秀吉は深いところには行かないように泳ぐ。信広は河原に置いておいた釣り道具に手を伸ばして釣り針にミミズを刺して川に投げ入れる。

 

「釣りですか信広様?」

「おぅ。たまには釣りもしたくなる」

 

 釣りをする信広を見て秀吉が川から上がる。信広の釣竿は未来のような釣竿ではなく木で作った釣竿だ。

 

「川並衆の皆とよく釣りをしますね。鮎を塩焼きにして食べるのが美味しいですよ」

「そいつは良いな。薪を取ってくるから竿を見といてくれ」

「御意」

 

 信広は近くの木で薪を取りに行く。秀吉は竿をクイックイッと操り、釣り針を餌だと錯覚させる。そして魚はそれに食い付いた。秀吉が持つ木の竿がビクッと反応した。

 

「来ましたよ信広様!!」

「よーし、上手く合わせろよ!!」

「分かってますよ……」

 

 秀吉は無理に引っ張らないように力を合わせる。信広も薪は放っておいて秀吉の後ろに近づく。秀吉が石で滑っても支えるためである。

 

「んぎぎぎ……」

「もう少しだ秀吉!!」

「んがあァァァァァ!!」

 

 そして秀吉が渾身の力を振り絞った結果――バキッと釣竿が折れた。

 

『あ』

 

 折れた釣竿を見て唖然とする二人だが、魚と格闘していた秀吉は折れた際の余波で折れた釣竿を持ちながら信広を倒れ込む。更に間が悪いのか、信広も腰から下に力を入れてなかったのでそのまま二人一緒に倒れた。

 

「いた!?」

 

 信広の背中に河原の石が当たる。

 

「ご、ごめんなさい信広様!!」

「あ、あぁ大丈夫……って、前を隠せ!!」

「前……ってきゃ!!」

 

 倒れた拍子に秀吉の胸に巻いたサラシが緩んで秀吉のピンク色の物がチラリと見えていた。

 

「……見ました?」

「何の事かな? サラシから桃色に近いのは見えてないぞ」

「……見てるじゃないですか!!」

「不可抗力だ!!」

 

 そう言い合う二人。しかし、そこに声がかかる。

 

「ほぅ、サルと川遊びとは兄様も余程サルと遊びたいようで……」

『の、信長(様)!?』

 

 二人が振り返れば仏頂面な信長が腕を組んでいた。その様子から今でも噴火しそうな勢いである。

 

「あ、あたし用事を思い出したので!!」

 

 秀吉はそう言うやいなや一目散に逃げ出した。残るのは信広と信長だけである。

 

「……久しぶりに川遊びをするか?」

「……うむ」

 

 信広の言葉に信長は小さく頷くのであった。なお、満喫した模様である。

 

 

 




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