『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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お久しぶりです。
ローマ掘りで資材や資源が消えていく……


第二十五話

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「信広殿、殿部隊を確認した。三好政康と七条兼仲の部隊だ」

 

 高虎が信広にそう報告をする。

 

「三好政康と七条兼仲……殿だな」

「三好本隊は高槻方面に引いているようです」

 

(ゲームや漫画だと長慶はブラコンに近い性質だが……となるとやはり……)

 

 そう考えていた信広はある考えを呟いた。

 

「長慶は気絶したか指揮出来ないほどに錯乱しているかだな」

 

 信広はそう判断した。そしてその判断は当たっていた。政康に気絶させられた長慶は長逸や友通に抱えられて撤退していた。

 

「うーん……一当てしたら反転するか」

「良いのか?」

「まぁ一応十河隊は壊滅状態だからある程度の目的は達せられただろう。そこまで追撃する必要はない。忠勝隊と合流してから攻撃するか。それまでは追いかけるだけで良い」

 

 伝令からの報告で忠勝と直虎は負傷していた十河一存を捕らえて治療させ、忠勝隊三千は此方に向かっていた。

 

「ただ敵が攻撃前に決死の突撃をしてくるかもしれないから備えだけはしといてくれ」

「御意」

 

 そして信広の予言かは分からないが、殿の三好政康隊、七条兼仲隊は信広に突撃を開始した。

 

「構えェ!!」

 

 足軽鉄砲大将の叫びに新旧種子島を装備した足軽鉄砲隊が突撃をしてくる両隊に照準する。

 

「放てェ!!」

 

 ミニエー弾と鉛玉が次々と放たれて突撃する三好の雑兵の命を刈り取る。鉄砲隊が放つと直ぐに弓隊と交代する。

 

「放てェ!!」

 

 そして先程の鉄砲隊同様に三好の雑兵の命を刈り取っていく。

 

「突撃よ!! 目指すは織田の首級のみよ!!」

「掛かれェ!!」

『ウワアアアァァァァァーーッ!!』

 

 しかし三好隊は死に物狂いの戦いをした。種子島の弾など気にせずに斬り込み、果てていく。その散り様に信広の兵は恐怖した。雑兵の血を顔に浴びた七条兼仲は己が持つ棍棒を振り回し信広の兵をあの世へと送る。

 

「ば、化け物じゃ……」

 

 後に生きて帰った兵は七条兼仲に対する評価はそれだった。だがそこに槍を携え馬上する高虎が現れた。

 

「七条兼仲だな?」

「御主は?」

「織田信広様が家臣、藤堂高虎也。その首頂戴致す」

「フン、我が首取れるものなら取ってみよ!!」

 

 そして両者が斬り合いをする。一合、二合と両者は槍と棍棒でやりあうが軍配は高虎に上がる。棍棒を振り回す兼仲に高虎は槍を左腕に突き刺した。

 

「ぐッ!?」

「貰った!!」

 

 痛みで左手の棍棒を落とした兼仲に好機と判断した高虎が兼仲に飛び付き、そのまま落馬させた。

 

「み、見事也……」

「御免!!」

 

 馬乗りの高虎は小刀でそのまま兼仲の首に刺したのであった。

 

「敵将七条兼仲、藤堂高虎が討ち取った!!」

 

 高虎の叫びが戦場に響き渡る。その兼仲が討ち取られた言葉に三好隊の動きが一瞬鈍くなる。

 

「今だ、押し返せェ!!」

 

 その一瞬を見逃さなかった信広は三好隊の攻撃を押し返させる。そして兼仲を討たれた三好隊は勢いに衰えが見えてきた。

 

「政康様、もうこの辺りかと思われまする」

「……でしょうね。貴方達も逃げなさい。此処はあたしが引き受けるわ」

「いけませぬ!! 我等は兼仲様より政康様を生きて帰らせろと仰せられておりまする。此処は我等にお任せ下さい!!」

「兼仲が……」

 

 兼仲の近習の言葉に政康は驚くが、近習達は急かした。

 

「政康様は急いでお引きのきを。我等が食い止めまする」

「でも……」

「我等雑兵は代えはありますが将である貴殿に代えは無いのですぞ!!」

「……分かったわ」

 

 近習の言葉に政康は踵を返して数人の馬廻と共に撤退を開始した。

 

「生きて……帰って……」

 

 小さくなる近習達の形に政康はそう呟いた。そして彼等が帰って来る事はなかった。

 

「七条兼仲は討ち取ったが三好政康には逃げられたか……此処等が潮時だな。全軍撤退せよ。信長達と合流する」

「御意」

 

 法螺貝が鳴り、信広隊は部隊を纏めて信長隊と合流するのであった。

 

「兄様の策は見事に当たった。大儀だ」

「はは」

 

 信長の本陣で信広は信長に褒められ頭を下げる。

 

「それでこれからどうする兄様? このまま芥川山城を攻めるか?」

 

 信長は更なる追撃を思案していた。芥川山城は長慶が飯森山城に居城を構える前の城だった。

 

「とりあえず撫子達を出して様子を見よう(俺の勘が当たっていたら恐らく城には……)」

 

 そして撫子達を芥川山城に放ち、大休止となった。

 

「ところで十河一存はどうした?」

「左腕を弾丸で撃ち抜かれていたようだ。医師も切断した方が良いと言って左腕を切断したそうだ。何せ骨も砕かれたらしい」

 

 信長が信広の問いに握り飯を食べながらそう答えた。なお、塩おにぎりである。

 

「今は止血して後送している。会う機会はあるだろう」

「そうだな(戦が終わったら会ってみるか)」

 

 大休止が終わり、織田軍は軍儀を再開していた。そして漸く撫子達が芥川山城から帰還した。

 

「ただいま戻ったよ信広君」

「どうだった芥川山城は?」

「もぬけの殻だ」

「もぬけの殻だと?」

「うむ。恐らく飯盛山城に戻ったんじゃないか?」

 

 信広は紫達にも視線を移すが皆頷いていた。

 

「……よし、なら芥川山城に入城しようか」

「……少しは周りを調べるとか言えよ……」

「ハッハッハ、兄様ならやってくれるだろう?」

(当たり前なような表情で言うなよ……)

 

 信長の言葉に信広は声に出さずにそう思った。そして芥川山城だが、撤退した三好本隊も当初は芥川山城に入城して防戦をと思案していた。

 しかし、三好長慶の心身はかなり疲労しており何とか撤退してきた政康も含めて軍儀をした結果、芥川山城は放棄して飯盛山城にまで撤退していたのだ。

 そのため、芥川山城はもぬけの殻だったのである。そして織田軍は威風堂々と芥川山城へ入城した。

 

「城代はサル、お前に任せる」

「うぇ!? あ、あたしがですか信長様?」

「うむ。そろそろサルにも城は必要だろう」

 

 農民出身(此処では農民出身としてます)藤吉郎に城代を持つ資格は十分にあった。何せ竹中半兵衛の調略や墨俣城の構築など実績は多々ある。

 

「任せたぞサル」

「はい!! お任せ下さい信長様!!」

 

 藤吉郎は意気揚々と頷いたのである。

 

「だがそうなると藤吉郎にも立派な名前が必要だな」

「ん? 兄様は何か良い姓でも浮かんだのか?」

「うむ。良ければ藤吉郎に授けようか?」

「は、ありがとうございます信広様!!」

「権六の柴、長秀の羽の二つを取って羽柴秀吉はどうだ?」

「羽柴……秀吉……」

「ガッハッハッハ。某の姓をサルにあげるとは信広様も中々のお人ですな」

「ふむ、良い姓ですな。秀吉、大切にするのじゃぞ」

「……はは!! この羽柴秀吉、有り難く頂戴致しまする!!」

 

 藤吉郎――羽柴秀吉――は涙を流しながら信広に頭を下げるのであった。そして信広はというと……。

 

(まぁ、権六との確執が怒らないよな? 俺から姓を授けた事にすれば両者の面目を立つしな)

 

 史実を知る人間にとっては秀吉の羽柴フラグはある意味での関門かもしれない。

 

(大丈夫だろ……多分)

 

 どうにも確信が持てない信広だった。それは兎も角、織田は芥川山城を占領した事により摂津への足掛かりを踏めたのであった。

 

「直虎、此度は大儀だった」

「はは」

 

 京へ帰還した後、居住している清水寺で信広は自隊での、論功行賞をしていた。

 

「侍大将一つ、足軽大将二つの首級を挙げたのは真に喜ばしい。そこでだ」

 

 信広はそう言って直虎に視線を向けた。

 

「伊勢の空いた領地に井伊家を構えろ。漸くお前に領地を与える事が出来た」

「……はは!! 有り難き幸せであります」

 

 頭を下げる直虎だが、畳には数滴の涙が落ちていた。

 

「それと次――」

 

 信広はそれを尻目に論功行賞を行うのであった。それから数日後、信広は信長と共に二条城にいる義輝に招集された。

 

「ふむ……兄様、何かしたか?」

「俺は何もしとらん。お前、また京の町で博打でもしたのか?」

「わ、私はそんな事しないぞ!!」

「……なら俺の目を見ながら言え。目が泳いでるぞ」

 

 そうしているうちに義輝が入室してきた。平伏する二人に義輝は頷いた。

 

「実はな、今日二人を呼んだのは他でもない」

(……何だ?)

「……わらわは今日を以て将軍の位を退く。わらわの代で室町幕府を終わらせる」

「「……はい?」」

 

 義輝の言葉に二人は思わず同時にそう呟いたのであった。

 

「言葉通りだ。室町幕府は今日で滅亡だ!!」

「「……はあぁぁぁぁぁーーーッ!!」」

 

 義輝の宣言に二人の叫び声が二条城に響き渡るのであった。

 

 




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