SAOsurvivor to ISschool   作:DragonWill

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前回、ちょっと長かった分今回は短めです。


下準備

「めんどくさいことになったな~」

「どうすんのよ一夏君?」

「どうするのだ一夏?」

 

放課後、早めの夕食を取るため食堂に訪れた一夏は箒と琴音に心配そうに尋ねられた。

 

「どうするって・・・・決まってる。今日からいろいろと準備しなければいけないんだ。この後も食べたら就寝まで調べものだな・・・」

 

定食を口に放りながら答える一夏。

 

「ところで一夏君?」

「なんだ?」

「どうして普通にISで勝負しなかったの?」

 

琴音が尋ねると一夏は一瞬だけ箸の動きを止める。

 

「一夏君なら一週間IS頑張れば結構いいとこ行くと思うんだけど・・・」

「そう言えば、琴音はあまり知らなかったな・・・」

「・・?どういうこと?」

「いいか・・・俺は戦い方とか相性とかいろいろ事情があるが、模擬戦では『絶対勝てない』んだ」

「一夏!?男たるものが始める前からそんな弱気でどうする!!」

「いや・・・そう言う次元の話じゃないんだけど・・・」

 

箒が詰め寄るも言葉を濁してそれ以上喋ろうとしない一夏。

 

「いいか・・・相手は代表候補生、それも専用機持だ。普通に考えて今の時点でもあのセシリアって娘の総操縦時間は1000時間は下らないはず・・・残り一週間全てを訓練に当てられたところで俺ができる訓練は精々50時間程度。今までの分と合わせても100時間にも満たないひよっこが彼女にまともに挑んでも勝てるわけないだろ」

 

自嘲気味につぶやく一夏。

 

「勝負の内容を射撃勝負にしたのは、あの辺が彼女の有利にしつつまだ付け入る隙を含んだギリギリの落としどころだったからだ。例えばこれが『剣術勝負』だったらまず乗ってこなかっただろうな。それに彼女は典型的なエリート気質でプライドが高い。下手に自分の得意分野である分、それで挑まれた勝負を蹴ると言う発想が持てない上に、こっちを見下して手を抜いたりしてくれる可能性があったからな・・・・・・(それに、この方が相手に武器を向けなくて済むしな)」

「「?」」

 

最後の方は二人には聞こえなかったらしい。

 

やがて、食事を食べ終えた一夏はトレイを片付けだす。

 

「これからどこ行くの?」

「うーーーん・・・・・下見?」

「「?」」

「二人はどうするの?」

「ついていくに決まっているでしょう/だろう!!」

 

一夏はあちこちの射撃施設を巡り、周囲の建物の位置関係、射撃場の様子、標的までの距離、提供されている銃の機種などを事細かくメモしていく。

 

全部を調べ終えるころにはすっかり日も暮れていた。

 

「悪いな。遅くまで突き合せちまって」

「いいよこれくらい・・・」

「私は別に問題ないぞ」

 

一夏は先ほどのメモを見ながら頭を抱えだす。

 

「どうしたの?」

「あ~~・・・方針は決まったのだが・・・はっきりとした確証がないんだ・・・できればラウラやシノンの意見を聞きたいんだけど・・・・今はアミュスヒィアもALOも持ってないし、外出許可だって週末でもないと無理だろうしな~」

現実(リアル)での連絡先は?聞いてないの?」

「できれば直接聞きたいんだよ・・・それにシノンはともかくラウラの方はセキュリティ関連の問題で現実(リアル)での連絡は結構面倒な手続きがいるからな・・・」

「なあ一夏・・・シノンとラウラとは・・・?」

「ああ・・・SAO時代に知り合った人たちだよ。・・・シノンはSAOが終わった後GGOって言う銃撃ゲームをよくやっているみたいだから銃火器に詳しいし、ラウラは本物の軍人だからこの手の相談にはむいているんだ・・・」

「そうか・・・・」

 

自分の知らない頃の一夏の話が知れて嬉しく思う反面、一夏の口から出る女の名前に少し嫉妬してしまう箒であった。

 

「ねえ一夏君?よかったら私のアミュスヒィア使う?」

「え!?いいのか!?」

「まあ事情が事情だからね・・・今週だけ貸してあげる」

「ありがとう!!フェリア!!」

 

よほど嬉しかったのかアバター名で呼びながら手を握りしめ、顔を近づけてくる一夏。

 

「い、一夏!?貴様何をしているか!?」

「あ!?ごめん!!つい・・・・」

「やれやれ・・・・・」

 

その後しばらく不機嫌な箒をなだめるのに費やす一夏であった。

 

 

 

 

 

琴音からアミュスヒィアを借りた一夏は就寝準備を済ませてベッドに横になる。

 

「じゃあ箒・・・とりあえずALOにダイブするけど・・・寝てるからって変なことするなよ?」

「するか!!」

 

顔を真っ赤に反論する箒。

 

「それじゃあ。『リンクスタート』」

 

そう言ったきり先ほどまでが嘘のように部屋が静かになる。

 

「一夏・・・・」

 

そして箒は一夏のそばに腰を下ろした。

 

「お前がどんな世界にいたのか。そこでどんな体験をしてきたのかは私には分からない。でも、あんな目にあってもまだお前はその世界に行きたいのか?」

 

一夏を危険な目に合わせた世界。

 

元々あまりゲームの類が好きではない箒はまだ全面的に肯定はできない。

 

できれば今すぐにでもアミュスヒィアを引き抜いて叩き起こしたい気持ちもある。

 

でも・・・・。

 

「私も始めてみようかな?」

 

少しだけ一夏がいる世界に興味を持っている自分がいるのも事実であった。

 

 

翌日。

 

目を覚ました一夏は先に目を覚ましていた箒に一言。

 

「とりあえず方針は確定した。あとは練習だけだな」

 

そう告げていた。

 

「勝算は?」

「もって4割」

「ずいぶん低いな」

「まあ悲観的に見積もっているのは事実だけど・・・それでもここまで引き上げたんだ・・・あとはなるようになるしかないよ・・・」

 

箒に不敵な笑みをこぼす一夏であった。

 

 

 

 

 

それから一週間経ち、いよいよ勝負の当日となった

 

山田先生に戦いの場所を伝えていた一夏は先に射撃場で準備していた。

 

「あら?逃げずにいたとは見上げた根性ですわね?」

 

相変わらずの不敵な笑みを浮かべる彼女はあからさまに見下した態度を変えずに話し掛ける。

 

「ははは・・・・まあ、お手柔らかに頼むよ・・・」

 

そう言って二人は準備に入る。

 

「それではこれより織斑とオルコットの試合を始める!!」

 

今、千冬の合図で二人の戦いが始まった。

 

「さあ、ゲームを始めよう・・・・」

 




本当はキリトさんに言わせたかったセリフですが本編には基本的に絡んでこないので一夏君に代わりに言ってもらいました。

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