SAOsurvivor to ISschool 作:DragonWill
あとゲーム版のホロウ・フラグメントに登場するフィリアが登場します
「決闘ですわ!!」
IS学園一年一組の教室にイギリス代表候補性であるセシリア・オルコットの怒声が鳴り響いた。
「・・・・・・・いやなんでそうなる」
一夏の言葉も虚しく鳴り響く。
ことの始まりは昨日の入学式の日にまで遡る。
「・・・・・・・・・むぎゅー・・・・・・・」
織斑一夏はIS学園の教室で耐え切れずに机に突っ伏していた。
攻略組でも有名なプレイヤーであり、四人しかいないユニークスキル持ちであったため、四方八方から突き刺さる視線だけならばまだ大丈夫(それでも相当キツイ)であったが、それ以上にこの教室に充満する匂いに参っていた。
一夏は花や香水の香りなど、女性が好むような匂いが苦手で花盛りの女子高生が大人ぶろうと少し濃い目にふりかけていた香水の匂いが混ざり合い、一夏にとってはキツイ異臭となっていたのである。
「・・・・・お・・・く・・・・・お・・らく・・・」
あれから急遽、日本IS委員会に身柄を拘束された一夏は事情聴取とデータ収集を繰り返された後、強制的にここIS学園に入学することが決定したのである。
他のSAOメンバーと同じ学園に行けなくなってしまったことが残念であるが事情が事情であるだけに苦笑しながら送り出してくれたキリトたちの顔を思い浮かべる。
『チキショー!!キリトと言いお前と言い!!何でお前らばっかり!!俺に変われよ!!』
いかん。こんな状況でも全くぶれないクラインのことを思い出してしまった。
「織斑君!!」
「は、はい!!」
どうやら回想に没頭しすぎるあまり全く聞いていなかったようである。
「あ、あのね!?自己紹介で『あ』から始まって今『お』の織斑君の番だから!?」
「わ、分かりましたから!!とりあえず落ち着いてください!!」
「お、怒らないでね!?できれば自己紹介してくれると嬉しいな!?」
この人本当に元日本代表候補生か?
山田先生とは一夏がISに乗れると判明してからデータ収集のために戦った一人であったが、あれだけの戦闘ができるのにどうしてこうもビクビクできるのだろうか?
と、軽い現実逃避に陥っていたが一夏の番であることは変わりなく立ち上がった一夏は教室を見渡す。
「えっ・・・・・・・・と・・・・・・・・織斑・・一夏です・・・・・」
「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」
教室中が『続きは続きは』と言った期待を込めた眼差しで一夏を見つめる。
・・・・・・・・これ以上何を喋れと?
落ち着け織斑一夏。こういう時こそ、お前の口八丁の出番だろ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上です!!」
ズシャ!!!!!!!!!
教室中が机に頭を打ち付け、一部の生徒に至っては机から転げ落ちている。
(吉本○喜劇か!?ここは!?)
一夏はその息のあったに動作に驚きながらも後ろからくる気配に咄嗟に反応し、左腕を振って隠し持っていた短刀を取り出し、鞘から抜かぬまま気配の方向に振り抜いた。
ガッキ――ン!!
短刀が捉えたのは高速で振るわれた出席簿であった。
「(ちょっと待て!!出席簿の音じゃない・・・・)・・・げぇっ!!関羽!!」
「誰が三国志の英雄だ馬鹿者!!あと後ろからの攻撃を普通に防ぐな!!」
そこにいたのは関羽・・もとい、一夏の姉である織斑千冬であった。
「ちょっと待て!!何でここにいるんだよ千冬姉!!公務員としか聞いてねえ・・あだっ!!」
ズッガーン!!
一夏が千冬に何かを言おうとしたが再び振るわれた出席簿により遮られた。
「織斑先生だ!!それで貴様はまともな自己紹介もできないのか?」
「あっ!!織斑先生、会議は終わりましたか?」
「山田先生。新入生の面倒を押し付けてすまない」
「いえいえ。副担任ですので・・・」
千冬は教室を見渡す。
「さて、私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物にするようにするのが私の仕事だ。私の言うことはよく聴き理解しろ!!出来ない者には出来るまで指導してやる!!逆らってもいいが、私の言うことはよく聞け!!いいな!!」
お、横暴だ。
さすが千冬姉、俺に出来ないことを平然とやってのける。
そこに痺れも憧れもしないが、他の娘もドン引きしているだろうとあたりを見渡すと・・・。
「「「「キャー―――――――!!」」」」
ものの見事に黄色い声援がこだました。
「本物の千冬様よ!!」
「私お姉さまに会うためにこの学園に受験しました!!北九州から!!」
「私、お姉さまの為なら死ねます!!」
「やれやれ・・・なぜ毎年私のクラスにはこの手の馬鹿が集まるんだ?」
「キャー―!!もっと叱って罵って!!」
「でも時には優しくして!!」
「そしてつけあがらないように躾して!!」
・・・もうやだこのクラス。変態しかいないの?
一時間目が終わったが、注目の的である一夏に対して他の生徒は遠巻きに眺めているだけでなかなか近づいてこなかった。
皆、内心では一夏に話かけたくても互いに抜け駆けしないように牽制しあっていて無為に時間だけが過ぎていたのである。
「ちょっといいか?」
そんな空気など知らぬがごとく、一夏に我先にと話しかけてきた生徒がいた。
「箒か?」
「あ、ああ・・・」
六年ぶりに再会した一夏の幼馴染である篠ノ之箒であった。
「ここじゃあ、なんだし。屋上にでも行こうか」
「いいぜ」
『篠ノ之さん抜け駆け!?』と言うクラスメートの声を振り切り、二人は屋上に向かった。
「その六年ぶりだな」
「ああ・・・」
屋上で二人は久しぶりの再会に感慨にふけっていた。
「それにしても、よく私だと分かったな」
「そりゃあ分かるよ、幼馴染なんだし・・・髪型も全然変わってなかったしな・・・」
「そ、そうか・・・!!」
一夏の位置からは見えなかったが、箒は頬を赤く染め嬉しそうの呟いていた。
「そう言えば・・」
「どうした?」
「全国大会優勝おめでとう」
「な!!どうして知っているんだ!?」
「いや、ネットニュースで見たから・・」
「なんでそんなもの見てるんだ!?」
「いや、それくらい見ててもいいだろ!!」
真っ赤な顔をして一夏に詰め寄る箒。
「ま、まあいい。剣道と言えばお前はどうだったんだ?大会でも名前を見なかったし、その・・・そんなに細い体して・・・」
「う!!」
何気にコンプレックスを突かれ言葉に詰まる一夏。
「実はな・・・去年の冬まで寝たきりになっていたせいで筋肉が殆どなくなっちゃってな・・・最近ジムで鍛えてようやくここまで戻ったんだよ」
「そ、そうか・・・すまな・・・・・去年の冬?」
その時期に嫌な予感を覚えた箒は一夏に尋ねた。
「まさか・・・一夏・・・」
「ああ、俺はSAO生還者なんだ・・・」
「な!!大丈夫なのか!?確かあの事件では裏で人体実験があったって・・・」
SAO事件では裏で須藤による人格変換の人体実験があり、大問題になっていたのはゲームに興味のなかった箒でも知っているようなことであった。
「それは大丈夫だよ。俺は実験の被害にはあわなかったし」
「そ、そうか・・・良かった・・」
箒は安心するとともにひどく後悔していた。
保護プログラムのせいで過去の知り合いとは連絡が取りづらかった状況だとは言え、もっと真剣に調べれば一夏の状況をもっと早く知れたのではないか・・・。
多分元気だろうと決めつけ、幼馴染が大変な時に傍にいることさえできなかったことにひどく落ち込んでしまった。
「おっ・・・そろそろ次の授業が始まるみたいだから戻ろうぜ」
「わ、分かった」
そのまま二人は教室に戻った。
昼休みに入り、二人は食堂に向かった。
それぞれ定食を注文して席に着く。
「一夏君。隣いいかな?」
そこに別の生徒が声を掛けてくる。
「(あれ?この声どこかで・・・・)ええ。別にいいです・・・・・」
そして声の主を見て固まってしまった。
「はーい、ナツ君。久しぶり」
「フィ、フィリア!?」
そこにいたのは同じSAO生還者のフィリアであった。
「一夏?この人は?」
少し不機嫌そうな箒が尋ねる。
「俺と同じSAO生還者のフィリアって言うんだ」
「
「あ、ああ悪い。それにしてもよくここに入学できたな・・・・」
一夏と同じ学年と言うことは目を覚ましたのは去年の冬であり、SAOに囚われたのは中学1年生の頃である。
たった数か月の間にリハビリや復学だけでなく、受験勉強まで済ませ、倍率の非常に高いこのIS学園に入学できたのだとしたら大したものである。
「うーん。ちょっと違うんだ。私はSAOに囚われる前からここの生徒でね。本来ならばもう3年生になるはずなんだけど、二年も寝たきりだったから留年して1年生からやり直しなんだ」
「そ、それはお気の毒に・・・」
「まあでも知り合いと同じクラスになれたからまだマシかな・・・」
「えっと・・・琴音先輩・・・」
「何?箒ちゃん。あと同じ学年だから先輩はいらないよ」
「では琴音さんで。その・・・一夏はSAOではどんな感じでした?」
「お、おい箒!?」
「どんなとは?」
「一夏に聞いてもはぐらかされるばかりで・・・少し興味があって・・・」
「ははーん。まあ私も一夏君と直接の面識は終盤になってからなんだけど・・・・ナツ君、SAOでのアバターネームなんだけど、ナツ君は攻略組って言うトッププレイヤーの一員だったんだ」
「攻略組?」
「SAOの世界は全部で100層ものステージがあって下から順にフロアボスを倒して言って上を目指すゲームなんだけどその最前線で迷宮を探索したり、ボスに挑んだりするメンバーたちを攻略組って呼ぶんだ」
「そうなんですか・・・」
「ナツ君は『神聖剣』のヒースクリフ、『二刀流』のキリトと並んで『抜刀術』のナツと言えば攻略組の三大巨頭と言われるほどのトッププレイヤーなんだから」
「そ、そうですか。一夏が・・・・」
まるで自分の事のように嬉しそうな表情を浮かべる箒。
「やめてください・・・自分はそんな誇れるようなもんじゃなくて、たまたまユニークスキルを会得していたから末席に加えられていただけであって、他の二人と比べたら随分と目劣りしますよ・・・」
恥ずかしそうに琴音を止めようとする一夏。
気が付けば周りの生徒も興味深そうに琴音の話に聞き耳を立てていた。
「いつまで食べている!!食事は迅速に効率よくとれ!!午後の授業に遅れる者にはコアを抜いたIS装着させてグラウンド50周させるぞ!!」
そんな教師の言葉に食事を大急ぎで食べ始める一同であった。
午後の授業に入り、最初のIS関連の授業が始まった。
(覚悟していたことだけど・・・さっぱり分からん!!)
他の授業にはまだぎりぎりだがついてはいけた。しかし、IS関連になると全くついていける気がしなかった。
「織斑君はここまでで何か分からないことはありますか?」
「うっ!!」
ここにきてまさかの指名である。
本人は男である自分に対して気を使ってくれているつもりなんだろうが、今はそれが恨めしい・・・。
「ほ・・・・」
「ほ?」
「ほとんど全部分かりません・・・・」
「ぜ、全部ですか・・・あっ!!」
ここにきてようやく山田先生も気が付いたようである。
IS学園は各国の生徒を多く預かり、また多くの軍事機密を抱える学校であるため、入学する生徒の身元は徹底して調べられる。
クラス名簿に目を通した際に目にした情報、SAO生還者であるため勉強に2年もの遅れがあったことを今思い出したのだろう。
「ご、ごめんなさい!!私ったらとんだ無神経なことを・・・」
「いやいいんです。今質問すると授業を妨害しかねないので、放課後まとめて質問してもいいですか?」
「もちろんです!!私に任せてください!!・・・・・・・・・あれ?でもそしたら放課後に二人っきりということに・・・・・だめです・・私と織斑君は教師と生徒で・・・・・・・」
「山田先生!!戻ってきてください!!」
その後、どこかの世界に旅立ってしまった山田先生を連れ戻すのに苦労した一夏であった。
「ちょっとよろしくて?」
先ほどの授業で完全についていけてないことを悟った一夏が教科書とにらめっこしていると金髪碧眼で如何にもプライドが高そうな少女が話しかけてきた。
「よくない。今少しでも頭に詰めておかないと本格的にまずいからあまり話しかけないでもらいたい」
その態度に面倒事になると直感したため、一夏にしては珍しくそっけなくあしらおうとしたのだが・・・・。
「まあ、何ですか!?その態度は!?私に話しかけられるだけでも男の身にあまる光栄なのですからそれ相応の態度があるのではなくって!?」
どうやら彼女の怒りを買ってしまったらしい。
「悪いけど俺は君のことをよく知らないし・・・」
「知らない!?イギリス代表候補生にして入試主席であるこのセシリア・オルコットを!?」
(主席?そう言えば生徒代表で挨拶してたっけ?)
おぼろげな記憶からそのことを思い出す一夏。
しかし、あの時は周りの女性ばかりの中に男が一人の状況でそれどころでなく記憶がおぼろげであったのは仕方のないことであろう。
余談だが、彼女の名字は『オル』コットであるため『
「悪いけど今の自分の国の総理大臣すら誰だか知らないんでね。他国の代表候補生まで分かるわけないだろう」
「呆れましたわ!!無知とはこれほどまでに罪深いことなのですね!!本来ならば私のようなエリートと同じクラスになれただけでも身にあまる幸運なのですよ!!そこのとこ分かっていらっしゃるのですか!!」
「そりゃ、ラッキーだな・・・・」
「馬鹿にしていますの?」
「・・・・・・・いや?」
本人は馬鹿にする気など毛頭ないが、エリート意識を鼻にかける態度をたる彼女に苦手意識を持ちながら適当にあしらっていると彼女にはそうとられてしまったらしい。
「世界で唯一ISを扱える男性と聞いていましたからどんな知的な人か期待していましたのに・・・とんだ期待はずれですわ!?」
「ただのモルモットに何を期待してるんだか・・・」
「まあ。私はエリートですから?下々の者にも施しを与えて差し上げることもやぶさかではありませんわ。あなたが泣いて頼み込めばISについて多少のことは教えて差し上げても良くってよ?」
そうか、ならありがたい・・・・。
「そうですか。それではこの卑しい庶民にいろいろとご教授いただきたく存じます」
出来る限りさわやかな笑みを浮かべながら相手に合わせた言葉遣いで懇願した。
「・・・あなたやっぱり馬鹿にしていますのね!?」
何を怒っているのかは分からないがどうやら気に入らなかった様子である。
「・・?・こういうプレイをご所望なのでは?」
その一言に周りがざわめきだした。
「・・プレイって・・・」
「オルコットさん・・・・・やっぱりそう言う趣味が・・・」
その言葉が耳に入ったのかセシリアの顔が耳まで赤くなる。
丁度その時チャイムが鳴った。
「~~~~~///!?また来ますから逃げるんじゃなくってよ!!」
そう言って自分の席に戻って行くセシリア。
(こりゃあ、近いうちにひと悶着ありそうだな・・・)
そう思う一夏であった。
しかし、それは意外にも早くもたらされた。
ちなみに、放課後帰宅しようとした一夏に急遽寮で暮らすように山田先生に言われ、部屋に届けられた荷物に一夏の人生の
そして、問題の冒頭のシーンに戻る。
翌日、思い出したかの様に急遽クラス代表を決めることとなったのであるが・・・。
「はい。織斑君がいいと思います!!」
「私も!!」
「織斑君を推薦します!!」
「他にはいないのか?いないのなら無投票当選だぞ・・・」
クラス中の推薦によって一夏がクラス代表になろうとしていた。
しかし・・・・。
「待ってください!!納得できませんわ!!」
そこに待ったをかけたのはセシリアであった。
「男がクラス代表なんていい恥さらしですわ。このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
(随分な言い様だな。まあある意味間違っちゃいないがな・・)
箒や琴音がセシリアの言葉に表情を硬くするが本人は気付いていない。
「実力から言えばクラス代表にふさわしいのはこの私ですわ!!それなのにただ珍しいからなどと言う理由で男にクラス代表をまかせるなんて、私はこのIS学園にISを学びにきたのであってサーカスを見に来たのではありませんわ!!」
だんだんとヒートアップしていくセシリアに不安になっていく一夏。
「大体、ゲームなんかの話で盛り上がるような文化としても後進的な国に暮らさなければならない事自体私にとっては耐え難い苦痛なのに何が悲しくて『たかがゲーム』とISを混同しているような勘違い男に代表を任せなければ「たかがゲームだと!!」・・!?」
そこで初めて一夏がセシリアを睨みつける。
「「「ひっ!!」」」
そのあまりも強い殺気に近くの女生徒が失神しそうになり、それに気づいた一夏は顔を手で覆い殺気を抑える。
「いや、すまない。つい熱くなりすぎた・・・セシリアさん。確かに『たかがゲーム』と言う君の認識は正しいだろう。あそこでの二年間は実際に体験した人間にしか分からないからな。・・・でも、その『たかがゲーム』で4000人もの人間が実際に死んでしまったんだ」
「!?」
「別に俺のことを悪く言うのは構わない。世間から見れば俺なんて『たかがゲームに二年間を無駄にした廃ゲーマー』って認識でも間違っていないんだからな。でも、君はあの世界で死んでしまった4000人の命さえも『たかが』で済ませる気か?」
「そ、そんなことは・・・」
「いや分かっている。君がそのことを知らずに口にしたことは、だからこのことはお互いに水に流して改めて選挙といかないか?」
一夏はその言葉でこの場をおさめようとしたが・・・。
セシリアはまるで屈辱に耐えるように震え。
「決闘ですわ!!」
「・・・・・・・・・・いやなんでそうなる?」
「ここまでコケにされたまま引き下がっては私の沽券に関わりますわ!!」
そう言ってセシリアはどこからか取り出した手袋を取り出して一夏に投げ渡し、一夏は反射的にそれを受け取ってしまった。
「それじゃあ。一週間後に決闘を行うということでいいな?」
「いや何当たり前のように進行しているの、織斑先生!?」
慌てて一夏はセシリアに振り向き。
「いや待ってくれ!!ハンデが欲しい!!」
「ふふん。良いですわよ。なんたってこの私はイギリス代表候補生にして専用機持ちのエリートなんですからね」
(イギリスの専用機持ち・・・・ならば・・・・)
かつてラウラから聞いた言葉を思い出す一夏。
専用機と言う言葉を聞くと使用者専用にチューンアップされたワンオフの機体をイメージするが実際には違う。
専用機とは行ってしまえば各国や企業が力を入れて研究している分野の試作機を試すための研究や実験の専用機と言った意味合いが強い。
要するに実戦用ではないため意外とピーキーな特性なものも多いのだ。
ましてや自国ではなく、多くの国家や企業の目が集まり実験データを公開する必要性のあるIS学園に入学する生徒に持たせるような機体ならなおさらそうであろう。
イギリスはBT兵器に力を入れている国柄であるために彼女は射撃適性が高い可能性が非常に高い。
「そうだな・・・勝負は狙撃戦にしよう」
「なっ!?どういうことですか!?」
「あれ~~?エリート様ともあろう者がまさか自分が絶対に勝てる勝負しかしないなんてことはないだろう?」
その言葉にクラスの皆が気付いたように反応する。
今から一週間特訓したところで九分九厘セシリアが勝つだろう。
多少のハンデを背負っても代表候補生とこの間ISに触れたばかりのド素人との差は絶望的に大きいのだ。
一夏がセシリアに勝つには特定の一分野だけを徹底して極めて対抗するしかない。
「あとハンデとして俺は先に対決を行う狙撃場で一週間特訓してセシリアにその場所を伝えるのは対決当日。実弾銃10発勝負でどうだ?」
「・・・・・・・」
思案顔で考えるセシリア。
「あれれ~~?まさか代表候補生ともあろうお方がちょっとハンデを負ったくらいで『得意分野』で素人に負けるのですか?」
一夏の方もここは譲れないところなので彼女のプライド刺激し冷静にさせないようにする。
幸い、先ほどの発言でクラスの6割を占める日本人から敵意を向けられるセシリアは半ば孤立状態で『逃げるなよ』と言った空気になっていた。
「なっ!!そんなわけないでしょ!!いいです!!その勝負乗りましたわ!!」
(こいつ意外とちょろいな・・・・こんなんが代表候補で大丈夫かな、イギリス・・・)
こうして一週間後の決闘が決まった。
その日の放課後セシリアはシャワーを浴びながら今日のことを思い出していた。
(私はどうしてあんなことを・・・・)
自分でも大人気ない対応だとは分かっていたが、どうしても我慢できなかった。
理由は分かっている。
その答えは『落胆』だ。
彼女は婿養子であるためにいつも母に卑屈気味であった父を心底毛嫌いしていた。
父以外の彼女に会う男どもはどいつもこいつも何かを諦めたような目をしていた。
両親が死んでからはその遺した遺産をハイエナから守るために多くの努力を積みイギリスの代表候補生にまで上り詰めた。
そして、その時に知った『世界で唯一ISを扱える男』。
正直期待していたのだ。
彼、織斑一夏に。
しかし、彼の瞳を見て落胆してしまった。
父やその他大勢と同じ何かを諦めたような光のない目。
昨日今日と彼を観察していたが、他の人たちと何かが違う訳でもない、いたって普通の男だった。
自分が苦労して手に入れたIS学園の席をただ珍しいと言うだけで何の努力もなく手に入れた彼に自分の努力を否定されような気がした。
それに彼が他の女子に絡まれた時もできるだけ波風が立たないように丁寧に対処していたのになぜか腹が立った。
それは事を荒立てないようにする日本人らしい大人な態度であるのは明白であったのだが、それが父の卑屈な姿と重なり、憎しみに近い感情を覚えたのだ。
「私はあなたを絶対に認めませんわ。織斑一夏」
シャワーに打たれながら暗く呟く。
『遥か遠き理想郷」
第80層あたりのクエストでアルなんとかさんのお姉さんから取り戻した装備(鞘)
全装備中最高の耐久値を誇りエクストラスキル『バトルヒーリング(2000)』を追加するチート武装