SAOsurvivor to ISschool 作:DragonWill
ソードアート・オンライン、通称SAOと呼ばれるそれは世界初の
コントローラーを介してキャラクターを操作する従来のゲームとは全く異なる新世代のゲーム第一号となるSAOは天才プログラマー、茅場晶彦の手により生み出され、ゲーム業界に革命と栄光の1ページを刻みつける・・・・・・・・はずであった。
しかし、サービス初日にGMである茅場晶彦から告げられた非常な宣言により、ゲームに参加した10000人ものプレーヤーは自発的にログアウトができず、ゲーム内の死がそのまま現実の死になってしまうデスゲームと化してしまった。
革命と栄光の瞬間のはずが史上最悪の殺人事件となってしまったのである。
そしてこのデスゲームが開始されてから2年が経過した。
アインクラッド:第百層『紅玉宮』
茅場晶彦の部下であった須郷の陰謀を阻止し、キリトを始めとする攻略組は遂にラスボスを倒した。
「おめでとう。実に見事だったね」
その時、拍手の音とともに第75層でのキリトとの決戦以来姿をくらませていたヒースクリフ、茅場晶彦が現れた。
「「「「「「「!?」」」」」」」
「実に見事な勝利だったよ」
「ヒースクリフ・・・生きていたのか・・?」
「身構えないでくれたまえ・・・君たちにお詫びをしに来たのだ」
「詫びだと・・・?」
「ここまで何の説明もしなかったこと・・本当に申し訳なく思っている。なぜこんなことになったのか、そしてなぜ私が生きているのかを説明しなければならないだろう」
そしてヒースクリフから事情が語られる。
キリトの娘であるユイを含むいくつかのメンタルカウンセリングプログラムがこの世界に干渉を禁じられたことにより蓄積されたエラーがカーディナルシステム本体にまで逆流してしまったことや須郷達による外部からの干渉などによる想定外の負荷により、カーディナルシステムの一部が暴走してしまったことによるシステム障害が事の始まりである。
そのため、システム障害に対処するため、GMである茅場晶彦を自動的に管理者モードに移行してしまったため、キリトとの決戦の途中で姿をくらましてしまい、今の今まで出てこれなかったらしい。
「それで、いったい俺達をどうする気だ?」
「安心したまえ。何もする気はないよ。本来のボスではなかったとはいえ、君たちは間違いなく第百層のボスを倒したのだ。イレギュラーだからと言って君たちの勝利を取り消すつもりなど全くない。・・・そもそも最後のボス戦に遅れたのはこちらの方なのだからね・・・。改めて賞賛を送ろう。クリアーおめでとう。勇敢なるものたちよ」
「・・・・・気に入らないな・・・」
「数々の非礼は詫びよう」
「そうじゃない・・・あんたさっき言っただろう?100層のボスはイレギュラーだったって・・・」
「本来100層のボスは私が受け持つはずだったからね」
「俺たちは
「つまり君は無謀にもこう言いたいのか?『本来のボスと闘わせろ』と・・・」
「ああ、そうさ・・・・だが、これは俺の我儘だ。みんなを巻き込むつもりはない。俺たちの勝利を取り消すつもりがないのなら、俺以外を全員ログアウトさせてくれ。その後、俺と闘おう・・・」
「ちょっと、お兄ちゃん!?何言ってるの!?やっとクリアできたんだから一緒に現実に帰ろうよ!!」
「スグ・・・すまない。これは俺なりのけじめのつけ方なんだ。ここでやつを倒さずにゲームクリアしてしまえば、俺は現実に戻ってもSAOに縛られたままだろう。心をアインクラッドに残したまま現実に戻っても虚しいだけだ。・・・・大丈夫、スグよりちょっと戻るのが遅れるだけだから・・・夕飯でも作って待っていてくれよ」
「そんなの嫌だよ!!またお兄ちゃんと離れ離れになるくらいなら私も残る!!」
「何言ってるんだ!?」
「お前だけじゃないぜ!!」
「クライン!!」
「ケリを着けなけらばならないのは私も同じよ」
「私だってあんたと同じ時間だけこのSAOに費やしてきたんだからね!!」
「キリトさんだけを残して自分だけ帰るなんてできません!!」
「シノン、リズ、シリカ」
「大丈夫よキリト君」
「アスナ」
「私たちは最高のパーティーメンバーなんだから」
「やれやれ・・・保護者として俺も残る必要がありそうだな」
「エギル」
「ここまで来て自分だけ格好つけるんじゃねえぞキリト!!最後の最後でのけ者は酷いんじゃねえのか?」
「ナツ」
「ナツを守るのが私の使命だ。ナツが戦うのなら私も戦おう!!」
「ラウラ」
「ふっ・・・人の意志と言うものは本当に面白い。私はもしかしたらこれが見たくてSAOを作り上げたのかもしれないな・・・」
「そのあんたの作った世界を今俺たちが終わらせる!!」
「よろしい!!では掛かってきたまえ!!正真正銘のラストバトルを始めよう!!」
こうしてSAO事件は幕を閉じた。
目覚めた彼らに待っていたのは過酷なリハビリと2年以上もの後れを取り返すための勉強の日々であった。
年の暮れに目を覚まし、リハビリを終えたSAO生還者の学生を対象に政府は急遽新しい学校を設立した。
この春から一部の事情を抱える生徒以外は全員通い始めるらしい。
そしてその一人であるナツこと織斑一夏も受験のために市民ホールに向かっていた。
SAO生還者は強制的に通うこととなるため、受験などあってないようなものであるが、今現在の学力を図り、どのペースで復学すればよいのかの参考にするために行われる学力テストらしい。
6000人にも昇るSAO生還者の内、学年がバラバラな500人の学生に一斉にテストするため市民ホールで行われていたのだが・・・・。
「やばい・・・迷った・・・」
一夏は見事に迷子になっていた。
「・・・急いで会場に入らないと・・・」
極論すれば、別にすっぽかしたからと言って入学できないわけではない。
しかし、教師たちの心象が悪くなるのは明白である。
ただでさえデスゲームに2年も参加していたSAO生還者は世間からの風当たりも悪く、レッドギルドなどの存在や大半が男性であることもあいまって、この女尊男卑の世の中ではSAO生還者(女性を除く)全員を精神病院にいれるべきだと言う世論さえある世の中である。
自分一人の身勝手でみんなの印象を下げるわけにはいかないのだ。
「よし、次に見つけた部屋に飛び込んでみよう」
人はそれを破れかぶれと言う。
そして入った部屋に何故かありえないものが置いてあった。
「これって・・・IS・・・?」
インフィニット・ストラトス。
電子工学の天才が茅場晶彦ならば機械工学の天才である篠ノ之束によって10年ほど前に開発された宇宙進出を想定されたマルチパワードスーツである。
「なんでこんなものが・・・・?」
そう言いながらISに近づいていく一夏。
「俺でも動かせるかな・・・なわけないか・・・・」
ISも持つ致命的な欠陥、それは女性にしか動かせないことである。
しかし、白騎士事件でISの兵器としての有用性を証明してしまい、世界の軍事業界はこぞってISの開発に着手した。
そのためISパイロットの絶対数が国防の総力となってしまい、ISパイロットを育てるために世界の政府は女性優位の政策を次々と作り出したのである。
そのため、100年以上かけて男女平等を目指してきた世界はたった10年で女尊男卑の世界へと傾いてしまったのである。
「・・・・・」
一夏は何かに吸い込まれるようにそのISに手を伸ばす。
「ちょっと!!そこの君!!何してんの!?」
一夏がISに手を触れるのと係員の女性の呼び止められるのはほぼ同時であった。
「「!?」」
「嘘?男がISを起動させた・・・?」
そして一夏は光に包まれ、光がやむとそこにはISを装着した一夏が立っていた。