ゆうてもフェアリィダンス編の繰り返しというかそんな感じな気もしますけども
では、どぞ
「たっだいま~!」
買い物袋を持ちながら、桐ケ谷直葉はご機嫌な様子で玄関の扉を開けた。
同年代の友人ができたこともさながら、一年生ながら剣道の都大会で優勝した黛拓武という少年に出会ったことが主な要因である。
幼いころから剣道をしている直葉は、同年代の選手の中ではかなり強い部類に入るだろう。
しかし、年齢が上の選手には彼女よりも強い選手がたくさんいる。勿論、直葉も負けないために努力をしているが、心のどこかでは自分では二年や三年には勝てないと思っていたのだ。
ところが先日の都大会において、一年生ながら並み居る強豪を打ち倒し、見事優勝した男子が出たと聞いたとき、直葉は興奮を隠せなかった。
同じ年代にもこんなに強い人がいるんだ。
私も、もっと頑張ろう。
それからの直葉は、どこか吹っ切れたかのようになり、めきめきと実力を伸ばすことができたのだ。
今度の大会では、前回敗れたあの三年生にも勝てるかも…と密かに思っているくらいである。
そんな自分を変えるきっかけになった人物に会えた。これが嬉しくなくてなんだというのだ。
「お兄ちゃん聞いてよ!さっきね~……お兄ちゃん?」
靴を脱ぎながら直葉ははて?と首を傾げる。
いつもならここで兄が「おかえり」と言いながら階段を下りてくる筈なのだが、今日は下りてこない。
「…寝てるのかな?」
今日は思っていたより風が涼しかったように感じる。
兄のことだ、きっと窓を閉めずに寝ているに違いない。
買ってきた食材を冷蔵庫にしまった後、二階の和人の部屋に向かう。
「お兄ちゃん?開けるよ?」
小さく声をかけながらそっと開けたドアからは案の定涼しい風が吹いてきて、直葉の体をすくませる。ああ、やっぱり開けっ放しだったと暗い部屋の中に入った時、和人がベッドの上に座っているのが見えた。
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん、こんな暗いところでどうしたの…!?窓も開いてるし、風邪引いちゃうよ?」
窓を閉め、カーテンを引いたあと、パソコンの電源がつけっぱなしになっていたのに気付き、和人が何を調べてるのか気になってチラっと画面を盗み見る。
そこに書いてあったのは今から二十年以上前、VRゲームが発達し始めた頃に起きた事件の記事だった。直葉も、学校の授業で少しだけ習ったことがある。兄も学校から帰ってきた時に「やってみたかったな」と瞳をキラキラさせながら呟いて、母親に馬鹿言うんじゃないと叩かれていたことがあった。
しかし、急にそんなことを調べてどうしたのだろうか?
それを問いかけようとしたとき、掠れるような声で和人が呟いた。
「夢を…夢を見たんだ」
掠れた声はなお続く
「そこで俺は仲間と一緒にいた…。辛いことや、悲しいこともあったけど、楽しかった…」
そう言う和人の顔はどこか懐かしそうで、それでいて絶望したような、諦めの表情だった。
その顔を隠すように伏せた和人の体がぎゅっと強張り、やがて絞り出すような声が漏れた。
「いつまでもこの時間が続くって、…そう、思ってたさ……。だけど…だけど、次に気が付いたら俺は一人になってた…。仲間に会おうにも、絶対に会うことはできない。俺は…仲間に会うために手段を尽くしたよ…。でも、駄目、だった…。俺の手が…届かないんだ………皆に…」
「………っ」
何故だろう。和人の言うことは彼の夢のことなのに、こんなに胸が苦しくなるのは。
いつも直葉が見ている前で飄々としている兄が、幼い子供のように泣きじゃくっている。
そんな彼の姿を見るのは、嫌だった。
少しためらった後、直葉は和人の隣にそっと腰を掛け、彼の体を包み込んだ。
「お兄ちゃんは、一人じゃないよ」
優しく背中を撫でながらそう言うと、和人は力なく首を横に振る。
「一人だよ…。俺を知ってる人は誰もいない…。手を伸ばしても…誰も掴んでくれない。皆、遠くに行ってしまったから……」
「なら、私が掴むよ」
え…?とこちらを向いた和人の顔を正面から見つめる。
「お兄ちゃんの手を掴む人がいないなら、私がお兄ちゃんの手を掴むよ」
背中に回していた手を離し、彼の手を両手で握る。
ずっと窓を開けていたからだろう、その手は冷たい。
直葉はその手をさすりながら、言葉をつづける。
「誰も手を掴んでくれない、なんてことはないよ。手は、誰かの手を掴むためにあるんだもん。だから―――」
―――お兄ちゃんは一人じゃないよ
その言葉を聞いた和人の目が大きく見開かれ、やっぱりかといったような表情で息をつく。
「やっぱりスグにはいつも助けられちゃうな…」
「…?なぁに?」
ポツリと呟かれた和人の言葉に首を傾げるが、「なんでもないよ」と頭をワシャワシャと撫でられる。崩れた髪型を直しながら恨めし気に和人を見上げるが、当の本人は部屋の電気をつけて大きく伸びをしている。
「……よしっ!スグ!今日は俺が夕食を作るから楽しみにしておけよ!」
「夕食って…お、お兄ちゃん作ったこと無いでしょぉ!?」
直葉の方を向いてそう宣言した和人は腕を回しながら階段を下りていき、一瞬呆気にとられていた直葉は慌ててそれを追いかける。
結局夕食は二人で作ることになり、今まで厨房に立ったことのないはずの和人が手際良い動きをして直葉を驚かせたり、仕事から帰ってきた母親の翠が仲良く厨房に並んでいる兄妹を見て目をパチクリさせていたりと、その日の桐ケ谷家には、笑顔が絶えなかった。
いいはなしだなーみたいな
無理やり感がありそうな気もするけどまあ…はい
いきなり夢を見たんだって言われても捉えようによっては中二病と捉えられてしまいそうなのは気のせいだろうか……
そろそろキリト君をBBデビューさせないと…
いや、その前にヒロイン候補と邂逅でもさせようかな
メインヒロインはまだ決めてないけど…アンケートにするか自分で決めるか…
そして編集中のを間違えて投稿したとかすいません!!
改めて投稿しなおしました!!