銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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明けましておめでとうございます
時間取れるときに少しずつ書いてなんとか形にできたので投稿です

バーチャルユーチューバーにはまりました
YUNAも似たようなモノになれそうだなってふと思いました

ヘルメス・コードはコースから落ちたらHPの減少が始まっていくみたいです
まああんな高いとこからずっと落ちてたらトラウマになりますもんね

それではどうぞ


第四十六話:レースの終わりと事後処理

 俺の意図を汲んで空中二段ジャンプを成功させた《リーフ・フェアリー》を見送った俺は、うへぇと言う声と共に氷の地面に墜落ーーしそうになった所を《ブラック・ロータス》の剣の腹に受け止められた。

 

 「全く、毎度君は私達が思いつかないようなことをやってくれるな」

 

 「何事も挑戦、だろ?」

 

 彼女にお礼を言いながらそう返し、既に見えなくなった仲間達のいる方向を見上げる。

 ジャンプして思ったがこのステージはやはり空気が地上に比べて薄く、ただのジャンプでもそれなりに距離が伸ばせた。

 つまりはまあ、そこら辺の環境設定もシステム的に拘っている訳で、俺の予想が正しければ更に上に上がればそこは宇宙空間となるだろう。

 

ーーそれにしても

 

 「似てるよなぁ……」

 

 ちょくちょく感じられるアンダーワールドと加速世界の類似点に思わず呟いてしまう。

 限界加速フェーズが始まったあとの記憶はあまりないが、確か心意の翼でどこまで飛べるか試した俺は自分の力では宇宙に行けないことを知って、機竜を使って宇宙を目指した……気がする。

 いや、これはなんとも上手く言葉にできないのだが、そんなことしたようなしてないようなと、ひどく曖昧なのだ。勿論記憶のロック及び削除の作業をしてくれた比嘉さん達を疑うわけではない。

 

 落ち着いた後の俺ならきっと《世界の果て》を目指すだろうし、試行錯誤で色々とやるはずだ。と言うか、前にアスナとアリスとでアンダーワールドにログインした際に機竜については聞いて、明らかに俺らしき存在が造ったことがわかったので、まあそうしたんだろうなって。

 俺のことは俺がわかる筈だ……たぶん。

 

 

 と、ここで悲鳴をあげながら《アーダー・メイデン》が落ちてきて、俺の時と同じようにロータスの剣に受け止められた。

 リーファは俺たちよりも高く跳んだためかまだ降りてこない。

 もしくは落下によってHPゲージの減少が始まって強制的に《死亡》扱いになってしまったのだろう。

 

 「しかしまあ……」

 

 「ん…?」

 

 「とんでもないことが起きたな、と思ってな」

 

 ブラック・ロータスの声に反応すると、彼女は肩を竦めながら今回のレースについてそう溢した。

 

 「確かに長年秘匿されていた心意技、クーさんのクロム・ディザスター化、加速世界に激震が走ったのは間違いないのです」

 

 「あのジグソーとか言う奴、革命とか言ってたけど……」

 

 「六王は対応に追われるだろうな……無論、私もだが」

 

 メイデン、ベルの言葉に頷いたロータスは考え込むように俯く。

 

 「ま、まあそう言うのって意外と何とかなるんじゃないかな…?」

 

 そう言いながらロータスの肩を叩いた俺だったのだが、彼女はプルプルと体を震わせると突然此方に剣を突きつけてきた。

 

 「大体君も君だぞキリト!!なんだコレは!!あんな大規模な技を使うなんて、何てことをしてくれたんだ!」

 

 「え"っ」

 

 驚きの声をあげる俺に構わず、ロータスはマシンガンのように言葉を続ける。

 

 「クロウだけならまだ何とかなったさ!ああ!断言しよう!何てったってうちにはメイデンが居るからな!」

 

 「サッちんが怒ったのです。激おこなのです」

 

 メイデンがベルの後ろに隠れながらそう言いつつ、そそくさと離れていく。

 

 「君の!ことを!どう!説明すれば!良いと!思っているんだ!!」

 

 「そ、それはこう…突如現れた謎の剣士……みたいな」

 

 「それでハイそうですかなんて奴らが言うと思うか!!」

 

 あいにくギルドとか組織活動をしてなかった俺はレギオンマスターの気持ちがわからないようで、地雷のようなものを踏み抜いてしまったようである。

 助けを求めるように離れていったメイデン達を見るが、二人ともお手上げとばかりに首を横に振る。

 

 「聞いているのかキリト!!」

 

 結局、ロータスの説教はクロウ達がゴールするまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

 「んん、それじゃあ、ヘルメス・コードレースお疲れ様会を始めたいと思う」

 

 レース終了後、ハルユキ達の家に集合した俺達はそれぞれコップにジュースを注ぎ、小さくではあるが祝勝会(あれで勝ったかは置いといて)を始めていた。

 各々が持ち寄ったお菓子を摘まみながら、話はやはりハルユキのディザスター化についてになる。

 

 「胸部分の装甲…ね」

 

 「アイツと接触したのはそこくらいしかないんです……まさか、本当にアバターに寄生なんてことが起きているなんて……」

 

 本当にすみません、と俯いたハルユキの表情は暗く、室内も釣られて重い空気になる。

 

 「いや、まだ諦めるのは早いぞハルユキ君」

 

 その空気を打ち破ったのはやはり黒雪姫だ。

 彼女はうむ、と頷くと言葉を続ける。

 

 「なんてったって我々は鎧を浄化する方法を知っているからな」

 

 「え!?」

 

 弾かれるように顔を挙げたハルユキに黒雪姫は再び頷くと、楓子のいる方向に視線を向ける。

 視線を向けられた楓子も力強く頷くと、膝の上で抱き抱えている少女の体を持ち上げた。

 まるでライオンキングの冒頭である。

 

 「彼女はアーダー・メイデン、そして今言った鎧を浄化できる方法の持ち主だ」

 

 【UI>改めまして、サッちんから紹介があったアーダー・メイデンこと四乃宮謡と申します】

 

 顔を赤くし、眉をひそめながらもパパッとチャットに書き込む精神力は称賛に値する。

 諦めているのだろう。そもそも謡はハルユキの家に着いた途端いち早く楓子に抱きつかれ、膝に乗せられたのだ。自己紹介も交えて何度か離すように言っていたが、笑顔で首を横に振られて結局こうなっていた。

 

 「じゃ、じゃあハルに関しては何も心配することはないですね!!」

 

 希望が見えたと言わんばかりに声をあげるチユリだが、黒雪姫はいや、と首を横に振る。

 

 「実は幾つか問題があってな」

 

 【UI>ご存知の通り、第一期ネガ・ネビュラスはある事件によって解散してしまったのです】

 

 「勿論赤の王を私が倒したという部分も少なからず関係しているが、真実はまた別なんだ」

 

 黒雪姫、謡、楓子の第一期ネガ・ネビュラスのメンバーは、彼女達が何故加速世界を離れることになったのかを話し始めた。

 ネガ・ネビュラスが解散した理由、それは加速世界にて長らく謎に包まれている場所である皇居(彼女達は《帝城》と呼んでいるらしい)を攻略しようとしたからである。

 現実世界で皇居に位置するその場所はそれぞれ四つの門が存在し、朱雀、玄武、青龍、白虎の四神と呼ばれる四体のエネミーが守護していて、それはもう半端ない強さらしい。

 彼女達はそこに注目したらしく、レベル10に到達する以外にブレイン・バーストをクリアする方法が《帝城》攻略だと睨んだらしい。

 

 「まるでゲームのラストダンジョンだな。確かにそこの奥には何かがあるに違いない」

 

 「攻略できたら確かにゲームクリアっぽいですもんね」

 

 「一つ目のクリアの道は閉ざされても二つ目に挑戦しましょうと、あの時の私たちはサッちゃんに言いました」

 

 【UI>サッちんは最後まで反対していたのですけど、最終的に来てくれたのです】

 

 「あ、あれはお前達が勝手に《帝城》に向かい始めたからだろうが!私はあの時攻略作戦は反対だと座り込んでいたぞ!」

 

 懐かしむように話していた三人だが、黒雪姫はこほん、と咳払いをして話を続ける。

 

 「…結果からわかる通り我々は蹂躙され、壊滅した。これがネガ・ネビュラス解散の真実なんだが、ここで問題の話に戻るんだ」

 

 【UI>四体のエネミーに対抗して四隊にわかれた私たち四元素は、他のメンバーを逃がすために囮になったのです。その結果フー姉を除いた私、アクア・カレント、グラファイト・エッジの三人はエネミーの目の前で力尽きました】

 

 「そ、それってまさか…」

 

 直葉の喘ぐような言葉に楓子はコクリと頷いた。

 

 「無限EK…予めセットしておいたグローバルネットの自動切断機能のお陰で全損は免れましたが、ういうい達は事実上アバター封印状態となってしまったの」

 

 無限エネミーキル、無制限中立フィールドでHPが0になったバーストリンカーは一時間経った後にHPが0になった場所で復活する。この現象がエネミーの前で発生してしまうと、復活したとたんにエネミーと戦闘になる。

 これが勝てたり、逃げることが可能な相手なら問題ないが、勝てない相手ならどうだろうか。

 復活しては倒されるを繰り返せばいずれBPは尽きてしまい全損、つまりブレイン・バーストの強制アンインストールに追い込まれてしまうことになる。

 

 【UI>確かに私には鎧を浄化…負の心意を打ち払う力がありますが、やはり災禍の鎧となると通常対戦の時間では消滅まで持っていくのは不可能なのです】

 

 「…つまりクロウの鎧を取り除くには無制限中立フィールドにダイブして、アーダー・メイデンを助け出さなきゃいけないわけか……」

 

 「まあ、その前に七王会議に出なければいけないんだがな」

 

 「七王会議?」

 

 「その名の通り、七人の王が行う会議さ。ヘルメス・コードで起きた出来事に関して、それぞれの王が話し合うんだ。これからの加速世界をどうしていくかと言うのも踏まえてね。議題はジグソー関連だろうが、レディオ辺りがクロウの鎧のことをつついてくるだろう」

 

 「本当は一刻も早く鴉さんの鎧を浄化したいんですけど、ここで私達が勝手に物事を進めてしまうと他の王から余計な反感を買いかねないんです」

 

 【UI>只でさえネガ・ネビュラスは色々やらかしてるのです。これ以上揉め事を大きくしないようにするのは得策なのです】

 

 「もう問題が大きいなら今更やらかしても変わらないと思うんだけど…ああいや、ナンデモナイデス」

 

 思わずそう返すと、ハルユキを除いた全員がお前がそれを言うのかと言った視線を向けてくる。

 ……やはり組織と言うものは難しい。

 キリトはその時その時で動くから本当に自分の行動で何が起きるか考えてくれ、とはユージオの談である。

 お、俺だってちゃんと考えてるし…!

 

 唇を尖らせてムッとしてみるが多勢に無勢なので大人しくコップに注がれたお茶を飲む。

 

 「…桐ヶ谷君……キリトのことは上手く説明するしかないな。……どうしよう」

 

 

 

 ……結局話し合いは続き、帰宅することになったのは18時を過ぎた後であった。

 

 俺や直葉の家は歩いて梅郷中に向かえる距離にあるとはいえ、楓子達は違うので駅まで送ることに。

 俺と直葉が外で待っている間に何か話していたのか、楓子達の間には何か憑き物が取れたような空気を感じたので、何かあったのか?と聞いたが、楓子に内緒ですと笑顔で言われてしまったので結局謎は謎のままなのである。

 

 

 「剣士さんも罪な人ですね、こうして女の子に囲まれてるなんて」

 

 「かこま…へ、変な事を言わないでくださいよ」

 

 楓子の言葉にそう返せば、謡もハーレムなのです、と悪乗りしてくる。これは確かにネガ・ネビュラスの男性陣の権威が無くなってきているなと、ハルユキ達の言葉を思い出す。

 

 「ふふ、桐ヶ谷君も大変だな」

 

 「私は関係ないですよアピールねサッちゃん。でも残念、鴉さんがいないこの場で色々聞かせて貰うわよ」

 

 「あ、それ私も聞きたいです」

 

 「なぁっ!?フー子はまだしも直葉君もか!?」

 

 黒雪姫に矛先が向いたのでふぅ、と息をつきつつ耳を澄ませることにする。

 アスナやシノン達と居たときはこのようなことはなかったので、何だかんだ他人の色恋沙汰を聞く経験は無いのである。

 エギルは結婚してるし、クラインは出会いを求めてるイメージ。シリカやリズなど周りの女性達からもそんな話は聞かなかったので新鮮なのだ。

 

 「ぐっ…な、なら直葉君はどうなんだ!最近タクム君と一緒にいることが多いと聞いているぞ!」

 

 「わ、私ですか!?」

 

 「な、何!?本当かスグ!!」

 

 だから黒雪姫の爆弾発言には思わず食いついてしまうのであった。

 大事な妹が誰かと付き合っているだなんて、これは兄として知らなければからない。

 

 「い、いや、確かにタクム君と一緒にいることが多いのは事実ですけどそんな、同じ剣道部だし領土戦で一緒に戦うことも多いだけで…」

 

 顔を赤くしながら首を横に振る直葉に意地悪な笑みを浮かべる黒雪姫。

 さて尋問だ、という空気が出てきたのだが残念なことに駅に着いてしまっていた。

 

 

 【UI>それでは失礼するのです。皆さん、今日はありがとうございました。なのです】

 

 「サッちゃん、剣士さん、直葉ちゃん、またね」

 

 謡と楓子がそれぞれ挨拶をしながら駅のなかに消えていった。

 二人の姿が見えなくなるまで見送った後、黒雪姫も二人とも今日はお疲れ。と言って帰っていった。

 

 「…俺たちも帰るか」

 

 「うん!」

 

 やや寒さが残る春の夜。

 多くの出来事が起きたヘルメス・コード縦走レースはこうして終わりを告げたのだった。

 

 




原作確認したところ限界加速後のキリトの記憶があるのは一ヶ月間くらいでしたので、前回の機竜が欲しい発言と矛盾が発生しました。
無理矢理ですが18巻の最後に再ログインした時に機竜について知ったってことでお願いします。

2026年八月辺りにキリトが再ログインしてるらしいので、知性間戦争?星王キリトとの戦いが年中に終わってれば一応辻褄を合わせることができますとここで後付けが可能だと大々的に言っていくスタイル。


ういういが来たことで六巻のやりとりに近いことが起きて顔合わせが早い段階で起きました

大きな流れを見るとクロウに鎧あるらしいけどどういうことなの?➡もう浄化しましただと納得する人いないだろうってことで七王会議はちゃんとやることに

キリトの周囲で恋愛事ないなって思ったので後半部分に少し入れました
キリトの周りの女の子は皆キリト一筋でしたからね
後はみんな相手がいたり、ティーゼが一番惜しかったけどね…悲しい

ところでアクセル・ワールドの最新刊が見つからなくてまだ買えてません
こいつぁひでぇや

それではまた次回によろしくお願い致します

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