浮かぶときは浮かぶんです。
次はきっと状況説明に入れたらいいな…!
第一話:ふとした違和感
布団というものは神が作り出した中で最高のお宝なのではないか。と朝の若干ひんやりした空気を感じ、もそもそと布団に潜りながらそう思う。
昨日、比嘉タケル氏の依頼のもと行った実験はまあ成功と言えるものであった。
実験の報酬をたんまりともらってテンションが上がった俺は、家に帰るなり妹の桐ヶ谷直葉を連れ出して夕食を奢ってやった後、ご機嫌なまま眠りについたのだ。
明日は—―もう今日であるが、学校が休校なので、バイト代を使って、家の二輪車のパーツなどを買い替えたりするために都心まで行こうと考えていたのだ。
寝ぼけ眼のまま時計を見ると、時刻は午前7:00
買い物は午後からにしよう。
そのまま目を閉じて訪れようとした二度寝という至福の時間は
「お兄ちゃ~ん!朝だよ!早くしないと学校遅刻しちゃうよ~!?」
そんな声とともに布団を引きはがされる感触であっさりと終わりを告げた。
「スグ…?何言ってんだよ…?今日は休校日って言ったろ?スグこそ大丈夫なのか?剣道の強い高校に推薦で入ったんだから…。朝練とかあるって言ってなかったっけ…?」
「お兄ちゃん寝ぼけてるの?今日は休校日なんかじゃないし、私まだ中学1年だよ?」
「そうか…休校日じゃなくて中学1年か…って…?」
こんな朝早くに起こしてくる直葉には困ったものだが、理由を説明すれば返してくれるだろう。
朝の空気に身を縮こまらせながら会話を続けていると、その会話にふと違和感を覚えた。
眠気で重たい瞼を開いて声の主を見ると、きょとんした表情でこちらを見ている少女と目が合う。
「……スグ?」
「…そうだけど…お兄ちゃんまだ寝ぼけてるの?言ってること何か変だし…」
それを見て気の抜けた声を出した俺の反応は正常だろう。
少女は確かに俺の知っている桐ヶ谷直葉だ。
しかし…何というかこう……いつものイメージとかけ離れてるような感じがするのだ。
そう、俺の知ってる桐ヶ谷直葉は色々と大きかった…ような…
「……?ほら、ぼうっとしてないでいこうよ?朝ごはん、できてるよ?」
「あ、ああ…」
目の前の少女と俺の記憶の中の直葉を照らし合わせるのに云々考えていると、少女は手を引いて俺を部屋の外に連れ出した。
テーブルにつきながら用意されたトーストをかじる。
変わらないいつもの朝の筈なのに何か違和感を感じるのは、きっと目の前の少女のせいだろうか…
「…どうしたのお兄ちゃん、さっきからジロジロ見て…」
「あ、いや…何でもないよ…?うん、何でもない」
見ていたことに気づかれてしまったようだ。
誤魔化すように牛乳を飲むと、首回りに違和感を感じて思わず手を伸ばす。
「…?」
「あー!お兄ちゃんまたニューロリンカーつけっぱなしで寝てたのー?ゲームやるのはいいけどほどほどにしなさいって、お母さんも言ってたじゃん!…って、電源切れてるし。はぁ…充電しておくから貸して」
「あ、ああ…悪い。ところでスグ、にゅーろりんかーって…なんだっけ?」
目の前の直葉似の少女——とりあえず直葉と呼ぼう。彼女もそれで反応してるし。
首回りについていた機械を渡しながら話した俺の言葉を聞いた彼女はピシリと動きを止めると、急に真剣な表情になって
「お兄ちゃん、本当に大丈夫?…病院、行く?」
なんておっしゃられました。
「あ…いや、悪い悪い、どうもまだ目がしっかり覚めてないみたいで…」
直葉はそんな俺を暫く見つめた後、はぁ…と小さくため息。
「ちょっと来て」
「え?えと……はい…」
またもや腕を掴まれると、家の庭の隅にある手洗い場に連れていかれた。
朝早いからかまだ気温が低いようで、ひんやりとした空気が俺の体を包み込む。
「お兄ちゃんはあっち向いてて」
「…?わかった」
直葉の言葉に素直に後ろを向く。
視線の先にある池には見事な鯉が数匹泳いでいる。
そういえば直葉が小さなときに溺れかけたことがあったっけ。と感傷に浸っていると…
「はーい、お兄ちゃんそのままね~。はい、じゃあいくよ~」
淡々とした直葉の声に疑問を覚えた瞬間。ひょいと服の襟首を引っ張られたと思ったら、そこから朝の空気でとても冷やされた冷水が投下された。
「あひゃぁぁぁぁあああああーーーーっ!!!??」
突然の冷水攻撃を受けた俺の悲鳴が、辺り一面に響き渡っていた。
キリト君冷水攻めの巻
色々とおかしな部分はありますが仕様です。
実験は成功してるんです、実験は
タグでなんとなく理解…してもらえるかな?
では、また次回!