心機一転、頑張ります
今回はキリト君のアバターの説明回です
第十八話:黒の剣士、再誕
「………はっ!!」
ガバッと起き上がる。
全身から汗が出ていて、服もびっしょりだ。
激しくなっている動悸を抑えながら、夢の内容を思い出そうとするが、よく思い出せない。
前にも、こんな夢を見たことある気がして、そういえばと思い出した。
「俺のアバターが作られた時か」
正確には≪ミッドナイト・フェンサー≫のアバターである。
直葉の言う通り記憶の共有化のような現象が起きているのなら色々と好都合だ。
加速世界のルールも色々と理解することができた。
レベル10…それになれば、あの時茅場が言っていた真理とやらにたどり着けるのだろうか。
まずはともあれ
「バースト・リンク」
加速コマンドを唱え、辺りが真っ青な世界、≪初期加速空間≫に入り込む。
俺のローカルアバターは、SAOのコートに、剣が無い姿だ。
一時期は消えて、再びこうして復活しているブレイン・バーストのアイコンをクリック。
マッチングリストを開く前に、自分のステータス画面を開いた。
【NAME:Kirito】
【LEVEL:1】
そしてそれなりの量のバーストポイントに、レベルアップ可のボタンがチカチカと点滅している。
そのことに不思議に思うが、そうか、と思い出す。
前回ダイブした時、かなりの量の集団を屠ったじゃないか。
レベルの表示と名前は誤魔化してたけど、やっぱりシステムの修正が入ったのかなんとやら。
とっととレベルを上げようとレベルを上げ、このアバターのレベルアップボーナスは何かなと思っていると、レベルアップによるステータスの上昇が確認されただけで、それ以外は何も起きなかった。
「……はぁ!?」
現在レベル2。
バーストポイントもまだ余裕はあるので、一先ず安心のため息。
普通ならボーナス選択画面がでてもいいはずなのだが…
ミッドナイト・フェンサーの時もボーナス選択画面がでて、それの選択に一日悩んだというのに…
「…なんだかなぁ……」
そう呟きながらステータス画面をもう少し潜っていくと、アビリティの欄に入った。
【
そんなアビリティの下に【現在のアバターは”黒の剣士”です】と書かれている。
黒の剣士の部分が光っているので、そこをタッチすると、ピッという音と共に黒の剣士の部分が”黒の妖精”に変化した。
「……………まさか…」
もう一度タッチすると、黒の妖精が”黒の銃剣士”に。
続けて押すと、”夜空の剣士”。
その下には※マークで、【現在は使用できません】の文字。
夜空の文字に心がチクリと痛むが、俺の予想が正しければ…と、設定を”黒の銃剣士”に変える。
これで恐らく戦闘に入れば、証明されるだろう。
…うん、凄く変わるだろうし
「バーストアウト」
それだけ済ませると、俺は加速状態から抜け出した。
部屋から出ると、丁度欠伸をしながら出てくる直葉と目が合う。
「よ、よおスグ」
ややどもりながら挨拶すると
「ふぁ~…おふぁよぉ…おにいひゃん」
なんて、いつもの感じで返事を返してきた。
……なんだ。俺が勝手に距離を置いてただけじゃないか…
朝食を食べ、二人で家を出る。
いつも通り、他愛ない話をしたあとに。
「…そろそろ始めるか」
加速を開始して、マッチングリストを開く。
先ほど気になったアビリティのチェックもかねて、誰かに対戦を挑むことにしたのだ。
隣の直葉でもいいのだが、早速だから他のリンカーとも戦ってみたい。
やや検索待ちの表示の後、一番上に現れた名前をタッチして対戦を申し込む。
相手の名前は…≪アッシュ・ローラー≫か
周りが対戦ステージに変わる。
両者の体力バーが伸び、1800のカウントが表示される。
場所は【≪世紀末≫ステージ】
観客席を見ると、≪アッシュ・ローラー≫のギャラリーが、そして、行きにアバターができたことを話してギャラリーに登録していたリーファが座っていた。
観客アバターたちは、俺の姿と、その名前にザワザワとざわついている。
まあ、≪ヒューマンアバター≫だしな。…この姿もだろうけど
すると、バイクの音が聞こえてきた。
音のした方向を見ると、重々しいバイクにのった骸骨ライダーが現れた。
…ふむ、あのバイク…いいな。俺が乗っていたのとはまた色々と違うが、是非乗ってみたいものだ。
…この世界の対戦ステージにバギーとかないのかな…
「来たぜ来たぜ≪世紀末≫ステージイイイイ!!この≪アッシュ・ローラー≫様レベル4初対戦の場には相応しいステージだぜヒャッハアアアア!!」
アッシュ・ローラーはなんかもう、凄いテンションで喚き散らしている。
「それでそれでぇ?記念すべき犠牲者わァアアア………あ?」
「は、はは…お手柔らかに…」
苦笑いしながら声を出すと、案の定、いつもの声よりも高い声。
視線を動かして大きなガラスを見つけ、自分の姿を見た俺は、更に顔をひきつらせた。
肩甲骨辺りまでなめらかに流れる黒髪。
黒色に近い迷彩柄の防弾アーマーにコンバットブーツ。
そして両腰には懐かしの≪FN・ファイブセブン≫に、こないだレプリカまで手に入れた光剣≪フォトンソード(カゲミツG4)≫
完全にGGOの服装であった。
これではっきりした。このアバター【Kirito】は、SAO、ALO、GGOにあともう一つのアバター…アンダーワールドでの俺に姿を変えることができる。
そんなとんでもスキルがあるのだから、レベルアップボーナスが少ないというのも納得だ。
「ね、姉ちゃん…それ、あんたのアバター?ま、マジリアリー?」
「マジリアリー…。実はずっと内輪でしか対戦したことなくてさ。あんたがグローバルネットでの初対戦者なんだ。よろしくね」
恐る恐る聞いてくるアッシュ・ローラーに頷くと、彼はプルプルと体を震わせて。
「ヒャッハァアア!!!なら、この俺様がグローバル対戦での恐ろしさって奴をたっぷり教えてやるぜぇええ!!」
なんて叫びながら、バイクで突っ込んできた。
≪ファイブセブン≫をホルスターから抜き、構える。
GGOで出たようなサークルは出てこないため、完全に腕の見せ所だ。
向かってくるライダーに狙いを定め…引き金を引く。
「…げ」
銃弾は見事に外れ、虚空の彼方に消えていく。
「ヒャッハアアアアアアアアア!!」
「うわあああっ!?」
バイクをギリギリで回避すると、アッシュ・ローラーは少し先で止まり、再び突進してきた。
銃は使い物にならん!後で練習しようと心に決めた俺は、≪ファイブセブン≫をホルスターに戻し、右腰の≪カゲミツ≫を抜き放つ。
ブウウウンと音を立てながらその刃を出現させたカゲミツを構えて、自分からバイクに突っ込む。
交錯
「…………ま、マジで?」
そう呟くアッシュ・ローラーは、バイクに乗った態勢のままで地面に足を付ける。
バイクの方はというと、ハンドル部分を切り裂かれ、アッシュ・ローラーを置いていきながら壁に激突。爆発と共に炎上していた。
「マジで」
こちらを向いたアッシュ・ローラーに、にこりと微笑むと、俺はカゲミツを振り下ろしたのだった。
「…………お兄ちゃん」
「…言うなスグ…俺もあんなアバターになるとは思ってなかったんだ…」
憐みのまなざしを向けてくる直葉に手をあげて弁解を図る。
直葉ははぁ…とため息をつくと。
「でも、お兄ちゃん凄いよね。あんな動きができるなんて…」
「まあ…な。スグさえよければ、特訓つけてやるよ」
「ほんと?じゃあ約束だよ!!」
そんな話をしながら、俺たちは学校へ向かうのであった。
*
「シィイット!シィィイット!!ギガシイイット!!」
「うわああああ!!!」
喚き声とともに聞こえる爆音が、ハルユキに迫る。
そのあまりにも恐ろしい出来事に、ハルユキは思わず飛び上がっていた。
「もらったぜぇえヒャッハアアアアアアアアアアア!!」
「うぎゃああああ!!」
しかし、飛んで助かったと思ったハルユキに、バイクが襲い掛かった。
バイクの直撃を受けて、シルバー・クロウは地面に墜落した。
バイクが壁を走るなんてやっぱりおかしいだろぉ!!
というか、ただ壁に追い詰められたシルバー・クロウが上空に退避した途端、≪壁面走行能力≫で突っ込んできたアッシュ・ローラーの攻撃を受けただけなのだが。
現在、ハルユキことシルバー・クロウは、アッシュ・ローラーと対戦していた。
この二人の戦いは、誰が名付けたかアシュクロ戦と呼ばれていて、密かなブームになりつつあるのだ。
今回もそんなこんなで、学校の登校時間に対戦を始めたハルユキだったが、今日のアッシュ・ローラーは、違った。
なんか、いつもよりも荒々しく、とても、イライラしていた。
理由を聞くと、レベル4になった初対戦で、ヒューマンアバターのバーストリンカーにボコボコにされたとかなんとか。
ヒューマンアバターといえばリーファが考え付くが、相手のレベルも2で、全体的に黒かったらしい。
「だからって何で僕に当たるんですかぁあああ!?」
「やかましいい!!とっとと俺様のバイクの餌食になりやがれえええ!!!」
その日の対戦は、バイクに飛ばされたシルバー・クロウが、偶然アッシュ・ローラーの服を掴んでいたらしく、二人仲良く壁に激突。
これがチャンスとばかりにアッシュ・ローラーをタコ殴りにしていたシルバー・クロウは、主のいないまま突っ込んでくるバイクに気づかず、激突し、二人仲良くバイクの爆発ダメージで体力ゲージが吹き飛び、ブレイン・バースト内では珍しい、同時に体力ゲージの全損による引き分けという結果になった。
この構想はこの小説考えてた時にこんなの面白そうだなって考えた感じです
変身ヒーローみたいでかっこいい気がしませんか!?
アリシゼーションのは封鎖されているのでまだなれません。
流石にチートすぎるのでレベルアップボーナスはほぼ廃止にしようかなと
つまり、純粋にアビリティに頼らない戦いをしなきゃいけないってことですね
これがキリト君にどれくらいのハンデになるのか…
では、また次回!