憑依の軌跡   作:雪風冬人 弐式

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 アイデアが浮かび、再び投稿。あまり話は進みませんが。
 それと、感想くれた方、お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます。


第一話「自己分析っぽい」

 やあ、この手記を読んでいる諸君。始めまして、リィン・シュバルツァーに憑依した元日本人だ。

手記を書く理由は至って単純、年を取ってきたからボケないためだ。

 憑依したと言える理由は、二次創作などで有りがちな神様に会ってはいないが、自分にはこの世界ではない世界で生活していた記憶があることだ。生憎、名前は思い出せないが。

 さて、そんな別世界の住人であった俺だが、この世界について全くの無知であったわけではない。

 なぜなら、俺の元いた世界においてこの世界は、軌跡シリーズと呼ばれるゲームの物語として登場していたからだ。

 と言っても、俺は空の軌跡や零の軌跡といったゲームの名前と概要を友達から教わった程度の知識だったが。

 そして、この俺が憑依したリィン・シュバルツァーは軌跡シリーズの一つ、閃の軌跡の主人公であった。

 20年近く平和な日本でのほほんと生きていた自分が、剣と魔法のファンタジーな世界で生き残れる訳がない!確実に死ぬ!

 と、最初は家に引き込もっていたが、結局は何もできず死ぬか、やるだけやって死ぬかと自問自答し、後者を選び、身体を鍛えることにした。

 そして、偶然このユミルの地の温泉巡りをしていたユン・カーファイ、軌跡シリーズで多くの強者を生んだ八葉一刀流の使い手に出会ったことで、弟子入りを志願して見事目に留まることができた。

 その後、自身の見聞を深めるためにも故郷を飛び出し、師匠と共にゼムリア大陸中を駆け回った。

 その時のことは、これから記すことに比べれば大したことではないので割愛しよう。ただし、これも主人公の宿命なのか行く先々で厄介事に巻き込まれた。なんか知らないけど猟兵団同士の抗争に巻き込まれたり、《道化師》とか《怪盗》を自称する不審者に絡まれたり、義妹の進学する学園のセキリティチェックのため潜入したら、不審者に間違えられたりなどなど、色んなことがあった。

 お涙頂戴必須な波乱の十年程の歳月が過ぎ、ある程度実力が付いたため精神的に余裕ができた俺だが、ある時ふと思った。

 あれ、俺の青春って灰色じゃね?と。

 それに気付いた俺は、故郷のユミルに戻り、帝国内でかなり有名なトールズ士官学院に入学することを決意する。

 そして見事合格を果たし、これで俺の人生はバラ色まであと一歩じゃあ!と小躍りしたものだった。

 こうして、俺は一人、ユミルを離れてトリスタの街に旅立ったのだ。

 

 ん?あれ、俺一人でユミルから列車に乗って来たよな?

 ってことは、だな。

 

「あ、リィン!あそこのカフェで昼なんてどう?」

「ふむ。それじゃ、そこにしようか」

 

 リィに腕を引かれて、オープンテラスの席に座って注文をウエイトレスに注文を伝える。

 

「なんでデュバリィがここにいるんだ!?」

「え、今更?だから言ったじゃん。《蛇》から監視役を任されたって」

「なんでさ!」

「いやだって、聖女様を動かすなんて論外だし、《道化師》のアンチクショーはアレでも重要な立場にいるし、《怪盗》なんて気紛れでちゃんとやるか怪しいし、《死線》は今休業中らしいから、私に白羽の矢が立ったってわけ」

「俺のバラ色の青春は!?」

「血と硝煙で真っ赤に濡れたバラ色の青春ね。それとも、私といるのがそんなに嫌?」

「ぬぐ……」

 

 活発な性格から考えられない、捨てられそうな子犬のような不安気に尋ねるリィの態度に言葉が詰まる。

 これが、ギャップ萌えというやつかッ!?

 

「というか、監視対象にそんなこと言っていいの?」

「いいのよ。私は純粋にアンタと過ごすだけでいい、楽な任務だから引き受けただけだし。それに、平凡を目指すアンタなら、超平凡を揺るがす組織の人員の顔を覗うだろうから、釘を刺すことになるでしょ?」

「やっぱ、お前ほんとにデュバリィ?ブルブルの変装じゃね?」

「ブルブル?《怪盗》のことね。失敬ね。アイツは男で、私は女。なんなら揉んで確かめる?」

「そうやって既成事実を作るつもりですね、分かります。お前ほんとうちのエリゼに変なもん送るの止めろよ」

「あら、顔を真っ赤にして動揺するエリゼちゃん、可愛いじゃない」

「その代償に、天使から堕天使に堕ちますがね」

 

 出てきた料理を口に運び、最後に残ったデザートのフルーツの切り身に同時にフォークを突き立てる。

 

「寄越しなさい」

「俺の私生活に干渉する迷惑料だ」

「こんな可愛い彼女の頼みでしょ!」

「確かに可愛いが、自分からそう言う奴が初めて見た、よ!」

「《紫電》辺りなら、いつも言ってそう、よ!」

 

 結局、割れた切り身をそのまま口の中に放り込む。

 

「私も組織の計画は知らないから、安心しなさい」

「安心できねーよ」

「アンタ程度なら早々死ぬもんじゃないでしょ。あ、欠片ついてるわよ」

 

 ナフキン片手に立ち上がったリィは、俺の口の端に付いてた欠片を取る。

 

「ま、なるようになるしかないか」

 

 拝啓、ユミルの地のご両親。どうやら、貴方達の息子は秘密組織に目を付けられて、平穏を過ごせそうにないです。

 

「あ、そうそう。アンタのご両親は知ってるわよ、私が一緒に行くこと」

「ウソダドンドコドーン!!」

 

 訂正、何してくれとるんじゃ!?外堀埋められたぞ!!

 だがしかし、この後にまだ衝撃的な出来事が待っているのだった。




 書いてて気づいたこと。…まだ、主人公とデュバリィ以外のキャラが出ていない!
 次回から出てきます。多分。

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