切り裂き魔と精霊ちゃん達   作:ぼけなす

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遅れてすみません。

いやホントがんばれ、狂三さん……!(同情)


第十七話 がんばれ狂三ちゃん!

 

 

 

 四季はインカムから琴里に近況報告をしていた。無論、小声のため近くにいたとしても独り言しか聞こえない。

 誰もが気になることであるが、変人だからという理由で誰もが気にしないのがこの学校のスタンスである。

 

「琴里琴里、うちのクラスに精霊が転校してきた」

『唐突に何を言うと思ったら、何? 頭のネジがぶっ飛んだの?』

「何を今さら。俺のネジは既に天元突破してる」

『駄目だこりゃ』

 

 インカムで会話する二人。それは今朝起きたことだ。なんせ、相手は生だと宣言してこの学校に入ってきた。

 ホームルームが終わった後、それを琴里に報告しようと思い、彼は情報を与えた。

 もっとも偶然ではない、と彼は考えているが。

 

「それでヤツが精霊なのは本当か?」

『……さっき連絡が届いた。本当よ。名前は覚えてる?』

「……………………」

 

 しばらく思案顔になる。なぜなら四季は名前を危機そびれたからだ。つまり、彼は彼女の名前、時崎狂三という名前を知らない。

 ヤバいどうしよう、と考えてると狂三が話しかけてきた。

 

「シキさんでございますよね」

「そうだが、確か名前は……」

 

 彼は考えた。そう、ゲームで僅かに聞いた情報を繋げ、一つの名前を検索し、導き出した。

 

「時崎……」

「はい、そうですわ」

「そして名前は、そう――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――三郎!」

 

 ズゴォと狂三を含めたクラスメイト達はズッコけた。まさかのミステイク。

 本人はあれ違うですわ、と後頭部を掻いていた。

 

「ち、違いますわ。わたくしは狂三ですわ」

「失礼噛みました」

「違いますわ。わざとですわ」

「かにまみた」

「わざとじゃないですの!?」

「金貸せよ、おら」

「なぜ恐喝!?」

「気分とノリで」

 

 ここに来て優雅なお嬢様キャラがぶち壊され始めた。

 哀れなことにこの変人に関われば司令官としての義妹もツッコミ苦労人へとシフトしちゃうことなのだ。

 

「まあいいですわ。それよりもシキさん、学校の案内してくれませんか?」

「いいぞ。どうせ授業聞いてても暇だし」

『待って四季。選択肢が出てきたわ』

 

 なんだ、またかと四季はインカム越しにいる琴里達に呆れた。インカムの先には<フラナクシス>の船員が出てきた選択肢を投票し、その結果で四季は行動するのだ。

 めんどくさいがこれも自分が選択したものだと割りきるが、実のところ自由にしちゃうのが四季である。自分にとって最善となれれば彼は勝手に行動する。

 

『四季、食堂か購買を案内してあげなさい。それから屋上に連れて行きなさい』

「OK。その後押し倒せだな。わかります」

『なんでやねん!』

 

 なぜ押し倒すという選択肢が出てきたのはさておき、<フラナクシス>では神埼が保健室に行くことをチョイスしていた。

 転校初日に濡れ場を希望してきたと判断した琴里は神埼を屈強な男二人を使って連行した。

 濡れ場を希望した男がどんな末路になるのかを身をもって知れと言わんばかりに。

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 それはさておき、四季は食堂と購買を案内した。道中、狂三の美貌に陶酔する男子や一部の女子もいた。一部の女子とは所謂同性バッチコイだったりするわけだが、四季は気にせず案内した。

 

『やだ、あの子誰?』『かわいい』『美少女キタコレ!』『隣にいる男は?』『ゲッ、変人よ』『どうして転校生と一緒なんだ』『まさかさっそく毒牙にかかったの!?』『それは駄目! 助けないと!』

 

 何やら物騒になってきた。四季がやれやれと呟きながら、睨んでくる生徒にニッコリと微笑む。彼に微笑まれたら、それは解体されかけたという噂がある。

 つまりこれは四季の警告だ。無論、睨んできた生徒は逃げ出したのは言うまでもない。なんせ、解体されかけたという噂は本当なのだから。

 

 それから屋上に来るまでに手を握るという選択肢が出てきたりするのだが、四季が握ろうとしたとき、狂三から握ってきたのだ。

 

「……なんのつもりだ?」

「あら、うれしくありませんの?」

「ちょっと。こちらから握ろうと思ってたのにな」

「クス、かわいらしいことですわね」

 

 食堂への廊下を歩む四季に次に出た選択肢は『精霊に関すること』と『パンツに関すること』だった。

 

 ……いやパンツの色を聞くのはどうかと思うが下ネタを挟むことでより話しやすくするためのものだったりする。

 とは言え、即行で指導室送りされることに変わりないが。

 

『「今日のパンツの色は」とか聞くって…………あ』

「狂三、今日のパンツの色は何色だ」

「あらあら、見たいのですの?」

「マジでか。よし見せてくれ」

『ちょっと待とうよお兄ちゃんンンンンッ!!』

 

 んだよ、と四季はやや不服に聞いてきた。

 

「なんだ琴里。俺は今から狂三の秘境を拝みたいのだが」

『なんで見る気満々なのよ!?』

「そりゃ、誰だってみたいだろ。全て遠き理想郷を。デルタゾーンこそ萌えだろう?」

『誰かこの変人を止めて!』

 

 しかし誰にも止められぬ。なぜなら変人だからだ。これには狂三もびっくりである。

 普通の男ならばあたふたするはずなのだが、この男は動揺していない。

 面白くなさそうに口を尖らせていると四季は彼女の両ほっぺを唐突に引っ張った。

 

「ひゃにするの!?」

「おぉ、モチモチほっぺ。癒される……」

「ひゃなしてくださしゃいませッ」

 

 四季は彼女のほっぺを離して未だに余韻を感じていた。

 

「ヤバい、狂三のほっぺの柔らかさに感動した。今後ともそのほっぺたとよろしくしたい」

「わたくしのほっぺたをおもちゃにしないでくださいません?」

「クスクス……いや怒った顔はかわいいこと」

「ッ、早く案内してくださいませ!」

 

 狂三は完全に四季のペースに堕ちた。計画通りと彼はニヤリと笑っていたのを琴里は見ていた。

 

 それはさておき最後の屋上への階段に差し掛かる頃に狂三は逆襲とばかりに腕に抱きついてきた。

 

(どうです!? 少しは動揺します!?)

「むっ? どうした狂三。生理か?」

「女性に大してその質問はいけません!」

 

 狂三、ここに破れたり。<フラナクシス>のクルー達は哀れな目で狂三を見ていた。

 なんかがんばって空回りばかりするヒロインに見えてきた。

 

「ところで狂三。なんで朝のとき自分が精霊だってカミングアウトしたんだ?」

「……シキさんなら知ってますでしょう?」

「精霊のことだけな。俺にとって未知なる探究源であり、面白い存在――それが俺の精霊の感想だ」

「化け物とは思いませんの?」

「あんなのしょっちゅう見てきたから大丈夫」

(この人の過去に何があるのですの……?)

 

 狂三が四季の過去に興味を持ったとき、なんと屋上の前にあるロッカーから二人の女子が飛び出したではないか。十香と折紙である。

 

「シキ! なぜその女に腕を抱かせている!?」

「どうやらコイツは『女の子の日』だったからこうやってもたれさせてるだけだ」

「フォローになってませんわよ!?」

 

 蠱惑系危ないヒロインの狂三がツッコミポジションにシフトした瞬間である。

 

「四季、私もあの日だから」

「保健室に行け」

「…………きゅんと来た」

「もしもーし、折紙さーん? なーんかヤバイのに目覚めてない?」

「……大丈夫。私は平常運転」

 

 果たして大丈夫だろうかと四季は半目で見ていると折紙はポッとした仕草をとる。

 そんなとき折紙にコールが届いた。通信機を取り出した折紙はASTに収集されることになり、別れることになり残された三人は案内を再開した。

 

「シキ、『女の子の日』とはなんだ?」

「では狂三さん。模範解答を」

「正気ですのあなた!?」

 

 お前が言うなと四季は内心毒づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだったこの学校は」

「……シキさんの案内係は疲れることを学びましたわ」

 

 夕方の校門前で狂三は疲れた顔をしていた。なぜなら彼が案内するところ全てが奇想天外だったのである。

 

 例えば体育館。そこには謎の黒覆面達が『オールハイムブリタァァァァァニアッッッ!!』と奇声を上げていた。

 その壇上には長曽我部先生が立っていた。どうやら彼が神聖ブリタニア教祖という立場らしい。

 ……彼に何があったのかは定かではないが四季が黒い笑みを浮かべている限り根源は彼にあるだろうと狂三は思った。

 

 保健室では先生が注射器を持って刺そうとするところを生徒が抵抗する場面に遭遇した。彼は気にせず紹介したわけだが、狂三にとっては目の前に起きていることを説明して欲しかった。

 ちなみに保健の先生が何をしていたのかと言うと、生徒を人体実験するために襲っていたらしい。四季もその被害者だが逆にダメだしされたあげく、先生のアホ毛をアンテナに改造したという裏話があったりする。

 

「来禅高校はいつからカオスな学校になりましたの?」

「俺が来てから」

 

 やっぱりと彼女はガクリと項垂れた。まあそれなりに仲良くなったと言えばなったが、これが恋人同士になるかは別だ。

 四季にはどうも彼女を恋人のように――十香と四糸乃のような関係になりたそうには見えなかった。

 避けているとは言わないが友好的になろうと気がしないと十香は思った。

 

「それではお二人さん、ごきげんよう……」

「帰るときには筋肉のオッサンにぶつかるから気を付けろよー!」

「どんな危険ですの!?」

 

 最後の最後まで彼女はツッコミ役だった。

 

 帰り道。狂三は四季という変人を相手して疲れていた。少しストレスを感じていた。

 そんなとき柄の悪い男達にぶつかってしまう。

 

「おうおう! いきなりぶつかって謝りもないのか姉ちゃんよぉ!」

「へへ、お詫びがほしいなぁ」

 

 イヤらしい目付きで狂三を見る不良五人組。狂三は餌兼ストレス発散を見つけたと思い、ペロリと唇を舐めた。

 

「……そうですの。なら、わたくしと良いことしません?」

「へぇ……ヤる気なんだなねえちゃ――――ぶぎゃっ」

 

 その瞬間あと一人の不良が上空に舞った。狂三はまだ何もしていないそんなときにだ。

 なぜ上空へフライしたのかは彼を吹き飛ばした元凶が狂三達より離れた五メートル先で掛け声を出していた。

 

「ぶるぁぁぁぁぁッ!」

「がははははははッ!」

「マッスルマッスルぅ!」

 

 筋肉モリモリな漢女達が掛け声を出しながらランニングをしていた。おそらく先ほど轢いたのはあの三人の仕業なのだろう。

 シンッと静まる狂三はふと思った。

 

(あ、シキさんの言ってた通りですわね……)

 

 なお残りの不良達はおいしくいただきました(テヘペロ♪)

 

 




最後のヤツは補食(物理)です。
出てきた三人のオトメ達。名前は貂蝉、卑弥呼、マッスルグレネード巴さんです。

巴さんの特技は『ティロ・フィナーレ(物理)』です。

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