切り裂き魔と精霊ちゃん達   作:ぼけなす

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新作を勢いで書いてしまいました。ハイスクールD×Dです。

ではどうぞ。


第十二話 パペットな精霊

 

 

 さてその翌日。家庭化実習で十香はルンルン気分で四季のところに向かっていた。彼女は(亜衣、麻衣、美衣の)三人娘にアドバイスされ、クッキーを作ったのだ。少々荒っぽい形だが、味は悪くない。

 

 四季に一度教わった『できたら味見』という作業を忘れてなかったため、二、三回の失敗の末にできた。

 

 彼女はゴールである教室のスライド式扉を開けると四季を呼んだ。

 

「シキ、クッキィを作ったぞ! だからたべ、て……」

 

 絶句。その理由は四季の前にいる少女、折紙もまた四季にクッキーを渡していたのだ。

 

「ほぉ……。形良し、味良し。なかなかだ。お前の貰い手はさぞかし鼻が高いだろう」

「なら、四季の鼻も高くなる」

「貰わないし、いらない。出直してこい」

「いつか振り向かせる。……そして既成事実」

「オイ、最後にとんでもないこと言ったよな?」

 

 そんなやり取りをしているため、クラスの男子は嫉妬の炎を燃やさずにはいられない。しかし同時に一部の男子は恐れていた。仮に制裁を行えば彼がどんな報復するのかはわからない。

 

 中学校のときに、クラスのマドンナ的な女子に告られた四季はすぐに拒否し、制裁に着たファンクラブ諸君の毛根が死滅された。ファンクラブからハゲクラブにされたのだ。

 

 それを知る男子は彼の報復が如何に恐ろしいか理解している。だが、この行き場のない嫉妬をどうにかする手立てはないか考えていると、四季の前に十香がやってきたのだ。

 

「シキ、なぜこの女のクッキィを食べている!」

「なぜって味見してくれって言われたからした。結果、普通に合格。行って良しだ」

「なら、私のクッキィも食べてくれ」

 

 十香に出されたクッキーを一つ口に入れた四季は「うん」と呟いて続けて言った。

 

「ところどころに焦げ目がある。味は悪くないが焦げのせいでやや味が落ちている」

「ッ……うぅ」

 

 辛口な評価に十香は泣きそうだ。それには三人娘が批判を言おうとしていたが、殿町がそれを止めた。理由は次に出された四季の言葉だ。

 

「だが、成長はしているぞ十香。お前のクッキーは食えないわけではない。もっと美味しくしたいなら、今度俺が直々に教えてやる。二人っきりでだ」

「ほ、本当か?」

「もちろん。教えがいがある」

 

 グスンと涙目な十香に四季は頭を撫でてなだめた。折紙は無表情ながら少し不満そうに言った。

 

「なら、私にも教えて四季」

「お前のはもう完成形だ。何も教えることはもうない」

「もっと美味しくしたい。……駄目?」

「したいならプロに聞け。俺はお菓子作りは素人だ。エキスパートに任せるのが妥当だ」

 

 悔しそうな折紙に十香はベーと舌を出した。完全な十香の勝利に折紙の口はへの字となる。

 

「くぅー。なぜヤツがモテる!」

「呪いで人を殺せたら!」

「いや待て! 俺の机に和服の人形があったはずだ! そいつの髪が日に日に伸びてるから五河に渡せば!」

「「それだ!」」

「よし、では――――ってあれ!? なんか勝手に歩き出したし、逃げ出した!?」

 

 呪い人形ですら彼を恐れるのか。まあ、彼女(にんぎょう)が逃げたくなるのは無理もない。一度、本気で解体されかけたときがあったとかないとか。

 

「いやー、良いもん見れましたなー麻衣さん」

「そうですなー美衣さん一言」

「末長く爆発しろ」

「コンチクショー! なぜヤツがモテるー!」

 

 血涙流す男子とほんわかする女子に四季は「やれやれ」と呟いていると、突如警報が鳴り響く。空間震警報だ。

 

 折紙は教室からすぐに出ていき、四季はインカムを付け出す。

 

「十香、悪いが仕事だ。お前は先にシェルターに行け」

「四季はどうするのだ?」

「俺はちょっと非常食のきなこパン買いにいく。お前の分をたらふく買ってくるから待ってろ」

「うむ!」

 

 平然と嘘をついて彼は琴里に転送され、<フラナクシス>に乗艦する。艦長席にて、琴里は所載を説明してくれた。

 

「今回の精霊は比較的に大人しい子よ。識別名は<ハーミット>」

隠者(ハーミット)……」

 

 四季が名前を復唱していると、モニターに<ハーミット>が映った。それを見た四季は「あっ」と声を出した。

 

「コイツ昨日会ったヤツだ」

「既に接触していたの?」

「まあな。にしてもコイツが……ね。

 

 

 

 

――――なかなか興味深い(・・・・)

 

 記憶を失った四季は<ラタトクス機関>に協力するのは変わらなかった。やはり、根は好奇心を求める男なので再び精霊のことを話せば彼はすぐに食いついたのだ。

 

 四季の笑みに琴里は嘆息を吐いて、言った。

 

「それじゃあ任せたわよ。ASTがいつ内部への牽制するかもわからないから早く彼女に接触して」

「了解、指揮官殿」

 

 ニヤリと笑い彼は精霊が隠れたデパートの中に転送された。

 

 デパートの中は静かで暗い。電気がついてないので、少し見にくいな、と四季は感想を呟いていた。

 

『君もよしのんをイジメにきたのかなぁ~?』

 

 頭上から声が聞こえ、上を向くとそこにはあの精霊がいた。よしのんというのは恐らく彼女の名前なのだろう。

 

「イジメるか……あいにく俺は見ず知らずの女の子をイジメる趣味はない。まあ中学のときにウザい女が絡んできたから、ソイツの恥ずかしい写真を撮ってばら蒔いてやったが」

『よ、容赦ないねー……』

「そうか? ネットに載せてやったことは反省しているが」

『この人社会的にも陥れることを忘れてないよ……』

 

 パペットのよしのんは呆れたため息を吐いてから「よっ」と室内用のジャングルジムから降りる。

 

「さてさて、よしのんってのは誰だ? まだ俺はお前の名前など知らないが」

『おお、これはみすていく! よしのんとしたことが自己紹介を忘れていたよ。はじめましておにいさん。よしのんはよしのんだよーん♪』

「よしのん、ねぇ。俺は五河四季。変人だ」

『自分で変人って言っちゃうの?』

「世間一般の凡人共が俺のことをそう呼んでいるから受け入れただけだ。まあ、安心しろ。俺は何もしなければ無害な変人だ」

『いや変人だけでも怪しい要素なんだけど』

 

 すると、ここで琴里から連絡が届いた。少しだが精霊は自分に対して警戒心が抜けたようだ。

 

『いいわよ四季。そのまま順調にデートを誘いなさい』

「デート? つまり最終的にはよしのんと合体しろと?」

『なんでそうなるのよ!!』

「彼氏彼女の真理」

 

 ある意味間違いではないが、四季にツッコまずにはいられなかった。まあいい、と四季はよしのんに集中しようと思ったがここで疑問に感じた。

 

(? そういえばよしのんの名前はあのパペットだよな? ではあの少女の名前は?)

 

 少し考えればまだ少女から名前を聞いてないではないか。四季はそうと決まればと思い口に出した。

 

「よしのん。そういえばお前の名前はよしのんだよな?」

『おかしなことを聞くね。そだよ~?』

「ではよしのん。その顔を隠している女の子の自己紹介がまだなんだが」

 

 四季に指摘され、ビクッと反応する少女。よしのんは「あー……」と少し考えてから四季に話した。

 

『この子は四糸乃だよん。四糸乃とはよしのんは親友さ』

「ほほう、それは興味深い。ぜひとも馴れ初めを話してもらいたいが」

『いいよー。よしのんとの出会いはねー』

 

 と話しかけたとき、一人の少女が乱入してきた。その名は十香。彼女がなぜここにいるかと言うと純粋に四季を心配したからである。

 

「四季、こんなところにいたのか! ……ぬ? そこにいる女はなんだ?」

「…………琴里。お前、これも計算のうちか?」

『アンビリバボー』

「把握。ヨソウガイデスというわけだな」

 

 四季は天を呪いながらどう弁明しようかしたとき、よしのんが口を開いた。

 

『ねーねー、あの子は誰だいシキくん』

「私はシキの家族。夜刀神十香だ!」

「という名前のペットだ」

「ペットではなーい! シキ、私は何度いっても…………ほにゃぁー」

「よしよし、いい子だ」

 

 四季が頭を撫でてやると十香の顔が緩み、癒された顔になる。よしのんはそれを見て戦慄した。

 

『お、おお……シキくん。なんという調教師っぷりだね』

「お前も調教予定」

『よしのんも!? そ、そんな。どうせイヤらしいことするよね! エロ同人誌みたいに!』

「えろどうじんし? すまん。まだ『萌え』を探究していて日が浅いから理解が足りないんだ」

『いや萌え全然関係ないわよ四季!』

 

 インカム越しで琴里はツッコむ。というかカオスになってる。そんな中でも四季はマイペースだった。

 

「それはさておきよしのん。デートしようか。あ、そっちの女の子もだ」

『な、なんと! よしのんと四糸乃にデートを誘うなんて欲張りさんだねん』

「欲張りさ。俺は興味を持った対象を見捨てないし、見限らない。最後まで面倒を見るのがご主人様さ」

『うん、ご主人様って完全によしのんを隷属させるつもり満々だよね。でも、んふふふ。シキくんはホントに面白いねー』

 

 クスクス笑うよしのんに、オドオドする四糸乃。まあいい。とにかく場所と日にちを、と思った刹那、爆撃音が響いた。

 

 四糸乃はそれに驚き、逃げていく。

 

「シキ、なんなんだこれは!?」

「あーくそ。AST、後で絶対に嫌がらせしてやる……」

 

 呪詛を呟きながら十香を撫でて癒される四季だった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 四季が呪詛を吐いていた頃、ASTは四糸乃を追撃していた。まあ結局なところ氷のウサギの俊敏な動きによって取り逃がしてしまった。

 

(? あれは……)

 

 折紙は四糸乃が落とした物を拾った。それがなんなのかは彼女は理解できなかったが、物語においてそれは重要な物だった……。

 

 




なんか一誠が四季と千香を合わせた狂人的なキャラになっちゃった……。

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