切り裂き魔と精霊ちゃん達   作:ぼけなす

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ご都合主義発動!
まあ、記憶消去エンドは元から考えてましたし。

ではどうぞ。


第九話 反逆しようか、理に(by士道と四季)

 

 

 悲しいお話がありました。

 

 少年は少女の死を否定したかった。少女に生きてほしかった。

 

 だから反逆する。

 

 不可能を可能にする。

 

 彼は理を越えるために挑む。

 

 

――――たとえ、それが自分を捧げることであっても……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 身体を得た『士道』は四季と相対していた。今にも殺されそうな濃密な殺意を折紙に向けられている。……だが、『士道』は退くつもりはない。

 

 彼が退けば折紙は死に、この男は世界にも牙を向ける。それは琴里達を悲しませることになる。

 

「どけ。ソイツを殺す」

「どかない。無意味な殺しはさせない」

「意味はある。ソイツを殺せば十香を殺したヤツのメンタルにダメージを与えられるかもしれん」

「ソイツが最低最悪なクズで気にしないヤツだったとしてもか?」

 

 お互い沈黙になる。四季はナイフを降ろして、『士道』と話し合うことに徹することにしたようだ。土俵に追い込んだ。後は説得するだけ、と『士道』は気合いを入れた。

 

「お前は憎くないのか? 十香が殺されたことを」

「憎いさ。許せないさ。だけど、何もかも破壊するのは違うだろ」

 

 『士道』は折紙が撃ったことを知っている。そのことを許すつもりはないが、このままでは四季は折紙の何もかもを破壊するまで止まらない。

 

 彼はそれほどまでに執念が深い。放っておけば身が破滅しても遂行されるまで止められないのだ。

 

「許せって言うのか? 十香を殺されたことを許せって言うのか!?」

「許せとは言わない。けど、耐えろ。今の怒りを耐えろ」

「耐えられるか! 俺は許さない。十香を否定したこの世界を、人類を許さない! 絶対に殺すって決めたんだ!」

 

 四季の感情が爆発していた。『士道』はらしくないと思った。今の彼が冷静ではないことが明白だ。その理由もわかっていた。

 

「お前の姉――――ナツミと姿を重ねたからだろ」

「ッ!」

「図星か。いや仕方ないな。お前の前世では唯一家族だった女性」

「やめろ……」

「お前の前世の唯一助からなかった家族」

「やめろ……!」

「お前が『変人』になった最大の根源。その女性と十香を重ねただろ?」

「やめろって言ってるだろ!!」

 

 四季の錬成で突起がたくさん作り出された。しかしそれは折紙や『士道』に串刺しにすることなく、失敗に終わった。

 

「ッ、はぁはぁ……」

「なあ、四季。お前は天才だろ。天才がここで諦めていいのか? 十香の死を受け止めて復讐者になるのか?

 

――――違うだろ。最後の最後まで諦めず、不可能を可能にする……それがお前だろ!」

 

 そうだ。ここで諦めるのはらしくない。大切な人の死と重なって冷静ではいられなくなり、自分はとんでもないことをしようとしていた。

 

 四季は目を閉じて心を平静にする。どうやら頭に血がのぼっていたようだ。

 

 『士道』がいなければ自分は世界を破壊していたに違いない。そう考えると彼は手で覆いたくなるような恥を感じた。

 

「落ち着いたか?」

「……ああ」

「なら、やることはわかってるな?」

「……ああ。でも……それは」

「別に気にするな。十香には悪いが、俺達は彼女に生きてほしいんだ。だから、俺がいなくなって(・・・・・・)も仕方ないんだ」

 

 四季は転移術式を発動し、十香と『士道』と一緒に転移するつもりだ。折紙には嫌な予感がした。

 

 彼が今からしようとしていることを達成されてはならない。そう思い彼女は叫んだ。

 

「待って四季、『士道』!」

 

 しかし声は届かず、四季達が転移したときには神龍も消え去った。ASTは助かったのだ。彼らが転移したことにより召喚も無効にされたのだ……。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 四季はインカムを捨て、森の中で陣を作っていた。彼が初めて使う陣。人体錬成でも、召喚でもない錬成陣が作られていた。

 

 十香をその中央に置き、金色の液体を彼女にかけた。

 

「十香はまだ死んだばかりだ。だからまだこの世にとどまっている僅かな魂の残光を使って呼び戻す」

「そのための霊薬(エリクサー)か」

「そうだ。もっとも成功確率は低すぎて、無謀な挑戦だがな」

 

 エリクサーとは錬金術師が目指す霊子という物質でできた霊薬の液体だ。霊魂の物質ともいえる霊子を錬成することでできたその霊薬は万能薬であり、あらゆる病、怪我を治癒することができ、理論上であれば死んだ者を呼び戻すことも可能だ。

 

 しかしその蘇生は時間が立つほど難しくなり、成功確率も極端に低い。四季が姉を蘇生することを断念したこともその理由である。

 

「それにこれはまだ不完全なエリクサーで、これ一つしかない。ゆえに一か八かの賭けだな」

「お前を材料にこれは完成するってことだよな?」

「まあな。でも、まあ俺達が消えてもお前はなんとかやってくれるだろ」

「……そうだな。ああ……なんとかしてみるさ……」

 

 悲しそうに四季は手合わせ錬成をする。

 

「じゃあな『士道』」

「じゃあな四季」

 

 そして彼らは光に包まれ、残ったのは彼の魂無き身体だった。

 

 

 

――――そして、五河四季の■■は■■され、五河士道もこの世から去った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 暗闇の世界の中で十香は目を開けた。自分の身体が沈んでいき、ひどく眠い。

 

(ここが死後の国ということか……)

 

 目蓋が重いし、動かす気力もない。まるでこの世界では活力を吸い取っているかのようだ。

 

 十香はふと自分を肯定してくれた少年のことを想った。願わくば彼に会えることを。そしてまたデートできることを……。

 

 小さな願いは叶わない。その願いは儚く闇の中に消えていく――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――このときまでは

 

 十香の上から光が射し込む。その光は温かく、優しい感じがした。

 

「シキ……にシドー?」

 

 人の形をした二人の光が十香の手を掴み、上へ引っ張りあげる。十香にはどうにも四季と『士道』が自分を引っ張り上げてるように思えた。

 

 光が強くなり、そして十香の意識ははっきりと目が覚めた。

 

 白いベットの上で彼女は目を開けた。ここは病院で彼女は寝ていたようだ。

 

「気がついたかい十香」

「貴様は……」

「私は村雨令音。五河四季の知り合いだ」

 

 四季という名前に十香はくってかかる。

 

「シキは、シキはどうしたんだ!?」

「…………きたまえ。彼の状況を教えてあげる」

 

 令音は沈痛な面持ちで十香を連れ出した。そして少し離れた部屋の扉を開けると、窓を見ている四季の姿があった。

 

 彼は生きていたのだ。それが十香にとってうれしいことだった。

 

「シキ! 無事だったのだな!」

 

 彼女は四季に呼びかけるが彼は首を傾げていた。

 

 十香はそれに違和感を感じた。まるでこれでは……。

 

「シンは、ね。記憶と『士道』を損失したんだ」

「え――――…………」

 

 令音の言葉に十香は頭が真っ白になりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり一巻からだと難しいや……。元々二巻から始まる予定でしたが、まあ原作二巻がありませんでしたし、早く書きたいという思いがありましたので見切り発車しちゃいました。

次回で一巻が終わります。

そして評価に一というモノが……。
やはり文才力に問題があるのかねー(遠い目)

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