ガイム&パンツァー  戦車道・ライダー道極めます!   作:フルーツ大将軍

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新年明けましておめでとうございます

第12話です、ではどうぞ


第12話「敗北からのスタートです」

 これまでのガイム&パンツァーは

 

 作戦が失敗し危機に立たされる大洗女子学園戦車隊だったが聖グロリアーナ男子学園ローズライダー部隊を打ち破った大洗ライダー部隊の隊長仮面ライダー鎧武の尽力とみほの機転の効いた指示によりこのピンチを脱する

 

 戦車戦は市街地に場所を移し一時的に大洗側の優勢に立つがすぐに逆転される

 

 AチームⅣ号戦車の奮戦や鎧武の協力の甲斐も無く大洗女子学園戦車隊とライダー部隊は敗北してしまうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  『大洗町 駐車場』

 

 一真・みほ・沙織・華・優花里・麻子は行動不能になった大洗の戦車が戦車用運搬車で運ばれているのを眺めていた

 

「・・・私たち負けましたね」

 

「そうですね五十鈴殿・・・悔しいです」

 

 華と優花里が試合の結果を話していると一真も思い詰めた表情をしていた

 

(俺があの時・・・躊躇さえしなければ!)

 

 一真はチャーチルに必殺技を放とうとした瞬間手を一瞬止めてしまった事に深い自責の念を感じた

 

「一真君・・・大丈夫?」

 

 考え込んでいる一真が心配になりみほが声をかけた

 

「あっみほちゃん・・・あぁ大丈夫だよ」

 

 一真はそう言い笑ったがあまりにも不自然であり作り笑いだとみほはすぐに気付いた

 

「少し宜しくて?」

 

 そう声をかけてきたのは聖グロリアーナ戦車隊隊長ダージリンだったその横にはオレンジペコとアッサムそして聖グロリアーナローズライダー部隊隊長アークとアルビオンとレヴァイアが一真たちに歩み寄っていた

 

「あなたが戦車隊の隊長さんですね」

 

「はい・・・」

 

 ダージリンがみほに尋ねるとみほも小さく返事をした

 

「あなたお名前は?」

 

「・・・西住みほです」

 

 ダージリンに名前を聞かれ一瞬躊躇うもみほは答えた

 

「もしかして西住流の?」

 

 ダージリンは少し驚きながらも言った

 

「随分まほさんとは違うのね」

 

 ダージリンは率直に感じた事をみほに言った

 

 その中一真とアークを見合っていた

 

「・・・まさかあそこまでコテンパンにやられるとは思いもしなかった」

 

 アークが突然一真と戦った時の思い出しながら言った

 

「自分もまさかあそこまで出来るとは思いませんでした」

 

「ふふ・・・そうか」

 

 一真の言葉にアークは微笑した

 

「でも君はあの時・・・・・」

 

「えっ・・・」

 

 アークは一真が戦いの最中に見えた一真自身の迷いについて聞こうとしたが一真を顔を見て途中で言葉を止めた

 

「君の名前を教えてもらえないか?、いつまでも「君」では可笑しいからね」

 

 そう言ってアークは話題を逸らした

 

「自分は破神一真と言います」

 

「私はアーク、よろしく破神君」

 

 お互いに自己紹介するとアークが握手を求め一真は応じ握手した

 

「だが破神か・・・なるほど破神君がどうしてそんなに強いのか良く分かった」

 

 アークは一真の名前を聞くと納得した面持ちになり1人頷いていた

 

「でも破神君は「あの人」とは全く違うんだな」

 

「あの人って誰ですか?」

 

 一真はアークの言葉で気になる部分があり尋ねた

 

「それは・・・」

 

「アークさんそろそろ・・・」

 

 アークが答えようとした時ダージリンがそう言い遮った

 

「では破神君、また戦えることを楽しみにしている」

 

「はっはい・・・・・」

 

 アークの言葉に少し戸惑いながらも答えた

 

 そのやり取りの後聖グロリアーナは一真たちから立ち去っていくその道中で・・・

 

「どうでしたアークさん?、彼の方は?」

 

「えぇ思って通りの男でした、でもまさか彼が「破神」だとは思いませんでした」

 

 ダージリンが一真についてアークに尋ねるとアークは満足げに答えその言葉の1つに聖グロリアーナチームは驚愕していた

 

「「破神」って本当なんですか!?」

 

「本当だ、恐らく他のライダーもあの流派の出だろう、それなら私たちの力が通用しなかったのも納得出来る」

 

 レヴァイアが驚きながらも尋ねるとアークは淡々と答えた

 

「でも彼の戦い方は・・・・・」

 

「確かに彼の戦い方はあの流派とは全く違います、勿論あの人ともでも・・・」

 

 オレンジペコがアークの説明に疑問を口にしようとするがアークがまるで分かっていたかのように言った

 

「でも?」

 

「彼の力は本物ですもしかしたらあの人よりも強いかもしれません」

 

「まさか!?」

 

 アークの言葉に次はアルビオンが驚愕の声を上げる

 

「だったら尚更気になりますわね、彼が何故戦う事に迷っているのか」

 

「ダージリンさんも気付いていたんですね」

 

 ダージリンの言葉に少し驚きながらもアークが言った

 

「迷っているとはどういう事ですか?」

 

 アッサムが2人に尋ねる

 

「Ⅳ号戦車と挟撃し必殺技を放とうとした時彼は一瞬腕を止めたの、それが無ければ私たちの方が負けていましたわ」

 

「でもそれが何故迷いだと思うんですか?」

 

 ダージリンがあの時の事を説明するとオレンジペコがそれでも分からずダージリンに尋ねた

 

「あの時の彼を見た時確かに見えましたの、その仮面の奥で苦悩し苦痛に苛まれている彼の顔をね」

 

「でもなんで戦う事に迷っているんでしょうか?、自分なんて全然ですけどね」

 

 ダージリンがそう言うとレヴァイアは自分にはない事に理解出来ずそんなことを言う

 

「彼は我々よりももっと高い次元にいる存在なのかも、だからこそ悩むのかもしれないな」

 

「はあ・・・」

 

 アークがそう言ったがレヴァイアがイマイチ納得できないでいた

 

「そういえば彼の名前はなんて言うのかしら?」

 

「彼の名前は破神一真って言っていましたよ」

 

 ダージリンがアークに尋ねアークは答えた

 

「破神・・・一真君ですか・・・」

 

 ダージリンは感慨深く言った

 

(相当破神君の事が気に入った様ですね・・・)

 

 アークはダージリンを見てそう思いながら微笑した

 

(破神君、君ならすぐに答えを出せると信じています・・・次は真の君と戦いたいですね)

 

 アークは一真との再戦を強く望みながらもその場を立ち去った

 

その頃一真たちはダージリンたちを見送った後杏たち生徒会チームが来た

 

「負けちゃったねぇ~どんまい~」

 

「約束通りやってもらおうかあんこう踊り」

 

 杏がいつもの調子で一真たちを労うと桃が凄みのあるように言った

 

 桃の言葉にみほたちはすごく嫌そうな表情をするそれを見た一真は

 

「生徒会長さん、今回の敗因は全て自分にあります何か自分にも罰を与えてください」

 

「う~んそうだね~、じゃあ破神君は太鼓を叩いてもらおうかな~」

 

 一真の申し出に杏は少し考えるとそう言った

 

「会長あまりにも甘すぎます、こいつのせいで負けているんですからもっとキツイ罰にしませんと」

 

「誰のせいで最初の作戦が失敗したんだと思っているんだ・・・」

 

 桃が不満の言葉を言うと夜罪が明らかに桃に向かって言った

 

「なにー!、貴様だってあんな所で失敗するなんて有り得ないだろうが!!」

 

「お前の方こそゼロ距離で外す砲手など聞いた事ない」

 

 桃が夜罪に噛み付くが夜罪は顔色1つ変えず反論する

 

「なんだと!!、自分の失敗を棚に上げて!!」

 

「それはこっちのセリフだ、あそこでお前がミスしていなければ俺が絶対に決めていた」

 

 桃が怒りを露わにして言うが夜罪がまたも無表情で反論する

 

「そんな保証がどこにある!」

 

「なら自分の身でじっくり知ると良い」

 

 桃が試すように言い夜罪がそう言いながら戦極ドライバーを取り出した

 

「桃ちゃんこれ以上は止めようよ~」

 

「夜罪も仲間同士で争ってもなにもならないだろう」

 

 見兼ねた一真と柚子が仲裁に入る

 

「桃ちゃん言うなぁー!!」

 

「・・・分かった一真」

 

 桃は名前を呼ばれまたもキレ夜罪は少し不満そうに言い戦極ドライバーを戻した

 

「まぁまぁ~、誰が悪いっていう訳でもないしこういうのは連帯責任だと思うんだよね~」

 

「ウェ!?」

 

「会長まさか!?」

 

 杏の衝撃の発言に桃と柚子は驚愕する

 

「うん!」

 

 桃と柚子を尻目に笑顔で返事をする

 

「じゃあ行こっか!」

 

 杏がそう言うと罰ゲームが開始されるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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                     『大洗町 市街地』

 

「あっあっあんあっあっあんあん~♪」

 

 大型輸送車の荷台の上でなんともブサかわいい?あんこうの被り物を被り所々に鰭が付いたピンク一色の全身タイツを着たみほたちAチームと生徒会メンバーがあんこう踊りを踊っていた

 

「ふぇぇぇぇぇ~」

 

 みほはあまりにもの格好に赤面しながらも必死に踊っていた

 

「もうお嫁に行けないよ~!」

 

「仕方ありません!」

 

 沙織はボヤきながらも踊り優花里は覚悟を決めたように言い踊っていた

 

「恥ずかしいと思ったら余計に恥ずかしくなります!」

 

 沙織にそう言いながら華も踊っていたがさすがの華も恥ずかしそうだった

 

 それに対して麻子はいつも通りの無表情で踊っていた

 

「みんな・・・辛そうだな」

 

 その傍らで一真はよくお祭りで羽織う半被を羽織って左衛門佐と一緒に太鼓を叩いていた

 

「それにしてもよく生徒会チームはこんな難しい踊りを見事に合わせていられるな・・・」

 

 コスチュームの奇抜性もさる事ながらその踊りも相当キツそうに一真には見えたが生徒会チームは4人全員が息をぴったり合わせて踊っていた

 

「それになんか・・・会長さんすごく楽しそうな・・・もしかして」

 

 その中でも杏はすごく楽しそうに踊っており一真は本当は杏があんこう踊りをやりたくてこの罰ゲームを提案したと思ったが

 

「そんな事あるわけないか」

 

 一真はそう言って否定し自分が任せられた太鼓の方に意識を戻した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 罰ゲームあんこう踊りが終わった後一真たちAチームは大洗まいわい市場前の駐車場に集合していた

 

「ごめんねみんな・・・私のせいで罰ゲーム受けさせちゃって」

 

「みほちゃんのせいじゃないよ、全部俺のせいなんだ・・・」

 

 一真は俯いているみほにそう言って慰めた

 

「西住殿や破神殿のせいではありませんから」

 

「そうだよ2人がそんなに深刻に考える事もないよ」

 

 そんな2人に沙織と優花里がフォローする

 

「この後7時まで自由時間ですけど、どうします?」

 

 華がそう言い一真たちに尋ねた

 

「買い物に行こう!」

 

 沙織が意気揚々と答える中麻子が1人何処かへと歩きだす

 

「麻子どうしたの?」

 

 沙織が麻子に尋ねる

 

「おばぁに顔見せないと殺される」

 

 麻子は振り返らずに答えた

 

「あぁそうだね」

 

 沙織には意味が分かりそう言った

 

「ねぇそういえば一真君、天子さんたちは?」

 

 沙織が次は一真に尋ねた

 

「天子たちからさっきにメールがあってみんなそれぞれのチームのメンバーに案内してもらうんだって」

 

 一真はそう答えケータイの画面を見せた、そこには天子たちのメールが書かれておりどれも一真が答えた様な内容だった

 

「そうなんだ、じゃあ私たちだけで行こっか!」

 

 沙織のその言葉で一真たちはアウトレットモールに向かった

 

 

 

 

 

 一真たち御一行は大洗アウトレットモールに到着し何処となくモール内を散策していた

 

「可愛いお店いっぱいあるねぇ~♪」

 

「あとで戦車ショップに行きましょうねぇ~♪」

 

「その前に何か食べに行きません?」 

 

 沙織たちがそれぞれ思い思いの事を言っている中も一真は思いつめた表情をしていた

 

「う~ん・・・一真君は何かしたい事はある?」

 

 一真の様子をよそにみほが一真に尋ねた

 

「えっ・・・俺は特に買いたい物とかもないからみんなに合わせるよ」

 

 一真は一瞬戸惑うもみんなに悟られまいと答えたが試合中の時に比べあまりにもぎこちなく答えてしまった

 

(一真君まだ試合の事を気にしているのかな?、でも一真君がそこまで深刻なまでに考えるようなミスなんかしていない寧ろ私たちの事を何度も助けてくれたのに・・・)

 

 みほも一真の気持ちを察し心の中で呟いていると一真たちの向かい側の方から人力車を引いた青年が現れた

 

 すると青年は辺りを確認すると沙織と目が合う

 

「あっ!、目が合っちゃった!」

 

 沙織が驚くと青年は爽やかな笑みを浮かべ沙織たちに向かう

 

「やっやだぁ!・・・///」

 

沙織は顔を赤面させ青年が自分の元に迫っていると思っていたが一真たちには明らかに沙織が勘違いしているのが分かった

 

「新三郎」

 

「知り合い!?」

 

 華は青年の顔を見て名前らしき単語を呟くと沙織が咄嗟に華に尋ねる

 

 そのやり取りの間もその青年は一真たちの前まで来ると人力車を停めて更に一真たちに接近する

 

「あっあの初めまして!、私華さんの・・・・・」

 

 沙織は青年に挨拶しようとしたが青年は沙織を横切り華の前で止まる

 

「お嬢・・・お元気そうで・・・」

 

 青年は華に向かって再会を喜ぶかのように言う

 

「なにっ!!、聞いてないわよ!!」

 

 勘違いしていた沙織が青年の後ろから喚いていた

 

「家に奉公に来ている新三郎」

 

「いつもお嬢がお世話になっています」

 

 華が青年 新三郎を一真たちに紹介すると新三郎も礼儀正しくお辞儀をして挨拶した

 

(へぇ~奉公さんか・・・じゃあ人力車に乗っていた人が・・・)

 

 一真はそう思いながら人力車の方に目線を向けると和服を着た女性が和傘を広げ人力車から降りてきた

 

「華さん」

 

「お母様」

 

 降りてきた女性は華の母親 五十鈴百合だった

 

「良かったわぁ~元気そう、こちらの皆さんは?」

 

 華が元気に過ごしている事が分かり喜ぶと百合は一真たちの事を尋ねた

 

「同じクラスの西住さんと武部さん」

 

「「こんにちわ!」」

 

 華がみほたちを紹介するとみほと沙織は元気良く挨拶をした

 

「そしてこの方は・・・」

 

「破神一真さんですね」

 

 華が一真を紹介しようした時百合が分かっていたかのように割って言った

 

「この前お話してもらった華さんとお友達を助けてくれた転入生でしたわね」

 

(まぁそんな事もあったなぁ・・・)

 

 百合の話を聞き苦笑いを浮かべる一真

 

「先日は華さんとお友達を助けて頂きありがとうございます」

 

 百合は深々と頭を下げ一真に礼を言った

 

「あっいえっそんな!!、自分はただ今自分がしたいと思った事をやっただけですから」

 

一真は百合の意外な行動に慌てながらも答えた

 

「そうですか・・・・・」

 

 百合は顔を上げそう言うと一真の顔をじっと見つめる

 

「えっ・・・・・」

 

 一真は一瞬戸惑うも百合が自分を見定めていると気付き一真も百合の顔を見つめる

 

 互いに数秒間顔を見つめると

 

「ふっ・・・」

 

 百合が微笑しちょっとしたにらめっこが終わる

 

「華さんから聞いていた以上の良い方ですわ」

 

 一真とのにらめっこ?で得た感触を百合が笑顔で呟いた

 

「華さんこちらの方は?」

 

 百合は次に優花里の事を尋ねた

 

「こちらは秋山さん・・・」

 

「私はクラス違いますけど戦車道の授業で・・・」

 

 華が紹介すると優花里が先走って答える

 

「戦車道?」

 

 百合はその単語に異常に反応し眉間にシワが寄る

 

「はい!、今日試合だったんです!」

 

 優花里は百合の様子に気付かずに話す

 

「華さん・・・どういう事?」

 

「お母様・・・」

 

 百合の態度が変わっていき華も俯いてしまう優花里も百合の様子に気付き咄嗟に口を手で塞いだどうやら華は百合に戦車道を受講していた事を黙っていたようだ

 

 百合は華の手を取り匂いを嗅ぐ

 

「鉄と油の匂い・・・あなたもしや戦車道を!?」

 

「・・・はい」

 

 百合の問いに小さく返事をする華

 

「花を生ける繊細な手で・・・戦車に触れるなんて!!・・・あっ!?」

 

 なんと百合は白目を向きながら気を失いその場で倒れた!

 

「お母様!!」

 

「奥様!!」

 

「えっ!!・・・いけない!!早く救急車を!!」

 

 華たちが倒れた百合に駆け寄ると一真は自分と話した時のイメージと全く違う事に呆気に取られ直ぐに我に戻ると救急車を呼びに行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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                   『華の実家』

 

 外がもうそろそろ夕暮れになりそうな頃一真たちは華の実家の客間にいた

 

 百合の容態は幸いにもそこまで悪くなく念の為救急車で運ばれたがその日の内に退院し今は自分の部屋で精養している

 

「すいません・・・私が口を滑らせたばかりに・・・」

 

「そんな・・・私が母にちゃんと話していなかったのがいけなかったんです・・・」

 

 優花里も華も互いに申し訳なさそうに言ったが一真たちもこの状況には気持ちが落ちていた

 

 みほは客間に置かれていた生け花に魅入いっていた一真も生け花を見て何かを感じ取った

 

 すると廊下側の襖が開くと新三郎が現れた

 

「失礼します、お嬢・・・奥様が目を覚まされましたお話があるそうです」

 

「私は・・・もう戻らないと」

 

 新三郎の伝言に華はそう言って断る

 

「お嬢!・・・」

 

「お母様には悪いけれど・・・」

 

 新三郎は諦めないが華も引こうとしなかった

 

「差し出がましいようですが、お嬢の気持ち・・・ちゃんと奥様にお伝えした方がよろしいと思います!」

 

「・・・でも」

 

 新三郎が思いの丈を語るが尚も引こうとしない華だったが

 

「華さん・・・俺はちゃんと自分の気持ちを話した方が良いと思う」

 

 それまで傍観していた一真が突如割って入ってきた

 

「一真さん・・・」

 

「華さん・・・俺には華さんの家の事情が全て分からないし何より俺は華さんの何を知っている訳ではないから偉そうな事なんか言える義理じゃない・・・」

 

 華は真剣な表情で一真の声を聞き一真も話を続ける

 

「でもこれだけは言わせて欲しい・・・」

 

「・・・・・」

 

 一真はひと呼吸置くと・・・

 

「言って玉砕するより言わないで後悔するほうが辛い、例え分かってもらえなくても伝える事でその人だけでなく自分自身のケジメにもなると俺は思う」

 

 一真の言葉を聞いた華は静かに立ち上がり百合の元に向かった

 

 

 

 

 

 

 華が百合の部屋に入った後沙織と優花里が襖に耳を当てて話を聞こうとしていた

 

「良いのかな?」

 

「偵察よ、偵察」

 

 沙織たちの後ろにいたみほが心配するが沙織は大丈夫そうに答える

 

「華さん・・・」

 

 みほたちに付いて来た一真は百合の部屋の襖を見て華を見守るように言った

 

「申し訳ありません・・・」

 

 華は百合に向かって謝罪する

 

「どうしてなの?、華道が嫌になったの?」

 

「そんな事は・・・」

 

「じゃあ・・・何か不満でも?」

 

「そうじゃないんです・・・」

 

「だったらどうして!」

 

 華が中々話を切り出さない事に百合はつい大きな声で言う

 

「私・・・活けても活けても・・・何かが足りない気がするんです」

 

「そんな事ないわ、あなたは可憐で清楚・・・五十鈴流そのものよ」

 

「でも・・・私は・・・」

 

 説得試みる百合の気持ちが分かる華は自分の気持ちを言おうか言いまいか迷っていたがふとさっきの一真の言葉を思い出す

 

(言って玉砕するより言わないで後悔するほうが辛い、例え分かってもらえなくても伝える事でその人だけでなく自分自身のケジメにもなると俺は思う)

 

(そうですね・・・私もそう思います!)

 

「私はもっと力強い花を活けたいんです!!」

 

 一真の言葉に決心のついた華が力強く言うその言葉にみほが何か思うところがあるかの様に反応していた

 

「・・・!!、・・・あああ」

 

 百合は華の言葉に崩れ落ちる

 

「お母様!!」

 

「これも戦車道のせいなの?、戦車なんて野蛮で不格好で五月蝿いだけじゃない!」

 

 百合は戦車について偏見とも取れる批判を口にする

 

「戦車なんて・・・みんな鉄屑になってしまえば良いんだわ!」

 

「鉄屑!」

 

「優花里ちゃん・・・ここは気持ちを鎮めよう」

 

 百合の言葉に優花里が怒りの表情を見せると一真が冷静に宥める

 

(でも華さんのお母さん、なんでライダーについては何も言わないんだ?、戦車の事であそこまでの事を言う人だからライダーの事なんかもっと批判すると思ったけど・・・)

 

 一真がライダーについて何も語ろうとしない百合に疑問を持った

 

「でも私・・・戦車道は・・・辞めません!」

 

 華は百合にきっぱりと告げ百合は華を顔を見て沈黙する

 

 そして・・・

 

「分かりました、だったら家の敷居は跨ないで頂戴」

 

 百合の発言にみほたちは驚愕するが一真だけは予想していたかのような表情をする

 

「奥様それは!!」

 

「新三郎はお黙り!」

 

 あまりの事に口を挟む新三郎だが百合に一蹴され奉公人という立場としてそれからは何も言えなくなってしまった

 

「・・・失礼します」

 

 華は深々と頭を下げるとゆりの部屋を出ようとする

 

「「あっ・・・!」」

 

 華が襖を開けると沙織と優花里が慌てて襖から離れた

 

「帰りましょうか・・・」

 

 華は沙織と優花里の動向にも目も暮れずに言う

 

「華さん・・・」

 

 似たような境遇のあるみほは華を気遣う一真も無言で華を気遣うように見る

 

「何時か・・・お母様を納得させられるような花を活ければ・・・きっと分かってもらえる」

 

 似たような境遇であるみほにとっては華の言葉が心に響いた

 

「お嬢!」

 

 華の言葉に新三郎は半泣きになる

 

「笑いなさい新三郎、これは新しい門出なんだから・・・私頑張るわ」

 

「・・・!!、はい!!」

 

 遂に新三郎の涙腺が崩壊し男泣きをする

 

「華さん・・・」

 

「はい?」

 

「私も・・・頑張る」

 

 みほは華に決意を固めたように言う、それに対し華はとても優しい笑顔を向ける

 

(華さん・・・そこまでの決意で戦車道に臨んでいたなんて・・・)

 

 一真は華の思いに内心驚いていた

 

 

 

 

 

 

 既に夜になり学園艦に帰る時刻が迫ろうとした頃

 

「一真君・・・良いの1人で?」

 

「詰めたら乗れると思うけど?」

 

 みほたちは人力車で帰ろうとしたが5人乗るには少し狭くすると一真は自分1人で帰ると言い出した、みほたちは一真を説得したが

 

「大丈夫、俺にはこれがあるから」

 

 そう言うと一真はポケットからサクラハリケーンロックビークルを見せた

 

「でもそれって・・・ちゃんとした道を走って良いの?」

 

「大丈夫ですよ、ロックビークルでの公道の走行については許可されています」

 

 沙織が心配そうに尋ねるも優花里が説明する

 

「そういう事・・・俺は大丈夫だから早く行かないと間に合わないよ」

 

 一真はそう言ってみほたちを急かす

 

「じゃあ一真君、またすぐね!」

 

「あぁ・・・俺もすぐに追いつくから」

 

 みほたちは人力車に乗り込むと沙織が一真に声を掛け一真も答える

 

「一真さん・・・」

 

「・・・?、華さん?」

 

 華が一真に何か言おうとしその言動に一真が華に尋ねる

 

「いえ・・・なんでもありません」

 

「あぁ・・・そうか」

 

 何も言おうとしない華に少し気になりつつも一応一真は答えた

 

「では、新三郎お願い」

 

「はい!!」

 

 今も泣いている新三郎が泣きながら人力車を引いていった

 

「さて・・・」

 

 一真は人力車が無事に港に向かうのを確認するとロックビークルを開錠しビークルモードに変形したサクラハリケーンに跨りヘルメットを被ると発進しようとする

 

「少し宜しいかしら?」

 

 後ろから呼び止められ一真は振り返るとそこには百合がいた

 

「あっ・・・華さんのお母さん」

 

 一真はサクラハリケーンから降りるとメットを外し百合に向かい合う

 

「・・・・・華さんを・・・家の娘をお願いします」

 

 そう言うと深々と頭を下げる

 

「そっそんな!!、頭を上げてください!!」

 

 一真は百合に強く言う

 

「でも、なんで自分なんですか?、恐らく百合さんは自分が仮面ライダーって事は知っていますよね?」

 

 一真は疑問に思った事を尋ねると百合は頭を上げる

 

「えぇ華さんから聞いて知っていましたわよ」

 

「ならそんな自分にそんな事を?、自分の見たところあそこまで戦車を批判していた百合さんですからきっと仮面ライダーの事もお嫌いだと思ったんですが?」

 

 百合が答えると一真はまたも質問する

 

「えぇ私は勿論ライダーの事も嫌いですわ・・・だが、一真さんあなたは違います」

 

「えっ?」

 

 一真は百合の言葉が理解できないでいた

 

「あなたのその目から確かに感じました・・・今は迷いの中にいるけれどそれはあなたが真に優しいから・・・そしてあなたはその中でも誰かの為に戦える本当に強い方だと感じました」

 

「・・・・・」

 

 一真は呆然と百合を見ていた

 

「そんなあなただからこそ華さんの事を任せたいと思いました」

 

「そっ・・・そうですか」

 

 百合の言葉に曖昧な返事しか返せない一真

 

「一真さんもう1度お願いします・・・華さんの事をお願いします」

 

「・・・分かりました、謹んでお受け致します」

 

 またも百合は深々と頭を下げると一真は承諾し百合と同じように頭を下げた

 

「百合さん・・・自分は皆の元に戻ります」

 

「分かりました・・・身体に気を付けて下さいね」

 

 一真はみほたちの元に帰ると言い、百合も答える

 

「では・・・百合さんもお身体には気を付けて下さい」

 

 そう言うと一真はメットを被りサクラハリケーンに跨るとアクセルを踏み発進した

 

 

 

 

 

 

 一真がサクラハリケーンを走らせ港に到着すると1足先にみほたちが到着していた

 

「遅い・・・」

 

 麻子が良く昭和の映画のシーンでありそうな孫柱に片足を掛けて言った

 

「破神殿、何かあったのですか?」

 

「いや~まぁ少しね・・・」

 

 優花里が尋ねると一真が答えたが内容については話さなかった

 

 一真は到着すると学園艦に乗り込む

 

「出港ギリギリよ」

 

「すいません園さん」

 

「すいません」

 

「すまんなソド子」

 

「その名前で呼ばないで!」

 

 チェックを取っていたみどり子に一真たちは謝罪すると麻子とみどり子は前にも似たようなやり取りをする

 

 階段を駆け登り街が見えるとその前に梓たちDチームと所属しているライダー変身者幽香が梓の隣にいた

 

「西住隊長・・・破神隊長・・・」

 

「えっ・・・」

 

「うん?」

 

「戦車を放り出したりして逃げたりしてすいませんでした!」

 

「「「「「「すいませんでした!!」」」」」」

 

 梓が頭を下げその後他のメンバーも一斉に頭を下げた、どうやら試合中に恐怖のあまり戦車から逃げ出した事を謝りたかった様だ

 

「先輩たちカッコよかったです」

 

「すぐに負けちゃうと思ったのに・・・」

 

「私たちも次は頑張ります!」

 

「絶対に頑張ります!」

 

 梓たちが一真たちに自分たちの決意を言う

 

(俺だけじゃないんだ・・・)

 

 梓たちの決意に一真は心の中で呟く

 

「この子たちもみんなの奮闘ぶりを見てかなり反省しているから許してあげて欲しいの」

 

 幽香も梓たちを庇うように言う

 

 みほは優しく微笑むと一真が口を開く

 

「みんな・・・何か勘違いしていない?」

 

「えっ・・・どういう事ですか?」

 

 一真の言葉にDチームの他にみほたちも疑問を持つ

 

「みんなの言葉からすると「逃げちゃいけない」って言っているように聞こえたけどそれは違うよ」

 

「えっ・・・どういう意味ですか?」

 

 未だに分からないでいた梓が一真に尋ねたがみほたちも分からないような素振りを見せる

 

「あの時、本当に逃げてはいけなかったのか?」

 

「でもそれは!・・・」

 

 梓は引き下がらずに答えるが一真も全く引かない

 

「みんながあの時やっていたのは?」

 

「えっそれは戦車道の・・・」

 

 予想外な質問に戸惑うながらも答える梓

 

「そうだ戦車道の試合だ、そのルールの中にどんな事があっても逃げてはいけないって書いてあった?」

 

「いえ・・・そんな事は」

 

「なら、自分の身に危険が及ぶと思ったら躊躇なく逃げて良いよ、それにあの時は幽香と離れていて予想以上に怖かったと思う」

 

「で・・・でも!」

 

「勇気と無謀は全く違う、ましてみんながやっているのは戦車道という武道だ絶対の安心なんてない」

 

 尚も食い下がる梓だったが一真のこの言葉に遂に言葉が出なくなり俯いてしまう

 

 すると一真は梓に近付き梓の肩に手を置く梓は顔を上げ怪訝そうに一真を見ると

 

「でも・・・みんなが勇気を振り絞って逃げずに戦うと決めた時は俺が力の限りみんなを守ってみせる!」

 

 一真は梓やみんなに向かって力強く言った

 

「破神隊長・・・」

 

 一番近くで聞いていた梓が一真に見惚れていた

 

(本当に相変わらずね・・・)

 

 幽香は少しうんざりしたように心の中で言ったがその表情からはとても穏やかな笑みが零れていた

 

「でも一真この子達を守るのは私の役目よ、でもどうしても私が出来ない時はお願いね」

 

「あぁ任せろ!」

 

 一真がそう答えると杏たち生徒会が姿を現した

 

「これからは西住ちゃんと破神君に任せるよ」

 

「えっ!?」

 

 杏の言葉に不満そうな声を上げる桃

 

「まぁ当然の結果だな・・・」

 

 それに対し夜罪が呟いた

 

「で、これ・・・」

 

 杏がそう言うと柚子が紅茶の入ったバスケットを渡すその中には1通の手紙が入っていた

 

 それは聖グロリアーナ戦車隊隊長ダージリンからだった内容は

 

<今日はありがとう、あなたのお姉様の試合より面白かったわ、また公式戦で戦いましょう>

 

「凄いです!、聖グロリアーナは好敵手と認めた相手にしか紅茶を贈らないとか!」

 

「そうなんだ~」

 

 優花里の説明に沙織が答える

 

「昨日の敵は今日の友ですね!」

 

「公式戦は勝たないとね」

 

「はい!、次は勝ちたいです!」

 

「公式戦って?」

 

 沙織がみんなに尋ねる

 

「戦車道の全国大会です!」

 

 沙織の問いに優花里が答えた

 

「それは何時からですか?」

 

「確か・・・1ヶ月後だ」

 

「結構短いですね」

 

 一真の問いに桃が答えると一真はそんな感想を言う

 

「おぉ~!、そういえば破神君にも似たような物が届いているよ」

 

 杏が思い出したかのように言うと柚子も思い出し一真にバスケットを渡したがそれはみほとは違いフルーツバスケットだったその中にも手紙が入っていた

 

 それは聖グロリアーナローズライダー部隊隊長アークからだった内容は

 

<一真君私たちを圧倒したその実力もさる事ながら、戦車隊の為に奮戦する君のその戦いぶりにはこちらにとってとても良い刺激になった。公式戦では迷いを振り切った君と戦えると自分は信じている>

 

(やっぱり見透かされていましたか)

 

 一真はそう思うとまだ文面には続きがあった

 

<追伸 ダージリンさんが君の事を個人的に興味を持っている、もし良ければダージリンさんに電話してやってくれ>

 

 文面の最後にはダージリンのケータイの電話番号が書かれていた

 

「個人的な興味って・・・」

 

「間違いなくこれは恋よ!」

 

 これに反応しない沙織ではなかった

 

「いや、それはないとおも・・・・・」

 

 幽香が否定しようとするが一真の顔を見て途中で止まる

 

(もしかしたら・・・)

 

 幽香は嫌な予感が感じていた

 

「恐らくそうだろうな」

 

「夜罪!、やっぱりそうだと思う?」

 

 いきなり後ろから声を掛けられ驚いた幽香は夜罪に聞いた

 

「十中八九そうだろうな、なんせあの一真だからな」

 

「そうね・・・まだ確定ではないけど」

 

 幽香と夜罪が話している間も話はヒートアップしていたが一真は全く蚊帳の外にいた、当の本人はこの事については何か冗談か何かと思っている

 

(みんながそれぞれの決意を持って戦っている・・・俺だけが特別じゃない)

 

 一真は今日の事を振り返っていた

 

(自分だけが苦しんでいる訳じゃない・・・みんなも何か抱えながらも必死になって自分の道を進んでいる)

 

 そう考えていると一真は今まで抱いていた迷いが馬鹿らしく思えた

 

(そうだ・・・俺は・・・今度こそ迷わない!)

 

 一真の心から一切の迷いが消え新たな決意のもとに眼前を見据えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回ガイム&パンツァー!!

 

「どうしたんだろう・・・華さん」

 

 聖グロリアーナチームとの試合後不調の続く華を心配する一真たち

 

「何か良い案はないかな?」

 

 悩むみほたちだが一真がある事が閃めく

 

 第13話「華さんの憂鬱です(前編)」

 

「そうだ!、遊園地に行こう!」

 




新年明けの初めての投稿です、不定期投稿になっていますが今度とも楽しんで読んでもらえると幸いです

今回は一真論が炸裂しました(笑)

次話から前後編で華さん回になります、乞うご期待ください!





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