遊戯王5D"s 氷華   作:BatC

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ep.6

治安維持局。このネオ童実野シティの警察組織、セキュリティの上位組織。

 

実質この街の支配者達と囁かれる組織で、このシティで出来ない事は無いとされる。

 

一体何をしているのか、一般的には殆ど知られておらず・・・ただ後ろ暗い噂が流れるのみ。

 

原作を知る私からすれば、赤き龍だとか星の民だとか、オカルトティックな云々に関わっている、という事は知っている。他はうろ覚えで分からないのだが。

 

で、何故こんな話をしたのか。原因は、うちの応接間、私の目の前に座る小柄なピエロを思わせる、"治安維持局特別調査室室長"を名乗る男だ。

 

「ヒッヒッ・・・どうでしょうか?貴女様の腕を見込んでのお願いなのですが・・・」

 

特徴的なアクセントの付け方と、奇妙な笑い声。

 

イェーガー。彼の名前だ。

 

「・・・お父様やお母様がお許しになるか分かりませんので・・・」

 

「いえいえ!全ては貴女の意思を尊重させて頂きます。それに・・・御父母様はどちらかと言えば、お喜びになられるのではないでしょうか?」

 

ヒッヒッヒッ、と笑う。まあ、多分そうだろうな。請ければ大層喜ぶだろうな。勝てば更に。

 

「・・・もし、請け無かったら?」

 

声のトーンと口調も変え、核心に迫る質問をする。

 

イェーガーも、ふっ、と表情を消し・・・宣告した。

 

「私達でも"色々と"考えさせて頂きます」

 

はいはい、要は強制ね。はぁ、と一つ溜息をつき、返事を返す。

 

「・・・分かりました。お請け致します」

 

まあ、元々請けるつもりはあったんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妙に神経を擦り減らす羽目になった面談の後。親に中身を話すと、手放しで喜ばれた。「勝って来い!」というプレッシャー付きで。

 

適当に愛想笑いを投げながら自室に戻り・・・受け取った封筒の中身を開く。

 

一枚のメッセージカード。

 

ふふ、と口元が歪むのが分かる。中々愉快な事になりそうだ。

 

其のカードには確かに、「デュエル・オブ・フォーチュンカップ」。その招待状、と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日の午後。私は治安維持局に出向いていた。例のイェーガー氏に呼び出された為だ。

 

用件は何も言われていない。

デュエル・オブ・フォーチュンカップ開催まで、あと一週間と少し程度。まあ、多分打ち合わせか何かがあるのだろうか。

 

治安維持局のビルはシティ中心部に聳える、オフィス街の中にある。

 

普段は来ない場所だ。何故なら此処は社会人の世界。勤め人でもない私が態々来る場所ではない。

 

セキュリティのエンブレムが掲げられた入り口を潜り抜け、スーツ姿の男やらセキュリティの捜査官やらを背に、受付で要件を言う。

 

少しすると確認が取れたのか、上に通された。エレベーターガールに見送られ・・・最上階?

 

「お待ちしておりました・・・ヒッヒッヒッ・・・」

 

イェーガー氏のお出迎え、と。

 

「ささ、此方です」

 

通されたのは・・・広い、硝子張りの部屋。いや、部屋というには広過ぎるか。

 

そして、窓際で外を眺めていると思われる人物。

 

「お待ちしておりました、氷輪さん」

 

レクス・ゴドウィン。

 

治安維持局長官。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

デュエル・オブ・フォーチュンカップ開催が迫り、街、そしてデュエル・アカデミアの中でも浮ついた雰囲気が流れつつある日の昼下がり。生徒達が「見に行くよ!」「ええ!チケット取れなかったぁ!」だとか話しているのを聞くと、今更ながら出場する身としては恥ずかしくて言えた物では無い。私が開会式でステージに並んだ時、こいつ等はどんな顔をするのだろうか。

 

「・・・・(じーっ)」

 

この間、治安維持局に呼ばれたのは、単純に大会の説明、そして・・・特定の名前、彼等を極力追い詰めろ、という事をお願いされた。特定の名前、というのは・・・龍可、不動 遊星、そして、十六夜アキ。俗に言う、シグナーと呼ばれる者どもだ。

 

ゴドウィン長官から、断片的にだが、彼等について説明された。本当に一部だけであったが。

 

あと重要なのは、大会出場にあたって必要な物の大半が支給されるという事。まあ、主にカードとかカードとか時々衣装とか。必要な物をリストに纏めて提出するように、と言われたので、衣装と適当に手に入らなかったカード類、それから・・・端っこにD・ホイールと書いておいたのだが、本当に叶えられるのだろうか。まあ、出来れば、程度で書いているので、当日まで期待しないでおこう。

 

「・・・・(じとーっ)」

 

この事は親と・・・恐らく言いふらしたであろう、その友人、近所の者しか知らない筈。

 

「・・・・(チラっ、チラっ)」

 

だからこの少し挙動不審気味な友人、柳 恵もそんな事は知らない・・・知らない筈。

 

「・・・なぁに?恵」

 

前の席に後ろ向きで座り、上目遣いで此方を見るだけであった彼女に、漸く声を掛ける。

 

「ゆき・・・」

 

はしっ、と何故か私の手を両手で掴み、僅かに熱っぽさすら感じさせる・・・多分気の所為・・・ひとみで見つめてくる。

 

「・・・あの大会・・・出るよね・・・?」

 

なんで知ってるんだコイツ。時々怖いぞ。

 

「・・・デッキ調整・・・大丈夫?」

 

そうだ、目下の課題。デッキの調整だ。やるからには当然勝ちたいし、未だ実際に顕現したことがないモンスター迄、惜しげも無く使ってゆく所存。ただ・・・問題が一つある。

 

ガチ過ぎてはいけないのだ。例えば、『次元幽閉』3枚積みとか。『奈落の落とし穴』2枚積みとか。

 

理由はクソ面白く無いから。何せ、この手の大会というのは、勝ては良い、という物ではない。客も喜ばせつつ、華麗に勝利する、エンターテイメントなのだ。

 

推奨されるのは、流れる様な連続カードプレイングや、多数の大型モンスターを並べる、大量展開、更には召喚条件の厳しい、超大型モンスターによるゲームセット。これらが揃えば大抵が良い決闘とされる。

 

特に融合召喚、シンクロ召喚など、決まるだけで歓声物だ。あとは、召喚する時や、攻撃する時の口上。コレも考えなければならないのがキツイ。一度は捨て去った、中二な心を呼び起こさねばなるまい。

 

「うん?・・・うーん、まだ最終決定はしてないけど・・・」

 

デッキの構成は出来てはいる。割とガチに近い方向性で組み上げ、昨日完成したところ。

 

「・・・試し回し・・・しない?」

 

私と、という語が省略されている。

 

「いいよ、アリーナいこうか」

 

荷物を担いで、二人で席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、いくよ?」

 

「・・・うん」

 

アリーナのフィールド、デュエル・ディスクを構え向き合う。

 

「「デュエル」」

 

雪 LP 4000

 

恵 LP 4000

 

デュエル・ディスクが選んだ先攻は恵。

 

「・・・ドロー」

 

少なくとも後攻ワンキルは逃れたな。この手札なら、少しヤバかったかも知れない。

 

「『ソーラー・エクスチェンジ』」

 

 

『ソーラー・エクスチェンジ』

通常魔法

手札から「ライトロード」と名のついたモンスター1体を捨てて発動できる。

デッキからカードを2枚ドローし、その後自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

 

墓地に『ライトロード・ハンターライコウ』が捨てられ、2枚ドロー。

 

あまり墓地に光、闇を貯められるとマズイのだが、打つ手は無い。

 

「『終末の騎士』、召喚」

 

 

『終末の騎士』

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1400/守1200

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る事ができる。

 

 

「デッキから・・・『ゾンビキャリア』を墓地に・・・」

 

着々と展開の準備を進める恵。これは後攻ワンキルか、もしくは何とか次のターンを乗り切る準備をしなくてはならないな。

 

「カードを2枚セットして・・・ターン終了」

 

初ターンだからか、控えめな展開。だが、恐ろしいのはあの2枚の伏せカードだ。大抵、どのデッキにも刺さる、痛い罠が伏せられている。

 

「私のターン」

 

「ここで速攻魔法・・・『手札断殺』」

 

 

『手札断殺』

速攻魔法

お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送る。

その後、それぞれ自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

墓地肥やしか。此方と比べれば、向こうの墓地にアドバンテージのウェイトはかなり大きい。此方が氷結界と踏み、リスクを承知で使ったか。向こうは・・・多分、闇属性モンスターを2枚落としたな。『終末の騎士』が墓地に落ちれば、躊躇いも無く、次のターンで『ダーク・アームド・ドラゴン』が飛んでくる可能性が高い。

 

私は『海皇の重装兵』と『海皇の突撃兵』を墓地に送り、2枚引く。

 

さて、このターンでどれだけ痛手を与えられるかに全てがかかっている。

 

「『ウォーターハザード』を発動、手札から『氷結界の舞姫』を特殊召喚」

 

 

『ウォーターハザード』

永続魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札からレベル4以下の水属性モンスター1体を特殊召喚できる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

『氷結界の舞姫』

効果モンスター

星4/水属性/魔法使い族/攻1700/守 900

自分フィールド上にこのカード以外の「氷結界」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。

1ターンに1度、手札の「氷結界」と名のついたモンスターを任意の枚数見せる事で、相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを見せた枚数分だけ持ち主の手札に戻す。

 

 

「・・・『氷結界の舞姫』に・・・『奈落の落とし穴』・・・」

 

 

『奈落の落とし穴』

通常罠

相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時に発動できる。

その攻撃力1500以上のモンスターを破壊し除外する。

 

 

出た、恵のエグい罠シリーズ第一弾。大会で使えば顰蹙を買う事間違い無し。『氷結界の舞姫』は、えっ?えっ?と周りを見渡した後、足下にぽっかりと開いた奈落の底に落ちて行った。可哀想に。

 

「なら『深海のディーヴァ』を召喚、デッキからレベル3以下の海竜族モンスターを一体、特殊召喚する」

 

 

『深海のディーヴァ』

チューナー(効果モンスター)

星2/水属性/海竜族/攻 200/守 400

このカードが召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海竜族モンスター1体を特殊召喚できる。

 

 

このデッキは氷結界と海皇の混成デッキだ。レベル3以下の海竜族は豊富。

 

「『海皇の狙撃兵』、特殊召喚」

 

 

『海皇の狙撃兵』

効果モンスター

星3/水属性/海竜族/攻1400/守 0

このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、デッキから「海皇の狙撃兵」以外のレベル4以下の

「海皇」と名のついた海竜族モンスター1体を特殊召喚できる。

また、このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時、相手フィールド上にセットされたカード1枚を選択して破壊する。

 

 

ボウガンを構えた魚頭の兵士。ぶっちゃけ不気味なソレが現れた。

 

「そして・・・フィールド魔法、『忘却の都 レミューリア』」

 

 

『忘却の都 レミューリア』

フィールド魔法

このカードのカード名は「海」として扱う。

このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の水属性モンスターの攻撃力・守備力は200ポイントアップする。

また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。

このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上の水属性モンスターの数と同じ数だけ、自分フィールド上の水属性モンスターのレベルをエンドフェイズ時まで上げる。

 

 

フィールドが、白亜の巨大都市へと変化する。半ば迄水没し、人気の無い朽ちかけた其れ。蠢くは水面下を泳ぐ魚達だけ。

 

「『忘却の都 レミューリア』の効果により、水属性モンスターの攻撃力、守備力は200ポイントアップする」

 

『海皇の狙撃兵』の攻撃力が1600、深海のディーヴァの攻撃力が400となる。

 

「バトル、『海皇の狙撃兵』で、『終末の騎士』を攻撃!」

 

銛の様な矢が放たれ、騎士の鎧を撃ち抜いた。撃破。

 

「む・・・」

 

恵 LP 4000→3800

 

「ここで『海皇の狙撃兵』のモンスター効果発動、このモンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時、デッキから海皇と名の付いたレベル4以下のモンスターを、特殊召喚することが出来る・・・」

 

これが『海皇の狙撃兵』の強み、後続を呼び出し、更なる追加ダメージを狙う事が出来る。

 

「・・・『海皇の竜騎隊』、特殊召喚!」

 

 

『海皇の竜騎隊』

効果モンスター

星4/水属性/海竜族/攻1800/守 0

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上のレベル3以下の海竜族モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

また、このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時、デッキから「海皇の竜騎隊」以外の海竜族モンスター1体を手札に加える。

 

 

レミューリアの効果で攻撃力は2000。4000しか無いライフポイントからすれば、かなり痛いダメージだろう。

 

「『海皇の竜騎隊』で、ダイレクトアタック!続いて『深海のディーヴァ』も攻撃!」

 

「・・・受ける」

 

恵 LP 3800→1400

 

「バトルフェイズ終了、レベル3、『海皇の狙撃兵』に、レベル2、『深海のディーヴァ』をチューニング」

 

氷結界要素、ここまで殆ど無いな、とは思いつつ、次なる海竜を呼び出す。

 

「シンクロ召喚」

 

レミューリアの水面を叩き割り、青き海竜がその姿を表す。

 

「『神海竜ギシルノドン』」

 

 

『神海竜ギシルノドン』

シンクロ・効果モンスター

星5/水属性/海竜族/攻2300/守1800

チューナー+チューナー以外のレベル3モンスター1体

フィールド上に表側表示で存在する

レベル3以下のモンスターが墓地へ送られた時、このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで3000になる。

 

 

普段は少々打点不足なものの、レミューリアの効果下では2500という、一般上級モンスターの基本値を持つこのモンスター。更に、相手がコスト、シンクロ召喚にレベル3以下のモンスターを使った場合、その火力は3200に迄跳ね上がる計算だ。レベル5のシンクロモンスターとしては、まあ、良い方だろう。

 

「カードを2枚セット、ターン、エンド」

 

恵のフィールドはガラ空き。手札は3枚。だが・・・『ソーラー・エクスチェンジ』、『終末の騎士』、『手札断殺』と続け、肥えた墓地は健在だ。此処から暴力的な展開をするのも、お手の物な筈。

 

場は整えた。後は競り勝つのみ。

 

「・・・ドロー」

 

あくまで平静な恵。だが・・・その瞳の奥では燃え盛る闘志がある。

 

「・・・手札を一枚、デッキトップに戻して・・・『ゾンビキャリア』を特殊召喚」

 

 

『ゾンビキャリア』

チューナー(効果モンスター)

星2/闇属性/アンデット族/攻 400/守 200

手札を1枚デッキの一番上に戻して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 

 

「・・・墓地に闇属性モンスターが3体・・・『ダーク・アームド・ドラゴン』を特殊召喚」

 

 

『ダーク・アームド・ドラゴン』

効果モンスター

星7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる。

自分のメインフェイズ時に自分の墓地の闇属性モンスター1体をゲームから除外する事で、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

 

出た。恵の殆どエースモンスターと化しているドラゴン。暴力除去ビートの要。

 

「・・・効果発動、墓地の『ゾンビ・マスター』を除外して・・・」

 

「やらせない!速攻魔法、『禁じられた聖杯』

 

 

『禁じられた聖杯』

速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は400ポイントアップし、効果は無効化される。

 

 

「『ダーク・アームド・ドラゴン』の攻撃力を400上げ、効果を無効化する」

 

「・・・む」

 

この場合、仕方が無い。

 

「・・・墓地の闇属性モンスターと、光属性モンスターを除外・・・『カオス・ソーサラー』」

 

 

『カオス・ソーサラー』

効果モンスター

星6/闇属性/魔法使い族/攻2300/守2000

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつゲームから除外した場合に特殊召喚できる。

1ターンに1度、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択してゲームから除外できる。

この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

 

 

除外、という最高峰の除去能力を持ち、尚且つ墓地リソースを使い召喚出来る、混沌を司る上級モンスターが一つ、『カオス・ソーサラー』。こうしてポンポンと強力な除去モンスターが飛んでくるのは笑える。

 

「・・・『カオス・ソーサラー』の効果・・・『神海竜ギシルノドン』を除外・・・!」

 

『カオス・ソーサラー』の放つ怪しげな魔術を浴びるギシルノドン。不思議な事に、その姿は真っ黒な、しかし、光も放つ、混沌の空間へと引き摺り込まれて行った。

 

「・・・レベル6、『カオス・ソーサラー』に、レベル2、『ゾンビキャリア』をチューニング・・・」

 

レベル8のシンクロモンスター。恵がこの状況で出して来るモンスターはアレしか居ない。

 

「『ダークエンド・ドラゴン』・・・!」

 

 

『ダークエンド・ドラゴン』

シンクロ・効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻2600/守2100

チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上

1ターンに1度、このカードの攻撃力・守備力を500ポイントダウンし、相手フィールド上に存在するモンスター1体を墓地へ送る事ができる。

 

 

コレは・・・ちょっとマズイかもなぁ・・・。

 

「・・・『ダークエンド・ドラゴン』の効果・・・攻守を500ポイント下げて・・・『海皇の竜騎隊』を墓地に送る・・・」

 

残るは『海皇の狙撃兵』のみ。あと一体主力級モンスターが出て来たら・・・致死ダメージを貰うな。

 

「・・・『魂を削る死霊』・・・召喚・・・」

 

 

『魂を削る死霊』

効果モンスター

星3/闇属性/アンデット族/攻 300/守 200

このカードは戦闘では破壊されない。

このカードがカードの効果の対象になった時、このカードを破壊する。

このカードが直接攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

相手の手札をランダムに1枚捨てる。

 

 

首の皮一枚で繋がった!心臓に悪すぎるわ。まあ、此の儘受ければちょっきり削られて負けられるけれども。

 

「・・・攻撃・・・『ダーク・アームド・ドラゴン』で・・・『海皇の狙撃兵』・・・!」

 

「通るよ」

 

幾分か肥大化し、頭が悪そうになった『ダーク・アームド・ドラゴン』が『海皇の狙撃兵』を叩き潰す。

 

「うっ・・・」

 

割と余波がキツイ。

 

雪 LP 4000→2400

 

「次・・・『ダークエンド・ドラゴン』でダイレクト、アタック・・・!」

 

まだだ、まだ使う時では無い。

 

雪 LP 2400→300

 

「トドメ・・・!『魂を削る死霊』・・・ダイレクトアタック・・・!」

 

この攻撃が通れば、私は負ける。初勝利。其れが目に見えているのか、恵も幾分か興奮気味だ。

 

だから・・・"攻撃順"を誤るという、初歩的なミスをして・・・反撃を許してしまう。

 

「リバースカードオープン!速攻魔法、『海皇の咆哮』!!」

 

 

『海皇の咆哮』

速攻魔法

自分の墓地のレベル3以下の海竜族モンスター3体を選択して発動できる。

選択したモンスター3体を墓地から特殊召喚する。

このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

 

「・・・っ!」

 

「舞い戻れ!『海皇の突撃兵』、『海皇の狙撃兵』、『海皇の重装兵』!」

 

一挙に3体のモンスターば場に並ぶ。結局の話、私はコレを使ってこのターンを乗り切るつもりだった。まあ、此処から勝てるか、といわれればキビシイかも知れない。何せ、最悪場が空、次のターンのドローカード一枚からスタートになりかねなかったからだ。

 

だが、恵が高攻撃力モンスターから攻撃した結果・・・3体ものモンスターを場に残す事になった。

 

「・・・むぅ・・・ターン終了」

 

さて、後は『魂を削る死霊』をサンドバッグにすれば良い訳だが・・・。

 

「私のターン」

 

だが、デッキトップに指を掛けた瞬間、キィン、と頭の中に何者かの声が響き渡る。

 

俺にやらせろ。

 

確かにそう聞こえた様な気がした。

 

「ドロー」

 

引いたカード。成る程、コイツか。確かに、コレが活躍するには万全のフィールドだな。

 

「恵」

 

名を呼ぶと、?と小首を傾げる彼女。小動物の様な可愛らしさがある。

 

「このカードは初めて出すよ・・・君が最初の目撃者、いや、犠牲者かな?」

 

その言葉に、むっ、と警戒する素振り。あまり怖さは無い。無表情で不気味さは人によっては感じるだろうが、それ以上に何処か、いや、本当に愛玩動物の様な可愛らしさがある。何度も言うけれども。

 

「このカードは、自分フィールド上のレベル3以下のモンスター3体をリリースして特殊召喚する事が出来る・・・貪欲なる魔海の皇帝、『海皇龍ポセイドラ』!」

 

 

『海皇龍ポセイドラ』

効果モンスター

星7/水属性/海竜族/攻2800/守1600

自分フィールド上のレベル3以下の

水属性モンスター3体をリリースして発動できる。

このカードを手札または墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚に成功した時、

フィールド上の魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。

この効果でカードを3枚以上手札に戻した場合、相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力は手札に戻したカードの数×300ポイントダウンする。

 

 

青い鱗と蒼の腹、岩の様な甲殻と尾の三椏槍。貪欲に己の領地を海皇軍によって拡大し、終ぞ己の欲に喰われ滅びた巨龍。海を司る、古代ギリシャの神の名を元にした名を持つ者。

 

レミューリアに嵐が吹き荒れ、瞬く間にその白亜の都市が崩壊して行く。そして・・・崩れ去った瓦礫の上に立つ、一匹の龍。

 

歓喜の咆哮を上げ、己の存在を誇示するかの如く、天高く鎌首を擡げた。

 

「『海皇龍ポセイドラ』のモンスター効果、この効果で特殊召喚された場合、フィールド上の全ての魔法、罠カードを持ち主の手札に戻す」

 

嵐に吹かれる様に、レミューリアの残骸が宙に散って行く。『ウォーターハザード』と『忘却の都レミューリア』がバウンスされた。

 

「この効果で戻されたカード一枚につき、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力は、300ポイントダウンする!」

 

「うっ・・・」

 

『魂を削る死霊』は攻撃力0、『ダーク・アームド・ドラゴン』は2200、『ダークエンド・ドラゴン』は1500へと弱体化した。

 

「『忘却の都レミューリア』を改めて展開、バトル!」

 

攻撃力3000の海皇龍、向かうは攻撃力0の死霊。その荒々しい尾の一撃は、容易く1400のライフポイントを削り切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・負けた・・・勝てると・・・思ったのに・・・」

 

「ううん、良い勝負だったよ。もし、彼処で恵のプレイイングミスが無かったら負けてたし・・・」

 

勝利目前でも、油断せず、ね?といじけ気味の恵をどうにかして立たせ、帰路に就く。

 

「そういえば・・・」

 

気になっていた事を切り出してみる。

 

「なんで、私がデュエル・オブ・フォーチュンカップに出る事を知ってたの?」

 

割と本気で恐怖を感じた先程の出来事。どうやってそんな情報を手に入れたのか。

 

「・・・えっ?」

 

すると恵は本気で驚いた様な、珍しく素の感情が見える顔になる。

 

「・・・出場・・・するの・・・!?」

 

あれ?もしかして、コレは知らなかったリアクション?

 

「いや・・・だってさっき大会に出るんでしょ?って・・・知ってたんじゃないの?」

 

もう、どう反応したら良いか分からない、といった感じで、あわあわ、と何やら慌て始める彼女。

 

「わ、私が、言ったのは・・・再来週の・・・ショップ主催の・・・」

 

あ、と今更そんな物もあったな、と気付く。恵とタッグで出ようかな、と思っていたヤツ・・・。

 

「じゃ、じゃあ・・・恵がフォーチュンカップの事を知ってるっていうのは・・・私の勘違い・・・」

 

だったりする?と言い終わる前に、恵の手が私の手を引っ掴む。

 

「絶対・・・観にいく・・・から・・・!」

 

うるうるとした赤い目が至近距離で見つめて来る。たじろぎ、引きそうになるのを何とか堪える。

 

「う、うん・・・頑張るから・・・」

 

自ら、自爆するが如くバラしてしまった。いや、恵にはコミュ力は無い。つまりは・・・これ以上は広まらない筈・・・!

 

「・・・これ、貸す」

 

懐から、すっ、と抜き出したのは、『ダークエンド・ドラゴン』のカード。

 

「えっ、いいの?」

 

恵のデッキ、そのシンクロモンスターの中でも切り札級の物だ。市場単価でも、最上級クラスのシンクロモンスターだけあって、馬鹿みたいな値段が付いている。

 

「ゆき・・・レベル8のシンクロ・・・持ってない」

 

確かにその通りなんだけれども・・・にしても、サービス精神旺盛過ぎやないか。

 

「いい・・・持ってて・・・」

 

ぐいぐいと、折れ曲がってしまうのではないか、と思う位に突き出して来るので、仕方無く受け取る。

 

腹に悪そうな顔が描かれた、漆黒のドラゴン。優秀な除去能力を持つモンスターだ。他とのシナジーは薄いが、使えない訳ではない。しっかり使わせて貰おうか。

 

「ありがと、恵」

 

わしゃわしゃ、と思わず頭を撫でてしまうが、向こうは嫌がる節も無い。可愛い奴だなぁ、と思いつつ、並んで帰った。

 

 

 

 

余談だが、後日。柳 恵が氷輪 雪にカードを差し出してプロポーズし、其れを私が受けた、という噂。そして・・・私がデュエル・オブ・フォーチュンカップに出場するという、二つの噂が学園内を飛び交っていた。

 

片方は完全な誤解だし、もう片方は・・・明らかに盗み聞きだろう。というか、女から女へのプロポーズなんて無いから。君達正気に戻りなさい。




誤字脱字などがありましたらお申し付けください


レミューリアよりウォーターワールドを使っていればもっとダメージ取れたな、と気付いたのは大体書き終わってからでした・・・。


※神海竜ギシルノドンと、海皇龍ポセイドラの効果処理にミスがありました。ご留意ください。

※ダークエンド・ドラゴンを使用した時、恵の台詞が「墓地に送る」、ではなく「破壊」となっていたのを修正

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