遊戯王5D"s 氷華   作:BatC

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ep.5

休日。何をするでも無く、課題をこなして部屋で休んでいると、母が突然現れた。

 

「雪、少しお願いがあるの」

 

母からの頼みとは珍しい。開いていた雑誌から顔を上げると、入り口に濃い化粧を施し、派手な格好をした母の姿。声も猫撫で声。虫酸が奔るが、こんなんでも母だから仕方が無い。痩せて化粧取れば似てる・・・ハズ。そう信じたい。

 

「二区画向こうのホテル、分かるわよね?」

 

あの屋上にデカイプールがあるホテルか。分かる分かる。

 

お願いというのは、其処の屋上に住む二人の子の様子を見てくるついでに、お土産の菓子折りを持って行ってくれ、という物だった。単なるお使いね。はいはい。

 

「何時もは私かお父さんが持っていくのだけれども・・・今日はちょっとお出かけしないといけないからね?」

 

そういえば彼処は行ったことが無かったな。いい機会だから行ってみよう。どうせ暇だし。

 

「彼処の子、ご両親が遠くに出張しててねぇ・・・良かったらお相手してあげて?」

 

子供だけで暮らしている?どっかで聞いたことがある境遇だな?

 

そんな訳で、今日の私の予定が決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トップスの一角に建ち並ぶ高級ホテル。その最上階。どっかで見たことが・・・そうだコレ劇中だ。遊星がD・ホイールで突っ込んだ所だ。

 

という事は・・・此処に住んでいるのは・・・。

 

インターホンを押すが・・・すぐには出て来ない。留守かと思うが、今はまだ朝早い。寝ている可能性も考慮し、一分待ってもう一度・・・。

 

「は、はい!どなた様でしょうか!」

 

と思った所で女の子の声。

 

「氷輪 雪と申します。何時もは母が此方に出向いていると思うのですが・・・」

 

其処まで言った所で意図を汲んでくれた様。ドアロックが解除され、エレベーターで上へ。最上階に辿り着くと一人の女の子が目の前に。服が赤色だから・・・この子が龍可だろうか。

 

「ご、ごめんなさい・・・その・・・」

 

すぐ出なかった事に対する詫びならいいのに。朝早く来た此方に非がある。

 

「いえ、特に困った訳では・・・あら?」

 

私が見た物。龍可ちゃんの肩越しに見えたソリッド・ビジョンの光。あれは・・・『D・モバホン』か。

 

 

『D・モバホン』

効果モンスター

星1/地属性/機械族/攻 100/守 100

このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。

●攻撃表示:サイコロを1回振り、

出た目の数だけ自分のデッキの上からカードをめくる。その中からレベル4以下の「D(ディフォーマー)」と名のついたモンスター1体を選び、召喚条件を無視して特殊召喚し、残りのカードはデッキに戻してシャッフルする。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

●守備表示:サイコロを1回振り、

出た目の数だけ自分のデッキの上からカードを確認して元の順番でデッキの上に戻す。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

ディフォーマーという事は・・・龍亞くんが決闘しているのかな?相手柱の関係で見えないない。

 

「決闘しているのかな?良かったら見て行っても良い?」

 

ほら、と左腕のデュエル・ディスクを指して問う。

 

「えっ!?・・・えぇっと・・・その・・・」

 

見るからに困る龍可ちゃん。触角みたいな髪も幾分か萎れ気味。・・・まあ、相手は・・・大体分かってるから。

 

「いいよね?」

 

少々強引で可哀想だが、"彼"が居るなら是非お目にかかっておきたい。

 

「あっ」

 

龍可の肩を抱いて奥に押して行く。実際、女とはいえ知らない人にこんな事されたら怖いだろうなぁ。普段母がどうしてるかは知らんけど。

 

文字通り押し入ると、窓の向こう、プールサイドで二人の人影がデュエル・ディスクを構えて向かい合っていた。

 

方や龍可ちゃんによく似た小柄な男の子(?)。突然入ってきた私に驚いた様子で「うえっ!?」とか言いながら目を剥いている。

 

そして・・・もう片方。トゲトゲした髪。青っぽい服装に吊り上がった瞳。左頬に入った黄色い"マーカー"。

 

意図せず唇が吊り上がるのを感じる。間違い無い、原作主人公・・・。

 

不動 遊星だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!しゃっきーん!」

 

今、私の目の前では二人の男が決闘をしている。

 

大仰な動作と謎の効果音を口で態々叫んでいるのが・・・全く恥ずかしい事に兄の龍亞。

 

自分にそっくりな見た目。しかし、中身は断じて違う。

 

もう片方・・・"サテライト出身"と名乗った"マーカー付き"の男。

 

不動遊星と名乗った彼は昨日の夜、D・ホイールに乗り、あろうことか家の表の廊下に飛び込んで来た。

 

最初、マーカーというものを見たことが無く・・・それに"カードの妖精達"も、この人は良い人、と言っていたから介抱する事にした。・・・少し不安はあるけれども・・・。

 

龍亞は彼がデュエリストと知れば決闘決闘と。全くしょうがないんだから・・・。

 

「『D・モバホン』を召喚!攻撃表示、じゃきーん!」

 

しかし、決闘に水を挿すが如く鳴り響くインターホンの音。龍亞が驚いてひっくり返りそうになっている。

 

手が空いているのは私しか居ない。ベンチを立ってモニターを見に行こうとして・・・。

 

「って、もしかして・・・氷輪さんじゃ・・・」

 

龍亞が漏らした言葉を聞いて、はっ、とする。

 

氷輪さん。両親の友人で、偶に家に様子を見に来る人。太り気味の婦人で、確か娘が一人居た筈。

 

しかし・・・彼女は生粋のトップス人。サテライト人、更にはマーカー付きの遊星が部屋居る事がバレたら・・・。

 

「ま、マズくないかっ!?遊星が・・・」

 

「とにかく出ないとっ!」

 

決闘中の彼等は動けない。急ぎモニターのマイクのスイッチを入れる。

 

しかし・・・モニターに映ったのは、覚悟していた、腹の出たおばさんではなく・・・。

 

「(・・・だれ?)」

 

初めて見る顔だった。

 

目に付く水色の髪と、切れ長な空色の瞳。白い生地に髪や瞳と同じ様なラインが入った薄手のカーディガンを前のボタンを外して羽織る年若い女。はっ、と息を呑んでしまう様な、ミステリアスな雰囲気を放つ美少女。しかし・・・。

 

「氷輪 雪と申します」

 

氷輪。確かにそう名乗った。

 

聞けば彼女は話に聞いていた氷輪さんの娘らしい。成る程、確かに髪の色が等共通点はある。見た目は似ても似つかないが。

 

何やらお土産を持って来てくれたらしい。入り口のロックを解除し、この階まで通した。

 

エレベーター前で待ち、極力早めに帰って貰おうと思ったのだが・・・。

 

「あら?」

 

扉を閉じ忘れた。隙間から決闘の様子が見え、興味を惹いてしまったようだった。

 

この後も強引に押し切られ・・・遂に中に入れてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、いやっ、その・・・これは・・・」

 

見るからに焦る龍可ちゃんと龍亞くん。遊星も警戒した様子で此方を睨んでいる。

 

別に私は原作を知っているし、サテライトだどうのこうのとは思って居ないので、何か言おうとは思わないが。

 

「・・・別にマーカー付きだって、ダイモンエリアとかじゃ珍しくないんだから、何とも思ってないよ?それとも・・・もっと曰く付きの事情でもあるのかな?」

 

全員の方に流し目をして、何とも思っていない事をアピール。それ以上この事を話すことは野暮である、と暗に言う。

 

「うっ、いやいや!なんでもないよ!えへへへ・・・」

 

龍亞くん、君は将来絶対嘘をついてはいけないよ。すぐバレるって保証してあげよう。

 

「ほら、決闘の続きだったんじゃなかったの?」

 

不安気な龍可ちゃんと一緒にベンチに腰を下ろし、完全に観戦する体勢に入る。

 

「おわっ!?ごめん遊星、忘れてた!」

 

気にするな仕方が無い、と遊星。

 

「じゃ、じゃあ・・・そうだ!『D・モバホン』の効果だ!ダイヤル〜オーン!・・・ありゃ」

 

デュエル・ディスクの重さでひっくり返りそうな龍亞を、暖かい目で見守りながら・・・決闘が再開された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果的に決闘は『ジャンク・ウォリアー』でトドメを刺した遊星が勝利。まあ、この流れは完全に知っていたし、驚きも無い。地力ならディフォーマーはかなり強いんだけどね。

 

「ううう・・・負けちった・・・」

 

遊星の言う、自分善がりな決闘。要は相手の動きをもうちょい考慮しろ、という事だ。『D・マグネンU』二体でロックモドキを掛けた所までは良かったが、その後の補填が成っていなかった。

 

まず普通は除去が飛んで来る。まあ、表示形式を変えられる想定なんてしないだろうから、仕方ないといえば仕方が無いのだが。でも、流石に頼り過ぎ。

 

遊星は龍亞くんにそんな心構え的な事を教えていた。なら・・・私はデッキ構成について一言言おうか。

 

「龍亞くん、でいいんだよね?」

 

先程軽く自己紹介はしたが、龍亞くんの方は敗北のショックが大きかったのか、名乗り損ねていた。だから、よく知らないふり。

 

名を呼ぶと顔を上げ、ぼーっとした顔で見上げて来る。可愛いな。男の子なんだよな、コレで。

 

「・・・ディフォーマーは基本能力値が低いから、それのカバーを考えた方が良いよ。例えば・・・装備魔法を使うとか。『D・ビデオン』ってカード、持ってる?」

 

 

『D・ビデオン』

効果モンスター

星4/光属性/機械族/攻1000/守1000

このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。

●攻撃表示:このカードの攻撃力はこのカードに装備された装備カードの数×800ポイントアップする。

●守備表示:このカードの守備力はこのカードに装備された装備カードの数×800ポイントアップする。

 

 

「うん?・・・あったっけ?」

 

「もう、私に聞かないでよ。自分のカードでしょ?」

 

何故か龍可に聞いてそっぽを向かれる龍亞。いや、予備カード漁りに行けば良いでしょ。

 

「・・・他にも『D・スコープン』とか使えば一ターンでレベル7シンクロに繋げられるし、『D・リモコン』を使えばその後に繋げやすいし」

 

「ちょっ、ちょっと待って!ええっと・・・カードカード・・・」

 

 

『D・リモコン』

チューナー(効果モンスター)

星3/地属性/機械族/攻 300/守1200

このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。

●攻撃表示:1ターンに1度、自分の墓地の「D(ディフォーマー)」と名のついたモンスター1体を選択してゲームから除外し、デッキからそのモンスターと同じレベルを持つ「D(ディフォーマー)」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

●守備表示:1ターンに1度、手札の「D(ディフォーマー)」と

名のついたモンスター1体を墓地へ送り、自分の墓地からそのモンスターと同じレベルを持つ他の「D(ディフォーマー)」と名のついたモンスター1体を選んで手札に加える。

 

 

『D・スコープン』

チューナー(効果モンスター)

星3/光属性/機械族/攻 800/守1400

このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。

●攻撃表示:1ターンに1度、手札から「D(ディフォーマー)」と名のついたレベル4モンスター1体を特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

●守備表示:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードのレベルは4になる。

 

 

ダッシュしてクローゼットの中を漁り始める龍亞。あ、降ってきた箱が頭に直撃した。大丈夫か。

 

「あ、あった!これでしょ!」

 

確かにそれだった。其れに・・・『機械改造工場』か。マイナーな装備魔法だが、『D・ビデオン』に

くっ付けるならまだ使えるか。

 

 

『機械改造工場』

装備魔法

機械族のみ装備可能。

装備モンスター1体の攻撃力と守備力は300ポイントアップする。

 

 

「そう、適当な装備魔法を付けるだけで、ビデオンの攻撃力は主力モンスターに匹敵するくらいになるからね、攻撃力が不足気味なディフォーマーなら入れておいて良いと思うよ」

 

本当なら『団結の力』とか『ダブルツールD&C』を使うべきだろうけど。持っているのなら、その内気付くだろう。

 

 

『団結の力』

装備魔法

装備モンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき

800ポイントアップする。

 

 

『ダブルツールD&C』

装備魔法

自分フィールド上の「パワー・ツール・ドラゴン」または「D(ディフォーマー)」と

名のついたレベル4以上の機械族モンスターにのみ装備可能。

それぞれのターンで以下の効果を適用する。

●自分のターン:装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。また、装備モンスターが攻撃する場合、バトルフェイズの間だけ攻撃対象モンスターの効果は無効化される。

●相手のターン:相手は装備モンスター以外のモンスターを攻撃対象に選択できない。また、装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、その相手モンスターを破壊する。

 

 

「ほえーっ、ありがとう!えっと・・・雪お姉さん!」

 

だよね?と後から聞いて来たので全て台無しだったが、まあ良い。

 

「雪さん・・・すごくカードの事知ってるのね・・・」

 

龍可が素直に感心した様子でまじまじと見つめて来る。見直されたか。いや、前世の遊戯王やっていた奴なら、誰でも簡単に行き着く結論だけれどもね。

 

「・・・私、一応デュエル・アカデミアの生徒だからね」

 

勉強熱心なのよ、と言い訳。ところで、さっきから遊星は何も言わずに聞いているな。寡黙なのだな。

 

「ねえねえ!もしかしてお姉さん、ライディング・デュエルも出来たりするの?」

 

素朴な疑問、という感じで問うて来た龍亞。ライディング・デュエル。いや、やれるならやりたいよ?D・ホイールがあればね。

 

「一応、出来るけど・・・肝心のD・ホイールを持ってないから・・・」

 

苦笑しつつ答えると、其処で初めて遊星が反応する。あくまで目線が此方に向いただけだが。

 

「・・・どうやって手に入れようか考えているところなんだ」

 

遊星はただじっと見てくるのみ。口は開かない。

 

「遊星もD・ホイーラーなんだ!遊星、遊星のD・ホイールは何処で手に入れたの?」

 

「・・・作った。自分達でパーツを集めてな」

 

うん、知ってた。だが、顔だけは驚いた顔を作る。知っている様であれば、どう考えても不自然だからな。

 

「ねえねえ!雪お姉さんも決闘出来るんだよね!やろうよ・・・あっ、デッキ作らなきゃいけないだった・・・じゃあ、龍可!」

 

「ええっ!なんで私が!?」

 

なぜ其処で龍可に振ったのか。

 

「龍可はまだ決闘してないんだから、いいだろ!」

 

コレ名案、と言わんばかりのドヤ顔。私からすれば微笑ましさしかない。

 

「もう・・・でも私も雪さんの決闘にはちょっと興味あるかも」

 

チラリ、と横目で態とらしく盗み見て来る。あざとい。

 

「私は別に構わないよ」

 

向こうも満更でもない様子、成り行きだが龍可ちゃんと決闘する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍可ちゃん、先攻と後攻どっちがいい?」

 

お互いにデュエル・ディスクを構えてプールサイドに立つ。もうすぐ昼だ。陽射しも強くなって来た。帽子が欲しいな。

 

「うーん・・・じゃあ、後攻がいい、かな」

 

本当に可愛いなこの子。龍亞に対する強気な時は見えないこの表情。

 

「じゃ、始めようか」

 

「「デュエル!」」

 

雪 LP4000

 

龍可 LP4000

 

「私のターン」

 

龍可ちゃんのデッキは如何なるは物だったか。『クリボン』くらいしか覚えてないわ。

 

「『氷結界の守護陣』を守備表示で召喚」

 

 

『氷結界の守護陣』

チューナー(効果モンスター)

星3/水属性/水族/攻 200/守1600

自分フィールド上にこのカード以外の「氷結界」と名のついたモンスターが存在する限り、このカードの守備力以上の攻撃力を持つ相手モンスターは攻撃宣言できない。

 

 

「更に手札から、『氷結界の伝道師』の効果発動、氷結界と名のつくモンスターが表側表示で存在する時、手札から特殊召喚出来る」

 

 

『氷結界の伝道師』

効果モンスター

星2/水属性/水族/攻1000/守 400

自分フィールド上に「氷結界」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

この効果で特殊召喚するターン、自分はレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。

また、このカードをリリースする事で、「氷結界の伝道師」以外の自分の墓地に存在する「氷結界」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

 

何時もの対高攻撃力モンスター止めだ。次のターン迄残せれば良し、もし仮にやられても、大抵このターンは耐えられる。

 

「リバースカードを一枚セットして、ターン、エンド」

 

何と無く、勝負という感じがしないな。こんなほのぼのとした決闘も、たまには良いかも知れない。

 

「私のターン!ドロー」

 

デュエル・ディスクのサイズ、大き過ぎるよな。そりゃあひっくり返りそうになる。

 

「来て!『サンライト・ユニコーン』!」

 

 

『サンライト・ユニコーン』

効果モンスター

星4/光属性/獣族/攻1800/守1000

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。

自分のデッキの一番上のカードをめくり、それが装備魔法カードだった場合手札に加える。

違った場合、自分のデッキの一番下に戻す。

 

 

青い鬣を持つ一角獣が姿を表す。そんなカードもあったな。

 

「攻撃を・・・えっ」

 

『氷結界の守護陣』を取り巻く結界。其れが一気に広がり、『サンライト・ユニコーン』までもを包み込む。すると一角獣は力が抜けた様に座り込んでしまい、動かなくなる。

 

「『氷結界の守護陣』は、フィールドに他の氷結界と名のつくモンスターが存在する時、このカードの守備力、つまりは1600以上の攻撃力を持つ相手モンスターの攻撃を封じる」

 

「『サンライト・ユニコーン』の攻撃力は1800・・・攻撃出来ないじゃん!」

 

ギャラリーの龍亞が何故か頭を抱える。

 

「うう・・・カードを二枚伏せてターンエンド・・・」

 

二枚の伏せカード。相手の手札は三枚。まあ、上等か。

 

「私のターン」

 

流石に私がデュエル・ディスクの重さに負ける訳が無いが、流石に真っ直ぐに腕を伸ばして持ったりすると重い。別に今は格好つける必要も皆無な為、普通に引く。

 

「『氷結界の破術師』を召喚」

 

 

『氷結界の破術師』

効果モンスター

星3/水属性/魔法使い族/攻 400/守1000

自分フィールド上にこのカード以外の「氷結界」と名のついたモンスターが存在する限り、お互いに魔法カードはセットしなければ発動できず、セットしたプレイヤーから見て次の自分のターンが来るまで発動できない。

 

 

雪の結晶をモチーフにしたステッキを持つ、中性的な青髪の人物が現れる。説明、モンスター『魔封じの芳香』、以上。

 

「レベル3、『氷結界の破術師』に、レベル3、『氷結界の守護陣』をチューニング!」

 

『氷結界の龍ブリューナク』?出せるけど大人気ないからこんな所では出しません。

 

「シンクロ召喚!」

 

呼び出すは氷結界を束ねる王。三龍に対抗する青き猛虎。

 

「『氷結界の虎王ドゥローレン』」

 

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

シンクロ・効果モンスター

星6/水属性/獣族/攻2000/守1400

チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するカードを任意の枚数選択して持ち主の手札に戻す事ができる。

このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、この効果で手札に戻したカードの数×500ポイントアップする。

 

 

銀虎。そう言うに相応しい荘厳な王虎が姿を表す。虎は龍可を見据え、天に向かって咆哮した。

 

「うわぁ!出たぁ!」

 

「・・・シンクロ、モンスター」

 

そういえば、喋る外野が居る決闘も久々だな。

 

「更に永続魔法『ウォーターハザード』発動」

 

 

『ウォーターハザード』

永続魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札からレベル4以下の水属性モンスター1体を特殊召喚できる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「『氷結界の虎王ドゥローレン』のモンスター効果発動」

 

発動した『ウォーターハザード』と『氷結界の伝道師』を手札に戻す。

 

「えっ!?なんで発動したカードに・・・モンスターまで手札に戻したの?」

 

コレは魔法カードだから、別に戻したところで痛くも痒くもない。

 

「ドゥローレンは一ターンに一度、自分の場の表側表示のカードを、任意の枚数だけ手札に戻し、戻したカード一枚につき、攻撃力を500ポイント上昇させる。

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

ATK 2000→3000

 

「攻撃力3000!?」

 

「くぅ・・・」

 

「・・・」

 

三者三様の反応。実際3000ってすぐ到達するレベルだからな。龍亞よ、君の『パワー・ツール・ドラゴン』はサラッと4000くらい出すだろう。私は忘れないぞ。前世で出された『団結の力』二枚刺しで攻撃力5500に達した『パワー・ツール・ドラゴン』を。

 

「バトル!ドゥローレンで『サンライト・ユニコーン』を攻撃!」

 

四肢に傍目から見ても分かる程の力が込められ、筋肉を躍動させながら王虎は一角獣に飛び掛かる。

 

「させない!リバースカードオープン!『和睦の使者』!」

 

 

『和睦の使者』

通常罠

このターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になり、自分のモンスターは戦闘では破壊されない。

 

 

「・・・ならリバースカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

ドゥローレンの上昇した攻撃力が元に戻る。

 

「私の、ターン!」

 

さて、どうするか。あまり遊んでいると逆にやられそうだな。

 

「『サンライト・ユニコーン』のモンスター効果!デッキの一番上を確認して、それが装備魔法カードだった時、手札に加える事ができる!」

 

不確定な効果だよなぁ。まあ、能力値的にはマトモなアタッカーだから、一概に使えないとは言えないのだが。龍可のデッキは装備魔法でも積みまくっているのだろうか。

 

「デッキの上は・・・『一角獣のホーン』!」

 

 

『一角獣のホーン』

装備魔法

装備モンスターの攻撃力・守備力は700ポイントアップする。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、墓地のこのカードをデッキの一番上に戻す。

 

 

成る程な。『サンライト・ユニコーン』と確かに合った効果の装備魔法だな。『一角獣のホーン』はすぐに『サンライト・ユニコーン』に装備された。

 

『サンライト・ユニコーン』

ATK 1800→2500

DEF 1000→1700

 

「それから・・・来て!『ピクシーナイト』!」

 

 

『ピクシーナイト』

効果モンスター

星2/光属性/魔法使い族/攻1300/守 200

このカードが戦闘によって墓地に送られた時、自分の墓地の魔法カード1枚を相手が選択し、そのカードを自分のデッキの一番上に置く。

 

 

「バトル!『サンライト・ユニコーン』で『氷結界の虎王ドゥローレン』を攻撃!」

 

迫る一角獣の角。すまん、ドゥローレン。

 

雪 LP 4000→3500

 

「やった!『ピクシーナイト』も攻撃!」

 

「リバースカード、『ガード・ブロック』」

 

 

『ガード・ブロック』

通常罠

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「防がれた・・・カードを一枚伏せて、ターンエンド・・・」

 

さて、そろそろ決めるかな。

 

「私のターン」

 

『ガード・ブロック』のドロー分も合わせて、手札は五枚。その内二枚はフィールドから戻した物だから、既にバレている。

 

「『強欲なウツボ』を発動」

 

 

『強欲なウツボ』

通常魔法

手札の水属性モンスター2体をデッキに戻してシャッフルする。

その後、デッキからカードを3枚ドローする。

 

 

向こうに割れている『氷結界の伝道師』と、今は必要無い『氷結界の虎将ライホウ』をデッキに戻す。

 

「3枚ドロー」

 

先ずは一手。伏せ除去。

 

「『ウォーターハザード』を再度発動、その効果で『氷結界の舞姫』を特殊召喚」

 

 

『氷結界の舞姫』

効果モンスター

星4/水属性/魔法使い族/攻1700/守 900

自分フィールド上にこのカード以外の「氷結界」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。

1ターンに1度、手札の「氷結界」と名のついたモンスターを任意の枚数見せる事で、相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを見せた枚数分だけ持ち主の手札に戻す。

 

 

「更に『氷結界の風水師』を召喚、舞姫の効果発動!」

 

 

『氷結界の風水師』

チューナー(効果モンスター)

星3/水属性/魔法使い族/攻 800/守1200

手札を1枚捨て、属性を1つ宣言して発動できる。

宣言した属性のモンスターはこのカードを攻撃対象に選択できない。

この効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

 

 

「『氷結界の舞姫』は一ターンに一度、手札から任意の枚数、氷結界と名のつくモンスターを見せる事で、見せた枚数分の相手フィールドにセットされた魔法、罠カードを持ち主の手札に戻す」

 

「そんなっ!」

 

何か戻されたく無いカードでも伏せて居たか。私が手札から見せるのは『氷結界の虎将ガンターラ』と『氷結界の武士』。相手の伏せカードは全てバウンスされた。

 

「レベル4、『氷結界の舞姫』にレベル3、『氷結界の風水師』をチューニング!」

 

出番だ。氷結界の万年二位君。

 

「シンクロ召喚!」

 

登場は毎回格好良いのに、毎回毎回其の後でこっちをジト目で睨むから決まらないというのは分かっているのだろうか。

 

「『氷結界の龍グングニール』!」

 

 

『氷結界の龍グングニール』

シンクロ・効果モンスター

星7/水属性/ドラゴン族/攻2500/守1700

チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上

1ターンに1度、手札を2枚まで墓地へ捨て、捨てた数だけ相手フィールド上のカードを選択して発動できる。

選択したカードを破壊する。

 

 

「ぷっ・・・この子・・・」

 

何故か龍可が吹き出す。そういえば彼女はデュエルモンスターズの精霊の声が聴けるのだったか。コイツは一体何と言っているのだろうか。しかし、何と無く、コイツは弄られキャラだという気がする。あくまで何と無くだが。

 

「『氷結界の龍グングニール』のモンスター効果発動、手札を二枚まで捨てて、相手フィールド上のカードを捨てた枚数分破壊する」

 

標的は『ピクシーナイト』と『サンライト・ユニコーン』。

 

吐き出された絶対零度の息が、二体のモンスターを瞬く間に氷漬けにする。破壊。

 

持ち主を失った『一角獣のホーン』がデッキトップに戻った。

 

「バトル!グングニール、ダイレクトアタック!」

 

青龍がその巨躯からは想像もつかない速度で疾走。左腕の一撃を放つ。

「わぁ!?」

 

龍可 LP 4000→1500

 

「この瞬間、リバースカードオープン、『強化蘇生』」

 

 

『強化蘇生』

永続罠

自分の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を選択して特殊召喚する。

この効果で特殊召喚されたモンスターのレベルは1つ上がり、効果は無効化される。

このカードがフィールド上に存在しなくなったとき、そのモンスターを破壊する。そのモンスターがフィールドから離れた時このカードを破壊する。

自分のスタンバイフェイズ毎に自分は1000ポイントのダメージを受ける。

 

 

異様に手に入り難い、モンスター蘇生系カードの中でも、比較的安価なカードの一つだ。本当なら『リビングデッドの呼び声』を使いたい所だが、生憎まだてに入れていない。

 

因みに恵はソレに加えて『死者蘇生』まで持っている。何が私と彼女をそこまで差をつけさせているのだろうか。

 

「『強化蘇生』の効果で墓地のレベル4以下のモンスターを一体、特殊召喚する」

 

そういえば、彼のジャック・アトラスも使ったカードだったか、コレは。彼の立場なら、もっと真面で汎用性のあるカードを投入出来ると思うのだが、其れは彼の良く言う、「キングの決闘はエンターテイメントでなければならない!」と関係があるのだろうか。まあ、どうでも良いのだけれども。

 

「『氷結界の武士』」

 

 

『氷結界の武士』

効果モンスター

星4/水属性/戦士族/攻1800/守1500

フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが表側守備表示になった時、このカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「止め、『氷結界の武士』でダイレクトアタック!」

 

氷で出来た鎧を着た武者が、これまた氷の様な刀の刃を振り下ろす。

 

勝負は決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちゃあー・・・負けちゃった」

 

うーん・・・と少し不満気な龍可。いや、まあ、私も私で手抜きしようとして、慌てて後から軌道修正したという恥ずかしさがあるけれども。

 

「思ってた以上に強くて、少し驚いちゃったよ」

 

まさかグングニールを出す羽目になるとは思っていなかった。久々に少し焦った。逆に言えば刺激があったので、ちょっと楽しかった。

 

「すっげぇすっげぇ!雪お姉さん強いんだな!オレも・・・」

 

「もう、また自己中になってる・・・」

 

と、龍亞が言い出した所で龍可の苦言が飛ぶ。図星だったようで、うう、と呻き怯む。

 

そんな微笑ましい二人を見つつ、ふっ、と壁のデジタル時計に目を移す。そろそろ、お暇しなければならないな。

 

「うん、私もそろそろ帰らないといけないかな」

 

残念ながら、あまり家を空ける事は許されていないのだ。

 

龍亞は「ええ〜!」と落胆も露わな反応。龍可ちゃんに窘められる始末であった。

 

「また会えるよ、きっと」

 

そう、"また"。私は必ずそっちに行く。

 

「じゃあ、またね」

 

あくまで良いお姉さん、その仮面を以って二人に手を振る。そして・・・。

 

「"また"ね。遊星くん?」

 

すっ、と流し目。意味深な調子で放ち、踵を其の儘返す。

 

「・・・ああ」

 

少し眉根を寄せながらも返事はしてくれた。印象付けはこんなもので良いだろう。

 

其の儘去る。

 

あと、今回の反省。ナメプ慢心、ダメ、絶対。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、遊星もすごいけど、雪お姉さんもすごかったね!」

 

嫌にテンションが高い龍亞を尻目に、今日現れた雪さん、という人を振り返る。

 

美人だった。その上決闘も強い。

 

最初、殆ど本気でも無く、まるで子供相手に手加減している様なやり方で・・・ついムキになって頑張ってみたけど・・・負けてしまった。

 

「遊星はあの人どう思う?」

 

そして・・・彼女のデッキ。

 

「ああ・・・」

 

主従関係。それがはっきりと見えた。絶対の主と其れに従うモンスター達。そして其れはお互いの信頼関係に起因する。

 

でも、あのグングニールだったか。あの子は特に面白かった。本来、ソリッド・ビジョンシステムで映し出されたモンスター達は、決まった動作しかしない。其れに"モンスターの精霊自身が干渉して"後ろを振り向くなど、イレギュラーな行動をするとは、どうやらあのカードに宿る精霊は途轍も無く強力な物らしい。

 

「・・・強いな」

 

雪さんはグングニールを呼び出す時、一体何を考えていたのだろうか。出て来て数秒、物凄く早口で何事かを愚痴っていた様子だったけれども・・・。

 

「俺もそろそろ帰らせてもらおうか」

 

「ええー!」

 

・・・また龍亞のワガママが始まった。

 

今日も暇はしなさそうだった。苦労的な意味で。

 




強化蘇生、に関してですが、OCG効果ではなく、原作効果と間をとったTF6効果となっております。

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