神薙の軌跡   作:檜山アキラ

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ルナリア自然公園

「これは……」

「随分と荒らされたようだな……」

 特別実習2日目の朝。マゴットから渡された本日の実習内容を確認している所、駆け込んできたルイセから聞かされた内容に、リィン達は大市へと急行した。

 そこで待ち受けていたのは入り口正面にある屋台が無惨に破壊されているという光景だった。

 更に、遠目でも分かるほどに、そこには屋台の残骸しか見当たらなかった。

 ルイセの証言通り、その屋台の商品が根こそぎ盗まれているのだろう。

「まずいな」

 レイルが苦虫を噛み潰したかの様に顔を顰める。

「この野郎!」

「絶対に許さんぞ!」

 離れているこちらまではっきりと聞こえてくる2つの罵声に、リィン達は事態の深刻さを理解した。

 視線の先、昨日も出店場所を巡って争っていた帝都商人のハインツと地元商人のマルコが、昨日以上に鬼気迫る勢いで口汚く争っていた。

 その傍らでオットー元締めが必死に2人を宥めようとしているが、辛うじて取っ組み合いにならないのを防いでいるだけに留まってしまっている。

「ぼ、僕たちも止めに行こう!」

 引け腰ではあるものの、エリオットの提案にリィン達は頷き、争いを仲裁するために駆け出した。

 その時、リィン達は誰もが予感していた。

 何かよからぬ事が起ころうとしていると……

 

 

「さて、一度情報を整理してみよう」

 リィンの提案に他のメンバーが一様に頷く。

 あの後、リィン達は大市で引き起こされた騒動に疑念を抱き、オットー元締めに頼み込み調査へと乗り出していた。

 帝都方面行きの最終列車というタイムリミット、そして必須ではないとはいえ用意された課題をこなしつつ、リィン達は二手に分かれての調査を開始した。

 そして、それぞれが掴んだ情報をまとめるため、風見亭で落ち合い、昼食を摂りつつ情報を交換し合う。

「って、そう言えばレイルはどうしたんだ?」

 1度は戻ってきたはずの彼がいないことに気が付いたリィンが周囲に尋ねてみると、リューネが苦笑いを浮かべる。

「えっと、ちょっと気になることがあったみたいで、それを調べてくるって」

「そうか。なら、俺達はレイルが戻って来るまでに可能な限り情報をまとめておこう」

 レイルが何を気にしたのか、リィンは僅かな引っ掛かりを覚えたが、今は自分達に出来る事に集中しようと意識を切り替える。

 屋台の破壊並びに商品の盗難が発覚したのは今朝方の話である。

 商人達が証言していることから、大市の門が閉められた昨夜21時から大市の準備が始まる今朝6時までに犯行が行われたとみて間違いない。

 そして、被害にあったのは大市に入って正面、絶好の位置取りにあったハインツの店――と、大市奥に位置するマルコの店の2箇所である。

 2人は昨日、同じ場所の出店許可証を持っているとして、場所を巡って口論を繰り広げていた。

 オットー元締めの仲裁により、定期的に場所を入れ替えて商売を行うことになり、先に大市正面を使うのはハインツになったのだった。

「これだけ聞くとマルコさんが腹いせにハインツさんの店を滅茶苦茶にしたって思われるけど……」

「それだとマルコさんの店が滅茶苦茶にされていた理由が分からないわね」

 アリサの言葉を受けてエリオットがだよね、と肩を落とした。

「マルコさんはそれについて、ハインツさんが出店場所を独占するためにやったことだろうって仰ってましたね」

 リューネがその時の様子を思い浮かべるように視線を中空へと向ける。

 だが、ハインツが犯人だとすると被害者側に立つためとはいえ、自分の店を滅茶苦茶にするだろうか、という疑問が浮かび上がる。

「領邦軍が言っていた“互いに互いの店を滅茶苦茶にした”と言うのもこじ付けでしかないわよね」

 アリサが今朝の諍いを仲裁に来た領邦軍が下そうとした判断を口にして、それに続く形でラウラが、

「確かに。ろくに調査もしない内から決め付けるのは、如何に領邦軍と言えど横暴が過ぎる」

 と、彼らの態度を非難する。

「…………妙だな」

 皆の話を黙って聞いていたリィンが口を開くと、一同の視線が彼へと集中する。

「妙って、何が?」

 エリオットが代表して尋ねると、リィンが眉間に皺を寄せながら自身の中に覚えた引っ掛かりを口にする。

「領邦軍の動きが妙なんだよ」

 オットー元締め曰く、大市に対する増税撤廃の嘆願を取り下げない限り、領邦軍はそこでの問題に不干渉を貫くときていた。

 だが、その領邦軍が何故今日の争いを、横暴とはいえ、取り持つような真似をしたのだろうか……

「言われてみれば、おかしな話だな」

「行動に一貫性がないですね」

「ってことは、領邦軍が今回の事件に関係してるってこと?」

 エリオットが信じられないと言いたげに溢すが、リィンは明言を控えた。

「……分からない。けど、彼らに“何か”あるのは間違いないと思う」

 だったら、

「手掛かりが少ない以上……打って出よう」

 リィンの言葉に一同は力強く頷いた。

 

 

「思っていた以上に真っ黒だったわね……」

 アリサは呆れたと言わんばかりの溜め息を盛大に吐いてみせる。

 リィンの提案により、領邦軍の詰め所まで押し掛けたアリサ達。

 エリオットの機転により、引き出した情報は大当たりであった。

「うん。よくぞ有益な情報を引き出してくれたな」

「はは、たまたま上手くいっただけだよ」

 ラウラの賛辞に照れ笑いを浮かべるエリオット。

 だが、彼の話術によって、ろくに調査を行っていないはずの領邦軍が、被害にあった商人が所有していた商品を把握している、という情報を得ることが出来た。

 そしてこれまでの大市を取り巻く状況から導き出せるのは……

「計画的犯行、か……」

 リィンの言葉にアリサは頷き返した。

 大市の管理が公爵家であるなら、その子飼いである領邦軍が情報を得ていてもなんらおかしくはない。

 そして、許可証の重複や盗難などの問題を引き起こし、領邦軍の介入が不可欠という状況に追いやることで、

「ケルディックの人達の方から増税取り止めの陳情を撤回させる、ってことかしらね」

 アリサの推論に異を唱える者はいなかった。

「でもどうしよう? 領邦軍が犯人だとしたら、僕達じゃどうしようにも……」

 折角解決の糸口が見えたのに、相手が領邦軍では士官候補生である自分達に手出しは出来ない。たとえ告発したところで、学生の戯言だと揉み消されるのが目に見えている。

「いや、プライドの高い領邦軍のことだ。自ら手を汚すことはするまい」

 恐らく実行犯がいるはずだ、と語るラウラに1度は沈み掛けた雰囲気が持ち直す。

「それじゃあ、その実行犯を捕まえることが出来れば……」

「問題は残るが、事件は解決するだろうな」

 リューネの言葉を継ぐように、一同の輪の外から声が掛かる。

 そこにいたのは、

「お兄ちゃん!?」

「よう」

 と、気軽に手を上げて輪に加わるレイルに、アリサはジト目を向けた。

「あなた、どこに行ってた……のは、後で良いわ。それより、問題が残るってどういうことよ?」

「簡単なことさ。実行犯を捕まえたところで領邦軍は我関せず……つまり罪を擦り付けて自分達は無傷。大市への嫌がらせも続くだろうな」

「なっ――!?」

 確かに、少し考えれば想像の付く話である。

 今回の一件を根本的に解決させるためには、領邦軍そのものに罪があると糾弾しなければならない。だが、今の自分達に出来るのは、いつでも切り捨てられるトカゲの尻尾を掴むのが限界だった。

 ――それでも、何もしないよりは――!

「それでも、何もしないよりかは良い筈だ」

「え……?」

 悔しさに歯噛みするアリサの傍ら、リィンが彼女の心を代弁するかのように宣言する。

「この町の人達を苦しめる理不尽を見て見ぬ振りは出来ないし……俺達に出来ることがあるならどんな些細なことでもやり遂げるべきだと思う」

 リィンの迷いのない言葉にラウラが、エリオットが、リューネが、決意に満ちた瞳を湛えて頷いている。

 そしてその視線がアリサへと移る。

 ――私は……

 どうなのだ、と問われている気がしたが、聞かれるまでもなかった。

「勿論よ。どんなに小さな事だとしても、動かなければ事態を好転させることは出来ないわ!」

 きっぱりと、アリサは自分の意思をレイルへとぶつける。すると彼は、肩を落としながら、

「おいおい。この流れだと、俺が反対してるみたいじゃないか」

 アリサにはそのように聞こえたのだが……

「俺も賛成だよ。俺達は俺達に出来る精一杯のことをやっていこう……それに問題を解決する手がない、わけじゃない。だから」

 そして、レイルが今まで見せたことのない、悪戯を思い付いた無邪気な子供の様な笑顔を浮かべて――

「――“チェック”といこうか」

 

 

 ルナリア自然公園。

 ケルディック北部に位置するヴェスティア大森林の一画を使って作られた観光名所である。

 古代の精霊信仰において精霊を鎮めるために用いられた鎮守の森としての逸話も残されている場所だった。

 だが、この場を訪れた者であれば、その逸話もあながち間違いではないと思うことだろう。

 鬱蒼と生い茂る木々の隙間から差し込む陽光が大地を照らし、静謐に包まれた空間はまさに荘厳と言っても過言ではなかった。そして極めつけなのが、各所に点在する石碑の数々である。これらを見た者は皆、この地に根付いていた精霊信仰の存在をはっきりと感じ取ることになるだろう。

 だが今は、普段の静けさとは異なる張り詰めた空気が辺りを満たしていた。

「魔獣だけじゃないな……普通の動物達もピリピリしてるな」

 自分達が来る前から緊張に満ちた空気を感じたレイルは、自分達以外の誰かがこの公園内にいることを悟った。

 ただの観光客というのであれば、こうはならないだろう。

 ――恐らく、縄張りを荒らすような無遠慮な存在、か。

 それに――

「それが落ちてたから、間違いないな」

 レイルはアリサが握っている物へと視線を注ぐ。

 それは自然公園の入り口に落ちていた物で、同時に、ハインツが取り扱っていたブランドの商品と同じ物でもあった。

 レイル達はケルディック西口で酔っ払っていたルナリア自然公園元管理人のジョンソンの証言を元にやってきたのだが、どうやら間違いなかったようだった。

 実行犯はこの中のどこかにいる。

 そう確信した一同は、慎重かつ迅速に犯人を追い詰めるため、先を急いだ。

 そして……

 

 

「ハッ! 所詮はガキ共だ! 一気にぶちのめしてやれ!」

 自然公園の奥地――開けた場所で大市から盗み出したと見える商品の数々を前に油断していた偽の管理人達。

 領邦軍に雇われたであろう相手はリィン達の出現に驚きはしたものの、こちらが学生であると見ると一変、強気な態度でそれぞれがライフルを構える。

 数の利では向こうが不利なはずだが、手にした獲物が気を大きくさせているのだろう。

「ARCUSの戦術リンクを最大限に活用するぞ!」

『了解!』

 しかし、銃口を向けられて尚リィン達は怯むどころか、彼の号令に応じ、即座に陣形を組み立てる。

 先陣を切ったのはリィンとレイル。持ち前の速度を生かし、敵の陣形を切り崩していく。そこを続くリューネとラウラが相手を無力化していく。そして反撃に移ろうとした相手を後方支援を担ったアリサとエリオットが牽制する。

「こいつら、ただのガキじゃねぇ!?」

 4人中3人――瞬く間に仲間の半数が制圧され、驚愕に顔を歪めるリーダー格の男。

「こ、この!」

 最早苦し紛れに銃を乱射しようとするが、引き金を弾く直前、アリサが放った炎を纏った矢がライフルを破壊する。

「なっ!?」

 男の顔が最早恐怖と呼べる色へと染まる。

「――勝負ありだ」

 そして、リィンの一言で男は地面に膝を着いて項垂れた。

「投降して、大市の人達にきちんと謝罪してもらうぞ」

「そちらの盗難品も全て回収させてもらうわ」

「それと、“誰”に頼まれたかも話してもらう必要がありそうだな?」

「くっ……」

 男達の表情が苦悶に歪む。

 先程レイルが語ったように、彼らを捉えたところで黒幕は彼らを切り捨てるだろうが、彼らの口からその名を聞き出すことが出来れば、事態は好転するはずだろう。

 だが――

「…………?」

「エリオット?」

 エリオットが何かに気を取られたのか、周囲の様子を窺っている。それに気付いたレイルが声を掛けると、エリオットが自信なさ気に答えた。

「何だか笛のような音が聞こえたような気が――」

 エリオットの言葉がそこで途切れる。

「!?」

「な、なんなの!?」

 その場にいた誰もが緊張に表情を固くする。

 耳を劈く咆哮。

 それは大型の獣を彷彿とさせるには十分過ぎるもので――

「来るぞ!!」

 レイルの叫びにリィン達は身構えた瞬間。

 地響きを伴って近付いて来るソレが姿を現す!

 

 

「ひ、ひぃぃぃ」

 その姿に怯える男達が哀れな悲鳴を上げる。

 だがそれも無理からぬものだった。

 全長5アージュはゆうに超える巨体。巨木を思わせる前肢に剥き出された鋭利な牙。

 巨大なヒヒにも見える彼の存在こそ、ルナリア自然公園のヌシであるグルノージャ。

 己が縄張りを荒らす存在を許さぬ彼は、極限まで気が立っている様子で、その獰猛に射竦められた男達は腰を抜かし、無様に後ずさるだけであった。

 だが、彼らは違った。

 レイルが、

「他の獣達の緊張に反応して、俺達を排除しに来たみたいだな」

 エリオットが、

「それにしても尋常じゃない怒り様だけど……」

 リューネが、

「こちらに敵意がないことを分かってもらえれば良いんですけど」

 ラウラが、

「それは難しいだろうな」

 アリサが、

「ええ。やるしかないようね」

 リィンが、

「ああ。彼らを放り出す訳にはいかない! 何とか撃退するぞ!」

 各々に武器を構え、グルノージャへと対峙する。

 それを見取ったグルノージャが一際大きな咆哮を轟かせる。

 すると、木々の隙間―リィン達を挟み込む様に両サイド―から中型の魔獣・ゴーディオッサーが姿を現す。その数は――4。

 それには流石にアリサとエリオットが表情を曇らせる。

 だが、リィンとラウラはレイルへと視線を注ぎ、無言で問い掛ける。

 それを受けてレイルは、余裕の笑みさえ浮かべて応じる。

「任せとけ。だが、位置が悪いな……リューネ、左の2匹を頼む」

「うん。任せて、お兄ちゃん」

 そう言って進み出るリューネの顔は、普段の愛らしいそれではなく、静かな闘志を宿した戦士のそれであった。

「ちょ、ちょっと……」

「幾らなんでも分が悪すぎるんじゃ……」

 敵の増援に弱気が顔を覗かせた2人に、それでもリィンは大丈夫だと頷いてみせた。

「あのレイルが言うんだ。きっと大丈夫だ」

 昨日リィン達にその力量を披露したレイル――そんな彼が任せておけと言ったのだ。そして、彼から敵の半分を任されたリューネもまた問題ないのだろう。

「俺達は目の前の大型に集中する――行くぞ!」

 リィンの号令が響くと共に、火蓋が切られた。

 

 

「ふっ」

 リューネは短く息を吐き、小刻みに刻むフットワークで相手の攻撃をかわし続けていた。

 身の丈約2.5アージュ――昨日戦ったスケイリーダイナに比べると小柄だが、それでも自分の倍近くある巨体である。

 振るわれる腕が今の自分を捉えれば大怪我は免れない。だが、その巨体ゆえに動きは俊敏と呼ぶには程遠く、今のところ掠りもしない。

 厄介なのは、

 ――連携をとってくること、です。

 魔獣の中には群れで行動するものも珍しくない話である。ただ、そういった行動をとる種というのは、概ね2つのパターンに分類される。

 1つは個々の能力が低く、群れることが必須の種。

 1つはカリスマある統率者によって群れを形成する種。

 そして目の前の魔獣は――後者。

 群れなくても十分な力を持っているであろうゴーディオッサーは、それを纏め上げるボス的存在であるグルノージャによって統制が摂られている。

 故に複数で獲物を狩る場合、彼らは巧みな連携でターゲットを追い詰める。

 けど、

「それだけだと、私は捕まえられませんよ」

 呟き、リューネは規則的に刻んでいたリズムをあえて乱した。

 すると、リューネの動きに慣れつつあったであろうゴーディオッサー達が彼女を見失い、戸惑いに包まれる。

「これで決めます」

 その隙を突き、1体の懐に潜り込んだリューネは、その胸部へと手を添える。

 取り込む呼吸は丹田へ。溢れ出そうとする力を一点に集約し、対象となる存在――その内側へと衝撃を叩き込む。

「神薙流体術基本形・奥義、剛掌破!」

 体内で練り上げた破壊のエネルギーを手の平を介して、魔獣の体内へと送り込む。

 魔獣はその体を跳ね上がらせると、痙攣と共に泡を吹いて、地に伏した。

「次!」

 仲間が倒されたことで尻込みするもう1体へと向き直り、リューネは己の気を高めていく。

 

 

「流石は霊長類型、と言ったところか」

 こちらを捉えようとする拳を見切り、レイルは危なげなくそれを回避しながら、冷静に相手の分析をしていた。

 巧みな連携から繰り出される攻撃は、優秀な統治者の存在が生み出した賜物なのだろう。群れとして統率が取れていることに感心する一方、レイルはある疑問を抱いていた。

 確かにグルノージャは気性が激しい魔獣に分類されている。だが、

 ――ここまで荒れ狂うか?

 縄張りを荒らされたり、仲間に危害を加えられれば、当然のように怒り狂うだろうが、それにしても今のグルノージャの様子は常軌を逸していた。

 横目で観察するその姿は、狂気とも呼べるものに捉われているように感じた。

 ――まさか……

 嫌な予感が脳裏を過ぎり、レイルは舌打ちする。

 もし予想が当たっていれば、グズグズしている暇はなかった。

「悪いがお前達の相手をしている余裕はないみたいだ」

 バックステップで距離を取り、2体を射程圏内へと納める。

 太刀を上段に構え、その刀身へと力を注ぐ。

 力は変質し、渦巻く炎へと姿を変える。

 螺旋を描く炎が刀身を包み込み、鍔元を基点、刀身を軸として広がっていく。

 その形は東国に伝わる扇を連想させるもの。

 その形状を保ち、規模を膨れ上げさせ、魔獣諸共地面へと叩き付ける。

「神薙流剣術火の型・奥義、業火扇!」

 地を焼き、魔獣達を包み込む紅蓮の扇――だが、程無くして炎は霧散して消え去った。

「流石にここを燃やすわけにはいかないからな」

 焼け焦げた地面と倒れ伏し辛うじて息をしている魔獣達を一瞥した後、レイルはリィン達に加勢すべく動き出そうとした。

 だが、

「…………」

 茂みの奥から現れたゴーディオッサー達にレイルは先程の予感が確信に変わるのを感じた。

 血眼でレイルを睨み付けるゴーディオッサーの群れ。

 先程のゴーディオッサーとは違い、今リィン達が対峙しているグルノージャと同様に狂気に満ちたその姿を捉え、レイルは呟く。

 

 

「この群れ……操られてるな」

 

 

 to be continued……




 こんにちは、檜山アキラです。
 今回は連休を利用して、短い期間で2話お送りさせていただきました。

 さて本編ですが、なんともまあ中途半端な所で切ってしまいましたが、ここいらで切らないと、次の話が短くなりすぎちゃいそうなんで、ね。
 とか言いながら、めちゃくちゃ長くなったりしてね、ハッハッハッ!
 とにもかくにもケルディック編も佳境となって参りました。
 次回では遂にクレアさんにも登場頂きます!
 クレアさんはⅡで滅茶苦茶好きになったキャラなので、早く登場させたくて仕方ありませんでした。
 その念願がようやく叶うのですね……



◆鉄血宰相の次回予告コーナー◆

 狂気に支配された魔獣の群れ。
 迎え撃つは有角の獅子の元に集った若者達。
 迫る脅威を打ち払い、事件の真相を暴くことが出来るのか……
 次回、神薙の軌跡『踏み出す一歩』!
 戦いの最中、リィンは何かを掴む……



 さぁ、早く次の話を書きに行こう!

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