神薙の軌跡   作:檜山アキラ

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序章 トールズ士官学院
プロローグ~別れ、そして……~


 ≪幻影城≫の最奥部。

 それぞれの死闘の末、≪影の国≫を支配していた≪聖痕≫は完全に消滅するに至った。

 そして、≪聖痕≫が消えたことにより、主を失った≪影の国≫は再び不安定な状態へと戻りつつあった。

彼らがいる≪幻影城≫もじき、その実体を保てず消滅することとなる。

 急いでアルセイユまで戻ろうとする一同を引き止め、セレストが≪天上門≫の開門を始める。

 それは、七耀教会の聖典に記された≪煉獄門≫と対になる現世と天界を結ぶ門。

宙に浮かぶ天上門が開かれ、そこに至る光の階段が架けられる。それを通れば、各自、取り込まれた時にいた場所の近くに戻れるはずだと告げられるが、突然突き付けられた別れの時に誰もが二の足を踏んでいた。

「それじゃあ……」

「……まずは我々から行かせてもらうとしようか」

 しかしそんな中、先陣を切ったのはジンとリシャールだった。

このままでは名残惜しくて誰も先に行けなさそうであり、ならば年長者である我々が口火を切らせてもらう。

 そう言う彼らにも惜別の念はあれど、表情に悲しみの色は見えなかった。

 リシャールはかつて罪を犯した自分を受け入れてくれたことに感謝し、ジンは皆に再び会えた喜びを伝え、皆が口々に二人へと言葉を返していく。

 挨拶も程々といった所、ジンにまで大佐呼ばわりされ苦笑するリシャールだが、皆にならそう呼ばれるのも悪くないと溢し、天上門を駆け抜けていく。

 それに続くのはオリビエとミュラーだった。

 オリビエは相変わらずの軽口だったが、ミュラーの呼び掛けに己の心情を吐露する。

 こんな機会が再びあるとは思ってもいなかった。ガラにもなく少し胸に迫っている、と。

 しかし神妙な表情を浮かべたかと思うと、次の瞬間にはシェラザードと意味深な会話を交わしていた。

 その様子に周りが驚いていると、ふとオリビエがある人物へと視線を送る。

「……前に話した件だが」

「どうするかは、もう決まっているさ」

 そう言って、オリビエと視線を交わした青年――レイルは気負う様子もなく、当然とでも言うように答えた。

 そして彼は、傍らにいる最愛の人へと目配せする。それに対して彼女――エミナも笑みを浮かべ力強く頷く。

「僕から振っておいてなんだけど……本当に良いのかい?」

 オリビエが、レイルとエミナに、そして彼らの側に寄り添う2人の少女達に語り掛ける。

「……前から気になってたし、別にいいよ」

 1人は相変わらず眠たげな表情を浮かべているが、その目元が潤んでいるのが決して眠気から来るものではないとオリビエは知っていた。

「私も、世の中のこともっと知りたいです」

 もう1人は寂しげな表情ではあるが、これからの日々に期待を抱き、力強く答えてくれる。

 彼女達のこれからを考えると、自身の計画に巻き込むべきではないのでは、とオリビエは躊躇ってしまう。

 だが、そんなオリビエの心配を他所に、レイルは力強く答える。

「大丈夫だ。それに、教会の情報通りアレの一つがあるかもしれないってんなら、俺達としては渡りに船ってことだしな」

「……そうか。なら、これ以上とやかく訊くのは野暮ってものだね」

 詳しい内容を濁した会話に興味を抱く者もいたが、残された時間が限られていたので詮索されることはなく、別れの挨拶が続いていく。

 そして、次々に仲間達は元いた世界に戻っていく。

 彼らを見送り、残りのメンバーが少なくなった段階で、レイル達4人が前に出る。

「さてと、それじゃあ俺達も行くか」

 残りのメンバーに別れと再会の約束を告げる。

 そして、振り返ることなく光の階段を駆け上がる。

「あっちに戻ったら皆にちゃんと説明しないとな」

 予期していなかった仲間達との再会は、

「それとリューネの紹介も忘れちゃ駄目だからね」

 不可能だと思われた絆を結び、

「そだね。それと、クロスベル市の案内がまだ途中」

 明日へと続く道を照らし出す。

「あ、改めてよろしくお願いします。レイルさん、エミナさん、フィーちゃん」

 約束と希望を胸に、レイルは最愛の人と家族として迎え入れた少女達と共に、天上門を駆け抜けていく。

 

 

 そして時は流れ、七耀暦1204年3月31日――

 

 




初めまして、檜山アキラと申します。

初投稿ですので、読みにくい部分が多々あるかと思いますがよろしくお願いいたします。

本作品はあらすじにもありますように『英雄伝説 閃の軌跡』をベースにオリジナルキャラ・展開・設定を織り交ぜていく予定です。

『閃の軌跡Ⅱ』への期待が膨らむ中、皆様の一興となるような作品を綴っていきたい所存です。

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