緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金と弟 前編

「かなめ……何してんだ!」

 

――ドクン――っとキンジの中で何かが跳ねた。

 

「………」

 

キンジはかなめを睨み付けつつかなめの足元に転がるアリアたちを見る。

アリアも白雪も理子もレキも怪我はありそうだが見た感じ命に別状はなさそうだ。

すると、

 

「くく、これで揃ったな……【Gの血族】が」

「っ!」

 

キンジは声の方を見ると前にも見た派手な服のGⅢ……そしてその隣には、

 

「カナ……」

 

何故かそこにはカナが座っていた……

 

「なんであんたまで……」

「私は極東戦役の戦いの一つを見に来ただけよ」

 

今のカナの雰囲気は前に見たときよりも強く……そして大きい。

 

「さて……」

 

GⅢはニヤリと笑うとキンジを見る。

 

(不味い……)

 

キンジは本能的に危機感を覚える。この男は危険だと警鐘が脳裏で鳴っていた。

 

「おいキンジ……フォースに何を吹き込んだ。俺が何度言ってもこいつはアリアたちを殺そうともしねえしHSSにも成りたくないときてる」

「………」

 

キンジはじっとりと汗を掻く。言葉一つ一つが重い……

 

(今までの相手とは違うみたいだな……)

 

「まあいい。フォース……アリアたちを殺してキンジも殺せ……」

「かなめ……」

 

かなめはキンジに剣を向ける。

 

「ごめんお兄ちゃん……私は強い人間には逆らわない……非合理だから……」

 

剣が振り上げられる。

 

「かなめ……(お兄ちゃん)は言った筈だ……喧嘩は正々堂々と拳でやるもんだとな……」

「これは戦争だから……喧嘩じゃない!」

 

そう叫ぶがかなめの手が震えている……

 

「フォース!!!なにやってんだ!殺せ!」

「かなめ!!!お前は俺の妹だろ!!!やめるんだ!」

「っ!」

 

かなめ――GⅣは精神が揺さぶられていく。

 

「う、うぅ……」

「かなめ!戻ってこい!」

「殺せ!フォース!!!」

 

キンジとGⅢの声が重なる……だがかなめの耳に届いたのは……心に響いたのは……

 

「……な」

「なに?」

「私をフォースと呼ぶなぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

次の瞬間かなめのスーツが発光し爆発音と共にすさまじい推進力を得てGⅢに突進して振り上げていた剣を振り下ろした……が、

 

「やはり壊れたか……フォース」

「……あ」

 

かなめは自分のやったことが分からなかった……だがGⅢは人差し指と中指で相手の剣を捉える真剣白羽取り……キンジで言う【二指真剣白羽取り(エッジキャッチングピーク)】でかなめの剣を止めると、

 

「あばよ……フォース」

 

次の瞬間GⅢの体を深紅のオーラが包むとかなめの顎に蹴り上げが決まる……そして空中に打ち上げるとGⅢも跳んだ……

 

「あの技は!」

 

キンジは驚愕する……それもその筈、次の瞬間GⅢが放ったのは……

 

「スカイタイフーン……」

 

かなめを蹴る……だがその凄まじい速さで放たれる蹴りの台風に両者は落下することなくかなめは蹴られるだけになる。

 

「しゃあ!」

 

そのまま蹴りとばすとかなめは吹っ飛ぶ。

 

「かなめ!」

 

それは飛び起きたアリアがキャッチした。

 

「お前ら起きていたのか」

「半々ってところだよ……キー君来たから少し様子をうかがってた」

 

理子も立ち上がると白雪とレキも起き上がった。

 

「それにしても今の技は……」

 

レキはGⅢを見る。

間違いなくキンジのエアストライク……それと同種の蹴り技だ。

 

「ご……ほ……」

「かなめ!」

 

キンジは駆け寄る……

 

「大丈夫か……!」

 

 

 

 

――ド……クン――

 

 

 

 

「あはは……私……逆らっちゃった……」

 

 

 

 

 

――ド…クン――

 

 

 

 

「かなめ……」

 

 

 

 

――ドクン――

 

 

 

 

「非合理だ……」

 

 

 

 

――ドクン!――

 

 

 

 

「だけど……人間らしいじゃねえか……」

 

 

 

 

――ドクン!!!――

 

 

 

 

キンジは自分の中で今までにない変化が起きているのを感じとる。

いや、元々片鱗はあったが今ので完全に抑えが効かなくなった感じだ。

 

「取り合えずお前らは大したことがなくてよかった……だから」

 

かなめを見ておいてくれ……

 

キンジはそう言って立ち上がる。

 

「おにいちゃんダメ……GⅢは超能力者じゃないけど超人なの……例えおにいちゃんが……」

 

HSSで勝てない……とかなめは言おうとした。

だが、

 

「かなめ……俺はな……」

 

キンジは言葉を遮る。

 

「仲間やられて……パートナーやられて……極めつけに妹までやられて……それでもなぁ」

 

キンジはネクタイを緩めボタンを二、三個外す……

 

「それでも冷静に相手との戦力比考えられるほど人間できていないんだよ!!!!!!」

 

 

 

 

――ドクン!!!!!!――

 

 

 

 

キンジは完全に成っているのを感じる……ヒステリアモードに……だがいつものとは違う。

ベルゼに似ているが明らかに違う。今回のは強い。

 

「くく……遂に成ったかレガルメンテに……」

「何?」

 

キンジは眉を寄せる。

 

「来いよ……それの講義はこっちでやってやる」

 

GⅢがくいっと顎をしゃくる……するとその場に、

 

「お止めくださいサード様!本日は凶日でございます!」

 

その場に狐耳の少女叫ぶながら現れた。

GⅢが前使った突然消える服を使っているらしい。

そんなことを思っている間に次々とGⅢの仲間と思われる奴等が現れる。

 

筋骨粒々とした白人……

 

顔に包帯を巻いた恐らく黒人……?

 

左右の目で色が違う少女……

 

「サード様の手を煩わせるまでもない!」

「私がやるわ!」

「私が!」

 

それを見たキンジはまた偉く個性的な仲間たちだと苦笑いした……まあ人のこと言えないかと思いつつキンジは……

 

『え?』

 

GⅢとカナ以外唖然とした……何故ならキンジはいつのまにかGⅢの仲間達の直ぐ近くまで来ている……あまりの自然な足取りで……あまりに不自然な警戒心のなさで……

そして一言言った……

 

「邪魔だ」

 

ザッ!と素早い足取りでGⅢの仲間達は道を譲ってしまった……やった当人達も自分が何を今したのか分かっていない……

 

「悪いな……道を譲ってもらって」

 

キンジは敵の人間の間を通ってGⅢを目指す。

その途中、

 

「そこの背の高い黒人さん……口のニードルガンを向けるのは止めて貰えるか?気になってな」

『っ!』

 

軽く睨まれただけ……だがその行動は相手の動きを止めた……

まるで自分のリーダーのGⅢだった……恐怖とか怖れとかそういうのとは違う……この人には従わなくてはならないと思ってしまう……そんな感じだ。

しかも口に仕込んでいるニードルガンを一瞥しただけで見抜くと言うのはただの観察眼ではない。

 

「それが万象の眼か……」

「知ってるのか?」

「ああ……俺もバイザーによる補助が必要だが使えるぜ?」

 

そう言って海の上を歩き出す……

 

「科学迷彩か……」

 

周りの色にあわせて色を変えることで姿を見えなくする戦闘機らしい……だがキンジの眼にはしっかりと見えていた。

 

「次世代ステルス戦闘機・ガリオンって名前だ……来いよ」

「…………」

 

キンジはカナを一瞥する。

何故カナがここにいたのかも狙いもわかっている。

視線が交わるとカナが言う。

 

「――シラ書42章19説――主は過去と未来を告げ知らせ、隠されたものの形跡を明るみに出される……お互い後悔がないようにしっかりやって来なさい」

 

それからキンジもあるき出す。

 

「キンジ……」

 

アリアが呟きキンジは振り替える。

 

「ん?なんだアリア……」

「……必ず生きて帰ってきて……」

「……こんなところじゃ死なねえよ……」

 

キンジは優しく言うとガリオンに乗り込んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ると普通に広い機内だった。

まあ意外なのは妙に芸術品が多いことくらいだろう。

 

「静かだな」

 

掛かる重力で高度が上がっているのはわかる。

 

「てめぇは相変わらず直ぐに驚くんだな」

 

それにしても……とGⅢは呟く。

 

「重量オーバーだな」

「は?」

「重量オーバーだ」

「それは聞こえていた。いきなりなんだ」

 

キンジの問を無視してGⅢは辺りに転がっていたアタッシュケースを取るとそのまま外に頬り投げた。

 

「?」

 

ついでに金塊も投げ捨て……

 

「これでいい……」

 

それを見てキンジは成程と手を叩く。

 

「優しいんだな」

「は?」

さっきの仕返しにか同じ反応で返された。

 

「お前は絶対勝てると思っていない……」

「………」

 

黙って続きを促してきた。

 

「だからリーダーの自分がいなくなっても生きていけるように金を渡した。更にかなめもそうだ……お前は元々も気づいていたんだろ?女の子ヒステリア……いや、HSSが弱くなるのに……だからお前は自分に攻撃をさせるために敢えてあんな状況を作り出した……嫌われ役になるのを承知の上でな。しかも医師免許持ちのカナもいる。万全だ」

「……八十点……だな」

 

GⅢは芸術品を見ながら言う。

 

「それだけじゃねえよ。俺はもう長くねえのさ」

「なに?」

「俺やかなめみたいな人工天才(ジニオン)は生まれたときから定期的に何かしらの成分を接種しないと死ぬように活動制限(ライフリミット)を設定されてんのさ。かなめもよくキャラメル食っていただろ?」

 

あれはそういう意味があったのかとキンジは納得した。

そしてロスアラモスのやり口には腹が立った。

 

「俺のは分かってなくてなぁ……まあ別にいいだろう」

「っ!」

 

キンジは突然GⅢ存在がでかくなった気がした。

 

「俺はHSSになるための性的興奮に女は使えないんだ。だがその代わりこう言う絵とか音楽とかでなることができる。便利だろ?」

「そうだな」

 

だがキンジはそんな中でも平常心だった。

 

「まずはお前の力の正体だな。そいつの名前はヒステリア・レガルメンテ……【王者のヒステリア】って呼ばれて複数の女を傷つけられたさいに発現する最強のHSSさ……だけど謎が多くてな。通常のヒステリアモードの1.2倍にしかならないんだとよ」

 

それはおかしいとキンジは頭を振る。自分の体に満ちている力はそんな量ではない。それにそれではベルゼの方が強いではないか。

 

「さて…取り合えず翼に出ようぜ……そこで決着だ」

「そうか」

 

二人はハッチから翼に出る。すでに高度は地上が殆ど見えない高さだ。

 

「これで有名人だぜキンジ」

「監視でもされてるの?」

「ああ、アメリカの衛生でな」

「そうかよ」

 

おおかたGⅢ戦闘能力でも探りたいんだろう。ワトソンの情報でもあまり引っ掛からなかったみたいだからな。

とは言え自分も纏めてと悪趣味にもほどがある。

 

「ファック・ユー」

 

なので星空に向かってそう呟きながら中指を立ててやる。

 

「くはは……」

 

するとGⅢが笑う。

 

「お前変人だな」

「てめぇには言われたくねえよ」

 

余計なお世話だと言いながらGⅢは拳銃を抜く……銃はH&K USPモデル……良銃だなと思いつつキンジもデザートイーグルを抜く。

 

「取り合えず開幕の合図に景気良くと行きてえが……お前の八発しかないだろ?俺のは十五発入ってる」

「何とかするさ……」

「そうか……よ!」

 

戦闘開始の合図とばかりにGⅢフルオートで十五発の弾丸を放つ。

 

連鎖撃ち(キャノン)!!!」

 

それをビリヤードで言うキャノンショットみたいに弾いた弾丸を連鎖させて全て凌ぎきった。

 

「おいおい」

 

GⅢ呆れた声を漏らす。

 

「とんでもない技を何でもない顔で出すなよ」

「悪いが俺は貧乏だからな。弾丸代も節約させてもらうぞ」

 

続いて胸からベレッタを抜くと発砲、

 

「ちぃ!」

 

だがそれを片手で逸らした……って、

 

螺旋(トルネード)……」

 

自分と同じ技……いや、GⅢの方が腕の力を使う分負担は大きいが簡略化されて速い。

 

「お互い銃は効かねえな……」

「みたいだな」

 

キンジとGⅢ銃を仕舞うとナイフを抜く。

 

『しゃあ!』

 

二人のナイフがぶつかると火花が散る。

 

『ウォオオオオオ!!!!!!!!!』

 

そこから蹴り……キンジとGⅢはほぼ同時にローキックを決めると軽くバランスを崩す。

 

「シャ!」

 

だがGⅢは建て直しが早く直ぐにキンジに向けてナイフを突き刺そうとする。

 

「しゅ!」

 

それをキンジはナイフで弾きながら……

 

「カウンターキック!!!!!!」

 

キンジ版虎落としである蹴り……自分の攻撃が当たると油断した相手決める蹴り……だが、

 

「リフレクトシュート!!!!!!」

 

全く同じ蹴りがGⅢからも放たれ二人とも後方に転がる。

 

『ぐっ!』

 

素早く体勢を戻すと二人は間合いを詰める。

 

『ウラァ!』

 

同時に放たれた膝蹴りが脇腹に決まって横によろけた。

 

『ふん!』

 

二人のナイフの横凪ぎ……それもぶつかって終わる。

 

「ちっ!真似っこやろうが!」

「てめえこそ!」

 

攻撃の仕方が似すぎている……更に先程から万象の眼で見切っているがそれでも決定打が放てない。

 

「なに者なんだお前は!」

「俺を倒して聞いてみろよ!」

 

GⅢの体から深紅のオーラ……

 

「くっ!」

 

キンジも応戦するように深紅のオーラ(レッドヒート)が発動する。

 

「エアストライク!!!!!!」

「スカイタイフーン!!!」

 

同時に飛び上がると互いの空中殺法がぶつかる。

何十と蹴りが交差していく。だが不思議だった……キンジはともかくGⅢの醸し出す雰囲気は殺伐としたものではない気がしてしまう。なんと言うか……ずっとこの時を待っていたような……

 

『くぅ!』

 

だが二人とも落下した。

立ち上がると間合いを図る……

 

(やっとわかったぞ……)

 

ヒステリア・レガルメンテの力の正体……レガルメンテは累乗するのだ……アリア、白雪、理子、かなめ、レキとこいつらを群れの仲間として認識していたキンジの力は1.2の五乗プラス通常のヒステリアモード30倍……で75倍。

 

(丁度良いな)

 

まさか仲間の数だけ累乗させるとは……そして待てよとキンジは頭を捻る。

 

(これ遠回しにレキでもヒステリアモードに成ってると言うことじゃないか?)

 

それを考えたら背筋が凍った。

一毅には秘密にしておこう固く誓う。

 

「へ、中々やるじゃねえか……」

「お前は大したことないな」

 

キンジは敢えてそういった。

 

「お前も分かっているだろ?今の俺はお前より強い……」

「…………」

「もう止めろ。短い命をここで散らすな」

「……へへ……甘いなぁお前……」

 

GⅢは言う。

 

「さて……銃とナイフで互角……なら」

 

ガンっ!と翼をGⅢは強く踏むとガシャッと何かが出てきた。

 

「ならこいつでいくぜ!!!」

「スティンガーミサイル!?」

 

キンジが驚愕するがそんな間も殆どなく発射される。

迷っている暇はない。レガルメンテの知能が導き出した五分五分の賭けを実行する。

 

まず渾身の一撃でスティンガーミサイルを逸らす。だがただ逸らしても駄目だ。

これは誘導弾だから……なので敢えて翼を貫通させることで難を凌ごうとする。

 

誘導弾逸らし(スラッシュⅡ)!!!!!!」

 

ここまでは順調……だが、

 

「っ!」

 

爆発……衝撃波が来るが転がって逃げる。だが一発でガリオンが明らかに高度を落とし始めた。

 

「お前は手加減がないのか?」

「まさか誘導を逸らされっとは思ってなかったんでな」

 

GⅢは捨てると……

 

「銃とナイフもダメで誘導弾ダメ……となると最後はこれしかないな」

 

そう言ってGⅢは紙みたいなものを出して口の中に張り付ける。

 

「なんだそれは……」

「ながったるい名前があるんだが様はHSS強化剤さ……成分聞いたらさわるのも嫌になるぜ?命に関わるから投薬中止になった代物さ」

 

更にGⅢの存在が強くなった。

そして腰を落とすと拳を引く……明らかに突進系の技だろう……

ならついでに見せてやろうとキンジも腰を落とし重心を体の中心に置くと両手をつき出す。

 

 

 

 

――遠山家 秘技【絶牢(ぜつろう)】――

 

 

 

 

そう呼ばれる秘中の技だ。使用後は使った相手を殺せといわれるくらい秘密にされているがまぁ……仕方ないだろう。

 

(殺さずで行かせてもらうぜご先祖様よ)

 

それにこいつなら見せても大丈夫な気がするのだ……何故かは知らんがな。

 

「行くぜ……流星(メテオ)!!!!!!」

「っ!」

 

しまったとキンジは驚愕する。

今GⅢが放ったのはキンジで言う桜花(おうか)……絶牢だけでは無理だ……腕を千切られる……ならば!

 

「おぉ!」

 

キンジの眼が燃え上がるように熱くなる。

 

そしてキンジはまずGⅢ版桜花に対して逆ベクトルに桜花を放つ。

名付けて逆ベクトルに桜花を放つことで行う減速防御……【橘花(きっか)】……

更にそこからその際の力を体の中で次々に下の方に送り自損しない程度に速度を抑えた桜花と共に蹴りあげる【絶牢】を放つ。

 

「ガァアアアアアア!!!!!!」

 

自分の流星を逆に喰らってGⅢは吹っ飛んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

危なかった……あと一歩遅かったら倒れていたのは自分だ。

 

「がは……くそ……」

 

だがGⅢは立ち上がろうとする。

 

「無茶するな……もうお前は……」

「寝言言うんじゃねえよ……俺はまだ……――っ!」

「っ!」

 

キンジとGⅢは同時に同じ方向を見る……その次の瞬間爆発音と閃光……

 

『くぁ……』

 

二人はそのまま吹っ飛んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ!』

 

その光は地上からでも見えていた……

 

「キンジ……!」

 

アリアが悲痛にも似た叫びを漏らす……すると、

 

「ぶはぁ!」

『っ!』

 

アリアたちの驚愕を他所にキンジは海から浮かぶとよじ登ってきた。

 

「よう……」

「キンジ!」

「キー君!」

「キンちゃん!」

「おにい……ちゃん」

 

キンジは飲み込んだ水を吐きながら皆に手だけ振る。

 

あの爆発の際にキンジはガリオンの上から放り出されたが高度が低くなっていたのとギリギリでベルトのワイヤーをガリオンに引っ掻けることで海へのそのまま落下を防いだ……

 

「サード様は……?」

 

GⅢの方がその代わり騒がしい……そりゃ自分のリーダーが居なければ心配にも……

 

『っ!』

 

ザバン!とそこにGⅢも出てきて水を吐く。

 

「GⅢ……」

 

水に着水した際に体が冷えてヒステリアモードは収まってしまった……だがGⅢも体はボロボロ……立ち位置が悪かったのだろう。キンジと違い爆発を受けたらしい。そのため戦いの途中から気づいていたが右手の義手が剥き出しだ。なのに……それでもGⅢは言う。

 

「お前らさわるな……」

 

GⅢは前に出る。

 

「来いよキンジ……第二ラウンドだ……」

「………」

 

それをキンジはどこか悲しげに見つめていた。


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