緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の運動会

武偵校には【ラ・リッサ】と言う行事がある。

わからない方も多いだろうがまあ別に呼び方に馴染みがないだけで所謂体育祭である。

どこの学校にでも存在しきっと運動嫌いな方は前夜のうちに逆テルテル坊主を作って雨乞いの儀式に勤しんでいるだろう。

だが武偵校の体育祭である……今まで幾つかのイベントが開催されてきたがどれもが普通じゃないものばかりであった。よもや誰もが想像するキャッキャウフフの体育祭であるわけ……

 

「これから玉入れを行いまーす!」

 

あるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、少年少女が汗を流しながら動き回るのは青春ですな」

「まったくです」

 

そう言ってテントの下で(顔だけは)美人な蘭豹と綴の教師二人に囲まれてご機嫌な県会議員のお二人を尻目に白組と紅組に別れて玉入れを行う。

とは言えこの二人は午後に行われる行事を知らないからそう言えるのだろう。

 

 

武偵高校は基本的に教育委員会とか県会議員様達から嫌われぎみである。理由は言わずもがな若い男女が拳銃やポン刀ぶん回させているからで元々は喧嘩祭りだった体育祭を非難されあわや武偵校を廃校にまで追い込まれそうになりこのままでは不味いと焦った先生達が表向きは安全な体育祭を開催することで体裁を保つことにしたのだ。

まあ午後は喧嘩祭りの方になるのでそれまでに県会議員の方にはお帰りいただき間違っても午後の事を口にしないでいないといけない。

 

「ふぬー!入らないのだ~!」

 

とまあ午前の部など遊び程度に済ます中数少ないちゃんと取り組んでいる組の平賀を遠目に見つつ一毅は玉を投げ入れる。

 

それにしても普段は姿を見せない三年はやはり実力を隠し慣れている。一年の頃に恨み買っているのでキンジ共々三年の視界には入らないようにしているが三年ともなると適当に見えて他の人間の強さを無意識に見聞する癖がついてる。

武偵高校にいる間ならいいが一般に出たあと自分の技を知られていると言うのは致命的である為だろうが隠す方も大変だ。

 

そんなことを思っていると玉入れが終わった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キンジは玉入れも終わりもう午前中は出番がないため(一毅はリレーに出る)適当に見て回る。

するとアリアがインラインスケートでのフィギュアをやっていた。クルっと回ってウィンクまで決めて器用なことだ。

 

「いっで!」

 

すると足をグリッと踏まれてキンジが飛び上がった。

 

「なに鼻の下伸ばしてんのお兄ちゃん」

「か、かなめ?伸ばしてねえだろ」

「伸ばしてるよ」

 

ジトーっとかなめに見られキンジは声が上ずる。逆に怪しい……

 

「あんたたち何してんのよ」

 

するとアリアがやって来た。

 

「私はスコアラーだからね」

「俺はもう出番がないから適当にブラブラしてる」

「あんた自分の妹が仕事してるのになにか思うところはないわけ?」

「適材適所と言う言葉がある」

「ものは言いようね」

 

アリアに呆れられた。

 

「じゃあこれから私は屋上でスコアラーしに……」

『お、屋上!?』

 

キンジとアリアが飛び上がった。序でにボフンと顔が真っ赤になった……

 

「……………」

 

それを見たかなめは凄まじく不機嫌になる。

 

「あ、いや……」

「こ、ここ……」

 

キンジはしどろもどろ……アリアがなんか石になってる。

 

「あ、キンジ先輩」

 

するとそこに辰正がやって来た。

 

「さっき凄かったですね。俺スコアラーだったので屋上にいたんですけど屋上からも見えましたよキンジ先輩のジャンプ力……いや~屋上からも分かるその高さったらどんだけの高さまで飛んだんだって話ですよね~あ、かなめちゃん次の屋上でのスコアラーがん……あれ?」

 

いつのまにかキンジは居なくなっていた……

その代わり不機嫌全開のかなめと顔を真っ赤にしていつの間にかガバメントを抜くアリア……

 

「あ、あの……どうかしました?」

 

辰正は全く二人を怒らせるような心当たりはない。

 

「こ、ここの……エロォオオオオオオ!!!」

「お兄ちゃんの浮気者ぉおおおおおおお!!!」

 

キンジに対する罵倒なのだがその怒りは全て辰正に向かい……

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

辰正は二人にしこたまボコボコに(八つ当たり)された。

 

(お、俺なんかしたっけ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアからの逃走後キンジは用具倉庫に隠れ潜んでいた……辰正には悪いと思ってはいたし辰正の断末魔?が聞こえたときにはつい念仏を唱えてしまったがまあ今の自分ではなだめ透かしてあの場を取り持つなど保健のテストで百点を取るのと殆んど変わらぬ難易度のため諦めて辰正(生け贄)を捧げてきた。

 

「仕方ねぇし時間を潰して……」

「遠山?」

 

ギクゥ!っとキンジは飛び上がった……一瞬だがかなめかアリアに見つかったかと思ったがいや違うかと首を振る。二人は遠山と呼ばない。この妙なハスキーボイスは(彼女)だ。

 

「ワトソン?」

「やっぱりそうか」

 

男子用ジャージに身を包み(キンジたち関係者は知ってるが他にはまだ男子で通しているのだ)ワトソンが倉庫に入ってきた。

 

「さっき谷田が保健室に運ばれてきてね。恐らく遠山がアリアを怒らせてそれに巻き込まれたんんだと思ったんだが……」

「いや、俺は怒らせてない……まあ辰正が悪いわけでもないんだけどな……」

 

悪いのは運だろう……

 

「まあアオタンとか位なものだしそんな大袈裟なものじゃないんだけどね。あきれた頑丈さだよ」

「…………」

 

流石ミニ()()リア()の幼馴染みと言う感じだろうか……余り他人事に聞こえない。

 

「そうそう、少し話したいんだけどいいかな?」

「大丈夫だが?」

 

キンジが了承するとワトソンはキンジの隣に座ってきた……フワッと汗を掻いた性かワトソンから何時もより割り増しシナモンの良い香りがした……

 

(こ、こんな場所でヒスんじゃねえぞ俺ぇ……)

 

こんな人が滅多に来る筈もない倉庫と言う密室空間でヒステリアモードに成ろうものなら危険すぎる。

 

「さて話と言うのはGサードの……って少し顔色悪いけど大丈夫かい?」

「大丈夫だ……問題ない」

 

ワトソンは首をかしげるが話を続ける。

 

「取り合えずGフォース……いや、遠山 かなめをこちらに引き込むことに成功した。流石希代の女誑しだね」

「失敬だな……見捨てられなくなっただけだ」

「そこが女誑しの由縁なんだけどね」

 

なんか含むところでもあるのか聞きたくなったが黙っておこう。

 

「サードの方は吉岡 清寡達が担当している。上手くいけばいいが……」

「ま、なるようになるだろうよ」

「ずいぶん達観してるね」

「経験上取り合えず行動結果は後々ついてくると言うのを身をもって学ばされてるんでね」

「君も大変だね」

「アリアのパートナーやってると気苦労が耐えなくてね」

 

キンジは肩を竦めた。他にも色々苦労するのはあるがここで逐次公開していくと改めて不幸な人間関係に泣けてくるので辞めておこう。

 

「確か遠山は午後は水泳騎馬だっけ?」

「ああ。まあ出るのは女子だけだから俺と一毅は見てるだけだ」

「成程。女子のキャットファイトを只見して楽しもうと言う算段だね」

「そんな趣味はねえよ」

 

武藤だったら喜びそうだが残念ながら武藤は午後はもう一つの華やかさなど欠片もない方に行くので泣いていた。

と言うか本当は一毅と自分だってもう一つの華やかさなど欠片もない方に出るはずだったのに……事情があって女子の方に行かなきゃならない。

 

「そういえば高度経済成長期の日本ではキャットファイトが流行っていたらしいけどそうなのかい?」

「俺に聞くな。俺の親父の時代の話じゃねえか」

「他にもテレクラと言うのとか」

「それが今もあるだろ」

「あとディスコ」

「聞いたことくらいしかないぞ」

 

ワトソンはどうやってそんなに時代がズレた知識を手に入れたのだろうか……

 

「日本語勉強に山田 洋次監督の【家族】を見たんだ」

「渋っ!」

 

キンジは盛大にずっこけた……




そろそろ戦闘シーンやりたいなぁ……

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