緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達と自称妹

突然の襲撃から次の日……

 

キンジは一毅と一緒にカフェに入る。

 

「あ、こっちです」

 

入って奥を見るとメーヤがいた。

他にも玉藻とワトソンと吉岡 清寡と言った男と……

 

「初めてだな。俺は祇園(ぎおん) 廣二(こうじ)だ。吉岡道場の高弟で今回の戦いにも代表の一人として参戦させてもらう」

「そう言うわけだ」

 

キンジと一毅は紹介に応じながら座る。これで取り合えず師団(ディーン)の主な面々が揃ったと言うことだ。

 

「さて、アリアたちはどうなのじゃ?」

「取り合えず病院だ……殆ど蹴っ飛ばされただけだし怪我と言う怪我は大したことないけど一応検査だけでもって僕が勧めたんだ。それに一応ある程度の拘束がないと彼女たちはすぐにでも仕返しに向かいかねないからね」

 

ワトソンの言葉にキンジと一毅は頷く。確かに間違いない。

 

「で?これからどうすんだよ」

「それよりフォースさん?でしたよね?彼女はどこに?」

「キンジの部屋です」

 

メーヤに一毅が返事するとキンジと一毅の二人以外椅子から落ちた。

 

「む、昔から遠山侍は手が早かったがまさかそこまでとは……」

「違う!」

 

キンジが叫ぶ。

 

「あいつが勝手に俺の部屋に住み着いたんだ!」

 

そう。昨夜の襲撃後フォースを何処に連れていくか悩んだ……普通は尋問科(ダキュラ)辺りに突き出すが今は戦役とかの微妙な時期……そうなってくると別の手の方がいい気がする。

すると、

 

《迷うことないよ。お兄ちゃんの部屋に住むんだから》

 

そう言われ二人が唖然としたのは言うまでもない。

 

無論キンジは断った。だが他につれていく場所はないし(一毅の部屋は隣なので一毅に預けてもあまり意味がない)何より理由は分からないがキンジにフォースは懐いてる。暴れる危険も考えればキンジの隣が一番だ。

 

「で?正体はわかったのか?」

 

キンジが話を変える。

 

「昨日の今日で流石にそんな多くはわからなかったよ。でも少しはわかった」

「充分凄いですよワトソンさん」

 

メーヤは拍手した。

 

「彼女は……と言うか彼女の上役になる人物が有名だったからね。だから彼女自身よりは彼女の身の回りだけだよ?」

「それでも充分じゃろう。言ってみよ」

「彼女はロスアラモスと言うアメリカの研究機関で作られた所謂試験管ベビーだ」

「?」

 

一毅にはよくわからなかった。

 

「人道的にとかで余りいい顔はされないけど人間は精子と卵子を機械で人工的に受精させ機械に入れておくと子供になるんだ。一種のクローン技術に近いのかな?」

「へぇ……」

 

一毅が頷く。

 

「そして彼女が所属する組織の名前はジーサードリーグ……アメリカで有名なRランク武偵・GⅢがトップのアメリカでも高い評価を得るチームだ。因みにGⅢは開幕の宣言の時にも居たよ。一人で勝手に帰っていったっけどね」

 

ああ、彼奴か……と一毅とキンジは考えるが……

 

「R?」

 

二人にとってそんなランクがあったことの方が驚きだ。

 

「余り一般的じゃないからね。Rランクというのはroyalの頭文字からだ……王室の警備等を任させられる超超一流の武偵のことだ。単独で警護できるような人間が選ばれるからね。世界でも七人しかいない」

「そんなすくねぇのかよ……」

「因みにその強さは専攻した科関係なくRランクと付けられる時点で最低でも一人で一個大隊に匹敵すると言われる」

『っ!』

 

キンジと一毅は驚愕する。つまり一人で国ひとつ潰せると言うことだ……

 

「ふむ……となると戦うより引き入れる方が得策じゃな」

 

玉藻が言う。

 

「遠山侍。彼女を引き入れてサードと言うやつもこちらに引き入れるぞ」

「どうやるんだよ」

「お主の事を気に入っとるんじゃろ?接吻でも夜伽でも何でもして落とせ」

 

今度はキンジと一毅が椅子から落ちる番だった。

 

「お主らが落ちてどうする。落とす方じゃぞ」

『いや別に上手いことやった訳じゃない……』

 

二人の口調が被る。

 

「あと、絶対却下だ」

「なぜじゃ?使えるものは何でも使って人事を尽くすものじゃ」

「限度ってもんがあるだろ!仮にも自称妹にキスしたりしろってか!?」

「遠山さん。ひとつ抜けてます」

「意味が昔の言葉だから抜かしたんです!」

 

キンジがメーヤに突っ込み返す。

 

「む?夜伽と言うのは……」

「吉岡さん。俺には必要のない知識なのは何となく分かるんで」

 

そんなやり取りを見て廣二は笑っている。殴ったろかい!

 

「なぜそんなにいやがる。儂が童の頃は血の濃さ守るため妹と子を成すことなど当たり前じゃったぞ」

 

今も小さいけどな……と周りは内心思ったが静かにしておく。

 

「いったい何百年前の話だ!」

「最後が今から……って何を言わせる気じゃ!女子に年の話をさせるんじゃない!」

 

玉藻とキンジがポカポカ喧嘩し出す。

 

「大体お前にはと言うか遠山侍自体信心が足らなすぎじゃ!そこに座れ!」

「お前こそ少しは威厳に満ちた姿してみやがれ!」

 

端から見たら幼女と喧嘩する高校生……ただ単にヤバイやつじゃないか。

 

「じゃあ俺が交渉しましょうか?」

『え?』

 

キンジと玉藻も喧嘩を中止して皆は廣二を見た。

 

「俺は独自の情報網がありましてね。交渉位ならやりますよ」

「そうか……ならば頼もう。じゃが遠山……あの娘を繋ぎ止めておけよ?それくらいなら出来るじゃろ?」

「まあそれくらいなら……」

「ならば解散じゃ。あと、アリア達が仕返しを企てたら止めるんじゃぞ」

『え?』

 

一毅とキンジが固まるが他の面々はさっさと解散していく……

 

((あれを止めろと?))

 

一毅とキンジは嫌な汗を流した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、武偵付属病院に重い足取りで見舞品を手に一毅とキンジはやって来た……

 

「しかしお前に妹ねぇ……そして妹はお兄ちゃんの彼女になりたいか……鬼畜やろうだなお前」

「お前にだけは言われたくねえよ」

「実の妹に手を出そうと思わねぇよ」

「俺も思わねえよ」

 

等と漫才みたいなことをやりつつアリアたちの病室(同じ部屋に収容?されている)のドアを目指して階段に差し掛かると……

 

『は?』

 

ズリズリとお盆が動いている……一瞬何事かと思ったが既にこんな怪奇現象に慣れっこの二人だ……

 

「何をやっているんだ?ヒルダ」

「………」

 

お盆の動きが止まった……

 

「あ、あら遠山、桐生。奇遇ね」

 

影から(比喩とか柱のとかではなく本当に影から)ひょっこり登場したナース姿のヒルダは白々しく声を出す。

 

「ちょうどいいわ。理子に黒ヤモリの姿焼きあげてちょうだい」

「自分で渡せよ」

「嫌よ」

『……………』

 

前回の戦い以降魂が抜けた状態だったヒルダだが最近は理子にたいして考えを改めたのか多少なりとも歩みよりを見せている。

 

「と言うわけで頼んだわよ」

 

そう言ってまたヒルダは影に戻って消えた……

 

「まあそれくらい運んでやるか」

「そうだな」

 

二人はお菓子にヤモリの姿焼きと言うカオスな荷物で階段を上がってアリア達が入院している部屋をノックして開ける。

 

『は?』

 

本日二度目のは?である。

 

中には何故か妖精の格好をしたアリアとか普段より強調された胸のミイラ女白雪とか何かナースの格好をしている理子とか獣耳獣尻尾のレキとか猫の格好をしたあかりとか吸血鬼の格好をした辰正とかカボチャ人間に変装した志乃とか忍者の格好をした陽菜とかあちこちにコウモリの意匠施したライカに姉であるレキと同じ獣耳獣尻尾のロキ(だがレキより体の凹凸が出る服装をしている)である。

 

『な、何してんだ?』

「あんたたちこそ何で普通の格好してんのよ」

 

そう言ってアリアはカレンダーを指差し……

 

『ああ!』

 

今日は10月31日……武偵高校の意味分からんルールで何故かこの日は仮装していなきゃいけないのだ。

その事をすっかり忘れていたキンジと一毅は勿論普通の制服だ。(ワトソン仮装してなかったが多分転校してきたばかりなので知らなかったのだろう。この行事はあくまで周知の事実として行われ通告を行われないからだ)

 

やらかしたと一毅とキンジは頭を抱えた。この状況を蘭豹とか先生たちに見つかれば確実にお仕置きである。

 

「ある意味制服も仮装ですと言う言い訳は通じるか?」

「難しいと思うぞ?」

 

先生に見つからないように今日は生活するしかないようだ。

だが忍者の格好の陽菜はあれは仮装じゃない気がする……本職の服装って意味ないだろう……

 

「取り合えず見舞い持ってきたがいるか?」

『いる!』

 

一毅は皆にお菓子を配る。

 

「で?皆も見舞いか?」

「ええ、そしたらですね……」

 

一毅の問いにライカが曖昧に言う。

 

「ん?」

 

一毅が周りを見る……よく見るとこのファンシーな空間に似合わないものがゴロゴロ置いてあった。

 

「おい白雪……なんだそれは」

「何って私の持ち銃の【M60】だよ?」

 

機関銃は違反であるがその前に……

 

「その取り付けてある筒みたいなのは……」

「あ、平賀さんに頼んで着けて貰ったグレネードランチャーだよ。他にも中折れにしてスカートのなかに収納できるようにしたの」

「…………じゃあ理子……そのショットガンの弾丸は……」

「これ?ヒルダの時は散弾だったけど今度はスラッグ弾だよ」

 

スラッグ弾とはショットガンを使って撃つでかい弾丸……通常のと違い弾が散らばらないが威力は桁違いに高い。

 

「……………じゃあレキ……そのライフル……」

「見ての通りバレットM82です」

 

バレット社が開発した軍用対物狙撃ライフル……大方平賀からの購入だろう。だがその前に、

 

「それ人に向かって撃てないんだぞ?武偵が使う銃じゃねえぞ……」

「その辺は何とかします」

 

何とかならないから国際法で人に向けるの禁止されてるはずだ。

となるとアリアのも推して知るべ……かと思いきや、

 

「何よ」

 

アリアのベットには小さな箱と小太刀が一振り……

 

「昨日斬られちゃったからね。買ったのよ」

「お前ら昨日襲われて既に装備の準備が出来てるってどうやったんだよ……」

「前々から皆装備自体は集めていたわ。これからもっと派手になっていくからね。小太刀は予想外だったけど」

「そ、そうか……」

 

一毅は頭を抑えながら一年生たちを見る。

 

『…………』

 

コクリと皆は頷く。恐らく見舞いに来たらこの殺る気満々の二年生たちに囲まれたのだろう……そりゃ怖かっただろうな……

 

「で?その箱はなんだ?」

 

キンジが見る。

 

「あんたには着てなかったの?」

「何がだよ」

 

アリアが箱のふたを開けると中にはカラフルな弾頭の銃弾が……って!

 

(D)(A)(L)!?」

 

キンジはあんぐりと口を開ける。

 

「そうよ。バチカンが送ってきたの」

 

メーヤは知らなかったのだろうか……しかし一発数百万の弾丸を箱詰めにして送ってくるとはバチカンも金がある……

 

「あんたにも来るはずよ。転売したらダメだからね」

「しねえよ」

 

少しそういう考えも浮かんだことは否定しないが……

 

「さて、たしかキンジの部屋にいるのよね?」

 

二年の女子全員がジャキンと銃を構える。

一年達がドン引きしてるぞ……

 

「待て待て。さっき師団(ディーン)として決まったんだが仕返しは無しだ」

『え?なんで?』

 

アリアたちはキンジを見る。

 

「フォースを……と言うかその後ろにいるGⅢって奴も引き入れるんだと。だから喧嘩厳禁だ。と言うかお前らの装備見てればこの空き島の形を変える気か?」

「でも武偵はやられた分はやり返すものよ!」

「もうちょっと平和的に仕返ししろと言っているんだ!」

 

まあ平和的な仕返し等キンジも分からないのだが……

 

「そう言うことだね……」

 

理子がヌフフと笑いながらキンジを見る。こう言うときの理子の狙いは想像つく……

 

「キー君自称妹ちゃんの色香やられたんだね?」

「は?」

「可愛かったもんね~」

「お前話聞いてたか?俺だけじゃねぇ、師団(ディーン)として決まったって……」

 

そこに扉が開く……

 

『ああ!』

「あ、やっぱりここにお兄ちゃんがいた」

 

フォースが普通に入ってきた。

 

『っ!』

 

一年生達が間合いを詰めると武器を突きつけた。

無論ベットから二年生たちも銃を構える。

戦闘体制じゃないのは一毅とキンジだけだ。それにしてもフォースの姿は見せてないはずだが一年生たちもアリアたちから聞いていたのだろう。入ってきた瞬間から武器を抜いて行けるようになっていたとは今の動きも滑らかで無駄がないし最近あいつらの成長が著しい。(こちらの知らないところでもヤバイ事件を解決してるのは知っているが……)だが、

 

「待ってよ。私武器持ってきてないよ?それに戦いに来た訳じゃないし」

「じゃあ何しに来たの?」

 

あかりが聞く……基本的にアリア大好きっ子のあかりだ。一見いつも通りに見えてもアリアに怪我をさせた下手人の登場と来れば冷静ではいられないだろう。

他の皆だって自分の戦姉だったり昨日今日の付き合いではなくかなり深い部分で付き合ってる。そういった関係の人間を傷つけた人間だ。

下手なことを言えば確実に潰しに掛かるだろう。言っている通り丸腰だったらキンジと良く似た蹴り技しか武器はない。

 

「お兄ちゃんを探しに来たんだよ」

 

そう言ってフォースはキンジに近づく。余りに殺気とかそういった害意を感じなかったためあかり達はすり抜けられているのに気づくのが遅れたしキンジも間合いの侵入を許した……

 

「探したよ……お兄ちゃん」

『っ!!!!!!』

 

全員が眼と口を限界まで引ん剥く……それもその筈……何故ならいきなりフォースは……

 

「ん……ちゅう……」

「……………………」

 

キンジに熱いキスをかましたからである……


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