ヒルダを確保してから3日……
「本当に申し訳ございませんでした……」
ワトソンはキンジの部屋でバスカービル一年達の目の前で土下座だ。
「ええとね、まず整理するわよ……」
ワトソン家は今ではリバティーメイソンという組織でも上位の階級を得ていたが貴族社会のイギリスにおいては吹けば飛ぶような小さな家だったらしい。しかも家事態も没落の一途辿っていたらしい。
そこで持ち上がったのが昔からの付き合いであるホームズ家との結婚……ホームズ家はイギリスでは高い地位を占める家であるらしく謂わば一族総動員で玉の輿を狙っていたということだ。だが生まれたのはワトソン(女)一人……なので男として育てられたらしいのだが……
「何かベルサイユの薔みたいですね」
ライカが苦笑いする。
「でも居るんですねぇ
辰正が言うと理子が笑いながら言う。
「そりゃ自分が
「まあそんなことはどうでも良いのでござるよ」
陽菜がズイッとワトソンの前に出る。
「今日までの師匠への所業……どんな処罰与えようか……」
「良いわね……別に遠山 キンジはどうでも良いけど最近作って試したい毒があるのよね」
キンジへの嫌がらせにキレる陽菜と別にキンジはどうでも良いが人体実験したい夾竹桃を目の前にワトソンは震える……
「ダメだよ二人とも……」
それをあかりが止めた。
「そうですよ。武偵法9条に引っ掛かるかもしれないしね?」
志乃は言うが突っ込むところはそこじゃない。
「まあ今回は実害を被ったアリアさんとキンジさんが煮るなり焼くなりすれば良いでしょう」
レキの言葉にワトソンも頷く。
「どんな目に会う覚悟もできている……殴るなり蹴るなり撃つなり好きにしてくれ……」
「私はね……家の問題とか同情できない面もあるしねぇ……キンジに任せるわ」
「俺も別にな……」
キンジは頭を掻くが、
「だ、だが遠山!僕は君にナイフも向けたし銃も向けたし毒も嗅がせたんだぞ」
どれも捌かれたが……
「別に良いよ。俺の部屋には普段から人の部屋で日本刀振り回す黒髪の巫女とかガバメントを俺に向けるピンクの武偵とか悪戯で地雷を仕掛ける金髪の怪盗とかが常駐してるんだぞ?」
今居ない白雪以外のアリアと理子が遠い目をしながらキンジから視線をそらした。
「だ、だがそれでは……せめてイーブンになるまで……」
「俺はお前の顔を蹴った……しかも踏んづけもした……女の顔を傷つけたんだから寧ろ俺の方がなにか払わないといけないだろ」
「しかし……君を殺そうとしたんだぞ?」
「何時もの事だ。悲しいことにな」
それにしても……とキンジはヒルダの雷に当たってから気分が良さそうな一毅を見る。
「お前ワトソンが女だって聞いても対して驚いてなかったし知っていたのか?」
「最初から気づいてたぜ?」
『ええ!?』
キンジとワトソン以外の面々が驚く。
「だが謎だったのだが何故君にだけはバレたんだ?」
「あー……実は理由はないんだけどさ……何となく持ってる雰囲気?そんなやつが男じゃなかったと言うかそんな感じでさ」
用は勘……と一毅は言う。
「お前なんでもありだな……ヒルダの雷に当たってもピンピンしてるし……」
「いやぁ肩凝りが治った」
「嘘だろぅ……」
ワトソンは唖然とする。キンジと言いこの男と言い喧嘩を売ったことを今さらながら後悔した。
「そう言えばレキの妹はどうした?」
「それが分かんないんだよなぁ……そのうちひょっこり顔を出すだろ。レキの妹だし」
「どういう意味です?」
『そういう意味でしょう?』
レキの呟きは全員に突っ込まれた。
「じゃあヒルダはどうだ?」
「あ、ああ」
ワトソンは顔をあげる。
「一応武偵病院に一度入院したけど脱け殻みたいだ。相当理子に見逃されて命を結果的に救われたわけだからね。完全に呆けているよ」
「そうか……」
理子は少し複雑そうだ。これからヒルダはどうするか分からない。取り合えず気が変わって殺す気にならないように願う。
「で?ワトソンをこれからどうするんだ?逆さ釣りにして学校に吊るすか?それとも簀巻きにして太平洋に流すか?それとも市中引き回し?」
一毅が冗談混じりに言う。
「しねぇよ。でもそうだな……ぞんなに罪悪感を感じるならうちのチームの衛生武偵をやってくれないか?もちとんタダで」
『え?』
今度はキンジ以外全員がポカンとした。
衛生武偵とはチームが外部から雇う衛生兵みたいなものである。ワトソンは元々前の武偵高校でそう言ったものも履修してるらしいし家事態が医者の家系だ。
ぴったりと言えばぴったりだ。
「今度はその薬学の知識を……毒じゃなくて薬の知識を俺たちに貸してくれ」
「っ!」
ワトソンはまたキュン!という顔になった。
(またか……)
(またですか……)
(まただな……)
(またなのね……)
(またなの……)
(また……)
(まただ……)
(またですね……)
上から順に一毅、レキ、ライカ、アリア、理子、あかり、辰正、志乃はまた一人被害者が増えたかとため息をつくと共にすっかりキンジのタラシに慣れが出始めたことを気付いていなかった……
次回で文化祭をやって終了です。