緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の戦い 閉幕

『皆!?』

 

キンジ達は新幹線から降りると驚愕した。そこには顔見知りや自分の戦妹(アミカ)が倒れていたのだ。

 

「大丈夫か!?風魔!!!!!!」

 

キンジが風魔に駆け寄る。

 

「し、師匠……申し訳ございませぬ……敵に……やられたでござる……」

「っ!……そいつらは何処だ」

 

キンジはぶちギレそうになるのを無理矢理抑え付け風魔を見る。

 

「分かりませぬ……ただ……そいつらは三国志の英雄の子孫だと……」

「ちっ……」

 

間違いない……藍幇はここにも網を張っていたのだ。恐らく倒された自分達の回収係として……だが予想外にココ達がやられたのでとっとと撤収したと言うところだろう……

 

「おい!衛生科(メディカ)救護科(アンビュラス)は治療を頼む!」

 

新幹線にいた衛生科(メディカ)救護科(アンビュラス)がキンジの怒声にも似た大声に慌てて治療にかかる。

 

「全く……とりあえずあの子達が無事でよかったわね」

「まあな」

 

アリアの言葉にキンジは頷く。

 

「でも周岑やココはアタシ達が捕まえたしそいつらについても多分分かるでしょ?一毅も夏侯僉捕まえたってさっき連絡来たし」

「そう……だな」

 

だがキンジは今のアリアの言葉に違和感を覚えた……何かを忘れてる気がする……そう、忘れてはならない大切な何かを……とても大切なピースを填め忘れている気がする……

 

「でも中々の腕だったよ、ココは」

 

白雪が言うと理子も頷く。

 

「そうそう。こっちのココの拳法とかこっちのココの剣術とかね」

「っ!」

 

パチン……とキンジの頭で何かが填まった音がした。

 

「そうだ……何でこいつらは今更分担してたんだ?」

『え?』

「足りないんだよ……もしココが多生児で使う武を分担してたとしたらじゃあどっちが旅館で俺たちを……」

「そこまでヨ……キンチ」

『っ!』

 

全員が振り替える……そこには狙撃銃と何かのスイッチを構えたココが居た……

 

「ギリギリで推理できたカ……でも少し遅かたネ……次一歩でも動いたら頭撃ち抜くヨ」

「成程……三つ子だったってことか」

『キヒキヒキヒ』

 

後ろに縛って転がしておいたココも含めて三人のココは笑った。

 

「さ、まずは捕まえたココの仲間達を解放するね。あ、その前に全員武器を捨てるヨ」

『……』

 

キンジ達は銃や刀剣類を捨てると転がす。

 

「キンチ、理子……嘘は良くないネ。胸に仕舞ってる銃も捨てるヨ」

「ちっ」

「ちぇ」

 

キンジはデザートイーグルを、理子はデリンジャーも捨てる。

 

「キヒキヒキヒ。これで形勢逆転ね。分かってると思うがこのスイッチは駅に仕掛けておいた爆弾の起爆装置よ……下手にココに危害を加えるとドカンネ……」

『……』

 

全員両手をあげた状態でココを見る。

 

「さて、キンチ、アリアはココを連れてこの新幹線に乗って一緒に来てもらうヨ」

 

ココは笑う……だが、

 

「……っ!」

 

するとヒステリアモードの耳と目がキンジに二つの情報を与える。ココは気づいていない……

 

「そう言うわけには行かないな」

 

キンジが全員を庇うように前に出る。

 

「キンジ?」

 

アリアが目を丸くしてるのが分かる。白雪と理子も似たようなもので他の武偵達もキンジの暴挙に息を飲む。

 

「俺はチーム・バスカービルのリーダーだ……リーダーとして残念だがその要求は飲めないね」

「これは交渉じゃない……命令ネ」

「なら尚更飲めないね……俺に命令できるのは俺の主人(アリア)だけだ……」

 

するとココは銃口をキンジの額に向ける。

 

「お前に今はココの銃撃を凌ぐ手は無いネ。強がりは辞めるヨ」

「君こそ人を舐めない方がいい。その傲慢は何れ自分の身を滅ぼすよ」

 

キンジは首を軽く回す。

 

「撃てるものなら撃てば良い……どうせ俺には当たらないからね」

「お前はただの人間ヨ……どうする気カ?」

「どうするも何も無いよ……俺のできることをするだけさ」

 

そう言ってキンジは全身の力を抜く。

 

「もういいネ。キンチはもう要らないヨ」

「そうかい」

 

キンジの目が痛み出す……パチパチと視界が明暗し……世界の時の流れがゆっくりとなる。

 

(久し振り。万象の眼……)

 

「言葉を返すネ……傲慢で死ぬのはお前ヨキンチ」

 

ココの狙撃銃が発砲……ゆっくりとした世界のなかで銃弾が迫る。

銃弾噛み(バイツ)は駄目だ。意識を失ったらせっかくのチャンスで足を引っ張る……ならばどうするか……簡単だ。さっきココは手がないと言ったが違う。手はある……そう、()()()()()()

 

(ココ、俺は隻腕でも何でもない。ちゃんと両手があるんだ!!!!!!)

 

遅く流れる世界の中でキンジはジャンケンのチョキのような手になると#の形に交差……そして銃弾を挟むと……

 

『え?』

「キャア!」

 

次の瞬間キンジの頬だけが切れ同時にあかりが治療を受けていた隣のゴミ箱が粉砕した。

周りの皆も何が起きたのか分からなかったが段々理解していく……と言うかそうとしか考えられない。

 

「片手真剣白羽取りを応用した銃弾を/のように逸らして避ける技……名付けて【銃弾逸らし(スラッシュ)】って言ったところかな。欠点は突き指しちゃうところだね」

『嘘でしょォオオオオオオオオオオ!!!!!!』

 

アリアも理子も白雪もあかりも辰正も志乃も風魔も他にもその場に居た武偵全員があんぐりと口を開けながら全力で突っ込んだ。

ココもポカーンとしている。

 

「理論事態は単純だよ」

「理論が単純でも人間やっちゃダメな技だよキー君!」

「……はっ!キンチ!お前に銃がダメならこの起爆装置爆発させ【パキュン!】え?」

 

ココの手にあった起爆装置が弾けた……

 

「やっと来たか……二人揃って遅れて登場するな」

 

キンジは肩をすくめるとヘリが来た……ヘリの名前はブラックホーク……それに乗るのは我らが狙撃主のレキだ。

レキは頭の包帯を取るとピースする。キンジはヘリが近づいて来ているのに気づいていた。そしてライトを使ってモールス信号で伝えてきていたのだ。

 

そして新幹線に別の人間が着地する。シルバーコートの背中の王龍を揺らして登場したのは一毅だ。

 

「よう、キンジ」

「遅いよ」

 

一毅が笑う。

 

「でぇ……何でココが三人もいるんだ?」

「三つ子でね。あと、今狙撃銃を持っているのがレキを狙撃したココだよ」

「ほぅ」

 

次の瞬間その場の温度が低くなったような気がした。

 

「そうかそうか……お前かぁ」

 

一毅の目がキラーンと光った気がした。

 

「ひっ!」

 

一毅がニタァっと笑いココがビビる。

 

「お前かぁ……」

 

ゆっくりと一毅が来る。

 

「ピィ!」

 

ココが狙撃銃をぶっぱなす。

 

「甘い!」

 

一毅が殺神(さつがみ)で弾く。

 

「コォオオオオオオコォオオオオオオ!!!!!!!!!!!!オォオオオマァアアアアエェエエエエカァアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 

次の瞬間爆走……

 

「ピギィイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」

 

ココは恐怖のあまり泣き出しながら逃げ出した。

考えてもみてあげてほしい……一毅は本職のヤクザも怖がりそうな顔をしている。その男が本気でぶちギレた状態で日本刀片手に百メートルを11秒で駆け抜ける豪脚で迫ってくるのだ……

 

(タマ)取ったらァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 

しかも背中には牙を生やし火を吹きながら手が六本あり恐ろしい形相の大魔人がいるように見える……

幾ら実力があるとはいえ14才のココが見るには下手なホラーも真っ青である。

 

(ひぇええええええ……)

 

それを見ていたキンジを筆頭とした武偵達はあまりの怖さにドン引きしつつも追われるココに十字を切り……

 

(あ、あそこに居たのが自分じゃなくてよかったネ……)

(全くネ……)

 

追われるのが自分達ではなかった事に他のココ達は心底安堵する。

 

「マァアアアアテェエエエエエエ!!!!!!!!!!!!」

「ひ!ぃい!」

 

ココはこのままではあっという間に追い付かれるため後ろに銃を発砲……

 

「ふ!」

 

だが簡単に弾かれた。恐怖心に支配された人間の銃線は読みやすい……

 

「二天一流……秘剣!!!!!!」

 

一毅は刀の刃を寝かせながらココとの距離を詰める。

 

「ピギャアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 

ココは恐怖で半狂乱になりながら銃を再度撃つ……だが、

 

「銃弾避けの極みぃいいいい!!!!!!!!!!!」

 

銃弾を刃で切り裂きながら勢いを落とすことなく疾走……そして、

 

「ぴっ!」

 

ココは腰を抜かすとその次の瞬間銃身が真っ二つに斬れた……

 

「さて……どうしてくれようか……」

 

一毅はココを見据える……漫画であればゴゴゴゴゴ……と効果音が付きそうである。

 

「あわわわわ……」

 

ココはガチガチ歯を鳴らす。すると、

 

「一毅さん」

 

レキがやって来た。

 

「流石に14才の女の子に向ける顔じゃないです。ただでさえおっかないんですからもっと笑顔で話しかけてあげないと」

 

そこじゃねえだろ!と見ていた全員が突っ込んだ。

 

「それもそうだな」

 

一毅はにっこり笑う。

 

「ゴメンねココちゃん怖かった?」

 

口調は優しいが背中にはまだ大魔人がいる……逆に恐ろしかった。

 

「それで良いですね一毅さん。さて、幾ら怒っても良いですがもっと平和的に且つもっと静かで更に血を見ない方法で制裁お願いします。そうじゃないとキンジさんたちがドン引きします」

 

もうしてます……と言いそうになったが全員ゴックン飲み込んだ。と言うか平気なのはライカと付き合いが長いキンジくらいである。

 

「そうだなぁ……よし!」

 

一毅は刀を鞘に戻すとココを荷物を持つように肩で抱えあげた。

 

「な、何するネ……」

 

ココは一毅を肩で担がれたまま見る。

 

「教えてやるよ。お前らがバカにしてる日本の古来より用いられるオイタをした子供へのお仕置き……」

 

そう言って一毅は片腕で抱え込むように持ち直すと腕を振り上げる。

 

「俺のはなぁ……アサガオでも痛いってんで子供たちから恐れられていたんぞっと!!!!!!」

 

一毅は平手をココのお尻に叩きつける。

 

「ピギャ!」

 

バチーン!っと綺麗な音が周りに響く。余りに綺麗に響いたため他の皆もおぉ~っと歓声を漏らしてしまった。

 

「どんなことしたかわかってんのか!?ええ!?」

 

バチーン!バチーン!っと音が響く。

 

「いだ!はぐ!」

「死人が出たかもしれないんだぞ!?分かってるのか!?」

 

バチーン!バチーン!と手首にスナップを効かせ鞭のように叩く。こうすると音も大きく出るが同時にすごく痛くなるのだ。後、叩くときは尻タブの部分を叩いた方が痛しいし痔にせずに済む。

 

「ご!ごめん!なさい!」

「ええ!?聞こえないぞ!」

 

バチーン!っとまた大きく響く。

 

「御免なさぁああああああああああああああああい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

ココの外聞もなく泣きじゃくった謝罪の声が辺りに響いていった……




次回終わるはずが思ったより長くてもう一話……理由はわかっています。最後に一毅で遊びすぎました。
ちなみにココはその後尻叩き30回で勘弁してもらい連行されていきました。爆弾は平賀さんが全部解除してくれたでしょう。

さてさて、次回でこの章終わりますがその時こそはライカの一件を書きます。本当は今回書くはずだったんですよ……おふざけはダメですね。ちゃんと想定通りに書かないと……

ではまた次回会えることを願っています。

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