緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の修学旅行 後編

『ゼィ……ゼィ……お前らぁ~』

 

一毅とキンジは怨めしい顔で女性陣達を睨む。

 

『一体幾ら買い込む気だ!』

「まだまだ買うわよ」

「まだまだ買えますね」

「まだまだ買えるもんね~」

既に一毅とキンジの両手には服が詰め込まれた袋がある……荷物持ちがいる間にここぞとばかりに買い込むつもりなのは分かりきっていた。

 

「取り合えずお茶にしないか?奢るから」

「そうだな。奢るから一度休憩にしようぜ?」

 

一毅とキンジは必死に畳み掛けながら言う。幾ら普段鍛えてるからとは言え長時間興味ない買い物に付き合わされ引っ張り回され荷物を持たされれば精神的に疲労する……だが一毅は何故かアリアの声で頼まれるとNOと言えない……レキなら惚れた弱味だと分かるが何故アリア?等と考えていると、

 

「じゃあ彼処のカフェに行こうか」

 

理子が指差すとその先には【シャトンカフェ】と言う店があった。とは言えその隣には【シャトンb】と言う服屋もある…… まだ買う気だ……まあ良い。時間潰しがあるのはありがたい。そう自分に言い聞かせつつ一毅とキンジの二人は入っていった……

 

 

 

 

 

さて、一毅とキンジはコーヒを飲む。無論女性陣は当たり前のように服を見に行った。

何でもこれぞと言う服を見せに来てくれるらしいがそんなのは良いのでもう買うのをやめてもらいたい。

 

「パトラッシュ……もう疲れたよ……」

「そうだなネロ……」

 

一毅とキンジの二人はふざけながら待つこと一時間……長げえよ……

 

「おっ待たせ~」

 

最初に現れたのは理子……理子は何故かウェディングドレス……こう言うのって店にあるものだっけ?

 

「どうよ!」

 

アリアが着てきたのはひどく大人っぽいこれまたドレス……何と言うかキャバ嬢が着ていそうだ。いや、これを理子が着たのなら似合うだろうし白雪が着たら武藤なんぞ踊り出すだろう。だがアリアが着たら……滑稽だった。と言うか幼児体型のアリアでは似合わないことこの上ない。

 

「どうですか?」

 

最後にレキ……なのだが、

 

『は?』

 

一毅とキンジはポカーンと口を開けた。レキの服装は所謂、園児服……何でこんな服があるんだこの店……何でもありの店だ。

 

『取り合えず……』

 

一毅とキンジは自分に服を選ぶセンスがあるとは欠片も思っていないが……それでも言わせてもらう。

 

『もっと普通の服にしたら?』

 

一毅とキンジはそれしか言えなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄?の買い物も遂に終わりキンジ達は宿に来た。

 

「予約していた遠山です」

 

一応言うまでもないとは思われるが男女で部屋は別である。

 

「は~い。どうも」

 

穏やかそうな顔の女将さん(沙織さんと言うらしい)に案内されつつそれぞれ部屋に入る。

 

「やーっと終わったぜ~」

 

一毅は肩を回す。

 

「早速だけど風呂に行くか?」

「いいなぁ~行こう行こう」

 

二人は洗面具を取ると風呂に向かって歩き出した……

 

 

 

 

 

『極楽極楽……』

 

今日一日引きずり回され引っ張り回され挙げ句に荷物持ちにされて疲れ果てた二人の筋肉を温泉が癒す。

 

「しっかし今日のシャトンbの一件は改めて思い出すと笑いそうになるな」

「まあな」

 

一毅の笑いが一緒になった言葉にキンジも同意した。

 

「それにしてもちゃんとお土産買えたのか?」

「風魔にはシャトンbで序でに服を買った。あと八つ橋でも一緒に渡せば問題ないだろ」

「何だかんだ言いつつ弟子の面倒みてるんだねぇ」

「何が言いたい」

「別に?」

 

キンジは気づいていないが風魔はキンジにホの字である。好意を持った相手からのプレゼント(しかも服)なら余程の物を渡さなければ嫌な顔をする女は居ないだろう。

因みに風魔がキンジに惚れているのは既に周知の事実であり知らないのはキンジのみである。因みに風魔は自分の気持ちが周りにバレてないと思っている。あんなスキスキ光線を目から出してて気付かないのはキンジくらいのものだ。

 

「キンジは鈍感(バカ)だからな」

「急に何だ?喧嘩売ってるんだな?」

 

キンジが湯船の中で蹴ってきた。

 

「そういえば覚えてるか?昔星伽の神社で白雪とその妹たちと一緒に風呂入ったの」

「ああ~確か石鹸で滑って転んで大変なことになったな」

「今やったらもっと大変だけどな」

「勘弁してくれ」

 

冗談なのは分かっているためキンジも笑う。

 

「そうやって考えるとお前との付き合いも長いよなぁ」

「考えてみれば中学から考えるとお前とは一緒に居ない時の方が短いんじゃないか?」

「そんなんだからオホモダチ何て言われるんだな」

「お前彼女いるのにな」

 

そう言ってキンジは顎に手を添える。

 

「そういやお前とレキももう一年半か?」

「ああ」

「ココだけの話どうなんだ?一年半一緒に居たらやっぱり相手の考えが何となく分かったりするのか?」

「女心以外なら結構な。でもほら、最初は苦労したぜ?同棲ってのはまさに異文化交流って感じで目玉焼きにソースか醤油か~みたいな感じのはあったし」

「お前は醤油派だったな。レキは?」

「塩と胡椒派だった」

「……」

 

予想斜め上を行っていた。

 

「でも俺は少し安心してる」

「ん?」

「お前とレキの付き合いが出来ててな。一年前のレキが撃たれたときもしレキが死んでたらお前が壊れたんじゃないかって今でも思うよ」

「その時は殴ってでも道を戻してくれよ親友」

「勘弁してくれよ。お前と殴り合いとか一度だって勘弁だよ親友」

 

そんな軽口を叩きながら肩まで沈む。

 

「でもなんだかんだ言いつつお前ら仲良くやってるもんな。しかもライカも一緒なのにお前の人徳だな」

「お前だってアリア居て白雪居て更に理子が居て未だに住人増えそうな部屋だろ?ある意味人徳じゃね?」

「いや、これ以上増えても困るから増えないでほしいし増えないと思うが?」

「フラグフラグ♪」

 

一毅はニヤニヤ笑った。

 

「まあお前はアリア一筋だし他は無理か」

「まあ……は?」

 

キンジはネクラな目を更に曇らせた。

 

「お前今なんつった?」

「べっつにー?」

 

一毅はケラケラ笑う。

 

「てんめぇ!」

 

キンジは風呂から手を伸ばし一毅の首を締めにかかる。

 

「だから何時も言ってるだろ!俺とアリアはそんな関係じゃねえって」

「(今は)そんな関係じゃ無くたって感情は別問題だろ?」

「んなわけあるかあんな幼児体型!」

「んのわりにアリアだとヒステリアモードの掛かりが良い癖に~」

「偶々だ!」

 

所狭しと二人は暴れまわる。

 

「待ちやがれ!」

「お~にさんこちら~手~の鳴~る方へ~」

 

だがそこに、

 

「誰かいるの?」

「あれ?誰かいる?」

「?」

『え?』

 

一毅とキンジの時が止まりほぼ同時にたった今乱入してきたアリア、理子、レキの時も止まった……一応幸運にも逃げ回る際に一毅とキンジは腰にタオルを巻いていた。だがそんなものは関係ない。

 

「な、ななな……」

 

アリアは顔を真っ赤にしていく。

 

「お~鍛えられた男二人の裸体ってのも中々ですなぁ」

 

理子はケータイを出して写真を撮る。おいこら……

 

「……」

 

レキは無表情……三者三様の反応を女性陣は示す中男性陣は……

 

「あ……えと……」

「何で?」

 

だが改めて思い出せば男性女性を分ける暖簾がなかったような……

 

(ここは混浴だったのかぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!)

 

全員の心の叫びがハモる中アリアは何処からともなく銃を抜く。

 

「上等よあんたたち……覗きしに来たのね!」

「ちげぇしこんな堂々とした覗きがいるか!」

 

キンジが否定するが……

 

「んも~キー君ったらちゃんと言えば裸エプロンだろうがワイシャツのみだろうが裸だろうが見せたのに~」

「一毅さん……」

 

理子の騒動を加速しかさせない一言とレキの冷たい視線が来た。

 

「こ、このエロキンジ!」

 

遂に銃が向けられる。だが今は制服を着ていない……しかしこの半年間でキンジはいろんな意味で強くなったのだ。

 

「一毅!」

「おう!」

 

二人は空を指差す。

 

『あ!桃饅UFOとカロリーメイトUFOとストロベリーパフェUFOが空を飛んでる!』

『え?』

 

三人は見事に引っ掛かり指差した方をみた……そこに、

 

「お邪魔しました~」

 

一毅は隙間を縫うようにその場を脱出……だがそれに気づいた三人はキンジだけでも捕まえようと道を塞ごうとしたが……

 

潜林(せんりん)!」

 

女性陣三人のタオル一枚姿(主にアリア)のお陰で甘くだがヒステリアモードになっていたキンジが遠山家の秘技、潜林(せんりん)でアリアの両足の間を駆け抜けた。

因みにこの技は馬や人間の足の間を低い姿勢で駆け抜けつつアキレス腱を切っていく技だが無論駆け抜けるだけにして……

 

「またあとで!」

 

一毅に続いて入り口を出たあとそのまま服を取って二人は逃げ出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く……とんでもない目に遭ったな」

 

浴衣を着ながら部屋でキンジはボヤく。

 

「甘くとは言えヒスってる奴が言っても説得力がないぞ」

「しかしアリアに気づかれてなくてよかった……」

 

完全にヒステリアモードに成っていたら確実にアリア達をあの手この手で落ち着かせて宥めて一毅にぶん殴られて連れて行かれて目が覚めたらアリアにボコボコにされていただろう。

 

「しっかしお前視線がアリアに固定されてたな」

「はぁ!?」

 

キンジが白雪のお株を奪うような動きで座ったまま飛び上がった。

 

「おぉ~キンジも座ったままジャンプ(それ)出来るんだ」

「いやそれほどでも~って違う!お前なに言ってんだ!」

「え?ああ、事実を突き付けられると人間傷つくもんだもんな。悪かったよ」

「全部嘘や虚言だろうが!」

 

キンジがかなりマジでキレる。

 

「まあまあそんな怒んなって……――っ!」

 

一毅は素早くキンジを突き飛ばしながら転がる。

 

「かず……」

 

キンジが言葉を紡いだ次の瞬間轟音と共にガラスが弾け飛んだ。

 

「敵襲だ!」

 

一毅は制服を引っ張り出しながら叫ぶ。

 

「ちっ!何処の何奴だか知らないが旅行先くらい平穏にいられないのかよ」

「お前は無理だろ」

 

そこに……

 

「今のなに!?」

 

アリアたちが入ってきた。

 

「狙撃だ。急いでお前らも着替え……」

『きゃ!』

 

アリア達は自分の目を塞いだ。

 

着替える都合上キンジと一毅はパンツのとシャツのみである……少々刺激が……とは言え先程裸見られたばかりだろと言いたいが微妙に違うのが乙女心らしい。

 

「とにかくお前らも脱出するから着替えてこい!」

 

キンジが怒鳴ると再起動したアリアたちが消えた。

 

「でもよく狙撃が分かったな」

「心眼を意識するようになってからだけど気配察知能力自体が上がったんだ。無論心眼その物はまだ使えないんだけどな……」

「それは分かるな」

 

キンジはブレザーを着ると荷物を素早く持ちながらベレッタに弾を込める。

 

「俺もシャーロック戦以降動体視力とか眼の力自体が上がったよ」

 

キンジの言葉を聞きつつ一毅も刀を持つ。

 

「終わったわよ」

 

アリアたちも準備万端といった風情で来た。

 

「よし、出るぞ!」

 

キンジの号令に他の皆も続いた……


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