緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の修学旅行 前編

「それじゃあ行ってくる」

 

キンジ達は荷物を片手に見送りに来た皆に声をかける。

 

「師匠。体調には気を付けるでござるよ」

「ああ」

「あかり、私が居ないからって油断してちゃダメよ」

「はい!」

「辰ちゃん、シノノンお土産楽しみにしててね」

「はい。お願いします」

「ありがとうございます……って辰ちゃんって俺の事ですか?」

「ライカ。気を付けろよ」

「分かりました」

 

二年生達がそれぞれ一年生たちに対応する。

 

「そろそろ時間だ」

「じゃあな~」

 

一毅達は手を降りながら新幹線に乗り込んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで~京都行ったらどうするの?」

「まず名所に3つ寄ってレポート書いたら後は自由だ」

 

武偵は自立せよ……がモットーの為か基本的に修学旅行も最低限のレポートさえ書けば後は完全自由。自由すぎて宿泊先も自分達で決めねばならないと言う状態だ。まあ安くて良い感じの宿を既にキンジが確保してあるので問題はない。キンジ様様だ。

 

「しっかし何だこのチーム名」

 

キンジは顔をしかめながら先程新幹線に乗る前に蘭豹に出しておいたチーム登録用紙のコピーを見直す。

チーム名は……

 

「あれだろ?【バンカーバスター】」

「一毅……それは蘭豹の渾名だ。【バスカービル】だよ」

「確かアリアさんの曾祖父であるシャーロック・ホームズが解決した事件の土地の名前ですよね?」

「さすがレキね。そうよ、序でに現在は私の所有地」

 

アリアがさらっと言った言葉に全員が椅子から落ちた。

 

「お前土地を所有してたのか!?」

「そうよ。まあ今はただの荒れ地だから殆ど価値なんて0よ」

「流石貴族だね~」

 

転落人生を歩んだ理子はからかうように言う。

 

「だったら序でにリーダーも襲名してくれ」

 

キンジが言う。未だにキンジは自分がリーダーと言うことに納得していないのだ。

 

「ですが状況判断能力や咄嗟の牽引能力などを考えた場合キンジさんが適任かと思われますが?」

「どれもヒステリアモード限定だけどな」

 

キンジがそっぽを向く。

現在は白雪が星伽に帰っていて不在だし一年生も居ないためヒステリアモードの名前も安全に出せる。

 

「それ抜きでもお前結構リーダーの素質あると思うけど?ほら、綴だって言ってたじゃん」

「あれは買いかぶりだ」

 

キンジは言うがキンジ以外はリーダーに関して異論はない。

キンジ自身が気づいていないものの普段の学校での評価や今までの戦いでの評価の上ではキンジが一番指示を飛ばしたりするのが上手いしキンジの人間辞めました技が反撃の機転になったことも多い。

それに残念ながら今までの経験上アリアは勘に頼り過ぎるし理子はどっかで滑るしレキは指示を飛ばすよりも受けた指示を忠実に実行する方があってるし一毅に至っては突撃しか作戦の指示が頭にないような人間だ。

それなら確かに指示の正確さはヒステリアモードに限定はあるものの素でもヒステリアモードでも共通してキンジに存在する一種のカリスマ性等があるので結果キンジ以外がキンジをリーダーにすることで一致した。

まあなんだかんだ言いつつも基本キンジは土壇場で力を発揮するタイプなので戦いになるまではその辺は置いておくしかないのだが……

 

「まあキンジの文句は置いとくとして……」

「置いとくな!」

 

キンジは怒るがスルーだ。

 

「で?ココに関して何か分かったか?」

 

一毅が聞くと理子は微妙な顔をした。

 

「芳しくはないかな。まあ香港藍幇の実質的なリーダーなのは分かったけど何で日本に来たのか~とか何でキー君とかカズッチとかアリアを襲ったのか~とかはぜんぜん。もしかしたらココの独断専行かもね」

「へえ~藍幇って香港の組織なのか?」

 

チャイニーズマフィアの一種かもしれないな……と一毅が思うと、

 

「正確には上海にもあって中国全土に範囲を広げてる秘密結社だね」

「何かのアニメかよ……」

 

キンジが突っ込んだ。

 

「んであれか?全身黒タイツの戦闘員がたくさんいるんだろ?ヒィー!とか叫ぶんだろ?」

「それは違う作品です……色んな所から怒られるので辞めてください」

 

一毅にレキが突っ込むと……

 

「後ね。ココも私たちと同じ偉人の子孫だよ」

「何?」

 

全員が眉を寄せる。

 

「誰のだ?」

曹操(ツォツォ)……日本読みなら曹操(そうそう)……中華覇者の子孫だよ」

「うぉ……」

 

また凄い名前が出てきたと一毅は半ば感心したような声を漏らした。

 

「まあココは何かめんどくさい大事件とかイタズラ感覚でやらかすし私に教えてくれた爆弾技術も遠慮なく行使してくるから気を付けた方がいいかもね。とんでもない馬鹿だけど……」

「理子さんに言われたら立つ瀬がないですね」

『確かに……』

 

レキの言葉にキンジ、一毅、アリアはうんうん頷いた。

 

「どういうこと!?」

 

理子の叫びに、そう言うことだろ?と全員が呟いたのは言うまでもない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて駅弁食ってトランプして喋って時間を潰していると遂に着いた。

 

「ビバ!京都!!!!!」

「騒ぐな馬鹿!恥ずかしい!!!!!」

 

キンジに一毅は殴られた。

 

「いってぇ!」

「で?最初はどこ行くの?」

「まずは金閣寺だ」

 

 

 

 

 

 

「ホントに金ぴかなんだな~」

「成金丸出しってやつね」

「まあ全部金箔ですよ?」

 

一毅、アリア、レキが見る。

この金閣寺は鎌倉時代に作られ室町幕府を足利 義満が作った。歴史の教科書でも見た人間は多いだろう?あの禿げて垂れ目の男が作った奴だ。

 

「じゃあ写真撮るぞ~」

 

キンジがカメラをセッティングすると全員を呼ぶ。

 

「はい、チーズ!」

 

カシャッ!と言うシャッター音と共に一枚目……

 

「ええと次は……三十三間堂だ」

「その前に理子は金閣寺の金箔ちょこっといただいてきまーす!」

『させるかぁ!』

 

キンジとアリアの衝撃の瞬間を完全に合わせるラリアット……【クロスボンバー】が炸裂し……

 

「がごふぅ……」

 

理子が白眼を剥いて倒れた。

 

「よし、行くぞ」

 

キンジは理子の後ろ首を掴んでズリズリ引き摺りながら皆を連れて歩き出した。

 

「完璧でしたね」

「全くだな」

 

レキと一毅が思わず拍手したのは余談である。

 

 

 

 

 

 

「なっが……」

 

三十三間堂とは細長く南北に延びその中に三十三本も柱が存在する建物……因みに何故三十三本かと言うと仏様の数らしい。昔の人はよく考えたものだ。

 

「どうせだから拝んでいくか」

 

中の仏様に向かって手を合わせる。

 

(普通の武偵になれますように……って何でアリアまで脳裏に出てくんだ俺の脳裏にまで出てくんなよ!!!!!)

(ママが無実になって……後は……ち、違う!べべべべ別にキンジと良い雰囲気になれたら良いなぁとか思ってないんだからね!)

(キー君と~イチャイチャしてアリアから奪いたいな~……何だろう?誰かがムリムリとか言った気がした……)

(一毅さんとライカさんの三人でこれからも一緒にいられますように……あ、あとこれ以上ライバルが出現しませんように……)

(レキとライカとずっと居られますように……ん?何だろう……今悪寒が走ったぞ……)

 

誰がどの願いを願ったかは脇に置いておこうというか直ぐ分かると思うのであまり突っ込まないでおこう。

さて、レポート用の写真もそこで撮って二枚目……

 

「最後に清水寺行くぞ」

「その前に【理子参上】って仏様の額に書いとこ~」

「辞めろ!」

 

素早く一毅が理子の腰を抱き抱え持ち上げるとブリッジしながら落とした……ようはジャーマンスープレックスである。

 

「がほぉ……」

「全く……そんなことしたら損害賠償でとんでもないことになるぞ……」

 

一毅は理子を担ぎ上げるとキンジたち共に歩き出す……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

清水寺に向かう道中一毅は立ち止まる。因みに理子は既に復活済み……

 

「どうかしましたか?」

 

レキが聞くと他の皆も振り替える。

 

「いや、ココが祇園何だなって……」

 

江戸時代祇園は京都の一角に存在し四方を壁で囲まれた今で言う歓楽街だった。ある種の独立国家として存在した祇園だが華やかさの裏には闇がある。そこには遊女達の戦いがあり涙が流された。

一毅はそこに立つと不思議な懐かしさを感じる。恐らくココに生きた一毅の先祖……桐生 一馬之介こと宮本 武蔵の血がそう思わせているのだろう。

 

(ココで生きたのか……俺の先祖は……)

どこかココだけ時間の流れが違う気がした……

 

「一毅、感傷に浸るのも良いけどそろそろ行くぞ」

「あ、悪い。行こうぜレキ」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっけ~」

 

清水寺の天辺は本当に高い。

 

「成程……ココから飛び降りるのね」

「まあホントに飛び降りるやつなんて居ないけどな」

 

キンジがアリアに日本について教えている。

 

「……」

「一毅さん?」

「あ?どうかしたのかレキ」

「あ、いえ……何かまた感傷に浸っていたらしいので」

「ああ、伝承に残ってるだけなんだけど桐生 一馬之介もココで宍戸 梅軒(ばいけん)って言う鎖鎌使いの男と戦ったらしいんだ……そうやって考えたら清水寺の歴史って長いんだなって」

「そうですか……ちゃんと一毅さんなりに学を修めて居たんですね」

「はは……まあ自分の先祖が居て戦った場所なんて子孫からしたらやっぱり色々考えるよ」

「成程……ん?」

 

レキが振り替える。そこには……

 

「ふふ……と言うわけで高いところから落ちたって死なないだろう人間やめてるキー君清水の舞台から跳んでみよう!」

「なに!」

 

キンジが振り替えるがもう遅い……理子に突き飛ば……

 

「自分で落ちてください」

「え?」

 

す前にレキに理子が突き飛ばされそのまま理子がゆっくり落下していく……

 

「アアアアアアアアアアア………」

『エエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!』

 

一毅とキンジとアリアは慌てて下を見ると理子が髪の毛を動かして捕まっていた。

 

「ちゃんと理子さんは落ちても大丈夫だと言う確信の元にやっています」

『そう言う問題じゃねえだろ……』

 

キンジと一毅の突っ込みをレキは受けた。

 

「まあいいや、最後の写真を撮ろうぜ……」

 

キンジは理子が柵に這い上がって来たところと一緒に皆と最後の写真を撮った……

 

 

 

 

 

「さて、レポートはあとは各自の問題になるしどうする?他にも行きたいところはあるか?」

 

キンジが皆に聞くがそんな直ぐには思い付かない。

 

「あ!なら大阪行こうよ!そして服を見よう!」

「それ良いわね」

「良いですね」

 

女性陣は賛成した……が、

 

「お前らこの前も買ってたじゃねえか……」

「そうだぜ……態々大阪まで行って買う必要あるのかよ……」

 

キンジと一毅は難色を示した。男声陣にとっては服なんぞユニクロとかで適当に合わせれば良いと思ってるのである……だが、

 

「分かってなーい二人とも。大阪には東京にはない服もたくさんあるの!それに~」

 

ニヤ~っと理子達女性陣は笑った。

 

「私達だけだと買うのにも限界があるのよね」

 

アリアの言葉にキンジと一毅は首をかしげた。

 

「幸い今回は荷物持ちが二人もいます」

 

狙いはそこか!っとキンジと一毅は頬を引き攣らせつつも、

 

「キンジ!銀閣寺見に行かないか!?」

「良いなぁ一毅!序でに風魔に土産買いにいこう!」

 

二人は背を向け猛ダッシュ……だが、

 

「風穴ぁ!」

「逃がしません!」

 

アリアの銃弾をキンジが……レキの銃弾を一毅が喰らい転んだ……防弾制服の上からとは言え痛い。さらに理子の髪に捕まった。

 

「離せぇ!俺たちには人権と自由が認められている!」

「そうだそうだ横暴だ!」

「では多数決といきましょう。男声陣二人を荷物持ちにしても良いだろうと言う人……」

 

スッとレキ、アリアからアリア、理子の三人が手を挙げた。

 

『狡いぞお前らぁ!』

 

ジタバタ暴れるが所詮女性の比率が多い状態では男性の意見など通る筈もなくキンジと一毅は女性陣三人に大阪に連行された……


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