龍達の夏休み その一
「久し振りですね。飛行機に乗るのも」
「そう言えばレキ先輩外国出身ですもんね」
一毅、レキ、ライカの三人は空港にいた。
「まあ国内線だけどな」
三人とも飛行機の書類にサインする。武偵であるため三人は交通機関に乗るときは実は結構面倒な手続きがいるのだが……
「二人ともまだですか?」
『はや!』
何故かレキはすでに終えていた。
「既に書類を前から受け取っておきました」
「そんな裏技が……」
何度も利用している一毅だがそんなものは知らなかった……
「急がないと登場時間に遅れますよ」
『やば!』
一毅とライカは大急ぎで書類を書き終えた……
一毅の実家は沖縄にあり孤児院【アサガオ】を営んでいる。
アサガオは一毅の祖父の代から存在しており現在は最年長は15歳、最年少は10歳の総勢10名で一毅の両親と一毅を含めて計13人もいる結構な大所帯である。
一度レキは行った事があるがライカは初……しかも一毅曰く父親はヤクザも幼稚園の先生に見えるほどらしい……そのため現在何気に緊張してる。
「でも飛行機乗れてよかったですね」
「だよなぁ……金無いんじゃないかと焦ったよ」
夏休み突入前一毅とキンジはシャーロック・ホームズと激戦を繰り広げた。その際に死にかけるような怪我を負い、更には平賀 文お手製の試作品装備、防弾、防刃、耐衝撃に防炎、絶縁を兼ね揃え暑いときは涼しく、寒いときは温かい多機能ロングコート……その名も【
まあ職人魂に火が着いたらしく
「まあ今は多少なりとも金銭的な余裕はあったんだけどな」
イ・ウーを結果的にぶっ潰したため口外無用の書類と共に結構まとまった額を貰ったのだ。まあ怪我の度合いとか戦った相手を考えればもう少し貰ってもバチは当たらないとは思ったが病室から一刻も早く同席していた武装検事の御方を退散させたかったため一毅は黙って受け取った。何せその武装検事と来たらおっかない事この上ない人間で一見は少しがっしりした一般人に見えてその実歩いたときの足音などで分かったが重かったのだ。つまりあの服の下は筋肉しかないのだろう。体格に似合わないほどの筋肉量……だがその動き事態は寧ろ身軽で隙がなかった。流石日本の最強組織の一角を担う武装検事……自分の父もあの一人だったのかと思うと少々複雑だ。
(俺もまだまだだねぇ……)
一介の……と言えるほど低い実力ではないと一毅自身自分の強さを分析している。だがあの武装検事と戦えと言われたら単独撃破は難しい……心眼使えれば話は別だがシャーロック戦以降また使えなくなった。
何度かレキやライカに背後から襲ってもらってやってみたものの心眼のしの字も出来なかった。だがあれはもっと自在に使いこなさなくてはならない。手加減抜きの全開で使用した結果全身の筋肉が切れたりボロボロになったりした……キンジも一時的に焦点が合わなくなったり頭痛に悩まされたりしてたし多分……ではあるものの心眼も万象の目も使いこなせなければ自分の体を壊す。
一毅の心眼は肉体的にボロボロになって何れは動くことも出来なくなる……キンジの万象の目は脳に負担を掛けるらしいから廃人になる可能性が……
世の中ままならないものである。せっかく凄い力を覚えても使いこなせなかったり一歩間違うと人生棄てる羽目になったり……
「はぁ……」
『?』
一毅が珍しく悩んだ表情を浮かべたためレキとライカは首をかしげた……
「とうちゃーく!」
「相変わらず暑いですねぇ」
「ならもう少し暑そうな顔したらどうだ?」
一毅たち一行は沖縄に到着する。
しかし今日の気温……何と34℃……確かに暑い。
「……」
「ライカさん顔色が悪いみたいですがどうかしました?」
「いや、今から緊張してて……」
ライカは顔色が悪い。
「大丈夫だって。人相は悪いけどうちの親父は人柄は良いし母さんだって結構美人で優しいし孤児院の皆だってライカを気に入るさ」
「う~」
それでもやっぱり緊張はする。しかも一毅の父は気を利かせて空港まで迎えに来ると言う……つまりここを出たらすぐに会うと言うことだ……
「うーん……どこだ?」
そんなことをしつつ外に出ると一毅はキョロキョロ周りを見る。
確かここらで待ち合わせしていたのだ……居ない。
一毅の父は一毅と同じくガタイも良いし身長に至っては二メートルちょっともあると言う日本人離れした体格の持ち主だ。何せ二メートル近くあったキンジの父親と話すときは首を下に向けていたと言っていた位で肩幅関係上圧迫間が半端じゃない。
そんな人間が歩いてくればそりゃ目立つ筈だが……
「おーい」
「ん?」
突然声をかけられ三人は降り返る……
そこには一毅たちが見上げんばかりの高身長の男……そして顔立ちは鋭い眼光に歴戦の戦士のようなオーラ……幾つもの修羅場を乗り越えたものが持つ物……どう見ても堅気じゃない。更にその佇まい……一見すれば普通に立ってるだけだが一切無駄の無い立ち方で脱力してリラックスしているもののあらゆる方向からの攻撃に対して対処できる立ち振舞い……見たところ無手であるが簡単に一毅たち三人を圧倒できるのが手に取るように簡単にわかる。
「よう。おかえ……」
「か、カツアゲだったらまだ未遂のうちに辞めな」
ライカは言い切った。だが、
『ぷふ!』
「え?」
ライカは一毅とレキが背を向けて笑っていることに眉を寄せる。
『ぷぷ……』
「あのぅ……」
ライカは訝しんだ目で一毅とレキを見る。
「ん?ああ悪い悪い。なあ、先ず名乗った方がいいぞ?親父」
「………へ?」
ライカは唖然としながら一毅が親父と呼んだ男を見る。
「あ~。初めましてだな。話は聞いてるよ火野 ライカちゃん。俺は桐生 一明。こいつの父親だ」
「…………でぇええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ライカの驚愕の声は辺り一体に響き渡った……言われてみればその顔立ちは、一毅に良く似ていた……