「ハァアアア!!!!」
一毅の振り降ろし……だがそれはシャーロックのステッキの切っ先で止める。
「シャア!」
キンジの視界にシャーロックの動きが写る……そこから先読みしキンジの回し蹴り……は更に早く放たれたシャーロックの蹴りで止められる。
「っ!」
「君も見えているようだが残念ながら僕の眼と推理の方が正確で先まで見通せる」
「も……だと?」
キンジは眼を見開く。
「お前も見えているのか?」
「ああ、例えば僕の視線には……」
一毅が
「一毅くんの小太刀が僕の脇腹を狙うと言うフェイントをして逆方向から太刀で僕を狙っている」
「なっ!」
一毅の動きはシャーロックが予言した通りで
「次はキンジ君がナイフで僕の顔を狙い、意識をそこに向けさせたところにハイキックかな?」
「っ!」
まさにその通りでシャーロックは一毅を突き飛ばしてキンジの方に向くとナイフを躱しながらキンジの追加攻撃のハイキックを掴んで止めると腹に膝蹴りを打ち込みそのままバリツの落とすような背負い投げ……日常的にアリアから受けているものとは比べ物にならない速さと威力だ。咄嗟に受け身を取ったがそれでも受けた痛みで肺にあった空気を吐きだした。
それと同時にキンジは確信した。シャーロックは自分と同じ眼を持っている。
しかも数倍強力だ。更に
「さて、次は僕から攻める番だ」
シャーロックの正拳突き……それ以上でもなければそれ以下でもない拳がキンジに迫る。
「カウンターキ……が!」
シャーロックの攻撃に合わせてカウンターキックを放つ筈が逆にカウンターキックを決められた。
「カウンターは相手の虚を突けるから効果があるんだ。相手がカウンター狙いだと言うのが分かればカウンター返しも簡単だよ。忘れたのかい?僕は相手未来の動きが見えるんだ。君より数倍強力で精度も比べ物になら無いけどね」
「二天一流!」
一毅は二刀を交差させる。
「必殺剣!
二刀を×の形に交差させ、腕を開くようにして切る。
「甘いよ」
それをシャーロックは後ろに飛んで躱す。だがこの技は元々一撃目ではなく二撃目の斬撃が本命。開いた腕を返し挟むようにする。まるで鋏のように……
「くらぇええええええええええ!!!!」
「残念だね」
だがその斬撃はシャーロックが上に跳んで避けると一毅の頭を台に跳躍。
それと共にシャーロックに頭をステッキで殴られた。
「ごっ!」
「僕は剣術の達人でもある。まあ僕の場合はフェンシングだがね」
「ちぃ!」
一毅はフェイントや小手先の技は通じないと判断し、跳躍。
完全に読まれている……だがそこに、
「シャア!」
キンジの背後からシャーロックの脇腹を狙ったミドルキック……それは何故かシャーロックの脇腹に決まった。
「くっ!」
「え?」
放ったキンジも僅かに困惑したがその隙を見逃す一毅では無かった。防御が崩れた今がチャンス!
「二天一流 秘剣!」
「
体勢を崩したシャーロックに圧倒的な数の斬撃を叩き込みまくる。
「オラァ!!!!」
「がは……」
シャーロックは壁まで吹っ飛ぶ。
「どうだ?」
一毅は降ってきた
「流石に無傷と言うことは……っ!」
一毅とキンジは自分の身の毛が泡立つのを感じた。
その中シャーロックはゆっくりと立ち上がる。その雰囲気……オーラ……間違えようが無かった。
「ヒステリアモード……」
「僕は自分の死期を分かっていた……そして、その時は近いこともね」
『っ!』
シャーロックは首を軽く回す。
「僕は既に死にかけていた。礼を言うよ。最後の砦を君たちは壊してくれた」
そう、元々死期が近づいていたシャーロックはヒステリア・アゴニザンテ一歩前だったのだ。そこに一毅の技がシャーロックを完全にヒステリア・アゴニザンテに変えた。
「はぁ!」
「っ!」
一足跳びで間合いを詰めたシャーロックの後ろ回し蹴り……キンジは反応もできずに吹っ飛んだ。
「シャーロ……」
一毅は
「残念だが遅いよ……」
「ぐっ!」
「はぁ!はぁ!はぁああ!」
「ぐがっ……」
両肩の関節に鳩尾を突かれ一毅を痛みと嘔吐感が襲う。
「ふん!」
トドメとばかりに一毅の眉間をシャーロックの放った突きが命中した。
「ぎっ!」
一毅は後ろに倒れる。
「がは……!」
「ぐぐ……」
一毅とキンジは歯を食い縛って立とうとするが、
「さて、これは耐えられるかな?」
周りの空気の温度が下がり……熱くなり……急に風が起こり始め……水が生まれ砂が舞いはじめる。
どういうのかは分からないが超能力なのだけは分かった。
「予習だと思ってくれたまえ」
『っ!』
次の瞬間、一毅とキンジの体を情け容赦無用の超能力が蹂躙した……
『がは!』
砂に揉まれ水鉄砲が体を貫き鎌鼬が体を切り裂き氷が体を叩き炎が体を焼いた……
他にも様々な超能力を体験させられた気がするが痛みと苦しみが多すぎて分からなかった。
分かってることはただ一つ。今の自分達はボロボロだと言うことだ……
「キンジ!一毅!」
アリアはキンジと一毅に駆け寄る。
「はぁ……がは……ぐぅ……」
「ふぅ……はぁ……ふぅ……」
「くそ……」
強すぎる。相手の動きの未来を読む眼も……全てを上回る推理も……剣術の腕も……これが最強の男の力なのだろうか。
「流石に頑丈だ。ここまでとはね……」
シャーロックも少し嬉しそうだ。
「っ!」
アリアは二人の前に出るとガバメントを向ける。
『アリア!?』
キンジと一毅は驚く。あのアリアがシャーロックに銃を向けたのだ。
「ほぅ……僕に向けるかい?」
「曾祖父様……私はあなたを敬愛しています。でも……やはり見ているだけなんてできません」
一毅は友人で……親友のレキの彼氏で……キンジは今まで感じたことない気持ちを胸に起こしてくれる大切なパートナーで……
「私は貴方を倒します」
「そうか……流石年頃の男女と言うやつだね。君の成長嬉しく思うよ」
「え?」
「いや、何でもない。ならば……こうしよう」
するとシャーロックの体が緋色に輝く。
『っ!』
更にそれに共鳴するようにアリアの体も緋色に輝く。
「これは……」
「アリア君……これから君達にある一撃を放つ。その名は【緋天・緋翔門】……キンジ君と一毅くんは知ってると思うがパトラ君のピラミッドの屋根を吹き飛ばしたあの一撃だよ。防ぐ手だては……一つだ。君も私に【緋天・緋翔門】を放つんだ」
そう言いながら指先をアリアに向けると光は指先に集まる。
「っ!」
急いでアリアも同じようにするが全身が緋色に輝くだけで変わらない。すると、
「大丈夫だ……アリア」
キンジが這いながらもアリアの元に行き、アリアの手をそっと握る。
「お前は覚えてないかもしれないがちゃんとお前は使ったんだ……きっとまた使えるさ」
ギュっとアリアの手を握る力を強める。
「俺がいる。大丈夫だ」
「……そうね!」
それに呼応するがごとくアリアの緋色のオーラが強まり、同時に指先に輝きが集まる。
「それで良い……行くよ」
『っ!』
同時にシャーロックとアリアは指先から光を放つ。
それがぶつかると……
『え?』
次の瞬間一毅たち三人は信じられない光景を目にした……