緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

5 / 177
龍の戦い

「だーかーら!ここは男子寮!女子は入れないの!分かるか?」

「大丈夫です。寮長さんに許可を頂きました」

「嘘だろ……」

 

一毅はうなだれる。なにそれ……男子寮と女子寮で分ける意味ないじゃん……どうやら元陸上自衛官の寮長さんは寛容すぎる人だったらしい……

「もういいや……」

 

そして一毅は考えるのをやめた……

 

「ではシャワー借ります」

「あいよ」

(あーくそ……どうするべきか……【シュル】やはりいくらなんでもうら若き男女……それがひとつ屋根の下って【シュル】精神衛生上悪すぎる【パサッ】……俺だって年頃の男なんだから間違いがあってからじゃ……【スト】……さっきから何だよ俺の台詞中に入るお………と?)

 

一毅は振り替えって音の方と言うかレキの方を見て石のように固まった……そこには何とブラジャーのホックに手を掛けてると言うか下着姿のレキが……ああ、制服は足元……って違う!!!

 

「お、お前は何でここで脱いでるんだ!」

「これからシャワー浴びるからですが?もしかして一毅さんは服を着て浴びる人ですか?変わってますね」

「違う!そんなわけないだろ!俺が言いたいのは服を脱ぐんなら脱衣所行けってことだ!」

「別に私は気にしません」

「俺がするんだよ!」

 

慌てて一毅はレキをつれて脱衣所に放り込みドアを少々乱暴に閉める。

何考えてんだあれは!こっちは良くも悪くも健全な年頃の男子校生だ。あんな刺激的なものを見せられたら理性が色々危ない……

でも凄く肌は綺麗だった……なんつうか透き通りそうな肌ってああいうの言うんだって思った……それに決して大きいとは言えなくても年相応に発達した四肢……そこにタイミングよくシャワーの水滴の音がする。

これは大変よろしくない……さっきのイメージがあるため邪な想像をどうしてもしてしまう……

 

よし、こう言うときはテレビでも見よう……とテレビをつける。丁度良くサスペンスだ。これで犯人を推理して煩悩晴らそう……としていたのだが、

 

「シャワーありがとうございました」

 

そこにレキが出てきたようだ。

 

「どういたしま……◎△▽○◎★@¢※△¢@△▼」

 

一毅は声にならない奇声を挙げた。

 

それはそうだろう。

何故ならそこにはいきなりレキがいた……それだけならまだいい……だが何とレキは真っ裸でいたのだ。

 

いや、ここだけの話だが女の裸を見たのは初めてじゃない。沖縄の実家の孤児院にはチビッ子も沢山居たしそいつ等を風呂にいれてやっていた。

 

だがあくまでそれは5、6歳くらいまで……それ以上は母さんや他の女子と一緒だったし一番年上の女の子である遥(14才)に至っては一毅が間違えて着替え中に部屋に入ったとき顔を赤くして鉛筆削りを投げつけてきたくらいだった……だと言うのにこの娘ときたら真っ裸だと!?せめて腕で隠せよと声を大にして叫びたい。まあ叫んだら人なりの部屋のキンジに聞こえてしまうが……

 

だがしかし……決して大きいと言うわけではないが膨らみのある胸……その先にはさくらんぼの様なツンっと……って違う違う!!!一毅は視線を下にして見ないようにしようとするがその際に当たり前だが股の……

 

「ブハッ!」

 

と言うわけで一毅は遂に限界を越えて鼻血を吹いて倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?何で真っ裸で出てきたんだ?」

 

一毅はティッシュを鼻に突っ込みながら話を聞く。無論レキは既に着替えているが動きやすいとのことで何故か武偵高校のセーラーだ……

 

「服を持っていくのを忘れてました」

「なら脱衣所で呼べよ!そしたら持っていってやったから!つうかせめてバスタオル巻くとか色々あるだろ!」

「別段困ることはありません。どうせ見られるのですし」

「……はい?」

 

一毅はティッシュを変えながら唖然とする。

 

「このあと子供を作る行為しますし」

「▲◆▲■※△●ゑΒ♪※○◎☆☆」

 

本日2度目の大混乱だ。何言ってくれてんのこの娘は!

 

子供を作る行為といったら……流石に知識がない訳じゃない為分かるがいきなしそんなことを言われてもといった感じだ。

 

「な、何いきなり言ってやがんだ!」

「もしかして分かりませんか?」

「いや……そう言うわけではなくてだな……」

 

一毅はシドロモドロする……ならば、

 

「で、でもなんでそんなことを?」

 

強引に話題をすり替える事にした。

 

「そうすれば貴方をウルスに組み込めます」

 

レキの言葉を聞いた瞬間一毅は先程の混乱を棄てて眉を寄せた。

 

「ウルス?」

「今のウルスには47人の女しかいません。そのために必要なのです。強き血統が」

 

そう言う事だったのか……と一毅はやっと納得がいった。少し謎ではあったのだ。何故レキは自分を選んだのか……ようはレキが風と呼んでいるのは今言ったウルスの事なのだろう。コードネームみたいなものか。

 

「それで俺だったのか?」

「はい、桐生 一馬之助……いえ、宮本 武蔵の子孫、桐生 一毅さん」

 

大したものだと一毅は舌を巻く。

基本的に宮本 武蔵=桐生 一馬之助と言うのは知られていない。

一流の情報屋辺りなんかは調べてたりしているが取り合えず一般的な知識じゃない。

 

「それでなんですが……」

「断る。そう言うのは仮が取れてからだ、少なくとも今はダメだ。良く言うだろ?男女は結婚しても三ヶ月は一緒の布団に居ちゃいけないんだって」

 

我ながら何時の時代の武士だと突っ込みたくなったがレキは暫し考え……

 

「分かりました」

 

一毅はホゥっとため息をつく。こんな子供みたいな言い訳で納得してくれて助かった。

 

「でしたらもう寝ます」

 

そう言ってレキは部屋の角に行くと体育座りで目を瞑る。

 

「いやいや布団で寝ろよ」

「いつ襲撃を受けてもいいように用心です」

 

武偵の巣窟とも言えるここを襲撃する命知らずは居ないと思うが……

とは言え女の子を床で寝させて自分だけ布団で寝るなんて言う暴挙は出来ない、仕方ないが此処はソファーで寝よう。だがその前に一毅は携帯を取り出す。

電話帳から電話を掛けると、2、3回コールが鳴ったあとに出る。

 

「あ、もしもし……はい……はい……それではよろしくお願いします。じゃあ明後日に……はい」

 

一毅はそのまま電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして日曜日……一毅はレキを連れて茶屋に来ていた。此処は他にも湯呑みや絵など和を主軸においた物が沢山ある。だがここの店主にはもう一つの顔があるのだがそれは少し後にして店を見渡す。

 

「じゃあレキ、お前はちょっとそこでお茶でも飲んで待っててくれ」

「はい」

 

レキを見送って一毅は奥に入っていく。

中に入るとそこには壁一杯の機械が並んでいた。

 

「来たか」

 

その真ん中の機械を見ていた男が一毅の方に振り替える。

 

「お久し振りです。光一さん」

 

彼の名は本阿弥 光一……この人の先祖である本阿弥 光悦は一馬之助の友人でその為先祖代々この人の一族とは家同士での知り合いである。

そしてこの人はこの茶屋【本阿弥堂】の主人であり裏の業界では知る人ぞ知る情報屋なのだ。

この人の手に掛かれば国家機密から小さい頃の恥ずかしい思い出まで調べられついた二つ名は【千里眼の光一】。

 

「確かウルスについてだったな?」

「はい」

 

光一は紙を見る。

 

「ウルスってのは、ロシアとモンゴルを挟むバイカル湖って言うところの南方の高原に隠れ住む少数民族で、チンギス・ハンこと源義経の戦闘技術を受け継いだ一族の末裔だ。この民族はかつては弓や長銃の腕を恐れられた凄腕の傭兵の民であったが時の流れと共に次第に数を減らしていき、現在では女性47人しか残っていないって所だな」

「あれ?チンギス・ハン=源義経って否定されていたような…」

「お前にしては博識だな。そうなんだがどうも昔情報を操作したやつがいたみたいだ。だがチンギス・ハン=源義経ってのは間違いねえ」

 

そう言うと光一は椅子に凭れる。

 

「しかしお前からいきなりウルスについての操作を頼まれたときは驚いたぞ。しかもまさかそのウルスの一人に求婚されてるらしいじゃねえか」

「あはは……」

 

一毅は乾いた笑いを浮かべる。

 

「ならお前教えておくことがある。どうせウルスの娘は言ってないんだからな」

「え?」

「ウルスには【最後の弾丸】と言う言葉がある。これは相手に向けるもんじゃない、自分が足手まといな状況となったとき自分を撃つ為の物だ」

「それって自殺用ってことじゃないですか!?」

「そうだ……お前もあいつと武偵をやるなら気を付けるんだな」

「はい……」

 

すると一毅が頷いた次の瞬間爆発音と銃声が響く。

 

『っ!』

 

一毅と光一はそれに反応すると飛び出す。

 

「なんだこれは……」

 

出るとそこには散らかった店内……所どころには銃痕もある。すると足元に紙が落ちていた。そこには……

 

【お前が強襲した廃ビルで待つ】

「………………」

 

一毅は紙を握りつぶすと立ち上がる。

 

「行くのか?」

「はい」

「気を付けろ……こりゃあ相手もかなりの兵力だ……一応武偵校の方に連絡した方が……」

「二時間……」

「なに?」

「二時間なにも連絡がなかったらお願いします」

「……ちっ…分かったよ……」

 

一毅は頭を下げると走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お茶屋から走ること三十分……思ったより早く着いた……

入り口には……誰も居ない。まあその方がいい。建物の構図もまだ覚えている。

一毅は膝を曲げ伸ばして軽く体をほぐしながら息を整えると……

 

「二天一流継承者……及び東京武偵高校強襲科(アサルト)所属……Sランク武偵!桐生 一毅!推して参る!!!」

 

一毅は扉を思い切り蹴破る。

 

「来たぞ!」

『おう!』

 

中に入ると三十人程のヤクザらしき男達が居た。

 

「上等だ……来やがれ!」

 

一毅は走りながら空箱を掴むと一人に被せる。

 

「うぉ!」

「二天一流・喧嘩術!」

 

そのまま一毅は渾身の手刀を落とす。

 

「被せ手刀の極み!!!」

「うがふっ!」

 

一毅はそのまま桐生が代々受け継ぐ三本の刀であり太刀の殺神(さつがみ)を抜く。

前回は日の目を見なかったが今回は遠慮なく抜かせて貰う。光に照らされ鈍く光る白刃の刃……美しくもどこか恐ろしい造形で……薄くではあるが深紅に光る。真に使いこなせば神すらも殺すその刀を抜くと、その近くの相手を掴む。

 

「二天一流・秘剣!一刀の極み!!!」

 

そのまま少し突き放すと三連撃を叩き込み更に、

 

「秘剣!ぶっとばしの極み!!!」

 

これは一刀の極みから繋がれる追撃用の技で相手を回転蹴りでぶっ飛ばす技だ。

さらにぶっとんだ際に他の相手を巻き込む。

そして一毅は前傾姿勢で切っ先を相手に向けつつ走り出す。

 

「二天一流・秘剣!狼牙!!!」

 

弾丸となった一毅の突きが男に決まる。だがそれで終わらず、

 

「狼牙・終!!!」

 

突き刺したまま相手を持ち上げぶん投げると言う荒業で相手を沈める。

こんな荒業は殺神(さつがみ)でなければ出来ない。

そんな風に扱われても平気なのだからまさしく名刀である。

 

「クソォ!」

 

背後から来たがそれをスウェイで躱し、相手の一瞬隙を突いて斬る。

 

「二天一流・秘剣……霞ノ太刀……」

「何なんだあいつは…」

 

男達は逃げ腰になる……だが、

 

「くそ!このままじゃ兄貴に顔合わせらんねえぞ!」

「そ、そうだな、いくぞお前ら!」

『おう!』

 

男達が来る。ポン刀、ドス、ビンにその他もろもろが一毅を狙って襲い掛かる。

 

「ッ!」

 

それを一毅は次々殺神で弾き返す。

 

「うっらぁ!」

 

一瞬の隙をつき殺神を振り下ろす。

 

「ぐあぁ!」

「ふん!」

 

更に繋がるように振り上げ、横に凪ぎ、時にはぶん殴ってどんどん数を減らしていく。

 

「ウォオオオオラァ!」

 

一毅は相手の襟をつかみ頭突きをかます。次に一毅はアッパーを打ち込む。

最後に飛び上がると殺神を勢い良く振り下ろした。

 

「い、いくぞおおおおお!」

 

残りは四人……ならばと一毅は殺神(さつがみ)を仕舞い腰に挿すもう一振りの刀、 小太刀の神流し(かみながし)を抜く。それは殺神(さつがみ)とは違いどこか安心させる……美しくも何処か儚い……人を感動させるなにかがある造形で薄く蒼い……真に使いこなせば神の天罰すらも受け流す刀……そして防御用に使われることが多い小太刀ではあるが二天一流いは小太刀の型もある。どんな一撃も受け流しすさまじい早さで連撃を叩き込む型……一撃は低くともその分手数で圧倒する。それが【二天一流・組小太刀の構え】。

そして技数は少ないがこう言うときには使える技がある。

 

「二天一流……組小太刀・秘技!」

 

次の瞬間一毅の体から白いオーラが現れる。

これは超能力と言うか体質みたいなもので【ヒート】と呼ばれている。

とは言えこれは本来誰もが持っている力だ。例えるなら火事場のクソ力……

一毅は意識的にその状態に持っていきその副作用として白いオーラが纏われる……この状態になると身体能力は向上するし頑丈にもなる。

そしてそこから放たれる二天一流の秘技……

 

幻狼(げんろう)

 

まず一人目に横凪ぎの一撃で斬る。

 

「ぎあ!」

 

更に返し刀で二人目……

 

「ぎぅ!」

 

更に返して三人目……

 

「ごあ!」

 

最後に体を回転させその勢いで切って四人……

 

「がはっ」

 

まるで幻の中で見えた美しき狼のように流れるように斬る技……

チキッと刀を鳴らすと斬られた四人は倒れる。

ヒュッと刀を振って血を払うと仕舞う。

 

「上……か?」

 

一毅は階段を上がり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たようやな……流石に腕は立つようやのう」

 

宍戸は頬尻を上げる。

これは仇討ち……だが実を言うと桐生 一毅に対し個人的に興味があった……

 

幾ら不意打ちであろうとヤクザ十人を聞く限り一人でブッ飛ばして捕まえていったのだ……仮にも武闘派ヤクザと言われる自分の部下達だ……決して弱くない……寧ろ下手なやくざより強い自信がある。部下の強さだけならあの鏡高にも勝てると言う自負があった。だがそれを一人で……

元来戦闘狂の一面を持っていた宍戸としてはかなり楽しみなのだ。

 

「……………」

 

それをレキは無表情に見ていた。手には密かに忍ばせた武偵弾の炸裂弾(グレネード)がある。

武偵弾とは一流のプロ武偵が使う特殊弾でDAL(Detective Armed Lethal)とも呼ばれる。

そして今レキが持っているのは読んで字の如く爆発しその破壊力は戦車も破壊する。そしてこの武偵弾のもうひとつの利点……それは銃に込めなくても素手で起動し今持っている弾丸であれば手榴弾代わりに使える。

だがレキがこれを持っているのはそのためではない……そう、これは光一が言っていた【最後の弾丸】となるため……縛られつつも隙を突いて近づき起爆すれば道連れに出来るだろう……

 

「…………」

 

そう考えつつレキはゆっくり近づき起爆にタイミングを探す。

だがそこに扉の開閉音がした……一毅が入ってきたのである。

 

「来たな?」

「お前は……?」

「ワイは宍戸 梅斗……分かるか?」

「悪いな……宍戸という知り合いには昔から会ったことはねぇ……」

「そうか!」

 

次の瞬間宍戸の袖から鎖分銅が飛んでくる。

 

「うぉ!」

 

一毅は殺神(さつがみ)を咄嗟に抜いて弾く。

刀で受けたが手が痺れる……凄まじい威力だ。まともに喰らったら痛いでは済まない。下手すれば頭が吹っ飛ぶ。

 

「お前が何で喧嘩売ったか興味あらへんしヤクザが嫌いなのか知らん……だけどな……」

 

宍戸は逆の袖から鎖鎌を出す。

 

「やっとらん罪でうちの子分しょっ引くなんぞええ度胸や……殺してバラして埋めたる……」

「?」

 

一毅には宍戸の言ってる意味がわからなかった……だが何となく直感で分かる……

こいつは冷静に話が通じる男じゃない……打ちのめして叩きのめしてからじゃないと話はできないだろう。

 

「言ってることの意味がわからねぇが……やるしかねぇようだな……」

 

一毅はそう言って神流し(かみながし)も抜き……【二天一流・必殺剣の構え】をとる。

 

「二刀流か……面白いわ!」

 

宍戸が笑いながら鎖分銅と鎖鎌を振り回し一毅へと走り出す。

 

「行くぞ桐生ぅうううううう!」

「ウォオオオオ!!!!!!!!!」

 

一毅もそれに応じて走り出すと二刀を鳴らし宍戸へと一気には走り出す……

 

『オッラァ!』

 

二人の武器のぶつかった音を合図に激戦の幕が上がった……


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。